

昨年(2013年)11月に開通した国道120号線の椎坂バイパスにより、関越道沼田インターから老神温泉や片品方面へは10分近い時間短縮が実現されたとともに、峠越えのクネクネ道が解消されたために積雪期の運転がかなり楽になりました。そこで今年2月の某日、この道の積雪期の状況を実際に体験し、同時に以前購入した老神温泉「湯めぐり手形」の有効期限が迫っていたのでこれを使い切るべく、老神温泉へ日帰りで出かけることにしました。椎坂バイパスに関しては、2本の新しいトンネルで峠をクリアしてしまうことにより、従来の道にあった山間のワインディングを走る楽しみは失われましたが、冬の峠道を回避できる心理的効果や、急カーブの激減、そして何より路面に雪がないという安心感が従来の楽しみをはるかに上回るベネフィットをもたらしており、観光のみならず、沼田地域の広域行政の合理化にも一定の効果を及ぼすのではないか・・・なんて、観光以外でこのバイパスを通ることのない私は、たった一度の往復でそんな無責任な感想を抱いたりして…。
さて今回の「湯めぐり手形」消化行程では、まず観光協会の前の坂を下った左手すぐのところにある「上田屋旅館」へお邪魔することにしました。「湯めぐり手形」の付属資料には利用可能な旅館・施設とその時間が明記されていますが、当地の場合は必ずしもこの資料通りに利用できるわけではなく、私の実体験に基づけば、事前問い合わせなどをせず行き当たりばったりで訪問した場合、訪った旅館の5割で受け入れてくれたらまずまずの結果と言えるのではないでしょうか。当地は中小規模のお宿ばかりですので、宿泊のお客さんがいなければお風呂を空にしてしまったり、あるいはお宿自体を閉じてしまうことも多く、今回私は5軒訪ったのですが、入浴できたのは2軒だけでした(打率4割ですね)。そのうちの1軒が今回取り上げる「上田屋旅館」です。


「湯めぐり手形」に協賛しているお宿では玄関前に利用の可・不可を知らせる札が立てられており、私が訪問した時にはその札が裏返しにされていたので、「ここでも断られるか」とダメ元でロビーにて声をかけたところ、帳場から現れたおばさんが快く受け入れてくださいました。男湯はフロントのすぐ左側に入口があり、名勝吹割の滝にちなんで「吹割風呂」と名付けられているようです(女湯は「五色岩風呂」)。そのおばさん曰く「うちのお風呂はぬるいので、ゆっくり入ってくださいね」とのことでした。


脱衣室は最近改修されたのか、白地に木目が映える内装となっており、明るくて綺麗でした。なおロッカーはありません。


今回利用させていただいたお風呂は内湯のみです。館内には露天風呂もあるそうですが、貸切専用なんだとか(おそらく宿泊客専用なんでしょうね)。浴室の扉を開けた途端、温泉由来の芳ばしい石膏臭が湯気と一緒になって私を包みました。浴槽上の壁を覆う石材の重厚感が印象的な室内には、浴槽と小さな上がり湯枡が1つずつ据えられ、床にグレーのタイルが敷き詰められており、洗い場には真湯が吐出されるシャワー付き混合水栓が5基並んでいます。


シャワーと並んで浴室入口傍に設けられている上がり湯には源泉が用いられており、後述する浴槽よりやや温度が高い42℃位のお湯が槽内に溜められ、塩ビのオーバーフロー管より排出されていました。おそらく浴槽と同じお湯だと思うのですが、味や匂いなど知覚面は浴槽よりも強めに感じられました。どのような知覚であるかは後ほど。


長方形に近い形状の浴槽は10~11人サイズで、縁はタイルですが槽内は鉄平石敷き、浴槽両方の長辺側に槽内ステップが設けられています。一番奥の隅っこには吹割の滝を模したと思しき造形があり、以前は湯口としてお湯が落とされていたのかもしれませんが、今は単なるオブジェと化しています。
嬉しい事に湯使いは完全放流式を実践しており、湯船を満たしたお湯は穴があいたステンレスの蓋より排湯されているのですが、その蓋は温泉に含まれる金気によって赤銅色に染まっていました。


浴槽縁の壁際にもたれかかるようにして積まれた岩から湯口のパイプが顔をのぞかせており、滔々とお湯を吐出させていました。そして湯口下の底は扇形に赤く染まっていました。老神温泉にはタイプが異なるいくつかの源泉があり、お宿によって使われている源泉が異なりますが、こちらに引かれているのは8号泉と10号泉の2本でして、それをミックスして供給しています。湯船のお湯はほぼ無色透明ですがボンヤリ霞んでいるようにも見え、湯口のお湯を手に掬って口にしてみますと新鮮金気味と甘みを伴う石膏味が得られ、焼きを入れたような芳ばしい石膏臭やゴムに似たような匂いが香ってきました。なお浴感としてはスベスベとキシキシが混在しているものの、キシキシが優っているような感じでした。


湯船に入って驚くのは湯の華の多さでして、湯船に入ると全身が湯の華まみれになってしまいました。上で「無色透明ですがボンヤリ霞んでいるようにも見え」ると述べましたが、その原因は湯船を舞う無数の湯の華であろうと思われます。湯の華には赤茶色の大きなものもあれば、茶色や灰褐色のものもあり、その形状は多様です。私が入浴する前、湯の華は底に沈殿していましたが、足を入れてお湯を動かすと忽ち大量に舞い上がってお湯を微かに濁らせ、桶で湯船のお湯を掬うと上画像のように容易く湯の華を捕らえることができました。
受付時に帳場のおばさんが「ぬるいので、ゆっくり入って下さいね」と声をかけてくれましたが、その言葉の通り、湯船では41℃くらいとなっており、熱いお風呂が好きな方にはちょっと物足りない湯加減かもしれませんが、私のようなぬる湯好きにはストライクゾーンに収まる温度であり、おばさんが教えてくれたようにじっくりのんびりと肩までお湯に浸かっていたら、湯上がりは体の芯まで温まって、いつまでもポカポカとした温浴効果が持続しました。浴室の造りはちょっと古いものの、お湯の個性が十分に楽しめる実力派のお風呂でした。
8号泉・10号泉の混合泉
単純温泉 47.1℃ pH7.2 蒸発残留物0.45g/kg 成分総計0.48g/kg
Na+:111mg, Ca++:23.4mg, Fe++:0.44mg,
Cl-:94.6mg, SO4--:126mg, HCO3-:32.4mg,
H2SiO3:63.7mg,
加温加水循環消毒なし
上毛高原駅・沼田駅より関越交通バスの鎌田・戸倉・丸沼高原方面行で「老神温泉」下車すぐ
群馬県沼田市利根町老神596 地図
0278-56-3211
ホームページ
手形利用時間13:00~18:00(変更される場合あり)
現金での立ち寄り入浴は要問い合わせ
老神温泉「湯めぐり手形」
私の好み:★★