温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

由布院温泉 やわらぎの郷 やどや

2013年02月05日 | 大分県
 
全国的な知名度を誇り、泊まってみたい温泉地としても名を馳せる由布院で一晩を過ごすに当たり、どのお宿でお世話になろうか、意外にも非常に我が頭を悩ませる事態となりました。宿の絶対数は多いのですが、女性受けを狙ったコンセプトだったり敷居の高そうだったりと、大雑把に言えば「しゃらくせぇ」施設ばかりで、どうも私のしみったれた琴線には響いて来ません。都内で例えれば青山や白金台に足を踏み入れておきながらワンコインのニラレバ炒め定食を求めるようなものかしら。もちろん湯治宿という選択もあるのですが、この時は自分で食事を拵えるのが面倒な気分だったので、せめて朝食くらいは出してくれる手頃なお宿はないかしら…と私のわがままに合致する宿泊先を某大手宿泊サイトを検索していたら、一泊朝食付きで驚くような一人旅用プランを提示しているお宿を発見。それが今回取り上げる「やわらぎの郷 やどや」さんでありました。
場所は観光客で賑わう湯の坪通りの途中で右へ折れて共同浴場「ゆのつぼ温泉」の前を通って大分川を渡り、その川に沿って上流の方へちょっと進んだところ。駅から1km強、約15分ほど歩くので、重い荷物を持参の方は予めお宿に相談しておくとよいでしょう。普段は中小規模のお宿に泊まることが多い私にとって、こちらの建物の構えは圧倒されそうなほど立派で、本当に一人客でも大丈夫なのか不安でしたが、フロントの方はとても親切に対応してくださいました。


 
ロビーからエレベータで客室へ向かいます。その途中、フロントの裏手には大きなトナカイのstuffed head(剥製)が飾られており、訪問した日はクリスマス間近だったので、そのトナカイさんには首飾りがさげられていました。


 
旅館というよりホテルと称すべき館内。今回宛てがわれた客室はツインルームで、隅々まで整備が行き届いておりとっても綺麗。部屋の中にユニットバスが設置されていますが、なにしろ館内にはいくつものお風呂がありますから使わず仕舞いでした。

旅館内には1つの内湯と3つの貸切露天風呂用意されており、宿泊客はその全てを利用することができます。今回の宿泊で利用できたお風呂を取り上げてまいりましょう。


●内湯(大浴場)

ロビーを左手へ折れた先にあるエレベーターホール前に内湯(大浴場)が位置しています。まずはここから入ってみましょう。


 
脱衣室は建物の規模に反してコンパクトですが、さすが旅館だけあってとっても綺麗で清潔です。男湯の場合は髭剃り・櫛・綿棒などのアメニティ類が用意されています。室内にはロッカーの備え付けあり。


 
浴室には大小の浴槽がひとつずつ、そして洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基設置されており、洗い場に関してはシャワーヘッドの高さが任意の位置に調整できるレール付きのものが導入されており、水栓金具も動作が滑らかな上位クラスのものが取り付けられていました。
大小にわかれた浴槽は、左側の大きな槽がぬるめで40℃くらい、右側の小さな槽が45℃近いかなり熱い湯加減になっており、加温循環消毒は非実施、いずれの浴槽からも洗い場へ向かって惜しげも無くお湯が捨てられていました。


 
両浴槽に跨る形で木箱に覆われた湯口があり、その中を覗いてみると、それぞれの浴槽に対してバルブから温泉や水道が吐出されており、その流量によって温度調節が行われているのでした。お湯は無色澄明無味無臭であっさりとしており、スベスベ感も良好です。癖のないサッパリとした溶存物質のかなり薄いお湯ですが、その中で分析表に記されているメタケイ酸の量(220.0mg)にはちょっと出色かも。



右側の小浴槽は造りが浅くて傾斜しており、寝湯として利用するのかと判断して実際に仰向けになってみたのですが、傾きがゆるい上にかなり浅いため体がお湯に浸からず、一体何の為にこの浅い浴槽が設計されたのか、よくわかりませんでした。なおこちらの浴槽内は材質由来なのかあるいは加水量が少なくて温泉成分の影響が出やすいためか、大きな浴槽と較べて黒っぽい色に染まっていました。



