温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

浅間温泉 港の湯

2014年07月31日 | 長野県
 
無類の蕎麦好きである私は、ただ蕎麦を手繰りたいがために、わざわざ信州へ出かけることがあるのですが、先日もそんな気分が突如として沸き起こったので、中央高速で松本へ赴いて信州の蕎麦を食い、そのついでに当地の奥座敷である浅間温泉を巡ってまいりました。
浅間温泉には何軒かの共同浴場が点在しており、地元の方々の生活に密接していますが、その半分近くがいわゆる「ジモ専」(地元住民専用の共同浴場)でして、私のような外来者は利用できませんが、今回取り上げる「港の湯」は外来者でも利用できる貴重なお風呂のひとつです。浅間温泉の温泉街の手前にあり、入口戸の目の前にバス停が立っているという好立地なのですが、あくまで近隣住民のためのお風呂ですから駐車場は無く、車で訪れる際にはちょっと離れた公共の駐車場まで行かねばなりません。
古風な白壁の庇下には木の袖看板が出ており、旧街道筋の商家みたいな趣きです。内陸地なのに「港の湯」とはおかしなネーミングですが、付近を女鳥羽川が流れているので、以前は川舟の河岸が近くにあったのかもしれませんね。



湯屋の右隣にはなまこ壁の蔵のような小さな建物はトイレです。


 

入口の戸は男女別に分かれているのですが、各戸の上には漢字の他、筆記体のような字で英語表記も併設されていました。長野県では冬季五輪開催の際に、県内のあちこちで英語の標識や案内掲示が見られるようになりましたが、こちらの場合は見るからに相当古く、「レディース」の方は字が半分消えかかっているので、五輪以前から掲示されていたんじゃないかと思われます。どういった経緯で英語が併記されるようになったかは不明ですが、何となく学都松本らしい光景であるように、私の目には映りました。ひょっとしたら以前には外国人の利用も見られたのかもしれませんね。もしそうであるならば、今でこそ日本的な入浴スタイルは僅かながら海外でも知られるようになりましたが、当時この共同浴場を利用したであろう外国人の目に、毎日裸で湯浴みする(海外からすれば奇特な)生活習慣は、どう映ったのでしょうか。



(画像の一部にモザイク処理しています)
男湯入口の戸には穴が開いており、その内側を見ますと閂を縦にしたようなプリミティブな施錠装置が取り付けられていました。この鍵の仕組みをご存知の地元の方でしたら、穴に道具を差し込んでちょちょいと閂を開けることにより、開放時間外でも入浴しているようですが、この画像を見た不埒な輩が非オープン時間の侵入を謀ろうとするかもしれませんので、それを防ぐべく敢えて画像にボカシを入れました。ご了承ください。


 
想定利用者数が限定されている共同浴場にもかかわらず、板敷きの脱衣室内は一般的な銭湯並みに広く、しかもコインロッカーまで設けられているので、外来利用者には嬉しいところです。普段は13時からのオープンですが、たまたま私が訪れた日に番台の当番を任されていたおばちゃん曰く「私が当番の時はいつも12時に開けるようにしているのよ」とのことで、運良く13時より早く利用することができました。なお湯銭は番台へ直接支払います。


   
浴室内には目が覚めるような鮮やかな水色のタイルが貼られており、壁や浴槽など場所によって濃淡を使い分けています。また床のタイルは市松模様です。そんな室内に据えられているのが、美しい曲線を描く小判型の浴槽でして、これまた美しく澄んだお湯が絶えず注がれています。


 
洗い場には1本の配管から分かれた水栓が3つ並んでいます。各水栓は更にスパウトとシャワーに分岐し、スパウト側にはオートストップ水栓が、シャワー側には一般的な回転式のハンドルが取り付けられています。なおこの水栓から出てくるのは予め温度調整された温泉のお湯でして、水道の水栓は無いため、自分で温度を調整することはできません。開場して間もない時間帯に入ったためか、桶や腰掛けが綺麗に整頓されており、気持ちよく使うことができました。


 
浴槽は2~3人サイズの小判型で、縁に紺色のタイルを用いることによって槽内などとのコントラストをはっきりとさせています。女湯側仕切りに設けられた湯口からトポトポとお湯が落とされており、湯船を満たしたお湯は手前側の縁下の細い穴より洗い場へ流下していきます。尤も、この小さい穴だけでは人が入った時の溢れ出しに対応できず、私が湯船に入るとお湯はしっかり縁の上をザバーっと溢れ出ていったのですが、単に溢れさせずわざわざ穴から排湯させているのは、歴史ある温泉地としての奥ゆかしさや品の良さの現れなのかもしれません。なお湯使いは完全放流式です。

お湯は無色透明でほぼ無味無臭ですが、匂いや味の面で芒硝の存在が若干ですが確認できました。湯中では焦げ茶色の細かい湯の華が浮遊しています。湯舟に浸かるとスルスルとしたアルカリ性泉らしい滑らかな浴感が気持ちよく、ついつい何度も自分の腕を擦ってしまいました。
お湯の鮮度感が素晴らしく、浴感も上々という、実にブリリアントなお風呂でした。


山田源泉・2号源泉・4号源泉・大下源泉・東北源泉の混合泉
アルカリ性単純温泉 49.7℃ pH8.7 溶存物質411.1mg/kg 成分総計411.1mg/kg
Na+:87.8mg(69.90mval%), Ca++:31.9mg(29.09mval%),
Cl-:33.3mg(17.19mval%), HS-:0.2mg, SO4--:187.5mg(71.34mval%), HCO3-:25.0mg(7.50mval%),
H2SiO3:36.9mg,
加水加温循環消毒なし

JR松本駅よりアルピコ交通バスの浅間温泉行で「下浅間」バス停下車すぐ
長野県松本市浅間温泉1-21-10
浅間温泉観光協会ホームページ

13:00~閉館時間不明
200円
ロッカー(100円リターン式)あり、他備品類なし

私の好み:★★★

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする