南蔵王の高原地に点在する温泉のひとつ「不忘の湯」で露天風呂を楽しんできました。県道254線沿いにはこんな看板が立てられているので、迷うことなく辿りつけました。こちらの名前は蔵王連峰南端の不忘山に因んでいるのでしょうね。第二次大戦中には、東京大空襲の襲撃を終えた米軍のB29が山中に墜落して乗員が死亡しており、敵味方を超えてその御霊を弔うことを目的として、付近には「不忘の碑」も建てられているんだそうです。
高原の風は清涼で爽快、と言いたいところでしたが、5月連休の蔵王山麓はまだ春と冬が行ったり来たりしている最中らしく、訪問時は気温が10℃を下回るとても寒い空気に包まれていました。
石灯篭が目立つ駐車場。当地は茨城県の業者が開発した温泉付きの別荘分譲地なのですが、妻面に「温泉」と書かれたこの小屋は別荘地の管理小屋らしく、その前に車を停めると小屋の中からおじさんが出てきて、料金を受け取るとともにお風呂へと案内してくれました。
管理小屋の右側には足湯や温泉たまご製造が楽しめる小屋がありました(私は利用していませんが…)。小屋の前には水戸ナンバーの黒いベンツが止まっていましたが、これは業者関係者の車かしら。
管理小屋の裏手が露天風呂の入口。戸の脇の柱には許可を得てから入浴するようにと書かれた注意書きの札が貼り付けられているとともに、銀色の料金箱が設置されていました。
脱衣小屋は棚に籠のみという極めて簡素な造り。
お風呂は露天風呂のみ。シャワー等のカランは無いため、備え付けの桶で掛け湯してからの入浴となります。
女湯はわかりませんが、男湯に関しては敷地外に対して視界を遮るものが何もないため、外から思いっきり丸見えです。お風呂というよりは庭園の池のような雰囲気ですね。周囲には別荘分譲地が広がっていますが、分譲が開始されてからまだあまり経っていないからか、空き地が目立ちます。果たして売れ行きの方はどうなんでしょう?
お風呂では大きな信楽焼の狸や、いなないて前足を上げている真っ赤なお馬さんが迎えてくれました。
浴槽は二分されており手前側(脱衣所側)はかなりぬるく、奥側(湯口側)が適温でした。浴槽のお湯は奥から手前へと流れ、槽内に突き出た塩ビ管により排湯されていきます。浴槽からお湯がオーバーフローすることはありませんでした。両浴槽とも表面積が大きく外気で冷やされるため、源泉温度に対して湯舟の温度が低く、特に手前側の浴槽ではそれが顕著でした。
岩組みの浴槽の一番隅っこには、成分が付着して一部が変色している、かつて湯口だったような岩の構造物がありますが、現在はまったく使われて使われていないようでして、その脇に伸びる樋から源泉が投入されていました。また樋から細い塩ビのパイプが伸びて手前側浴槽にも源泉を送っており、これによって手前側浴槽が極端に冷めるのを防いでいるようでした。湯口から出る源泉の温度はかなり熱く、湯舟が大したことない温度だからと油断して湯口のお湯に触ろうとすると火傷しちゃうかもしれませんね。
お湯はやや赤みと緑色みを帯びた黄土色に弱く濁っており、比較的熱い奥の浴槽では底がはっきり見えますが、ぬるくなっている手前側の浴槽では溶解度が下がってしまうためか、濁り方が若干強いようでした。薄い塩味に加え、芒硝や石膏そして金気の知覚が感じられ、スベスベと引っかかりが混在する浴感でした。
湯面などは赤く染まっており、成分の析出もみられます。この手のお湯の性として、いくら清掃しても不快なヌルヌル物質が浴槽内に付着しやすい傾向がありますが、こちらのお風呂でも(ちゃんと清掃しているんでしょうけど)少々発生しておりました。もっとも、本格的な旅館じゃありませんし、300円で入浴させてもらっているのですから、あまり文句は言えませんね。
むしろ源泉掛け流しのお湯を開放的な露天風呂で堪能できるのですから、とっても気持ち良くて有難いもんです。いったん入浴すると、お風呂の気持ちよさと外気の寒さの両方のため、なかなか湯舟から出ることができませんでした。カランなどは無いためしっかり体を洗うような入浴はできませんが、界隈へ立ち寄った際に手軽に露天風呂を楽しみたいのでしたら丁度良いかと思います。
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 70.8℃ pH6.6 74.3L/min(動力揚湯) 溶存物質3491.0mg/kg 成分総計3774.5mg/kg
Na+:空欄(72.95mval%), Ca++:270.5mg(20.35mval%),
Cl-:564.7mg(24.81mval%), SO4-:1870mg(60.64mval%), HCO3-:560.8mg(14.31mval%)
(分析表の数値はメチャクチャ?)
宮城県白石市福岡八宮大網前143-1 地図
ホームページ
10:00~17:00
300円
備品類なし
私の好み:★★★