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温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

岳の湯温泉 豊礼の宿

2011年06月02日 | 熊本県

雨男の私は熊本へ訪れると必ずといって良いほど雨が降る。しかも毎回雨脚の強い悪天に見舞われる。わいた温泉郷には二度ほど行きましたが、いずれも大雨でした。日頃の行いを省みてもそれほど悪いことしてないし、する度胸も無いし…。
ま、愚痴はともかく、良質な温泉が多く湧くわいた温泉郷の中でも美しい濁り湯に入れる施設があると聞いたので、レンタカーを走らせて岳の湯温泉の「豊礼の宿」へ日帰り入浴をお願いすることにしました。

 
湧蓋山西麓の見晴らしが良い高台に立地するこちらの施設は敷地が広く、駐車場スペースにも余裕があります。敷地内には温泉蒸気の噴気を使った「地獄蒸し器」がありました。地熱資源が豊かな場所ならではですね。宿泊客や入浴客なら無料で使えるんだそうでして、食材は併設された売店でも購入できます。持ち込みも可能。


宿泊棟の奥に温泉棟があるので、受付で料金を払ったらそこへ歩いて向かいます。こちらには貸切の家族風呂と大露天風呂の2種類を利用できますが、私は1人旅ですから大露天風呂に入りました。
熊本や大分の温泉には家族風呂をたくさん用意している施設が多いですね。羨ましいなぁ。

 
旅館というより民宿のような狭い脱衣所を抜けてお風呂へ出ると、そこには天晴な展望と綺麗に濁ったお風呂が待っていました。高台の上に設けられた露天風呂は視界をさえぎるものが全く無いので、特に湧蓋山方向の眺望が素晴らしい。雄大な自然の景色を眺めながら入る露天風呂の爽快さは、もはや言を待ちません。しかもそのお湯が青白色の濁り湯なんですから、余計に興奮してしまいます。屋根付きなので雨が降っていても大丈夫。

こちらのお湯の色についてはホワイトブルーやコバルトブルーなどの表現が用いられており、それに対して実際に利用したお客さんからは「そんな色には見えなかった」という疑問の声が某クチコミサイトに寄せられていますが、硫黄のお湯が濁って見えるということは硫黄コロイド(微粒子)が太陽光を散乱させることによって起こる現象でして、すべての波長の光を散乱(ミー散乱)すれば乳白色に、湯中のケイ酸等によって波長の短い青い光だけを散乱(レイリー散乱)すれば青っぽく見えるわけですが、温泉のコンディションや太陽光の状況(つまり天候)によって可視光線の散乱状態が異なるのは当然であり、それぞれに微妙な変化があるだけで見え方にも大きな違いが出てくるのですから、常にホワイトブルーやコバルトブルーに濁っているわけではないのであります。従って「コバルトブルーじゃないぞ!嘘つき!」だなんて文句を垂れるのは野暮な話です。別に施設側の方を持つわけじゃありませんが、期待していた色が見られなくても、仕方ない、の一言で諦めてニコニコして過ごした方が、きっと幸せになれると思います。
で、私が実際に見た色は、若干灰色混じりの青白色でした。晴れていたらもっと明るい色だったと思いますが、雨雲が低くたちこめている空模様でしたので、仕方ありません。透明度は50cmほどでしょうか。弱めながら硫黄臭が漂い、まろやかな弱めの塩味が感じられました。いかにも食塩泉的なすべすべした気持ち良い浴感です。
分析表によると源泉温度は95.7℃とほとんど熱湯なのですが、加水しているのか、将又投入量を絞っているためか、全体的にはぬるめの湯加減でした。

全体的に簡素な感じは否めませんが、500円で宏大な景色を眺められる白濁した露天風呂に入れるのですから、この上なく素敵な施設だと思います。こうした温泉を当たり前のように擁している熊本県って、本当に素晴らしいところですね。


ナトリウム-塩化物温泉 95.7℃ pH8.53 溶存物質2805mg/kg 成分総計2805mg/kg

熊本県阿蘇郡小国町西里2917
0967-46-5525
ホームページ

大露天風呂
8:00~20:00・無休・500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

檜露天風呂
8:00~20:00・無休・1500円/1時間
全5室

家族露天風呂
24時間・1200円/1時間・全6室

家族風呂
24時間・800円/1時間・全6室


私の好み:★★★

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山川温泉 山川部落温泉入浴場(改装前)

