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いわき湯本温泉にある数多くの温泉施設でも、お湯の良さで温泉ファンから折り紙つきである共同浴場「上の湯」は、拙ブログでも5年前に一度取り上げてますが(その時の記事はこちら。初期の拙ブログって何て薄っぺらなんでしょう)、その後に浴室が若干改修されたと聞いていたので、震災後のお湯の変質の再確認も兼ねて、先日常磐線に揺られて再訪しました。集会所と一体になった2階建ての建物は前回訪問時と同じであり、その変わらぬ佇まいを目にして安堵しました。
オープン間もない時間帯に訪れたところ、自転車や軽自動車などに乗り付けた地元の方々が、お風呂道具を小脇に抱えて次々に浴場へ入ってゆきました。多くの地元の方に愛されていることがうかがえます。なお常連さんは目の前の道路に路上駐車してしまう傾向にあるようですが、外来客の方は専用駐車場を利用しましょうね。
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男女別に分かれた入口を入ってすぐに番台があり、係員の方に直接料金を支払います。なお地元の常連さんは磁気カードを持っており、利用の都度に、番台にあるカードリーダーに各自のカードを読み込ませて入場します。
脱衣室は典型的な共同浴場のレイアウトであり、窓側にロッカーや棚が設けられていて、ロッカーにはちゃんと鍵もかけられるのですが、常連さんは鍵が面倒だからか、下段にある棚に衣類や荷物を置きっぱなしにしていました。利用者の多くは顔を見知った仲なのでしょうし、番台の人も常に見守っているので、あまり警戒する必要はないのでしょうね。
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浴室内も以前とほとんど変わっていないように見え、台形を逆さにしたような浴槽の形状も以前のままなのですが、床や浴槽タイルが新しく張り替えられた他、以前は槽内と同じタイルが貼られていた浴槽の縁には、新たに黒御影石が用いられていました。その浴槽は3~4人サイズで、槽内は淡いライムグリーンのタイル貼りです。湯使いは完全なる掛け流しでして、浴槽に満たされたお湯は脱衣室側の切り欠けから常時が流れ落ち、湯船に人が入るとザバーっと豪快に洗い場へ溢れてゆきました。
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浴室内で大きく変わったのは湯口周りでしょうね。以前は、温泉吐出口にはカモ、冷水にはハトのオブジェが載っかっており、その可愛らしさが「上の湯」の個性でもありましたが、現在の湯口は日本全国どこにでも見られるような箱状の石樋タイプに付け替えられ、水道に至っては単なる蛇口となってしまいました。あのオブジェの行方が気になりますが、使い勝手を考えたら、共同浴場はこうした凡庸でシンプルな方がいいのかもしれません。
今回目を引いたのは水道蛇口の真上に掲示された張り紙でして、曰く「みんなの浴場です。個人によって、適温が異なりますので、加水にご協力願います」と「加水」以下の部分を黄色くハイライトされながら、水で薄めてほしいと呼びかけていることです。福島県内では飯坂温泉の各共同浴場でも同じような文言が見られますが、それだけ温泉銭湯を馴染みにしている常連さんは源泉のクオリティに対する思い入れが強いのかもしれませんし、あるいはお風呂というものは慣れるに従い熱くないと満足できなくなるのかもしれません(年配の方が多いですしね)。
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浴槽と逆サイドには洗い場が配置され、お湯と水の水栓のセットが窓下に4つ、そして柱を挟んで脱衣室側の換気扇下に1つの計5基が並んでいます。水栓から吐出されるお湯には源泉が用いられ、篦棒に熱いお湯が出てきますので、火傷に注意しつつ、上画像のように桶を2つの水栓の間にセッティングしてお湯と水の両方を受けると良い塩梅で使えるかと思います。
