温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

路線バスで宝泉寺温泉郷を散策

2013年02月06日 | 旅行記
●由布院から豊後森へ

由布院温泉での湯めぐりを終え、次なる目的地の大分県九重町「宝泉寺温泉郷」へ向かうべく由布院駅へやってきました。久大本線で豊後森駅まで乗りたかったのですが、なんと次の久留米方面は3時間後! 昼前ですと2~3時間も穴が開いちゃう時間帯があるんですね。


 
JRがダメなら高速バスがある! 九州はバスのネットワークが発達しており、正直な話、列車よりもバスの方が便数でも料金面でも便利だったりするのは皆様ご存知の通り。
由布院から豊後森へ直通するバスは無いのですが、福岡行の高速バスに乗って途中の玖珠インター停留所で下車し、そこから10分強歩けば豊後森駅へたどり着けちゃいます。ちょうど10分後に駅前バスセンターからそのバスが出発するところでしたので、乗車券を購入して乗り込みました。全席指定制ですが満席じゃなければ窓口で直接乗車券を買い求めてもOKです。


 

由布院からちょうど25分で玖珠インターに到着。インターからすぐの場所には「道の駅」(玖珠町まちなか循環バス)、400メートルほど北に「森中央小学校前」(日田バス・玖珠観光バス)などのバス停がありますが、本数が少なくて上手く乗り継げなかったため、今回は国道387号線を南へ向かって歩き出しました。


 

インターから600~700メートルほど進んだところで、右折して国道から離れて路地をショートカット。
国道から路地へ入る曲がり角に建つ民家には、駅までの地図とともに列車のサボがぶら下がっていました。この家にお住まいの方は鉄道に造詣の深い方なのかもしれませんね。


 
県立森高校の横をかすめ、生活臭の漂う裏路地を歩いて…


 

インターから11~2分歩いて豊後森駅にたどり着けました。


●豊後森からバスで宝泉寺温泉郷へ
 
ここまでの文章では、あたかも私は行き当たりばったりで行動しているかのような表現をしていますが、実は歩行時間を含めて分刻みの綿密な行動計画を立てており、駅について5分後に宝泉寺温泉方面へ向かう路線バスが出発することを承知しておりました。案の定駅前ロータリーではバスが待機していたので、待合室にて切符を購入してそのバスに乗り込みました。なお路線バスですから車内精算でもOKです。



私以外に乗客のいない路線バス。
料金表は今時珍しい幕回転式です。


 

この日は宝泉寺温泉郷のひとつである壁湯温泉の「福元屋旅館」に宿泊するため、「壁湯」バス停で下車。お宿に荷物を下ろしてから、宝泉寺温泉の散策をスタート!
(壁湯温泉については後日レポートします)


 
歩き始めて数分で早くも、国道387号バイパスのトンネル手前に日帰り家族風呂「生竜温泉 七福」を発見。九州ってこの手の施設が多くて羨ましいですね。東日本は、温泉資源の豊富な東北ですら、家族風呂を主体にしている営業形態って少ないですもの…。


 

壁湯温泉から宝泉寺温泉までは数百メートルしか離れていないので、お散歩するにはもってこい。↑画像は宝泉寺温泉入口バス停です。駐在所に隣接しており、すぐ目の前の丁字路から南東に入れば宝泉寺温泉の中心です。


 
観光客の姿が見当たらない物悲しい温泉街、宝泉寺温泉。廃業した温泉旅館もちらほら。


 

国道の旧道から離れて宝泉寺温泉の中心へ歩いてゆくと、川沿いに当地のランドマークである共同露天風呂「石櫃の湯」が目に入ってきました。


 
共同露天風呂と称していますが、現在は貸切風呂として営業しているんだそうでして、入り口の戸には使用中の有無を示す「空」の札がかかっていました。空いているから利用すれば良かったのですが、この時は他の温泉施設へ行きたかった上、一人なのに貸切料金1000円を支払うのはちょっと躊躇われたので、残念ですが今回の利用は見送ることに…。