●五右衛門の湯

こちらのお宿い3つある露天風呂は全て貸切となっており、宿泊客でしたら利用に際して追加料金不要ですが、一回(一組)利用あたり50分の時間制限が設けられており、フロントにて予約が必要です。利用可能時間は朝6時~夜10時までで、毎正時からの入浴となっています。
ロビーから雪駄に履き替えて一旦表に出て、屋根下の通路を歩いて離れにある露天エリアへ。手前から「五右衛門の湯」「中の湯」「やわらぎの湯」の順に並んでいます。まずは「五右衛門の湯」から。


 
フロントで受け取った「入浴中」の札を、ドアのノブにぶら下げておきます。ちなみにこの札は特に鍵などの役割を果すわけでもなく、単に「今このお風呂は入ってますよ」と外部に表示するためだけのものに過ぎません。


 
ユニット型の洗面台とカゴが置かれた棚が設置された脱衣室。ドライヤーも利用可能です。お風呂の利用に際しては時間制限がありますから、壁に掛かっている時計のチェックはとても大切です。
各浴室とも露天のみならずシャワー付きの内湯も用意されており、わざわざ本館の大浴場へ行かなくても、ここでしっかり体を洗ったりシャンプーすることもできちゃうんですが、私が利用した時のこの内湯は篦棒に熱くてとてもじゃないが入れるようなコンディションではなく、水で薄めていたら制限時間を浪費しそうだったので、残念ですが内湯の湯船に浸かることは断念しました。


 
夜9時にこの露天を利用したため、ご覧のように景色は何も望めませんね…。とりわけこの時はザーザー降りの雨でしたので、本来は露天を楽しむような状況ではありませんでした。悪天候でも周囲の景色がわかる日中に利用すればよかったと後悔しています。湯船には屋根がかかっていますから、まわりの屋根をバタバタと強く叩きつけるような雨脚でしたが、入浴自体は支障なくできましたよ。
浴槽は2~3人サイズの岩風呂で、内湯同様に脛がピリピリするほど熱いお湯が張られていましたが、植え込みの一角で湯口に直結している水道や温泉の水栓を発見したので、これを開けたり締めたりしながら自分で湯加減を調整しました。加水こそあれ、加温循環消毒とは無縁の湯使いです。お湯は無色澄明無味無臭の癖がない優しいもので、本館の大浴場と同じようなフィーリングですが、露天風呂エリアの入口手前にある掲示には湧出温度が53.5℃と記されており、本館大浴場の60.4℃とはちょっと異なっています。単に分析したタイミングの違いがこの数値の差となって現れているのか、あるいは大浴場と露天では別源泉なのか、その辺の事情はよくわかりませんが、温泉資源が豊富な由布院ですから後者なのかもしれませんね。

なお露天風呂のお隣には浴室名にもなっている五右衛門風呂があり、当然そちらにも入ってみましたが、アツアツだった岩風呂とは逆に、お湯の投入量が少なかったためにかなりぬるく、しかも私のような贅肉の塊が入浴して一度お湯を溢れさせちゃうと、一気に嵩が減るばかりか投入量が少ないためなかなか水位が元に戻らず、もし時間制限ギリギリで退室したら、次の時間帯にここを利用するお客さんは嵩が低いままの五右衛門風呂に入らなきゃいけないのかしら…と余計なイチャモンが頭をよぎりました。ま、湯加減も湯量も、この時はたまたま調整が上手くいってなかっただけなのでしょう。私はいつものように一人旅でこちらを利用しているわけですが、内湯・露天・五右衛門と3つのお風呂を独り占めできちゃうんですから、本当に贅沢です。


●やわらぎの湯
 
翌朝6時、朝一番で「やわらぎの湯」を利用してみました。フロントの方曰く、ここは貸切露天風呂の中では最も景色が良いんだとか。期待に胸をときめかせながら、雪駄に履き替え露天へと向かいました。
上述の「五右衛門の湯」と同様に小さな内湯も併設されていますので、まずはこちらで体を洗い、ついでに眠気を払います。


