那須岳登山記のその3で軽く触れましたが、下山路として選んだ高雄口登山道の途中には膳棚と呼ばれる噴気帯があり、そこには温泉ファンから「膳棚の湯」と称されている野湯が湧いているので、興味津津、探してみることにしました。
飯盛温泉跡から登山道を約10分ほど下ると、やがて硫黄の匂いが漂い始め、そして西斜面にガレが広がります。日の出平から南月山までの稜線が綺麗に望める見晴らしの良いところで、高雄口登山道は鬱蒼とした樹林帯ばかりを貫きますから、道中では数少ないビューポイントだと思います。
噴気帯とはいえ、茶臼岳の無限地獄みたいに勢いよく白煙を上げているわけではなく、礫が部分的に硫黄で白っぽくなっていたり、なんとなくボンヤリと硫黄の匂いを発している程度で、いまいち元気がありません。
ガレ場自体は結構な急斜面で、足を滑らせたら谷底へ真っ逆さまに落ちていきそう。階段状に傾斜した地形が食器類を載せておく棚に似ていることから、膳棚と名付けられたんだそうですが、なるほど、急斜面には階段みたいなステップ状のポイントがところどころにあるので、そんな棚っぽい場所を足がかりにしながら斜面を這い下りました。斜面には部分的に黒いネットが被せられており、県によって斜面崩落の防止措置がとられていることがわかります。そのネット周辺は比較的足元がしっかりしているので歩きやすかったです。
ガレ場を一番下まで下ってゆくと、石垣の下に目的物を発見。噂に違わぬ真白なお湯が溜まっていました。湯溜まりのお湯は斜面下へと溢れ出て、その流路一帯は真白に染まっています。
ガレの下端という位置、そして湯溜まりの真上に石垣が積まれているため、登山道からは直接この湯溜まりを目視することはできないはず。急斜面を下りてきたからこそ出会える秘湯であります。
谷には雲がかかっちゃいましたが、仙境とでも表現すべき、なかなかの眺望です。晴れたら絶景が広がるんだそうな…。
自然に溜まっているのではなく、どなたかが人為的に石を組んでお湯をプールさせているようです。お湯自体は崖の穴から注がれてきますが、その上方では湧水が流れ落ちてきているため、おそらくこの水と温泉が途中でブレンドされてここへ注ぎこまれているかと思われます。
湯溜まりの大きさは直径1.5メートル前後で、一人がやっと入れる程度のとっても小さなもの。しかもかなり浅く、試しにスッポンポンになって入ってみましたが、臍下どころか、お尻や股間がようやく半分浸かる程度で、上半身まで裸になる必要がありませんでした。
問題は湯溜まりの大きさ・浅さのみならず、温度にも難があり、日によって違うのでしょうが、この日は29.6℃しかありませんでした(外気温は23.1℃)。小さいうえに思いっきりぬるいので、ちっとも湯浴みした気分になれません。でも真上の石垣を触ると結構温かかったので、噴気帯の地熱はしっかり高温で、源泉自体もそれなりの温度が確保されているものと思われます。つまりは水の混合量の問題でしょうか。
お湯自体は無色透明ですが、底に白い沈殿が溜まっており、ちょっとでもかき混ぜるとたちまち白濁します。たまごが腐ったような硫化水素臭を強く発し、卵黄味を濃くしたような硫黄味に強い苦みと渋みを帯びています。特に渋みが強烈で、いつまでも口腔内に残って、しばらく口の中が不快感に占拠されちゃいます。野湯なので分析表なんてありませんが、分析したらなかなか面白い数値が検出されそうです。
苦労して見つけたはいいものの、いまいちお湯に浸かった気分になれないまま、お尻を白く汚しただけで、あんまり苦労が報われないままこの膳棚の湯を後にし、再び急斜面をよじ登って登山道へと戻りました。
上述のような状況なので、温泉マニア以外には決してお勧めしませんが、野湯マニアの御仁は無駄な苦労を至極の喜びと感じる傾向にあるようですし、かく言う私もそんな人間の一人なので、もしまだこのお湯を未体験で興味がお有りでしたら、天気の良い日に冒険してみてはいかがでしょうか。景色や開放感は最高ですし、発見すること自体が面白いわけですから…。
野湯につき分析表無し
栃木県那須郡那須町 地図
野湯につき備品類なし
無料 随時入浴可
簡単な登山用具一式は必要。危険な場所なので気候条件など要注意。熊鈴あると良いかも。
私の好み:★★
