温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

月光温泉 月光温泉大浴場

2011年07月03日 | 福島県
郡山郊外の、温泉マニアにはつとに有名な温泉銭湯。目の前にはいかにも昭和の大規模健康ランドという佇まいの「月光温泉クアハイム」があって、一般客にはそちらの方がはるかに利用しやすく、実際に私もクアハイムを利用したことがあるのですが、いまいちお湯の質感が伝わって来ず、どうしたものかと調べているうちに、道路向かい側の「月光温泉大浴場」の方がお湯が良いという温泉ファンのレポートが続々出てきたので、郡山に所用があった某日、行ってみることにしました。


大きな建物の「クアハイム」とは対照的に、あたかも場末のソー○ランドのような、ちょっと近寄りがたい怪しげな外観。多くの温泉ファンが既に足を踏み入れているとはいえ、実物を目の前にすると、どうしても及び腰になってしまいました。でも入ってみなきゃお湯を体験できない…。意を決して中に入ると、受付カウンターにはアンニュイな雰囲気のおばちゃんが座っており、上述の先入観もあって、私はこのおばちゃんが遣り手婆に見えて仕方ありませんでしたが、料金をカウンターに置くと「はい、ごゆっくり」と温泉施設らしい言葉で対応してくれたので、ここでようやく安心することができました。「御指名は?」なんて言われずに済みましたよ(なんてね…)
狭い脱衣所には、粗大ごみ置き場から拾ってきたようなボロボロのロッカーが置かれており、外観のみならず、内部も相当マニア受けする雰囲気でした。


男女別の浴室には内湯がひとつずつ。私の先入観の問題ですが、この浴室で使われているタイルの色使いも、なんだか吉原とか川崎堀之内の安い店っぽくないですか? 私の目が穢れているだけでしょうか。
洗い場にはカランが5組用意されており、お湯は源泉が出てきます。シャワーは壁に直付けしているタイプで、シャワーヘッドがやや大きめ。5組とはいえ、その間隔がとっても狭いため、一度に5人は利用できず、せいぜい3人が限界かと思われます。

 
いままで散々ひどいことを書いてきましたが、一転して絶賛したくなるのが湯船の様子。湯口は噴き出る大量のお湯が迸っており、まるで洪水のようにザブザブとオーバーフローしていきます。惚れ惚れする溢れ出しは圧巻です。怪しい外観や狭くて使いづらい脱衣所のことは全て水に流したくなります。
無色透明で、薄い塩味を帯び、弱い臭素臭に油のような匂いを混ぜたような臭覚があります。湯温が熱いのであまり長湯できませんが、ツルスベ浴感が強くて非常に肌触りがよく、細かな気泡も肌にびっしり付着するので、のぼせてしまうのを承知で、何度もお湯に入りたくなりました。かなり後を引く、素晴らしいお湯で、温泉ファンが絶賛するのも頷けます。

完全に茹でダコ状態になった私は身の危険を感じてお湯からあがり、狭い脱衣所で身を翻して他のお客さんをかわしながら着替えたのですが、その時に常連さんが明らかな他所者である私に「どちらからいらしたんですか?」と声を掛けてきたので、そこからいろいろとお喋りへと発展。そのおじさん曰く「普通の人ならあっち(クアハイム)の方が良いに決まってるけど、一度こっちのお湯に入っちゃったら、もうあっちには行けないよ」とのこと。全くその通りだと思います。同じ源泉のはずながら、湯使いで質感は全然違ってしまうものなんですね。とんねるずの「きたなトラン」の温泉版と言っても過言ではないこの浴場。いろんな意味で、温泉ファンなら必ず入っておくべき一湯だと思います。


月光温泉あさか野泉
ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉 48.0℃ pH9.0 蒸発残留物1320mg/kg 成分総計1381mg/kg

JR郡山駅から福島交通バス・向陽台中央行で「笹川変電所」下車、徒歩1分
福島県郡山市安積町笹川字四角坦62-1  地図
024-945-9882

5:00~24:00
350円
石鹸以外備品類なし

私の好み:★★★
コメント (2)
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幕川温泉 吉倉屋旅館

2011年07月03日 | 福島県

奥土湯温泉郷の中では最も秘湯感がある幕川温泉。なるほど、車一台しか通れない崖っぷちの一本道を進んだ突き当りに2軒の宿しかない温泉ですから、Wikipediaには「土湯峠の県道から険しい崖沿いの道を数キロ走らなければたどり着けない」なんて脅かす文言が書かれていますが、実際には道はほとんど舗装されていますし、離合できるポイントも何ヶ所かありますから、そんなにビビならくてもたどり着けるかと思います。
さて幕川温泉は上述のように2軒(水戸屋と吉倉屋)しかないのですが、今回は吉倉屋さんで日帰り入浴をお願いすることにしました。白色基調であっさりとしたシンプルな外観の建物です。


帳場で料金を支払い、宿の方からお風呂についての案内を受けます。曰く、こちらでは内湯と露天がそれぞれ別のところにあるので、両方に入ることはできますが、一旦着替えてからの移動になるとのこと。帳場から左の廊下を進むと内湯、右側の廊下を歩くと露天です。まずは内湯へ。

 
シンプルながら広くて清潔感のある脱衣室。木板に墨書きされた昭和27年の分析表が掲示されています。年の割にはやけに新しいので、おそらく複製でしょうか(本物だったらゴメンなさい)。


古いけれどもよく手入れされていて心地よく使える浴室には、洗い場にはシャワー付き混合栓が3基用意され、浴槽の縁は太い木材が用いられています。縁の一か所が削られて切り欠けになっており、そこからお湯がふんだんにオーバーフローしています。オーバーフロー部分のタイルは茶色っぽく染まっていました。