 
由布岳方向に視界が開けた絶景の露天風呂・・・と言いたいところですが、訪問したのは一年で最も日中の時間が短い12月であり、しかも日の出前であったため、本来は美しい稜線が望めるはずの方向も残念ながら漆黒の闇に覆われていました。東京でしたらこの日でも朝6時でぼんやり明るいのですが、九州って東京よりはるか西にあるんですね。日の出の時間が東京よりも遅いということをうっかり忘れておりました。あぁ、別の時間に予約すればよかった…。
日本庭園風の植え込みに囲まれた岩風呂には上品な趣きがあり、由布岳やそれに連なる山々は、単なる眺望のみならず、庭にとっての借景にもなっているのでしょう。夜間を通じて源泉が注ぎ続けられていたのか、岩風呂のお湯はめちゃくちゃ熱かったのですが、熱いということは源泉がそのまんま投入されている、ということでもありますから、そんなお湯の持ち味をなるべく損なわないよう、加水は最低限にとどめ、塀に立てかけてあった湯もみ棒でしっかり掻き混ぜてから入浴しました。
晴れている日中でしたら、さぞかし素晴らしい眺望を楽しみながら湯浴みすることができるんでしょうね。


●朝食
 
朝食は離れの食堂でいただきます。案内された席は由布岳を正面に見据えるカウンターでして、食堂の中でもまさに特等席と言うべきポジションです。着席してすぐに目の前に提供される和定食の御膳には、焼きたてアツアツの鯵の開き、小鉢類、ハム&サラダ、冷奴、そしてブルーベリジャムのヨーグルトなど。お膳の右に写っている黒い鍋のようなものは風呂吹き大根です。ひとつひとつが丁寧に料理され且つ盛りつけられており、雄大な景色と素敵な朝食の相乗効果により朝からとっても爽快でした。



ご自慢のたまごご飯。濃いオレンジ色をした黄身のタマゴを掻き混ぜて、ホカホカの白飯の上に載せていただく…タマゴの味が力強くてとっても美味! おかげで一日元気いっぱいに過ごせそうです。

私が利用した宿泊プランはどうやら現在取り扱われていないようですので、敢えてその時の料金は伏せさせていただきますが(ヒント:税別でたけくらべ一枚)、大手のバジェット型ビジネスホテルも顔面蒼白の料金設定と、その金額が信じられないほどのクオリティのお部屋やお風呂、そしてお食事にはお世辞抜きに驚いてしまったので、その時の喜びをお伝えしたく取り上げさせていただきました。
今回のプランには夕食が付いていなかったのですが(だからこそ廉価になったのですが)、多くの店舗が並ぶ湯の坪通りは日が落ちるとともにお店も次々に営業を終了し、まるでゴーストタウンのような様相を呈してしまうため、夕食は夜でも営業している飲食店がある駅の方まで歩かなきゃいけないのがちょっと面倒でした。このお宿に限らず、湯の坪通り界隈のお宿に泊まる際、夕食なしのプランでの利用を検討する場合には、その点を考慮する必要がありそうです。いずれにせよ、非常にコストパフォーマンスの高いお宿でした。


単純温泉 60.4℃ pH8.4 47L/min(掘削動力揚湯・236m) 溶存物質0.776g/kg 成分総計0.776g/kg
Na+:133.0mg(74.46mval%),
Cl-:121.0mg(39.24mval%), SO4--:64.4mg(15.41mval%), HCO3-:18.0mg(24.12mval%), CO3--:55.3mg(21.19mval%),
H2SiO3:220.0mg,
加温循環消毒なし

久大本線・由布院駅より徒歩15分(1.1km)
大分県由布市湯布院町川上2717-5
0977-28-2828
ホームページ

立ち寄り入浴10:30~15:00(内湯は17:00まで)
500円(貸切露天2000円~、一人増す毎に500円追加)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント
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