二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

停留所のいらないバス(ポエムNO.3-51)

2020年05月03日 | 俳句・短歌・詩集
  (2019年9月撮影 伊勢崎市)


だれかさんの胸に
停留所のいらないバスがあってね。
思い出を満載して走っている。
うっかり電柱・・・みたいなものにぶつかって
思い出が外へ放り出されることがある。
別なだれかさんの胸には
華やかなお祭り道具を載せたバスがあるし
茶色のよごれた本や泥だらけのゴルフボールを積んだバスもある。
もちろん 任意の場所に任意に止まるんだ。
停留所なんていらない。
見知らぬだれかさんが 乗ったり降りたりしている
思い出をたっぷりつめ込んだふくろを提げて。
黄色の点滅信号があると
すすっとスピードをおとす。
それからふたたび走り出す。
ボンネットバスみたいな錆びだらけのバスが混じっている。
おやおや もう六十五年も走ってきたの
まだ走りつづけるの
がたぴし がたぴし ぶるんぶるん
騒音まみれで走っていく。
「おおい ぼくの思い出もはこんでくれえ」

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