二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

とっぷりと暮れてきた 2023-01(6月20日)

2023年06月20日 | 俳句・短歌・詩集
気がついたとき
ぼくは地球のお客さんだった。
まわりにいるのはすべて先客。
生きものたちが押し合いへし合いしている
その真ん中あたりに生まれてきた。

ほんの数年に過ぎないとしても
先輩だらけだったあのころを思い出すのはむずかしい。
まわりじゅうがなにやら合唱しているようで
万物がオワンオワン反響していた
・・・ような気がする。

生きものたちはやるべきことをちゃんと心得ていてね。
行き先がわからなくて途方に暮れたり
戸惑ったり 不安がったりしているやつはいなかったな。
ぼく以外は。
“意識のめばえ”なんて

そんなものは
新しく誕生した人間だけのものだろう。
遠くからやってきたもの
これから出発していくものたちが空港のように雑踏していた。
空港はいたるところにあった。

いつのまにかとっぷりと日が暮れてきたな
あの回り角もこの回り角も。
遊んでいたわずかばかりの子どもたちは姿を消した。
あいかわらず元気なのはスズメやムクドリばかり。
なにもかもがいつのまにやら片付いて

片付いてしまって
今日のぼくの思い出もガランとしている。
虚しいとか淋しいとかいたって仕方ない。
本来そういうものだから。
カラになった漬物樽みたいなものだろう。

生きてきてできた傷口が
その大部分はありふれた擦過傷ではあるけれど
うなだれた花のように匂っている。
まだ部分的にあざやかな彩りが
今日の微風にゆれている。

ほら きみの背中あたりでね。



※ずいぶんあいだが開いてしまったけど、今年最初に完成した詩(ポエム)です。

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