温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

宝来温泉 芳晨温泉渡假村(そして宝来までのアクセス) (台湾南部)

2012年05月01日 | 台湾
台湾南部の茂林国家風景区には大小の温泉地が点在していますが、過疎地の山間部ゆえにほとんどの温泉地は公共交通機関で訪れるのはなかなか困難。その中でも最も訪問しやすい宝来温泉へ行ってきました。日本統治時代から当地に湧く温泉の存在は知られていたそうでして、山深い仙郷のようなロケーションを見た行政官が「まるで蓬莱のようだ」と感じたところから、蓬莱、そして宝来という地名になったんだそうです。


 
高雄駅近くの高雄客運のターミナルからスタート。ここは四重渓へ行ったときにもお世話になりました。本来は宝来まで直通バスが運行されているのですが、88水害で道路がズタズタになった影響なのか、数年前から甲仙を経由する一往復を除いて直行便が休止していたため、途中の六亀でマイクロバスに乗り継ぐことにしました。ということで、窓口でまず六亀までのチケットを購入。
※なお、この数日後に高雄~宝来の直通バスが復活したそうです。


 
高雄のターミナル9:20発の高雄客運の六亀行バス。鉄道の無い地域への交通機関なので、乗車率はまずまず。トイレや荷室もありました。途中高鉄左営駅へ立ち寄り、高速道路を走って旗山や美濃などを経由していきます。


 
車窓には南国らしい景色が続きます。3月だというのに、外は夏のような暑さ。
バスは荖濃渓に沿って右岸を遡ってゆきます。画像では分かりにくいのですが、河原が荒れており、川と道路(27号線)が接近するところでは、道路が損壊して仮設になっている場所もありました。88水害の爪痕がいまだに残っており、復旧工事が続けられているのです。


 
2時間20分もバスに揺られ続けて、11:40に六亀へ到着。


 
とても大型バスが乗り入れているとは思えないボロくて小さな六亀のターミナル。


 
屋根や窓の桟が撓み、塗装の色もくすんでおり、何十年も時計の針が止まっているのではないかと思ってしまう、懐かしい佇まいのバスターミナル建屋。作られた(模造の)レトロは各地にありますが、この建物のような現役のレトロは模造品より遥かに心を惹きつける魅力を放っています。この建物だけでも一見の価値あり。


 
六亀は細い路地ばかりの鄙びた山間集落。


 
六亀からはマイクロバスに乗り継ぎ、30分強で宝来へ。



宝来温泉のメインストリートである中正路。南部横貫公路のスタート地点となる場所ですから、観光客を目当てにした店舗が道沿いにズラリと並んでいました。


 
腹ごしらえをすべく、バス停近くの食堂へ。頭上でハエがブンブン飛び回るテーブルに着席し、まずはチャーハンで炭水化物を補給。


 
そして香檳鳥(ウズラの親戚)の炒め物で脂質やたんぱく質を吸収。鶏の頭がそのまんま入っている大雑把な豪快な炒め方。頭もそのまま食べちゃうんだぜぇ。ワイルドだろ~(すぎちゃん風)


 
この日は宿を決めていなかったので、まずは一晩過ごす宿を選ばなきゃいけません。週末じゃないからどこでも空いているし、料金設定も低めなんでしょうけど、この日は暑くて灼熱の日光が照りつけていたため、あまり方々へ探し歩くのが面倒になってしまい、バス通り沿いで目立っていた「芳晨温泉渡暇村(芳晨山荘)」へ飛び込んでみました。



フロントの人は日本語はできませんが英語が話せたので、英語でやりとりし、案の定余裕で部屋を確保。またこちらの宿のチェックインは本来15時からなんだそうですが、台湾は大抵の場合こうした時間に対して融通が利きますから、チェックイン時間から2時間も早い13時でも問題なく客室へ入ることができました。


 
私はいつものように一人旅ですが、早めに着いたことだし、旅の疲れが出始めていた頃だったので、ちょっと奮発してゆったりすべく、戸建のロッジを1棟まるごと借りちゃいました。奮発といっても2,000元(約6,000円)ですけどね。


 
客室内の様子。よく手入れされており、綺麗で良いお部屋。ホテルで一般的な備品やアメニティは一通り揃っています。冷房も使えますが、この日は窓を開けたら爽快な風が室内へ流れ込んできたので、文明の利器の力は借りず、天然の涼風で快適に過ごせました。


 
客室内のお風呂。バスタブのすぐ横に便器が設置されているので、せっかくのバスタイムも排泄という人間の摂理に向き合わなきゃいけないんのはちょっと残念なところ。浴槽自体は少人数向けの部屋にしては大きめの造りになっており(2人サイズ)、SPA的な雰囲気を醸し出したい意図なのか、お湯の水栓から湯舟に向かってスロープのような流路が設けられていました。


 
お湯を溜めるとこんな感じ。浴槽が大きいからか、スロープ上の蛇口と、湯舟の上のシャワーの両方を全開にしても、湯舟が満たされるまでは20分近く要しました。微かに白っぽく霞んでいるように見えるお湯はほぼ無色透明と表現して差し支えなく、更には無味無臭でもありました。いや、かすかに石膏や芒硝らしさがあったような気もします。いずれにせよ、掴みどころの無い特徴の少ないお湯でした。


