今回のマレーシア1泊2日温泉めぐりで、最も興味があったのがペラ州イポー郊外の「ルブクティマー温泉」です。前回取り上げたスンガイクラー温泉のように、立派なリゾート施設も良いのですが、温泉ファンとしては源泉を間近に感じられるプリミティブな温泉の方が興奮度が高まるわけで、事前に調べていたところ、このルブクティマー温泉は私の理想とするスタイルであることがわかったので、実際に行ってみることにしたのです。
クアラルンプールから高速道路をイポー方面へ北上し、イポー手前の137番出口から一般道(1号線)に出て、すぐに右折してキャメロンハイランドへ向かう185号線(※)を東進すると、やがて周囲の景色が埃っぽく荒涼としはじめ、1号線との交差点から4~5kmで上画像のような看板が現れます。この看板には"KOLAM AIR PANAS LUBUK TIMAH(ルブクティマー温泉プール)"と記されていますが、文字が小さいので見逃さないよう要注意です。まずはここを左折します。
(※)2014年6月現在、Google Mapでは道路番号に関して「A181」と表示されていますが、現地の標識では「185」となっていましたので、ここでは現地標識に従って185号線と表記します。
左折した道は白い砂埃が立ち上がる砂利道で、大型ダンプの往来が多くてデコボコしていますが、普通車でも難なく通行できます。この道を道なりに700~800mほど進むと・・・
砂利道の右手に"KOLAM AIR PANAS LUBUK TIMAH"と記された黄色い看板があり、看板の先には当地を管理している中華系のおじさんが立っていました。看板には料金が書かれていますが、なんと大人は2リンギット(日本円で65円ほど)という安さです。尤も、こんなところでも料金を徴収するのか、と小首を傾げたくもなりますが、ここは吝嗇な発想をグッと怺えておじさんに所定の料金を支払うことに。
駐車場に車をとめますと、すぐ目の前に川が流れており、手前側の川岸には相当年季が入っているコンクリ槽の露天温泉が目に入ってきました。
駐車所の周りには、掘っ立て小屋ながらも"SURAU"つまり礼拝室やトイレなどがそれぞれ別棟で設けられています。私はこのトイレで水着に着替えました。
川岸に佇む古びたコンクリの温泉槽。かつては何らかの上屋でもあったのでしょうか。
槽は4つほどに区切られており、中央の格子掛けされている小さい箇所が高温のお湯を自噴する源泉です。そしてその周りに入浴できる槽が並んでいます。コンクリ槽の傍らにはベンチだってありますよ。入浴中は管理人のおじさんが適宜監視してくれるので安心です。
中央の源泉を覗きこんでみますと、中では無色透明で清らかに澄んだお湯がコンコンと湧いており、その湧出温度は45.4℃で、水素イオン濃度はpH8.0でした。匂いや味は特に無く(しいて言えば硬水のような重い味)、無色透明無味無臭のあっさりした弱アルカリ性の単純泉といったところでしょう。この中央の源泉からお湯が三方へ分かれて各槽へ落とされており、その量の多寡や槽の表面積などによって温度が異なっています。言わずもがなですが、こんな原始的なお風呂ですから当然のように完全掛け流しです。
源泉のまわりには入浴できる槽が3つあり、そのうち最も小さい槽(画像左(上)の右側にちょこんと写っている槽)は1~2人サイズで温度計は43.6℃を示し、入浴できる槽の中では最も熱くなっています。ここへ川遊びにやってきた地元のインド系の若者達は指先でお湯に触るのが精いっぱいらしく、私が平然と全身浴する様子を見るや「え!こんな熱いお湯に入れるのか!」と言わんばかりに驚愕していました。でも私の後にはインド系のおじさんも着衣のまま平気な顔して入っていましたから、人種云々ではなく、単に個人的な感覚や慣れの問題に過ぎないのでしょうね。
またこの右隣の川に接している槽も同じく2人サイズで小さいのですが、湯加減が若干温度は低めになっており(体感で42℃前後)、そこへ私が移るとインド系若者のうちの一人が入浴にチャレンジして、何とか頑張って熱さに耐え、私と一緒に肩まで浸かり、お互いに自己紹介をしながら湯あみを楽しみました。
最も熱い槽の左隣の槽は、広いかわりにかなりぬるく、一応中央の源泉からの流入もあるのですが、上述の2槽から流れ込んでくるお湯がほとんどであり、しかも表面積が広いので、どうしてもぬるくなってしまうようです。画像を見てもわかるように、槽内には苔が生えていて緑色に染まっており、非常に滑りやすく、しかも湯中には剥がれた苔がたくさん浮いているので、清潔感を求める人には入浴は難しいかと思います。でも比較的長湯できる温度であり、熱帯の暑い気候にはむしろぬるい方が体には良いかもしれず、上2つの熱いお湯には入れない地元の方々も、このぬるい槽なら問題なく入っていました。
あまり気持ち良い状態では無かったのですが、他2槽と比べて三脚が立てやすい上に全体が収まる構図が得られたので、私はここで自分撮りしてみましたよ。
熱い湯船はもちろん、ぬるいお湯に浸かっていても、何しろ外気温は30℃を上回っていますから、あんまり長湯していると容易に逆上せてしまいます。でも体が火照ったらすぐ目の前を流れる川に飛び込んじゃえば良いのです。熱いお湯に浸かった後、すぐに川の水を浴びると実に爽快。この時はインド系のおじさん達も私と同じようにお湯と川を行き来していたのですが、みなさん笑顔で気持ち良さそうにしていました。
こちらは川遊びにやってきたインド系の若者たち。さすが賑やかな音楽が好きな民族だけあり、スピーカーを持参して大音響を放ちながら湯あみや川遊びに興じていました。上述のようにこのうちの勇敢な一人が私と一緒に熱い湯船へ入ったのですが、他の子たちは熱いお湯には耐えられず、ぬるいお湯に浸かるのが精いっぱいで、すぐに川へ飛び込んでしまいました。このグループの中で一人とっても美人でスタイル抜群な子がいたのでつい見惚れていたら、スケベな視線が余程滑稽だったのか、その友達の山村紅葉そっくりな子に指をさされて笑われてちゃった…。ま、私の恥ずかしい話はともかく、ここは川遊びの場として有名らしく、彼ら彼女ら以外にも、マレー系や中華系の若者たちがこの周辺で思い思いに川に入り、涼を得ていました。
管理人のおじさんが「この先にとてもナイスなウォーターフォールがあるよ」と教えてくれたので、行ってみることに。温泉から川に沿って未舗装路を遡ってゆきます。道幅は車1台ほどあるのですが、途中から思いっきり路面がえぐれているので車じゃ無理です。
温泉から数分歩くと、古ぼけたダムに辿り着きました。ダムの両脇から水が大量にこぼれて滝になっていますが、おじさんはこれを指していたのでしょう。滝の下では若いお兄ちゃんたちが水遊びしていました。
このダムは20世紀初期にダムが築かれたらしく、スズ(錫)の生産にこのダムが生み出す水力が用いられたんだそうです。なお"Lubuk Timah"という地名の"Timal"は錫という意味なんだとか。イポーはかつて錫の生産で殷賑を極めた街であり、この地域のあちこちで見られる白く禿げた山肌は錫鉱山の跡でありますから、ルブクティマー温泉と当地の産業史とは切っても切れない関係にあるのかもしれませんね。
営業時間不明
大人2RM
私の好み:★★★