のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

塩谷 10

2009-08-01 | 小説 忍路(おしょろ)
ここから塩谷の海岸がよく見渡せた。それは伊藤整が涙にくれて漂う海であり、かつては彼の青春が浜風を一杯に受けて力強く帆走した海であった。西には忍路のある岬があり、その向こうにはローソクの炎のように突き上がった余市の岬が重なるように見えていた。そしてさらにその向こうには積丹半島がかすみ、目を転ずれば東に小樽へ続く海岸が弓のように伸びている。その石狩湾の外は日本海なのだった。  伊藤整は若く多情な . . . 本文を読む
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