2011年06月02日 | 熊本県
今回取り上げる「山川温泉入浴場」は昨年(2010年)に内部が改装されました。ここでは改装前の様子を紹介しますので、内部構造などは現状と異なります。ご了承ください。


湧蓋(わいた)山の周辺にはたくさんの温泉が湧いていますが、そのひとつである山川温泉に渋い雰囲気の共同浴場があると聞いたので、行ってみることにしました。集落の道を歩いていればわかるだろうと高を括って、事前に場所を調べずに出かけてしまったのですが、予想に反してどこにあるのかわからず迷ってしまい途方に暮れていると、道沿いに湯気抜きが設けられた古びた屋根を発見。よく見ると「共同湯入湯料大人200円」と書かれた小さな札が立っているではありませんか。なんだ、ここだったのか。何度も目の前を右往左往して通り過ぎながらちっとも気づきませんでした。私の修行もまだまだです…。

 
通りから取り付け坂路を下ると、その建物には「山川温泉入浴場」と書かれた看板が掲示されていました。ここで間違いありませんね。外観からして滅茶苦茶渋い。これは期待大です。看板には「入浴時間午後10時まで」の下に「民の安眠に御協力下さい」と注意喚起しているのが、ちょっとホノボノしていて微笑ましいところですね。


この施設は常時無人。ドアを開けたらいきなり浴室が目に入ってきます。脱衣所と浴室が一体型になっている、昔ながらの共同浴場なんですね。先に入っていた地元のお爺さんにご挨拶をしてからお湯に入らせていただきました。ここに限らず、九州の方は皆さん温かく接してくださるので、旅の思い出がより一層心に残ります。
男女別の浴室には浴槽がひとつずつ、確かカランは無かったはずです。無色透明ながらごく僅かに白く靄っているように見えます。底には灰色の綿埃のような湯の花が沈殿しており、お湯に動きがあるとボワッと舞い上がります。


湯口にコップがあるので飲んでみると、弱い硫黄味と硫黄臭が感じられます。湯口のお湯は一旦小さな源泉溜りに落とされた後、浴槽に注がれていました。源泉温度はやや熱めなので、こうすることによって湯温を調整しているのかもしれません。この源泉溜りにも湯の花沈殿がたっぷり。


上画像は脱衣スペース上に掲げられている注意書きなのですが、その下をよく見ると「入浴料金箱」という語句ともに矢印が描かれていますね。ではその料金箱はどこなのかと言えば、ちゃんと画像に写っているのですよ。画像左下に「小供(ママ)100円」と書かれており、その右側の塗装が剥がれて茶色っぽくなっていますが、その部分が現金投入口なのです。つまり壁埋込み型なんですね。

古くて渋い素朴な湯屋で、硫黄感のある掛け流しのお湯に浸かる幸せは、温泉ファンの方ならどなたでも共有していただけるものと思います。素晴らしい湯屋です。
なお冒頭で申し上げたように、この浴場はつい最近改装されたんだそうです。脱衣所と浴場が分割され、浴槽も石板タイル貼りの綺麗なものに造り替えられて、源泉溜りは取り払われたようです。でも渋い外観はほとんどそのまんま。お湯も昔のまま源泉掛け流しですから、新しくなったとはいえ、温泉ファンを魅了し続けることに違いはなさそうです。


単純硫化水素泉

熊本県阿蘇郡小国町大字北里字山川  地図
駐車場は北里川を渡ってすぐのところにある(左岸側の)公民館前です。

入浴可能 不明~22:00
200円
備品類なし

私の好み:★★★
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ホタルの里温泉

2011年06月02日 | 熊本県
山川温泉へ向かう途中に見つけた温泉浴場です。隠れ鉄道ファンである私は1984年に廃止された国鉄宮原線の線路跡に残っている美しいアーチ橋を追いかけていたのですが、その途中にたまたまこの温泉を見つけてしまったので、廃線のトレースと同時に温泉好きの血も騒いでしまい、ついでに入湯した次第です。


