温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

大湯温泉 元旅館のお風呂

2011年07月13日 | 秋田県
※諸般の事情を鑑み、タイトルおよび本文を一部改編しました(2012年10月)。


元々は旅館だったこちらの建物には、知る人ぞ知る素晴らしい温泉の浴室があります。既に旅館業は廃業しており、現在は客商売を行っていないようですが、某日訪問して入浴をお願いしたところ、ありがたいことに受け入れてくださいました。一応玄関前には車が2台ほど停められるスペースがあり、私の訪問時は既に先客の車がとまっていました。お風呂は一つのみの貸切ですので、先客が出るのを待ってから利用させていただきました。


 
ご主人は実に丁寧に対応して下さり、わざわざ浴室まで案内してくださいました。いかにも和風旅館な造りの廊下を奥へと歩いていきます。わずか200円しか支払っていないのが申し訳なくなるほどの丁重な姿勢に、思わず恐縮してしまいました。客室内は今すぐにでも客が泊まれそうな状態です(もしかしたら昔からのお得意さんなら今でも泊まれるのかしら…)。



廊下にはこちらのお風呂の様子を描いた勝平得之の版画が額縁に収められていました。作者の当宿に対する愛情が伝わってくる絵ですね。


 
上述のように浴室はひとつだけの貸切です。男女のグループで利用する場合は混浴になります。
ブロックが積まれて浴室との壁を成している脱衣所には、裸電球がひとつぶらさがっているだけ、実に簡素です。おもいっきり鄙びたこの脱衣所からは、良質な温泉が持つ独特の雰囲気が漂っていました。


 
脱衣所の扉を開けると、そこにはまるで洞窟のような空間が広がっていました。階段を下っていきます。窓の外からは大湯川が流れる音が聞こえてきますが、もしかしたら階段の一番下はその川面より低い位置かもしれません。川とは反対側の岩の崖面には一面に苔や羊歯、そして蕗のような葉の植物が生え、あたかもジャングルのような緑の絨毯(壁紙?)を形成していました。名前の通りの、岩のお風呂。川岸の巨大な岩を穿って造ったような、とても神秘的な空気感に、早くも私は圧倒されてしまいました。



浴槽は2つあり、階段下りてすぐところに小さなものがひとつ(ここではAとします)、そしてその脇に大きな浴槽がひとつです(同じくBとします)。Aはやや熱めで、Bはちょうど良い湯加減。
Aは浴槽の隅っこからお湯が湧きでており、A浴槽を満たした後はBへと流れでてゆきます。このお湯はどこからか引いているわけではなく、まさにその穴から湧出しているものと思われます。つまり源泉の湧きたてのお湯です。


 
一方、大きな浴槽のBはAの単なる下流かといえば、全くそうではありません。なんとBの底面のあちこちからもお湯が湧き、頻繁に湯面をボコっと盛り上げているのです。そして両方のお湯が合わさり、大量にオーバーフローしているのです。つまりBは足元湧出なんです。これ以上ない新鮮なお湯です。



B浴槽の底で湧出の多い箇所をよく見ると、硫黄が白く綿状に付着しているのがわかります。こうした湧出点はひとつではなく、底(岩)の全体から湧いている感じです。



お湯がオーバーフローしてゆく先でもお湯が出ている箇所を発見。穴からお湯が出ていますが、その穴には川側の窓際から引かれているパイプが突っ込まれており、どうやら穴が源泉というわけではなくて、パイプからお湯が供給されているようです(ここではこのお湯をCとします)。結構ぬるいお湯で、浴槽に溜められること無くそのまま排水されており、何のためにわざわざパイプを引いてここで排湯しているのかは不明。

お湯は無色透明、薄いながらはっきりわかる塩味に弱いタマゴ味、そしてタマゴ臭が感じられます。タマゴ感(つまり硫黄感)はCが、塩味はAが、湧出量はBが、それぞれ大のようです。Bのお湯には茶色い湯の華がたくさん浮遊していました。
足元からの自然湧出なので、当然加水加温消毒循環なんて一切無いわけですが、特にBの湯加減は絶妙!! 永遠に浸かっていたくなりました。何にも手が加えられていないのに最高な湯加減になっているとは、まさに自然の恵み、奇跡であります。


含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉 源泉温度不明 pH7.8 溶存物質1.39g/kg 成分総計1.42g/kg
ナトリウムイオン363.5mg/kg(83.87mval%)、塩素イオン556.9mg/kg(81.36mval%)

