温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台湾の国道最高地点「武嶺」へドライブ その2 文山温泉(2015年5月)

2015年09月23日 | 台湾
前回記事のつづきです。

※本記事の内容は2015年5月時点のものです。私の訪問後に台風被害が発生して歩道などが崩壊し、2015年9月23日現在、ゲートが閉鎖(施錠)されて立ち入りできない状態となっているようです。

今回の「中横公路」横断ドライブでは、台湾国道最高地点である「武嶺」を越えることが大きな目的ですが、太魯閣峡谷の有名野湯である「文山温泉」に入ることも二番目に大きな目的です。
険しい場所に湧く文山温泉は水害の度に閉鎖と再開を繰り返しており、2005年には土砂崩れによって犠牲者が出る事態に及んだため、つい最近まで閉鎖されていたそうですが、その後徐々に部分的な開放が実施され、2015年春の時点で入浴可能な状態であるという情報を得たので、ダメ元で行ってみることにしました。


 
【12:36 泰山隧道(文山温泉入口)】(台8線167.7km地点)
天祥から「中横公路」を2キロ西へ登ると、泰山隧道というトンネルが現れ、この手前(花蓮側)の路肩に7~8台駐められる駐車スペースがありので、まずはここにレンタカーを止め、野湯を楽しむ支度を整えます。支度と言っても大したことはなく、具体的には、予め(朝の出発時に)水着代わりの短パンを履いておき、バッグに水分・タオル・貴重品などを詰め込んだだけ。


 

【12:45 歩道を歩き始める】
トンネルポータルの右脇から伸びる文山歩道を歩き始めました。はじめのうちは、トンネルの外側と峡谷の間に挟まれた断崖の上をほぼ水平に移動するのですが・・・


 
間もなく長い階段が現れ、峡谷の底へ一気に直下します。高低差は100m近くあるでしょうか。往きは良い良い帰りは怖い。帰路にこの長い階段を上らければいけないかと思うとウンザリします。でも私はこの前日に栗松温泉で標高差300~400の山道を上下していますから、この程度の階段なら屁の河童。


 
階段は途中でヘアピン状に右へ折れるのですが、そこにはトイレ(兼更衣室)が設置されていますので、ここで水着に着替えることができるみたいです。トイレから先に進んで素掘りのトンネルを抜けると・・・


 
峡谷の対岸へ渡る吊り橋の登場です。同時に渡れるのは5人までという心細い橋です。


 
吊り橋の上からの眺める太魯閣峡谷の上流部は、山水画を現実世界に再現させたような、息を呑む絶景です。橋から真下の渓流を見下ろすと、人々が水着姿で水遊びしていました。橋の直下に文山温泉があるんですね。お天気に恵まれた野湯日和です。


 
橋を渡りきったところで、更に階段を下ります。階段の入口には「入っちゃダメよ」の看板が立っていますが、ここから先は自己責任で看板の脇を通り抜けます。


 
階段の後半は手すりがなく、ステップ自体も傾いでおり、足を滑らせたら滑落しちゃいそうで本当に怖い。しかも天井が低いので、上半身を屈ませながらバランスをとっていかねばなりません。下りきった後にその階段を振り返ってみると、まるで岩に呑み込まれるかのような感じ。岩盤が崩壊したら一巻の終わりですね。おそろしい…。


 
峡谷の底まで下りきりました。かつてはこのステップを下りきったところに大きな温泉槽があり、太魯閣屈指の観光名所として槽を埋め尽くほど多くの観光客で賑わっていたのですが、水害により崩壊して土砂が溜まってしまい、いまでは構造物の一部が残るばかりです。



【12:54 文山温泉 到着】
槽が破壊されても温泉は湧き続ける。槽の跡から川岸をちょっとだけ下流側へ歩くと、左岸の岩盤から大量の温泉がドバドバ流れ出ていました。文山温泉に到着です。
折からの渇水の影響で川の水位が非常に低く、河原をらくらく歩ける状態だったのですが、普段は岸いっぱいに奔流が迫っているんだとか。



上画像は岩からお湯が奔出する様子を川下側から撮影したもの。訪問時に入浴できそうな場所は、お湯が湧出する岩窟の内部、岩窟すぐ下の湯溜まり、それらから流れ出たお湯と川の水がブレンドされる小さな湯溜まりの計3ヶ所でした。


