温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

田沢湖高原温泉 アルパこまくさ

2011年07月15日 | 秋田県
 
昨年(2010年)夏ですが、秋田駒ヶ岳へトレッキングした際、下山後の汗を流すべく「アルパこまくさ」のお風呂へ立ち寄ってきました。現在秋田駒ヶ岳の8合目駐車場までは一般車の乗り入れが禁止されており、アクセスは路線バスのみとなっています。このマイカー規制に伴う登山客への拠点施設として開設されたのが「アルパこまくさ」なんだそうです。


広い駐車場はもちろんのこと、館内には温泉施設や食堂が設けられているほか、火山防災ステーションや秋田駒ヶ岳のビジターセンター的な役割も果たしており、秋田駒ヶ岳の防災(噴火対策や砂防)に関する様々な展示が見学できます。

 

新しい施設だけあって、館内はとっても綺麗。
脱衣所(未撮影)はウッディな雰囲気で、明るく清潔感があり、使い勝手も良好。浴室の洗い場にはシャワー付き混合栓が11基用意されていました。天井が高くて開放的。梁や柱など浴室内でも木材を多用しており、とても温かな良い雰囲気です。
こちらで使用されている温泉水は、界隈の宿泊施設にも引かれている空吹の造成泉(噴気に水を当てて人工的に造った温泉)で、内湯では灰色を帯びた青白色に濁っています。季節により加水または加温で温度調整されており(循環・消毒なし)、熱すぎずぬるすぎない心地良い湯加減でした。

 
露天風呂は岩風呂とヒバ風呂の2種類があり、男女入れ替え制になっています。訪問した日の男湯は岩風呂でした。その名前の通り?、浴槽の傍には駒ヶ岳から運んできたと思われる多孔質の玄武岩が置かれており、湯口も玄武岩でできていました。
この露天風呂からの眺めが素晴らしい。高原からの眺望には視線を遮るものが全く無く、麓の田沢湖が明瞭に見晴らせました。しかも湯船に入っていながらも、その景色を楽しめるのです。眺望の良い露天風呂は全国各地にもありますが、湯船に体を沈めると視線も下がるので、大抵の場合はその瞬間に展望が楽しめなくなります。しかし、ここはお湯に入りながらちゃんと景色も楽しめるので、そういった点で意外と珍しい貴重なお風呂だと思います。内湯では灰色掛かって見えたお湯も、露天では外の光の影響か、青みを帯びた綺麗な乳白色に濁っていました。おそらくこの手のお湯は放置しておいたらどんどん濁りが沈殿していき、透明な上澄みのお湯が現れるでしょうが、お客さんの出入りが多いのでお湯は沈殿している暇がなく、訪問時はひたすら白濁していました。ツンと鼻を突く硫化水素臭、そして軟式テニスボール的な硫黄味+苦味+渋味が感じられます。

高原の風に吹かれながら絶景を眺めていると、いつまでも露天風呂に入っていたくなりました。しかも、実質的には公営と表現しても差し支えないような第三セクターの運営にもかかわらず、お湯は造成泉の共同源泉ながら、循環・消毒されていません。えてしてこの手の公営の入浴施設はお湯の質的にハズレの場合が多いのですが、お湯良し、施設良し、景色良し、と三拍子が揃っており、その(良い意味での)意外性に驚かされました。ちょっと奥へ進めば人気の「秘湯」(人気の秘湯って言葉として矛盾がありますが…)である乳頭温泉郷が控えているので、わざわざ遠方から来てこのお風呂に入ろうという方は少ないかと思いますが、もし付近まで来たら立ち寄ってみてもいいかと思います。特に駒ヶ岳の下山後の入浴には最適です。



空吹1号・2号・4号混合泉
単純硫黄泉(硫化水素型) 59.1℃ pH不明(表示無し) 溶存物質(概算)316.2mg/kg 成分総計(概算)473.05mg/kg

(↑サムネイルをクリックで拡大)
溶存物質と成分総計の数値は私が分析表の数値をもとに単純計算したものです。館内掲示の分析表には「溶存物質4066.1mg/kg 成分総計4066.1mg/kg」と表記されていますが、これは明らかに誤記でしょう。