さて肝心のお湯に関するインプレッションですが、拙ブログでは2012年に同じくいわき湯本温泉の「スパホテル スミレ館」へ訪れた際に「油のような刺激のある硫黄臭、そして焦げたような苦味+微塩味+卵黄味」と申し上げているように、同じ源泉の供給を受けているこちらの共同浴場でもやはり焦げたような味と匂い、そしてほんのりとした塩味や渋くて苦い味が感じられ、アブラ系の匂いが浴室に漂っていました。色合いや濁りに関しては、薄っすら黄緑色を帯びつつボンヤリ白く霞んでいるように見え、湯中では白い細かな湯の華がたくさん浮遊していましたが、かつてのような白濁ではなく、大雑把に表現すれば無色透明と言っても過言ではないような状態です。
かつてのいわき湯本温泉といえば、白濁を呈するタマゴ感の強いお湯でしたが、上述のように震災後の現在ではタマゴ感が弱まった代わりに、鉱物油っぽい匂いが前面に出るようになり、濁り方もかなり大人しくなりました。ここで震災の前後で分析表を見比べてみましょう。
【常磐湯本温泉湯本温泉源泉、震災前と後の違い】
・平成22年8月3日(震災前)の分析表(抄出)
含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 58.9℃ pH8.2 4312L/min(動力揚湯) 溶存物質1809mg/kg 成分総計1824mg/kg
Na+:540.5mg(87.48mval%), Ca++:60.2mg(11.18mval%),
Cl-:617.6mg(64.54mval%), Br-2.4mg, I-:0.4mg, HS-:10.1mg, S2O3--:3.9mg, SO4--:342.5mg(26.42mval%), HCO3-:109.6mg(6.65mval%),
H2SiO3:86.1mg, HBO2:21.3mg, H2S:0.7mg,
(総硫黄14.7mg)
・平成23年9月22日(震災後)の分析表(抄出)
含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 58.1℃ pH8.1 3370L/min(動力揚湯) 溶存物質1763mg/kg 成分総計1774mg/kg
Na+:530.1mg(86.33mval%), Ca++:65.5mg(12.24mval%),
Cl-:603.6mg(63.73mval%), Br-2.3mg, I-:0.4mg, HS-:8.1mg, S2O3--:2.3mg, SO4--:343.4mg(26.77mval%), HCO3-:120.6mg(7.40mval%),
H2SiO3:51.8mg, HBO2:20.7mg, H2S:0.7mg,
(総硫黄11.1mg)
数値の羅列を見るだけではわかりにくいのですが、人為的に調整できる温泉の汲み上げ量はともかく、明らかな変化として…
(1)溶存物質・成分総計が震災後では若干減っている(上記の青字部分)。つまりちょっと薄まっている。
(2)総硫黄(HS-・S2O3--・H2Sの合計)が14.7から11.1へ減っている(上記の赤字部分)。
といった点が挙げられ、特に総硫黄の低下が顕著かと思われます。尤も総硫黄が2.0以上あり、基本的な成分構成にも大きな変化がないので泉質名は以前と同様の「含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉」ですが、震災によって成分に僅かな変化がもたらされ、これによってお湯の特徴も大きく変わったことに間違いはなさそうです。
特徴が変化したといっても、お湯の良さは昔も今も変わりなく、ピリっと熱い湯船に浸かれば極上の鮮度感とスルスベの爽快な浴感が堪能でき、身も心もシャキッと蘇ります。いわき湯本温泉では源泉を一括管理しているため、どのお宿でも浴場でも同じお湯が供給されているわけですが、施設によって湯使いが異なるために、実際に体感できる各施設で得られるお湯のフィーリングは様々であり、浴槽の容量に対して源泉供給量が多いこの「上の湯」は、鮮度感やそれに伴う爽快感が群を抜いています。ここのお湯は改めて良いと再確認できました。
JR常磐線・湯本駅より徒歩13分
福島県いわき市常磐湯本町上川(地図による場所の特定は控えさせていただきます)
15:00~22:00(受付21:30まで)
100円
備品類なし
私の好み:★★★