飯盛温泉跡から登山道を約10分ほど下ると、やがて硫黄の匂いが漂い始め、そして西斜面にガレが広がります。日の出平から南月山までの稜線が綺麗に望める見晴らしの良いところで、高雄口登山道は鬱蒼とした樹林帯ばかりを貫きますから、道中では数少ないビューポイントだと思います。
噴気帯とはいえ、茶臼岳の無限地獄みたいに勢いよく白煙を上げているわけではなく、礫が部分的に硫黄で白っぽくなっていたり、なんとなくボンヤリと硫黄の匂いを発している程度で、いまいち元気がありません。
ガレ場自体は結構な急斜面で、足を滑らせたら谷底へ真っ逆さまに落ちていきそう。階段状に傾斜した地形が食器類を載せておく棚に似ていることから、膳棚と名付けられたんだそうですが、なるほど、急斜面には階段みたいなステップ状のポイントがところどころにあるので、そんな棚っぽい場所を足がかりにしながら斜面を這い下りました。斜面には部分的に黒いネットが被せられており、県によって斜面崩落の防止措置がとられていることがわかります。そのネット周辺は比較的足元がしっかりしているので歩きやすかったです。
ガレ場を一番下まで下ってゆくと、石垣の下に目的物を発見。噂に違わぬ真白なお湯が溜まっていました。湯溜まりのお湯は斜面下へと溢れ出て、その流路一帯は真白に染まっています。
ガレの下端という位置、そして湯溜まりの真上に石垣が積まれているため、登山道からは直接この湯溜まりを目視することはできないはず。急斜面を下りてきたからこそ出会える秘湯であります。
谷には雲がかかっちゃいましたが、仙境とでも表現すべき、なかなかの眺望です。晴れたら絶景が広がるんだそうな…。
自然に溜まっているのではなく、どなたかが人為的に石を組んでお湯をプールさせているようです。お湯自体は崖の穴から注がれてきますが、その上方では湧水が流れ落ちてきているため、おそらくこの水と温泉が途中でブレンドされてここへ注ぎこまれているかと思われます。
湯溜まりの大きさは直径1.5メートル前後で、一人がやっと入れる程度のとっても小さなもの。しかもかなり浅く、試しにスッポンポンになって入ってみましたが、臍下どころか、お尻や股間がようやく半分浸かる程度で、上半身まで裸になる必要がありませんでした。
問題は湯溜まりの大きさ・浅さのみならず、温度にも難があり、日によって違うのでしょうが、この日は29.6℃しかありませんでした(外気温は23.1℃)。小さいうえに思いっきりぬるいので、ちっとも湯浴みした気分になれません。でも真上の石垣を触ると結構温かかったので、噴気帯の地熱はしっかり高温で、源泉自体もそれなりの温度が確保されているものと思われます。つまりは水の混合量の問題でしょうか。
お湯自体は無色透明ですが、底に白い沈殿が溜まっており、ちょっとでもかき混ぜるとたちまち白濁します。たまごが腐ったような硫化水素臭を強く発し、卵黄味を濃くしたような硫黄味に強い苦みと渋みを帯びています。特に渋みが強烈で、いつまでも口腔内に残って、しばらく口の中が不快感に占拠されちゃいます。野湯なので分析表なんてありませんが、分析したらなかなか面白い数値が検出されそうです。
苦労して見つけたはいいものの、いまいちお湯に浸かった気分になれないまま、お尻を白く汚しただけで、あんまり苦労が報われないままこの膳棚の湯を後にし、再び急斜面をよじ登って登山道へと戻りました。
上述のような状況なので、温泉マニア以外には決してお勧めしませんが、野湯マニアの御仁は無駄な苦労を至極の喜びと感じる傾向にあるようですし、かく言う私もそんな人間の一人なので、もしまだこのお湯を未体験で興味がお有りでしたら、天気の良い日に冒険してみてはいかがでしょうか。景色や開放感は最高ですし、発見すること自体が面白いわけですから…。
野湯につき分析表無し
栃木県那須郡那須町 地図
楽なアクセス方法:那須ロープウェイの山頂駅から牛ヶ首への鉢巻きを進んで、牛ヶ首の手前で高雄口登山道へ。あとはひたすら下るだけ。私の場合、牛ヶ首から膳棚まで35分でした。帰路はそのまま登山道を下り、休暇村分岐でスキー場&弁天温泉方面へ折れ、弁天温泉バス停から東野交通の路線バス(1時間に1本)でロープウェイ山麓駅まで戻ればOK。逆に下から登っちゃうと勾配がきついので、距離の割には結構疲れるかと思います。詳細は那須岳登山記のその3を参照あれ
野湯につき備品類なし
無料 随時入浴可
簡単な登山用具一式は必要。危険な場所なので気候条件など要注意。熊鈴あると良いかも。
私の好み:★★