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犬と私と羊...合言葉は「自然体」

欧介はどうやって災害救助犬のはしくれになったか?

2011年04月11日 | 救助犬

欧介兄さんは、8歳の時から災害救助犬の適性試験を受けて、

瓦礫部門と広域部門の両方に合格しています。

だからと言って、救助犬として活躍できるかと言うと、

ココからさらに何段階の試験を受けないと、最前線で働く犬にはなれません。

欧介兄さんの年齢を考えると、今既に10歳なので、

もうステップアップは、考えたくても考えることができません。

今回のような大きな地震が起こると、災害救助犬の育成の重要性をさらに感じます。

また、これから災害救助犬を育ててみようと思った方も多いのではないでしょうか。

では、欧介兄さんがほんの少しですが、挑戦した救助犬への道をお話しましょう。

 

前回の記事でもお話したように、犬と何かチャレンジしていくために

何よりも必要なものは、オビディエンス(訓練)です。

訓練は、形だけ整えるような訓練じゃなくて、犬の強い集中力を育てるための

訓練をしなければいけません。

欧介兄さんは、おやつに対して、物凄い執着心がありました。

ボールが好きな子は、このボールに強い執着を持たせるようにしていきます。

強い執着は、そのものに対して強い集中を作ります。

その集中力を養うためにおやつやボールに執着させるのです。

(執着しすぎて、唸ったり攻撃したりする問題は、また違うお話なので、ここでは触れません)

 

災害救助犬の場合は、生きている人を探すと言うのが目的です。

まずは、吠えて、生きている人がいることをハンドラーに知らせることを教えます。

「吠えろ」などのコマンドで犬が吠えることができるようにします。

よく吠える犬なら、吠えた時に、普通なら叱るところを、めちゃくちゃ褒めてご褒美~。

その時に「吠えろ」などのコマンドをかぶせていくと、指示で吠えるようになります。

吠えない犬の場合、先ほどのおやつやボールに対する執着を利用して、

興奮させ、「ウゥ・・」と、なんとか声を出させます。

それを根気強く褒めていくと声が出るようになります。

犬は吠えることでより興奮をしますので、救助犬のような強い集中を必要とする作業の場合、

人を見つけた時に吠えることで、その集中から一気に解放される意味もあると思います。

どうしても吠えることができない犬の場合は、また違った告知の方法もあるので、

諦める必要はありません。

 

指示で吠えることができるようになったら、人(遭難者)が、おやつやボールを見せながら、

しゃがむなどの低い姿勢をとり、ハンドラーは犬をあおります。

人(遭難者)のところに犬が行きたい!行ったらおやつがもらえるボールで遊んでもらえると

強く思わせることで、救助犬への1歩が始まります。

この時、人(遭難者)が低い姿勢をとるのは、瓦礫などの狭いところに閉じ込められている

場合を想定しています。

犬は、閉じ込められている人や、自分を探して欲しいと願っている人の

匂いを嗅ぎわけるようになっていきます。

捜索現場では、多くの人が遭難者のために活動します。

その人たちに執着しないように、犬を作っていくわけです。

この部分は、犬の嗅覚の素晴らしい能力の一つですね。

 

そして、人(遭難者)を探したいという欲求を最大限に引き出しておく必要があります。

それは、先日蒼太のアジリティーの記事で書いたように、

1点を貫いてしまうと、弾けてしまうような爆発的な集中を作ると言うことなんです。

天才と何とかは紙一重と言うやつですね。

薄紙一枚を残して、最大限に興奮させて集中させる。

救助犬は、過酷な現場で働かなくてはいけませんので、

メンタルな部分でも強くなければいけません。

「探したい!!」という強いモチベーションを作っておかないと、

長時間の作業では身体も、精神も、もたないのです。

欧介の場合、この時点で、「探せ!」という言葉を聞いただけで、

「ひぃぃ~~~」と声をあげ、武者ぶるいをして、気が狂ったように暴れて、

人(遭難者)のもとへ行こうとしていました。

ハンドラー(o-mama)は、欧介の首輪を掴んで必死に「探せだよ~」と、じらします。

おやつを持っている人(遭難者)がおやつを見せながらしゃがむので、

欧介はすっ飛んで駆け寄ります。

そこで、「吠えろ」と言ってもらい、吠えたらご褒美~を繰り返します。

 

欲だしは、このように最大限に行わなければなりません。

救助犬の場合、ハンドラーの指示のもと探すのはもちろんですが、

犬の自立心も必要になってきます。

なぜなら、ハンドラーの指示のもと、何百メートルも離れた場所を探すことも要求されます。

ハンドラーに依存している犬は、離れたがりません。

自立は、強い欲求とオビディエンスによって養われます。

救助犬の試験に服従作業(オビディエンス)や熟練作業(梯子渡りや障害飛越など)

があるのは、ただ単に言うことが聞けるというだけじゃなくて、

犬の自立を促す、自立を育てるという意味もあるんですよ。

だから、オビディエンス一つとっても、モチベーションへの強い集中と興奮が鍵となるんです。

 

いよいよ、人が瓦礫の中に隠れていくのですが、今日はここまで。

またあした。