 
岩の湯口からたっぷりと幕川1号泉のお湯が投入されており、その上には「飲んでくれ」と言わんばかりに柄杓が置かれていました。もちろん飲んじゃいますよ。無色透明のお湯からは軟式テニスボールのようなゴム匂いと味、そして石膏の匂いと味が感じられます。また、石膏の影響かギシギシとした浴感で、(例え方はあまり良くありませんが)消しゴムのカスみたいな色・形をした湯の華がたくさん浮遊しています。泉質名では単純泉となっていますが、陽イオンはカルシウムが33.8mg/kg(52.12mval%)、陰イオンは硫酸イオンが85.4mg/kg(56.69mval%)がそれぞれメインとなっている石膏泉型でして、しかも硫黄らしさもはっきり現れており、簡単には他の単純泉とひと括りにできない、なかなかしっかりとした知覚を有した良泉です。
なお、源泉が川のそばにあるため、大雨で増水すると源泉が水没して、内湯が使えなくなる時があるんだそうですので、一応ご参考までに。

 
さて次に露天へ行きましょう。内湯から一旦ロビー前を通って建物の反対側へ向かいます。露天は内湯と別の源泉を使っているので、源泉重視で湯巡りをなさっている方は、内湯と露天の両方に入らないと損ですよ。露天側の棟は増築(あるいは改装)された部分なのでしょうか、内湯側より内装が新しく、その上にお手入れがきちんとされているので、非常に清潔で明るく好印象です。

 
脱衣所の扉をあけると、いきなり屋外に出ちゃいます。内湯や洗い場のようなワンクッション的な設備はありません。階段を下りてお風呂へ。一応体を洗えるカランはありますが、1基しかなく、しかも水の蛇口にはホースがつながっているので、実質的には桶で浴槽のお湯を汲んで掛ける湯する程度しかできません。従いまして、吉倉屋さんでお風呂に入る場合には、まず体を洗うべく内湯へ行き、その後で露天を利用する、という順序を踏んだ方が入浴マナーとして相応しいようです。男湯と女湯とは石積みの壁で仕切られ、見上げるとログハウス調の屋根がかかっていました。旅館のお風呂は和風様式、というステレオタイプによって造られるお風呂には食傷気味でありますが、こうした和洋折衷的なログハウス形式は、個人的にはとっても大好きです。

 
さすが標高1300mに位置しているだけあって、風呂の上を吹き抜ける澄んだ風の心地良さを全身に受けると、下界には戻りたくなくなります。目の前に聳え立つ白樺の木も高原らしい涼しげな雰囲気を醸し出していました。浴槽はいわゆる典型的な岩風呂で、内湯同様にこちらもしっかり掛け流しで、その量はかなり豊富です。大きなお風呂で目の前には人工物が一切なく、自然あふれる環境の中で開放的な湯浴みが楽しめました。

 
露天で使われている源泉は幕川5号泉で、こちらは単純硫黄泉。無色透明で、内湯(1号泉)のような軟式テニスボール的な硫黄感や石膏感を有しており、双方の知覚とも1号泉よりもやや明瞭で、それに加えて弱いながらも鼻孔を刺激する硫化水素臭が漂い、湯口付近では僅かに口腔が収斂する酸味も感じられました。1号泉同様にギシギシ浴感ですが、知覚が1号泉より強めであったのと同じく、浴感も露天の方がギシギシ感が強かったような気がします。いずれにせよ、同じ幕川温泉でもかなり違う泉質であることには間違いありません。
そして特筆すべきは湯の花の多さ! 日によってはお湯が白濁するそうですが、私の訪問時は湯の花がゴッソリと沈殿しており、お湯は上澄みになっていましたが、それでも湯の花の量は半端じゃなく凄い! お湯に入ると全身に白い湯の花がまとわりつき、体中が真っ白になります。まるで溶きタマゴスープの中に入っちゃったような錯覚に陥りました。
湯の花の量から考えると、比較的少ない1号泉を洗い場のあるい内湯で使用し、湯の花が多い5号泉を露天にまわす、という使い分けは実に合理的だと思います。湯の花だらけのお湯で体を洗うと面倒なことになりそうですもんね。
 
知覚も明瞭だし湯の花も大量なのに、分析表では溶存物質109.3mg/kg・成分総計196.5mg/kgという嘘みたいな低い数値が記載されています。この数を信じれば相当薄い温泉のはずですが、実際にはかなり個性的なんですよね。温泉には数値だけでは測れない不思議なパワーや現象があるんでしょう。ちなみに分析表では「ガス発泡がある」とも書かれていましたが、その発泡とやらも確認できませんでした(私が鈍感なだけなのかもしれませんが)。もうなんだか分析表なんて糞喰らえと思ってしまうほど、強い印象を残してくれた特徴的な素晴らしいお湯です。おすすめ!


内湯:幕川1号泉
単純温泉 72.5℃ pH7.5 8.7L/min(自然湧出) 溶存物質428.2mg/kg 成分総計444.4mg/kg

露天:幕川5号泉
単純硫黄温泉(硫化水素型) 44.9℃ pH5.9 46L/min(掘削自噴) 溶存物質109.3mg/kg 成分総計196.5mg/kg
 
福島県福島市土湯温泉町鷲倉山1-10  地図
0242-64-3617
ホームページ

日帰り入浴10:00~15:30
冬季休業(11月中旬~5月連休前)
500円
ロッカー・ドライヤーは内湯と露天の両方にあり、シャンプー類は内湯のみ

私の好み:★★★
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