 

宝泉寺温泉入口に戻って国道の旧道を奥へと進んでゆくと、明らかに民家とは毛色の違う建物に出くわしました。柱には消えかかった字で「宝泉寺交通センター」と記された札が貼り付けられていますが、どうやらこれは昭和59年に廃止された国鉄宮原線の宝泉寺駅跡なんだそうでして、駅として廃止された後は「宝泉寺駅資料館」として転用されていたそうですが、それもあえなく閉鎖され、私が訪れた時には無人のバス待合室のような使われ方をされていました。


 
旧駅舎の傍らには、腕木式信号や転轍テコ、スプリングポイントの転轍器標識などが屋外展示されており、ここが鉄道縁の地であったことを今日に伝えているのですが、長年風雨に晒されているためか、塗装は剥げて朽ちかかっていました。なお現在のバイパスはかつての線路敷と推測されます。



すぐそばには「宝泉寺駅前護美会」というネームが入ったゴミ集積所を発見。いまでも駅前という表現が残っているんですね。



宝泉寺温泉を抜け、更に奥の方へと歩いてみましょう。均整の取れた秀麗な山は涌蓋山ですね。この山は一帯に温泉の恵みをあまねく与えている、温泉が好きな我々のような人間にとっては神の如き存在であります。日陰には数日前に降った雪がまだ残っていました。



周辺の集落をブラブラしているとき、私の温泉アンテナがビビビッと何かを察知したので、その反応する方向をよく見てみますと、川沿いに何やら怪しい小屋を発見しました。そして今まさに、桶を小脇に抱えたおじいさんが小屋に入ろうとしているではありませんか。


 
(画像に写っていた地名はモザイク処理しています)
その小屋は案の定、地元民専用の温泉共同浴場でした。妻面に設けられた洗濯場からは生活臭が漂ってきます。中からは先ほどのおじいさんが掛け湯する音が勢い良く響いてきます。当然ながら入ってみたい欲求に駆られましたが、部外者は立入禁止ですから、そのルールに従ってここは潔く去ることに。


 
更に上流へ歩くと、いまにも朽ちそうな木造の橋に遭遇。



しかも、その橋の先にはこんな掘っ立て小屋が建っています。これは怪しいぞ!


 
橋を渡ってその小屋の前まで来てみると、やっぱり地域民専用の温泉共同浴場でした。アクリル波板の蓋が被せられた円筒形のコンクリ躯体からは湯気が濛々と上がっており、このお湯が目の前の湯小屋へと引かれているわけですね。



大変失礼ながらバラック然としたこの湯小屋には非常に心が惹かれてしまいますが、当然ながら部外者の入浴はNG。指を咥えながら後ろ髪の引かれる思いでその場から去りました。
(私が陋屋の湯小屋に好意を抱いてしまうのは、普段そうしたものとは縁のない生活を送っているからであり、日常的にその施設を使っている人にとってみれば新しくて使い勝手の良い方が良いに決まっています。言わば東京の人間が雪国に出かけて白銀の世界に感動するようなもので、現地で暮らしている人にとっては雪なんて鬱陶しいことこの上ないものでありますが、それに似たような図式が成立するように思われます。旅先でこのような湯小屋を見つけると私はつい無邪気に喜んでしまい、拙ブログで節操なく書き綴ってしまいますが、果たしてそうした安直な感慨を垂れ流し続けて良いのかという呵責に苛まれる一方、旅先で出会った心惹かれる物件を風土や生活文化の記録として紹介してゆくことにはそれなりの意義があるはずだ、という信念も強く抱いており、ブログを書きながら両者の相克に懊悩する毎日です。今日のところは後者の見解に強く傾いているので、ひとまず記事にさせていただきました)

ジモ専が多いってことは、それだけ当地の温泉資源が豊富であるということでもあります。
というわけで、次回記事からは実際に当温泉郷で入浴した温泉施設を取り上げてまいります。


コメント
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