温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台湾で最も美しい野湯 栗松温泉 その3(いざ入浴)

2015年09月14日 | 台湾
前回記事の続編です。


急坂を下りきり、渓流を遡って、岩をよじ登った先に、断崖絶壁が白と緑で覆われている、言葉では形容しがたい摩訶不思議で且つ美しい光景が目に入ってきました。駐車場から歩いて35分、目的地である「台湾で最も美しい野湯」栗松温泉に到着です。台東県の観光案内公式サイト(繁体中文)によればここは標高1075mなんだそうですから、高地の茶畑が広がっていた摩天地区(1546m)から500メートルも下ってきたことになります。



新武呂渓の右岸で垂直に落ち込む断崖の裂け目や孔から、温泉が噴き出て滴り落ち、その飛沫が広範囲に亘って飛び散って、断崖の表面を炭酸カルシウムで覆っているのです。美しいこともさることながら、その圧倒的な迫力に気圧されそうになります。


 
 
細かな鱗状の模様を形成しながらドーム状にこんもりと盛り上がる白い石灰華。その繊細な模様の表面をエメラルドグリーンの苔が覆い、なんとも神秘的な美しさを生み出していました。


 
更に上流の崖からも温泉が自噴して、岩の表面を白く染めていました。辺りには硫黄の匂いが漂っています。この源泉群も、これから長い年月を掛けて、白と緑の自然芸術を創りだしてゆくのでしょう。


 
見上げると崖の上のあちこちから温泉が噴き出ており、それらが集まって湯の滝をなしている他、落ちる過程で他の岩にぶつかって、飛沫が飛び散り湯霧となって、陽光をキラキラ煌めかせていました。


 
 
エメラルドグリーンの苔は、崖下の石灰華のみならず、垂直に落ちる崖の断面にも生えており、その様はアイボリーホワイトとエメラルドグリーンを織り交ぜた巨大なカーテンのようです。


 
滝壺にあたる崖の直下には土嚢が積まれ、広い湯だまりがつくられています(左or上画像)。ちょっと浅いのですが、寝そべれば肩まで湯浴みでき、川水が程よくブレンドされて40℃前後の入りやすい湯加減となっていました。またその下流側にも土嚢でお湯を堰き止めた小さな湯船があり、こちらは川面よりちょっと高い位置にあるため加水できずに43~4℃のやや熱い温度だったのですが、混じりけのない源泉100%ですから、お湯の濃さがはっきりと実感できました。


 
上から滴ってくるお湯はかなり熱く、霧状に降るお湯の熱さに耐えながら、岩肌を流れるお湯に温度計を伸ばしてみたところ、53.5℃と計測されました。湧出時点ではもっと熱いはずです。この時一緒にpH計でも計測したのですが、表示されたpH8.3という数値はあまり正しくないような気がします(実際にはpH7.5~8.0の間ではないかな)。
お湯からははっきりとしたタマゴ味&臭の他、石膏味も含まれていました。湯中では白い湯の華が舞っている他、川水が混ざる湯だまりではお湯が薄いグレーに濁っていたのですが、これは川上から流れてくる砂鉄と温泉の硫黄が反応して硫化鉄が発生しているものと推測されます。


 
私が訪れた時は、河原でキャンプをしていた親子連れ、そして台北からバイクでツーリングしてきたおじさん2人が既に湯浴みを楽しんでいらっしゃり、一人でここまでやってきた日本人の私に、皆さん興味津々のご様子。現地では一緒に湯浴みしつつ、片言の中国語や英語でお喋りし、ついでに果物やお菓子などたくさんご馳走になっちゃいました。台湾の方はみなさんフレンドリーです。お互いに写真を撮り合ったので、念願叶って栗松温泉で入浴できた記念の写真を、台北のおじさんに撮ってもらいました。



帰り際、岩によじ登って全景を撮影。おじさん二人がこちらへ向かって手を振って、別れを惜しんでくれました。温泉で鋭気を養えたからか、あるいは目的を無事達成できて心身が軽くなったのか、帰路は登り一辺倒ですが、下りより10分多いだけの45分で駐車場まで戻ってこられました。
「台湾最美麗的野渓温泉」の称号に文句なく納得。台湾の自然の美しさと迫力を存分に体感できる、素晴らしい野湯でした。


台東県海端郷  地図

入場料や入山許可など不要。いつでも行けますが、増水期は渡渉が困難になるため、11月~4月の渇水期がおすすめ。

私の好み:★★★

コメント (8)
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