秋田県鹿角市十和田大湯温泉某所

入浴可能時間:不明(常識の範囲内で)
200円
シャンプー類あり

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大湯温泉 いずみ荘

2011年07月13日 | 秋田県

秋田十和田の大湯温泉街ではかなり十和田湖側に寄った大湯大橋の橋詰に位置する施設。国道の橋の袂ですからとってもわかりやすい場所で、駐車場は道路を挟んだ反対側にあります。素泊まりや湯治もできるようですが、実質的には民営の共同浴場のような感じです。

 
玄関を入り、受付のおじさんに料金を支払って中へ。浴室内には石鹸やシャンプーなどの備えつけが無いので、必要ならばここで購入しましょう。
奥の階段を下りた先に浴室があります。大湯温泉はどの施設でも階段を下りた先に浴室があるケースが多いですね。

 
元々は民宿ですから、それ相応のサイズ(つまりそんなに大きくはない)の脱衣所&浴室。
浴槽はタイル貼りで縁は御影石でしょうか、5~6人サイズです。


窓を開けるとすぐ目の前を大湯川が流れていました。流れとの距離があまりに近く、ちょっとでも増水したらこのお風呂は浸水しちゃうんじゃないかと心配になるほど。この日は雨上がり直後だったため、川の水は濁り気味…。


洗い場にはシャワー付き混合栓が4基。外気温との関係もあるかと思いますが、浴室内の換気がいまいちで、湯気がこもってムワっとしていました。窓を開けてもあまり効果なし…。

 
浴槽上の窓側壁面の隅っこにはライオンの湯口がありましたが、現在は使われていないらしく、ライオンさんは何も吐き出さずに空しく口を開けっ放し。ではお湯はどこから供給されるのかといえば、同じく浴槽上壁面の一番手前側に設けられた蛇口から出ていました。源泉の蛇口は析出で白くなっており、なかなかいい感じの貫禄が出ています。なおお湯が出る蛇口は2本あり、一方は激熱、他方はぬるめでした。ぬるい方は加水しているのかも。

お湯は「荒瀬の湯」源泉。無色透明で小さな綿状の黒っぽい湯の華がチラホラ浮遊しています。微塩味、そして湯口で茹で卵の黄身のような味&匂いが僅かに感じられます。ナトリウムイオン405.0g/kg(83.31mval%)、塩化物イオン623.8mg/kg(82.63mval%)という成分構成からもわかるように、典型的な食塩泉であり、弱いツルスベ浴感も得られます。
同じく川沿いで当施設から国道を挟んだ反対側にある足元湧出の公衆浴場「荒瀬の湯」(入湯済ですが混雑していたため未撮影&未レポート)と同じ源泉を使用しているものと思われますが、源泉からある程度離れているからか、浴槽では「荒瀬の湯」みたいな激熱ではなく若干こなれた感じのお湯です。しかしながら、知覚関係は「荒瀬の湯」よりこちらの方がはっきり感じられました。

湯上りに分析表をデジカメで撮っていると、おじさんが「どうぞお掛けになって」と事務所のソファーに座るよう話しかけてきます。せっかくなのでお邪魔させていただいたところ、私が座った途端におじさんの温泉薀蓄トークが炸裂。チャンバラトリオの南方英二に似たおじさんは、いかにここのお湯が健康に良いかを延々と力説するのです。子曰く、ここの源泉は近所のリハビリ病院でも使われているだとか、温泉水を使って作った石鹸はアトピーに効果覿面だとか、とにかく色々。挙句の果てにはチラシを見せ「うちでは岩盤浴マシーンも販売しています。外国で効果は実証されているので間違いありません」「これはネットワークビジネスなんです」と、なにやら怪しげな文言も出てくる始末。会話中はネットワークビジネスという言葉を頻りに強調していたので、どうやら私にも岩盤浴マシーンのビジネスに乗らないかと勧誘していたようなのですが、やんわりとお断りしておきました。おじさんは決して悪気は無いはずで、純粋に健康に良いものだと信じているに違いなく、世の中には「信じるものは救われる」という表現や「プラシーボ効果」という科学的実例もあるので、もうこれ以上私は無駄口を叩かないでおきます。

おじさんのおはなしはともかく、鄙びた雰囲気で気軽に?お湯を楽しめる湯量豊富な大湯温泉らしい施設でした(ちっともフォローになっていませんね…)


荒瀬の湯
ナトリウム-塩化物温泉 60.5℃ pH8.6 溶存物質1447mg/kg 成分総計1447mg/kg

秋田県鹿角市十和田大湯字荒瀬43  地図
0186-37-3162
(おじさんはTwitterのアカウントを持っているらしいです)

6:30~22:00
200円
ドライヤー有料、その他備品類なし(帳場にて販売)

私の好み:★★




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする