福島県郡山市の安積地区は、多くの温泉施設がしのぎを削る激戦区でありますが、今回はその中でも林業研究センターの近くにある日帰り温泉入浴施設「バーデン温泉」へ立ち寄ってまいりました。この「バーデン温泉」は金属加工業を営む地元業者さんが運営しており、この一角には他にも健康増進を目的とした「石橋ヘルス温泉」やビジネスホテル「ホテルバーデン」など、同じ経営母体の温泉利用施設が集結しています。東北道の郡山南インターから近い上、国道4号バイパスからもアクセスしやすく、そうした交通の便が良さゆえか、私が訪れた夜8時頃でも、広い駐車場にはたくさんの車が止まっていました。
ロッカー付きの下足箱に靴を収め、エントランスに設置されている券売機で料金を支払い、下足箱のキーと券を一緒にフロントへ差し出すと、引き換えに脱衣室のロッカーキーが手渡されるのですが、この際に指定される脱衣室のロッカー番号は、今さっき靴を収めた下足箱と同じ番号のところが指定されます。
下足箱の各扉には番号と共にテプラで「大下」「小中」などと印字されたシールが貼られているのですが、これはその番号が脱衣室ロッカーではどのような属性であるかを示しており、たとえば脱衣室で大きく上段にあるロッカーを使いたければ、「大上」のシールが張られた下足箱に自分の靴を納めれば良いわけです。私はこのことを全く知らなかったために「下小」へ靴を入れ、下段の小さなロッカーで着替えるはめになりましたが、このあたりの事情をよくご存知の常連さんは、下足箱でしっかりと選んでいらっしゃいました。
実用本位で無機的な雰囲気の脱衣室にはグレーの地味なスチールロッカーがたくさん並んでいますが、上述のように自由に使えるわけではなく、自分の靴を収めた下足箱の番号と同じ箇所を使うことになります。洗面台は4台(5台?)並んでおり、ドライヤーも3台ほど用意されていますし、清掃も行き届いていますので、地味ながらも使い勝手はまずまずでした。
浴室はとっても広く天井も高いので、屋内空間なのに開放感があります。男湯の場合、向かって正面奥の窓下に、20人以上は余裕で同時利用できそうなほど大きいプールのような主浴槽が据えられており、槽内の一部ではジェットバスやジャグジー装置が稼働しています。また、この主浴槽の右には水風呂やサウナが設置されています(水風呂の他、立って使うシャワーも2基あり)。
浴室左手には洗い場が一列に10箇所並んでおり、各ブースには真湯が出るシャワー付き混合水栓が取り付けられている他、源泉のみが吐出されるオートストップ式単水栓のシャワーも併設されています。わざわざ源泉のシャワーを設けているところに、オーナーさんのお湯に対する誇りが伝わってきますし、生源泉を思う存分頭から直接浴びることができるのですから、私のような温泉ファンとしても嬉しい限りです。実際にこの源泉シャワーを浴びてみますと、後述する温泉の特徴がはっきりと感じられました。
内湯主浴槽の隅にある湯口からは源泉がドバドバ大量に落とされており、さざ波をなして浴槽縁から惜しげも無く床へ豪快にオーバーフローしていました。館内表示によれば加水加温循環消毒の無い完全掛け流しとのことでして(内湯・露天風呂共通)、その湯使いを見ているだけでも清々しい気分になれます。
お湯は無色透明ですが、槽内タイルの影響によるのか、ちょっと翠色(淡いエメラルドグリーン)を帯びているようにも見えます。湯口のお湯をテイスティングしてみますと、甘塩味と同時に弱タマゴ味やほろ苦みが口の中に広がり、弱タマゴ臭や微かなアブラ的匂い、そして弱い臭素臭に、畑の堆肥っぽい風味が感じられました。
屋外には露天風呂も完備。施設名こそ「バーデン温泉」とドイツ語混じりですが、露天風呂はコテコテの和風岩風呂で、部分的に東屋が掛けられています。
石積みの湯口から落とされているお湯は、内湯同様掛けながしです。この岩風呂は14~15ほど同時入浴できそうな大きさがあり、湯船を縁取る岩はうまい具合に高低差が設けられているので、湯船に浸かりながら縁に頭を載せて寝湯っぽいスタイルをとったり、あるいは高めの岩に腰掛けてクールダウンしたりと、利用者が思い思いの格好で使うことができて便利でした。
湯中で肌を擦るとツルツルスベスベの滑らかな浴感が得られ、あまりの気持ち良さに後を引いてしまって、なかなかお風呂から上がることができなかったのですが、今回はこの日のうちに川崎市の帰宅へ戻りたかったため、湯浴みを1時間で切り上げて、後ろ髪を引く思いで浴室から退出しました。夜9時になってもお客さんがひっきりなしに出入りしていましたが、広いお風呂で豊富な湯量の掛け流し温泉に入れるのですから、人気が高いのも頷けます。
ドイツにはバーデン・バーデンというヨーロッパ屈指の温泉地があり、この「バーデン温泉」も訳し方によってはバーデン・バーデンと言い換えることもできそうですが、郡山のバーデンは欧州的な雰囲気は無く、純然たる日本の公衆浴場であり、湯気の中で東北訛りが飛び交う地元の方々の憩いの場でもありました。
石橋温泉・石橋興産源泉混合泉
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 47.0℃ pH8.8 湧出量未測定(動力揚湯) 溶存物質1.345g/kg 成分総計1.345g/kg
Na+:408.8mg(93.19mval%), Ca++:19.5mg(5.08mval%),
Cl-:312.9mg(45.71mval%), Br-:0.9mg, I-0.6mg, SO4--:400.9mg(43.22mval%), HCO3-:51.3mg(4.35mval%), CO3--:19.2mg(3.31mval%),
H2SiO3:48.0mg, HBO2:60.7mg,
加水加温循環消毒なし
郡山駅前より福島交通バスの「長沼」行で「ホテルバーデン前」下車徒歩2~3分、または「下守屋」行か「長沼」行で「木工団地入口」下車徒歩8分(650m)
福島県郡山市安積町成田字島河原1-1 地図
024-947-1233
10:00~23:00(受付終22:00) 無休
420円/1時間、720円/平日4時間(土日2時間)、
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5