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ただいまの室温34℃。
窓の外では 交通誘導係のガードマンが
もうずいぶん長時間 炎天下にたたずみ
人がやりたがらない仕事に従事している。
こんな猛暑日は 信号か人型ロボットにすればいいのに
と思いながら エアコンのスイッチを入れず
扇風機の風だけで 暑さしのぎをしている。
わが草庵 二草庵は生い茂る雑草にうもれかかっていてね。
こう強烈な日射しの下では とても草刈りどころじゃないなあ。
連日の記録的な猛暑にあきれながら
悪夢から逃れ出たぼくは C・クライバーが指揮するブラームスを聴き
レモンが入ったかき氷を食べ こうして
PCの前にひとりですわっている もう何時間も。
ケータイのスイッチはOFFにしてある。
こうしておけば とりあえず仕事は追いかけてはこない。
今年もやってきた二草庵の夏。
ロマンチックなのに ロマンチックではない。
悲しいのに 悲しくはない。
うれしいのに うれしくはない。
ブラームスの愛はくすんでいて 歯がゆいほど内省的。
その音楽の中にぼくは自分のいまを投影し。
CDプレーヤーのスイッチを切ったら
ぼくを取り囲むオブセッションの数々が消える。
それをよろこんでいいのかどうか
ぼくはシンフォニーを聴きながら考え込む。
そう このところ年がら年中 考え込んでいるが
それは悲しみが原因でも 悔恨が原因でもない。
2012年の夏が こうして過ぎてゆくってのに
だれにもあるぼくの一日の労苦には手応えが感じられない。
粗暴なふるまいをせず 喚きたてるわけでもない。
シンフォニーが終わるまでに
THE NEXT ONEを考えよう。
生きているかぎり つぎになにかしなきゃならない。
なにを?
身近に死者がふえたなあ。
もうすぐお盆がやってくる。
クモの巣が張っていたりする夏の二草庵はもうすぐ 見えない霊でいっぱいになる。
ニイニイゼミが裏の柿の木で鳴きはじめた。
ブラームスの音楽がこんなになつかしく 親しげに響くのは
きっとこの静けさと あの輝く夏空のせいだろう。
音楽が終わりに近づくと ノイズだらけだった生活の表面が遠くまで見通せるようになる。
無邪気でなにも知らなかった 子どものころのようにね。