まずはそのアーチ橋をご覧あれ。これは堂山橋梁。現役時代は湧蓋山を背景にして橋の上をノンビリ走るディーゼル列車の姿が写せる、沿線きっての撮影ポイントだったところ。橋を潜った向こう側が山川温泉です。風光明媚な宮原線が、もし廃止されずJR九州か第三セクターに引き継がれていたら、今頃は観光トロッコ列車が運行されていたかもしれませんね。

 
こちらは汐井川橋梁。橋が跨いでいる川の名前は塩井川ですが、橋名の表記はなぜか汐井川になっています。堂山橋梁や汐井川橋梁など廃線跡に残る7つの竹筋コンクリートアーチ橋は国の登録有形文化財に登録されています。なお、この塩井川はホタルの名所らしく、「くまもとホタルの里100選」に選ばれているんだとか。温泉の名称もこのホタルに由来しているわけですね。


堂山橋梁のすぐ手前に一軒ポツンと建っているのが「ホタルの里温泉」。数年前に発生した水害で湯屋が破壊されてしまいましたが、4~5年前に再建されたんだそうです。こちらの温泉は地元の組合の方によって運営されています。


湯屋に隣接して公民館があるのですが、なんとこの公民館では料金を支払えば休憩ができるほか、宿泊もできちゃうそうです(休憩は1人800円、宿泊は1人2500円、いずれも入浴料込)


玄関に入ると受付らしきものはあるものの無人状態。料金箱にお金を投入して中へ。
再オープンしてからまだ数年しか経っていないこともあるんでしょうが、お手入れがきっちりしており、室内はとっても綺麗です。木材の質感を生かした造りなので、こじんまりとした室内ながらも圧迫感が無く、むしろぬくもりすら感じられます。

 
男女別の内湯がひとつだけのとってもシンプルなお風呂。浴室に入った途端、硫黄の匂いが香ってきました。浴槽はコンクリ造で洗い場は石板貼り。カランは3基設置されており、出てくるお湯は源泉使用。硫黄を含むお湯であるため、カランの金具は黒く硫化していました。
湯口からふんだんに源泉が注がれ、浴槽縁の切り欠けから排湯されているのですが、その量が多いために排水溝は溢れ出んばかりの状態、あたかも川の流れのようでした。お湯は無色透明、湯口に置かれたコップで口にしてみると、はじめほんのりと石膏的な甘さが顕れ、続いて硫黄的なタマゴ味、遅れて焦げたような苦みが順々に舌に感じられました。弱めのスベスベ感と硫酸塩泉的なひっかかりが混在したような浴感です。
お湯自体は透明ですが、析出した硫黄分によって湯口は真白く覆われ、浴槽の底も沈殿した粉状の湯の花によって薄っすら白く染まっています。また湯中にも白い湯の花がちらほら舞っていました。浴室内にはあまり長く風呂に入るなという旨の注意書きが掲示されていましたが、これはおそらく硫化水素中毒を防ぐための喚起なのでしょう。


館内に掲示されている「分析表」には泉質名として「含硫黄-カルシウム・ナトリウム-(硫化水素型)」と表記されていました。あれれ? 陰イオン(「○○塩」みたいな名称)が漏れてるぞ。具体的な数値の表記も無いので明確なことは言えませんが、体感からしておそらく「含硫黄-カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉(硫化水素型)」だと思います。

偶然見つけたので特に期待もせずに立ち寄ってみたのですが、川沿いで周囲は水田という実に静かで長閑な環境の中、共同浴場らしく素朴な風情でありながら綺麗な側面も兼ね備え、硫黄感たっぷりの新鮮なお湯が大量に掛け流されているお風呂に入れたので、思いがけない大収穫を得られてとっても幸せ、満足でした。丁寧に管理なさっている地元の方に心から感謝。再訪必至です。


含硫黄-カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉(硫化水素型) 44.2℃

熊本県阿蘇郡小国町北里字天神平1534-1  地図

8:00~22:00
300円
備品類なし

私の好み:★★★

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