秋田県仙北市田沢湖生保内字駒ヶ岳2-16  地図
0187-46-2101
ホームページ

9:00~19:00(受付は18:00まで)
5・9・10月:第3木曜定休、6~8月:無休、11~4月:毎週木曜定休(年末年始は無休)
※休館日以外の木曜と、毎週金曜は18:00まで(受付17:00まで)
500円
100円リターン式ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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海老鶴温泉

2011年07月15日 | 山形県
 
最上川に架かる河北橋から右岸の土手の上を数百メートル進んだ、ちょうど土手の真下にある一軒の温泉入浴施設。SLを模造した構造物が目印です。
画像では見切れていますが、右隣に建つアクリル波板屋根の小屋が廃墟寸前のボロボロで、醸し出している古さや雰囲気が、温泉もその小屋もどことなく似ているので、土手の上から俯瞰で見たときに温泉は営業しているのかちょっと不安でしたが、玄関にはちゃんと「営業中」の札が提げられていました。

 
目の前を最上川が流れ、周囲には田んぼや果樹園が広がり、西を向くと月山が、東を向けば蔵王連峰がそれぞれ綺麗な姿で聳えている、実に長閑で美しい風景が広がっている場所です。

 
玄関を入るとおばちゃんが笑顔で対応してくれました。直接お金を支払います。内部は古民家っぽい小さな食堂のような造りで、元々はそのような使われ方をされていたのでしょうが、今はちょっと雑然としており、あまり寛げるような雰囲気ではなく、あくまで湯上がりの休憩で腰かけるだけに使う空間だと思った方がよいかも。
脱衣所はごくシンプル。壁には川柳が張られていました。いわゆるサラリーマン川柳的なものなんでしょうか、「少子化を 食い止めたいが 相手なし」「うしろ髪 ひかれるほどの 髪は無し」「昔から 女性天皇 我が家では」などなど、どこかで聞いたことのあるような…。壁紙には落書きもたくさん。けっこう古い施設なんですね。

 
浴室は男女別の内湯がひとつずつ。浴室自体はそんなに大きくはありません。洗い場のカランはシャワー付き混合栓が5基、カランから出てくるお湯は源泉です。浴槽は7~8人サイズで、縁からはお湯がしっかりオーバーフローされていました。脱衣所ないの表示によれば、加水加温循環消毒は無しとのこと。
浴槽近くには外へ出られそうなアルミのドアがありますが、鍵がかかっていました。


お湯はごく薄い麦茶みたいな色で透明です。湯口にコップが置かれているので飲んでみると、弱い塩味+重曹味+ほろ苦味、モール臭+インクのような油臭が感じられました。お湯に体を沈めると、湯口付近では細かな気泡が付着します。食塩泉と重曹泉の特長がよく顕れているツルスベ感の強い浴感で、湯上がりの保温力も強く、なかなか汗が引きません。見た目、味や匂い、浴感などなど、泉質的には青森県津軽平野に良く見られる温泉に似ている気がします。館内の分析表によれば、使用している源泉は2種類(1号と2号)あるようですが、どのような使い分けをしているのか、あるいは混合しているのかはわかりません。

風呂から上がり、着替えて帰ろうとすると、この施設を守るおばちゃんが「湯上がりにどうぞ」とお茶とを出して下さいました。おばちゃん曰く、この温泉はおばちゃんのお父様が、身体障害を抱えるご自身の体の不自由を何とかして克服しようと、昭和58年に掘り当てたもので、お父様の願いが神様に届いたのか、自分が掘り当てた温泉の効果は覿面、体はすっかり回復し、達者な者が世間に甘えてはならないと考えて、何と今まで受給していた年金を返納してしまったんだそうです。意志と克己心の強さには驚かされます。温泉のパワーを改めて思い知らされる話でした。


海老鶴1号源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 46.3℃ pH7.8 溶存物質1541mg/kg 成分総計1557mg/kg
ナトリウムイオン460.4mg/kg(89.70mval%)、塩素イオン616.5mg/kg(75.61mval%)・炭酸水素イオン334.3mg/kg(23.82mval%)

海老鶴2号源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 49.4℃ pH7.9 溶存物質1100mg/kg 成分総計1112mg/kg
ナトリウムイオン324.4mg/kg(94.26mval%)、塩素イオン380.4mg/kg(69.27mval%)・炭酸水素イオン284.3mg/kg(30.08mval%)

山形県西村山郡河北町谷地海老鶴164  地図
0237-72-5151

6:00~20:00
250円
石鹸のみ備え付けあり、他は販売

私の好み:★★★
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