 
ロッジの前には荖濃渓が。
88水害で大暴れしたため、現在も災害復旧工事中。かつては河原に野湯もあったらしいので、ちょこっと散策してみましたが、水害によって河原の状況が変わった上に、工事で河原がすっかり人工的になったため、野湯らしきものは全く見当たりませんでした。


 
こちらは露天温泉プール「大衆池」。河原を望む爽快なロケーションです。この時はシーズンオフだからか、あるいは平日だからか、ぬるいお湯が浅く溜まっているだけで、まったく利用できませんでした。夏は川や山を眺めながら気持ちよく水浴びできそうですね。プールサイドには「湯の屋」と彫られた岩が置かれています。



大衆池の傍には、なぜか巨大な金精が天に向かってそそり立っていました。角度的にはそんなに若くなさそうですけど…。


 
大衆地に隣接して個室風呂が並んでおり、宿泊者は無料で利用できます。フロントに利用したい旨を伝えると個室のカギが手渡されました。各部屋の名前には春夏秋冬や花の名前が冠されており、今回あてがわれたのは「夏の屋」というお部屋でした。なお利用時間制限は1時間。


 
個室に入ると、内部は川に向かって開放されている半露天のような構造になっており、一人では空間を持て余してしまう程のスペースが広がっていました。竹を多用したなかなか良い雰囲気の内装です。入口の横には詰所の係員が座るような机と椅子が置かれ、その傍に入浴前の洗体用のシャワーが取り付けられています(画像のシャワーカーテンの箇所)。


 
入室したら、まずは湯船にお湯を溜めましょう。お風呂は日本の岩風呂風。湯・水ともコックが岩の形状をした吐水口の下にあり、けだし湯口を目立たなくするためにこのような設計にしたのかと思われますが、手を岩の下に潜らせなくてはいけない上、水栓の開閉の度に水や湯で腕を濡らさなねばならず、お湯の加減がわからないうちは火傷しそうになったりして、コックの操作はかなり面倒でした。でもお湯の投入量は多く、あっという間に入浴できるまでの嵩まで溜まりました。お湯の温度は結構熱いので若干の加水は必要です。お湯は客室と同様に無色透明無味無臭で癖の無い優しい浴感でした。


 
川側にはテラスが設けられ、ガーデンテーブル&チェアが置かれています。周囲は緑の山、白い飛沫を上げる渓流、そして真っ青な空が広がるばかり。静かで自然豊かな環境です。湯船から上がってここに座り、ヨシズ越しに吹いてくる川の風でクールダウンすると、とっても爽快。


 
夕食はホテルのフロントにショップカードが置かれていた「姉妹快炒店」という名前の店へ行くことに。看板から察するに、このお店は布農(ブヌン)族料理のレストランのようです。終始ニコニコ笑顔を絶やさず、はきはきと働く奥さんが印象的。



注文したのは芹菜山豬肉(台湾セロリとボタン肉の炒め物)・梅汁炸豆腐(梅干しのあんかけを載せた揚げ豆腐)・竹筍湯(この時期が旬だったタケノコのスープ)の3品。いずれもとても美味でしたが、特に梅干しの味は日本で食べるものと殆ど変りなく、布農族と日本との間に共通する食文化があることを認識できました。



宿泊料金には朝食が含まれていたので、翌朝フロントに隣接しているカフェルームへ行ってみると、テーブルの上にはミルクコーヒーとサンドイッチがポツンと一組置かれていました。まさか…。フロントの兄ちゃんに「これって、もしかしたら?」と尋ねてみたら、兄ちゃんは「そうですよ、さぁどうぞ」と満面の笑みで答えるのです。朝食ってこれだけ? 兄ちゃんの笑顔に対して不釣り合いなほどショボい内容に戸惑いを隠せませんでしたが、これが御当地流なのかもしれません。客が少ないので、わざわざ厨房で朝食をつくるのは不合理ですしね。

ところで宝来温泉は88水害で源泉が壊滅的被害を受けてしまい、各宿泊施設への配湯がしばらく止まっていたそうですが、その後復旧作業によって配湯が徐々に再開されて今に至っているんだそうです。客室内や個室風呂には、温泉は源泉から引いている天然のものである旨が説明されていましたが、しかし宝来温泉の配湯は完全復旧までには及んでいないという情報もネット上で見受けられ、客室や個室風呂で入浴できた無色透明無味無臭の特徴のないお湯が、果たしてホンモノの温泉であるのか、正直疑念を拭いきれませんでした。尤も、水害前の温泉も特徴の少ないお湯だったそうですから、私の疑念は的外れなのかもしれませんが…。宝来温泉は、お湯にこだわる人には物足りないかもしれませんが、ゆったりとした時間の中で綺麗な空気を吸いながら、山間の長閑な雰囲気を満喫するにはもってこいの仙境でした。


高雄駅近くの高雄客運バスターミナルから宝来行バスで約3時間。
高雄市六亀区宝来里中正路132号  地図07-6882311
ホームページ

入浴のみ300元(だったはず)
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする