前回取り上げた「加勢の湯」の湯船が空っぽだったために入浴できず、しょんぼりしながら自転車に乗って駅の方へ戻ってゆく途中、路傍に「由布岳温泉」の広告看板が立っているのを発見。この時はとにかくどこかの温泉に入りたい衝動に駆られていたので、その看板に導かれながら、あちこちに貯湯タンクが立っている由布院盆地の長閑な田園風景の中を漕いで、何らの事前情報も持たぬまま、地域の名峰を名前に冠したその温泉へと向かったのでした。
年金病院や宇奈岐日女神社を横目に走っていると、いつの間にか「由布岳温泉」に到着しちゃいました。ここは観光客が多く集まる湯の坪通りからは1キロ弱離れており、田んぼの中に民家が軒を寄せる静かな集落の中にポツンと温泉浴場が立地しております。
ちなみに、駅や湯の坪通り方面から徒歩や自転車でやってくると、上画像に写っている北西側の裏口から入ることになるかと思います。敷地内には広い駐車スペースが確保されています。
どうやらこちらの施設は日帰り入浴専門の営業形態らしく、浴場とは別棟となっている休憩室は有料なんだそうです。
休憩棟の傍らには由布岳の裾野より自噴している井戸があり、ちゃんと水質検査を受けているれっきとした飲料水なのであります。しかも無料で持ち帰れるんですから有難いじゃないですか。
九州のちょっとした規模を有する入浴施設って、家族風呂と大浴場を併設して営業しているケースがよく見られますが、ご多分に漏れずこちらもそのスタイルを採用しており、瓦屋根の古風な長屋を思わせる建物には家族(個室)風呂の扉がたくさん並んでいました。誰にも邪魔されずに入浴したかった私は、その家族風呂を選択しようかと考えたのですが、1時間2000円という料金に驚いた我が財布は頑なに口を閉ざしてしまったので、今回はパブリックな大衆浴場(大浴場)の方を利用することにしました。
こちらが大衆浴場です。なお家族風呂の受付を含め、レセプションはこの反対側にあり、浴場棟そのものは離れのような感じで実質的に無人状態です。
建物内部はぬくもりが伝わるウッディな雰囲気で、隅々まで抜かりなく清掃されています。無料で使えるロッカーやドライヤーも備えられているので使い勝手も良好です。室内には環境音楽がスピーカーから流されていました。
お風呂は男女別で脱衣室と浴室がセパレートされていますが、壁高さ約3メートルあたりから上の梁や天井部分には何らの仕切りもないため、たとえば男湯で旦那さん達が入浴しながら奥様方に対する悪口に華を咲かせていたとしても、その声はバッチリ女湯の更衣室でメイク中の奥様の耳に届いてしまいますので、口は災いの元、くれぐれもお喋りの内容にはご注意を(^^)
木材と石材のコンビネーションが落ち着きのある印象をもたらしている内湯。窓サッシを開けるとすぐに後述する露天風呂が接しています。洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基設置されています。
Rを描くコーナーが優しい感じを与える浴槽には、由布院らしい無色澄明無味無臭で癖のない、体への当たりがとても優しいサッパリしたお湯が張られていました。館内表示によれば加水加温循環消毒の無い完全掛け流しとのこと。湧出温度は47~8℃なので、温度調整をすることなくそのまま提供できちゃうんですね。かなり薄めの単純泉ですが、そのわりにスベスベ感がはっきりしているのは、190mg/kg含まれているメタケイ酸の影響かもしれません。
内湯や脱衣室と露天風呂はガラス窓一枚隔てているだけで、サッシを開ければすぐ目の前が露天の浴槽です。お湯は内湯と同じ掛け流しのお湯が張られており、外気の影響を受けて若干ぬるめの湯加減になっていました。湯船の半分ほどは庇によって覆われているので、多少の雨でも問題なく入浴可能です。でも、広い敷地を有しているにもかかわらず、露天風呂のエリアはなぜか窮屈で、浴槽こそそれなりの広さがあるものの、お湯から上がって一休みできるようなスペースが少ないのが残念なところ。
この露天で触れなければならないのが、塀に掲示された大きな由布岳の風景写真でしょうね。塀の向こうには由布岳が泰然と聳えており、この名峰を眺めながら湯浴みできる立地が施設名の由来となったものと思われますが、周囲には民家があるために目隠しの塀を立てざるを得ない、でも立てちゃうと今度は露天からの眺望が遮られてしまう、苦肉の策として塀に由布岳の写真を貼って、湯船に浸かりながラ本来はここから眺められるはずの景色を仮想していただこう…という算段なのかもしれませんね。尤も、その塀も低めに誂えていますので、浴槽の縁に立てば直接景色を楽しめますし、ついでに言えば周囲からもよく見えちゃいますね。
今回はラッキーなことに内湯・露天風呂とも独り占め状態で楽しむことができました。目隠しと眺望をいかに両立させるか苦心なさっていることとお察ししますが、どうせなら塀の写真を取っ払っちゃった方が却ってすっきりして良いような気もします。私の愚見はともかく、観光客の雑踏からちょっと離れた静かなで綺麗な施設の中、優しいフィーリングの掛け流し温泉に浸かることができる、使い勝手の良い施設でした。
単純温泉 47.7℃ pH7.9 湧出量測定せず(掘削動力揚湯・300m) 溶存物質0.369g/kg 成分総計0.369g/kg
Na+:41.1mg(84.83mval%),
Cl-:19.0mg(22.69mval%), HCO3-:97.2mg(66.81mval%),
H2SiO3:190.0mg,
久大本線・由布院駅より徒歩17分(1.5km)
大分県由布市湯布院町川上2425-2 地図
0977-84-2453
由布院温泉観光協会HP内の紹介ページ
7:30~19:00
500円(家族風呂2000円~/1時間)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★