 
源泉は複数あって、湧き出るお湯からは硫黄の匂いが漂い、温泉がこぼれおちる岩の表面は真っ白に染まっていました。


 
川面からちょっと高いところに、ガリバーが巨大な斧で横からザックリ切り込んだような岩窟があいており、その奥で左右に走っている岩の裂け目から温泉がドバドバ大量に自噴しています。岩窟内にはこのお湯で湯船をつくるべく土嚢が積まれており、いい感じのお風呂が出来上がっていました。
プールされているお湯はほぼ無色透明ですが、底面には灰白色に染まっていました。46.1℃という結構熱い湯加減なのですが、湯船の周りに陣取っていた方々は、熱さなんてヘッチャラと言わんばかりに涼しい顔で湯浴みなさっていました。


 
 
怒涛の勢いで温泉が大量自噴する箇所に温度計を突っ込んだところ、この湧出口でも湯船と全く同じ46.1℃でした。とにかくお湯の量が多いので、湧き出たお湯はちっとも冷めることがないんですね。なお水素イオン指数はpH7.6でほぼ中性です。お湯を口に含んでみたところ、苦味を伴うタマゴ味と軟式テニスボールのゴムみたいなイオウ風味がミックスして感じられました。ツーンと鼻孔を刺激する硫化水素臭が強く、(話は前後しますが)湯上り後もいつまでも湯の香が体に残りつづけました。
数値を測り終えたら、この湧出口近くで実際に入浴です。熱いのでじっくり長湯するわけにはいきませんが、湧きたてのお湯はとっても気持ち良く、最高な湯浴みを楽しめました。


 
岩窟の湯船の下から一本の太いパイプが突き出ており、ここから45℃近い熱さのお湯が滝のようにドバドバ落ちています。このお湯を背中に当てて打たせ湯を楽しんでいる方がいたので、私もそれに倣ってチャレンジしてみたのですが、とにかくすごい勢いなので、気合いを入れて臨まないと水勢で体が砕け散りそうになりますし、熱いのでじっと当たっていられません。カメラのタイマーを設定して自撮りした際は、まさに滝行をしているような心境でした。


 
岩窟の湯船のお湯が溢れ出るところに、3~4人入れそうな湯溜まりができていましたので、ここでも入浴してみました。嵩が浅いので寝そべらないと肩まで漬かれませんが、岩窟の源泉より若干冷めて入りやすい温度になっており、この湯溜まりは他の方からも人気を集めていました。お湯は青みを帯びた灰白色に薄く微濁していました。


 
上述の湯船や湯溜まりから流れ出たお湯が川へ合流する河原にも、先客が手掘りでつくった一人サイズの湯溜まりがいくつかあり、ここは川水とブレンドされてマイルドな温度に落ち着いていましたので、枕代わりになる岩を適当に拾い、湯に寝そべって入浴してみたら、これがまたメチャクチャ気持ち良い。体が火照ったら、目の前の川に飛び込んでクールダウン。これもまた爽快です。
湯量豊富なので、野湯にありがちな淀みや鈍りとは無縁であり、どこの湯溜まりも実にフレッシュ。熱い湯もあれば適温もあり、川遊びも出来てとっても楽しく、太魯閣の自然を存分に味わえる素晴らしい温泉でした。

ところでこの文山温泉を擁する「太魯閣国家公園」は、日本統治時代に「次高タロコ国立公園」と称されていたんだそうですが、その当時から文山温泉は既に「深水温泉」としてその存在が知られており、台湾の方のブログで当時の画像が紹介されていました(こちらをご参照あれ)。また、台湾の国家図書館が提供している「台湾記憶」で調べてみたら、当時の写真を数枚見つけることができました。実際の画像は右リンク先でご覧ください(これこれなど)。当時は小さな東屋が立てられていたんですね。てっきり深い峡谷の水場に湧く温泉という意味かと思いきや、1914年の太魯閣事件の際に日本人の深水少佐がこの温泉を発見したことが名前の由来なんだとか。日本統治時代から人々に親しまれてきた文山温泉。最近再び豪雨の被害に遭い、立ち入りができなくなってしまったようですが、いよいよ永遠に過去のものとなってしまうのでしょうか…。


花蓮から天祥行(あるいは梨山行)のバスに乗車。天祥から徒歩25分+トレイルを10分歩行
花蓮県秀林郷富世村  地図

文山歩道開通行可能時は入浴可能ですが、2015年9月現在は歩道が封鎖されているため入浴不可。今月に入った頃から「太魯閣国家公園」公式サイト内の「遊歩道通行状況」一覧から文山歩道が削除されており、いつ再開されるか不明です。詳しくは「太魯閣国家公園」公式サイト(日本語版)をご覧ください。

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コメント (2)
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