温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

雲仙温泉 小地獄温泉館

2011年06月07日 | 長崎県

幾度も温泉巡りをしていると、変に通ぶって、地元に根ざした鄙びた施設こそが素晴らしく温泉の真髄だ、なんていう固定概念に拘泥しちゃって、ひどい場合には観光客向けの施設には見向きもしなくなる傾向すらありますが、鄙びていようが洗練されていようが、地元民向けであろうがあからさまな観光施設であろうが、良いものは良いと客観的に評価できないと、せっかく足を運んで遠くまで来ているのに、目の前にあるおいしい思いをみすみす見逃すことになりかねないわけです。

雲仙温泉の「小地獄温泉館」は国民宿舎「青雲荘」の附帯施設で観光客向けの日帰り温泉入浴施設。当地を紹介するガイドブックには必ず紹介されている観光客向け温泉施設の典型ですので、上述のような半可通丸出しのくだらない先入観に支配されつつある私は、当初訪れるつもりは無かったのですが、まぁ時間があるから寄ってみるべ、と特に期待もせずに入ってみたのでありました。

「八角堂?を二棟ならべた木造の湯屋がいかにも観光客に迎合していやがる」と私は外観を見ただけで早くも鼻息荒く、絶対に見下してやるぞという下衆な怪気炎を上げながら中へ突入。脱衣所は案の定中高年の観光客ばかりで、「やっぱり温泉素人ばかりじゃねぇか」といかにも温泉のすべてを知り尽くしたかのような不遜な態度で室内を見回しながら、いざ浴室へ。

 
そこには石造りの浴槽が大小ふたつ並んでおり、見事なまでにきれいな乳白色濁りのお湯が張られていました。大きい方の浴槽には湯口からお湯が直接注がれており、湯温は42~3℃くらい、一方小さな方はそれより若干ぬるめです。おそらく加水されているかと思いますが、お湯はしっかり掛け流し。浴槽傍の壁には、硫化水素中毒を防ぐ目的なのか、換気用のルーバーが取り付けられています。木造の湯屋と白いお湯とのコントラストが何とも言えないいい雰囲気です。そうです、いいお風呂なんですよ。
あれれ、さっきまで意気軒昂に虚勢を張っていた私はどこへ行ってしまったのかしら…。


ぬる湯槽の隣には打たせ湯もあり、ミルクのような硫黄のお湯を頭からかぶることができます。雲仙温泉郷の中でも小地獄は最大の湧出量(1日約440トン)を誇るだけあり、贅沢な湯使いは立派です。
火山性の硫黄泉ですが質感は結構マイルドで、口に含むと酸味が遅く舌に伝わり、頬をすぼめる収斂もゆっくりやってきます。硫黄臭もほんのりとしており、お湯を掬って周囲深く嗅いでようやくわかる程度のものでした。単純硫黄泉なので成分が少ないということもあるでしょうし、加水によって薄まっていることも当たりが優しい原因でしょう。でも無駄に濃くて刺激が強いお湯よりは、マイルドな方が誰でも支障なく入れるのですから、のんびり入浴するには向いているお湯と言えそうです。

安い鍍金はすぐにはがれるんですね。半可通な温泉ファンの私は、さっきまでの意地っ張りを捨て、お風呂の雰囲気とお湯の質感の良さに率直に白旗を上げざるを得ませんでした。施設としては鄙びているわけでもなければ洗練されているわけでもなく、特に面白い設備もないのですが、浴場としてはちゃんとよくまとまっており、そもそも掛け流しの乳白色硫黄泉に入れるのに文句を言う理由なんていないでしょう。自らの無知蒙昧を恥じるきっかけになった浴場でありました。


単純硫黄温泉(硫化水素型) 90℃ 溶存物質0.228g/kg

長崎県雲仙市小浜町雲仙500-1
0957-73-3273(青雲荘)
ホームページ

9:00~21:00
400円
ロッカー・石鹸・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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雲仙温泉 湯の里共同浴場

2011年06月07日 | 長崎県
 
「湯の里」というわかりやすく微笑ましい名前が冠されたこの浴場は、雲仙温泉に3軒ほどある共同浴場の中では最も古い共同浴場らしく、温泉街からちょっと奥まったわかりにくい場所に立地している地元のためのお風呂。その立地ゆえに私は辿りつくまで迷ってしまいました。切妻の正面は玄関が男女別に分かれていて、いかにも銭湯らしい佇まいです。

建物前には5ナンバーの車が2~3台ほど停められる駐車スペースがあるので、そこへレンタカーを突っ込んでいざ中へ。100円という素敵な料金を券売機で支払い、その券を番台に座っているおばちゃんに手渡します。やはりいかにも銭湯らしい板の間の脱衣所は、外観から受ける印象を覆し意外にも広い空間。


浴室内にはちょっと深めの小判型浴槽が据えられていました。塩ビの湯口からドボドボと源泉が投入されています。弱く白濁したお湯からは、活発な火山活動の息吹を感じさせる硫黄臭と焦げたゴムのような匂い、そして口腔を収斂させる酸っぱいレモン味と塩味が感じられました。
他の温泉ファンの方のレポートを拝見していると、しばしば「ぬるかった」という記述が見られますが、運が良かったのか訪問時は絶妙な湯加減でして、思わず長湯しちゃいました。また典型的な硫酸のお湯ですが、溶けている成分がそんなに濃くないためか他の明礬・緑礬泉によくある刺激は程々に抑えられ、優しい質感が得られました。
シンプルな造りだからこそお湯の質感に真正面から向き合えるお風呂。白濁の硫黄泉に100円で入れるなんて、当地の方が本当に羨ましい限りです。


酸性・含鉄(Ⅱ・Ⅲ)・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩泉 44.0℃ pH2.3 自噴(量不明) 溶存物質1.470g/kg 成分総計1.616g/kg

長崎県雲仙市小浜町雲仙303  地図
0957-73-2576

9:00~23:00
100円
備品類なし

私の好み:★★★

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阿蘇内牧温泉 田町温泉

2011年06月07日 | 熊本県
※田町温泉は2012年2月末を以て廃業しています

鄙びた温泉が好きな御仁にはたまらない外観の共同浴場。ネットで内牧温泉を調べているとき、この田町温泉の姿を見て「他はともかく、ここは何としてでも行かねばならぬ」と強く決意。でも開いてる時間が意外と短いので、予定をやり繰りして無事入湯することができました。


多くの温泉ファンが感嘆したこのファサード。ブロックの壁にトタン葺きの屋根は、ちょっとした地震や台風の襲来でたちまち崩れちゃしそうな感じ。興味が無い人にとってはただの茅屋に過ぎないんでしょうが、ボロさに反比例して並々ならぬ反応を抱いてしまうのが温泉ファンの不思議な心理であります。


21世紀に入って10年が経ちますが、いまだにこんな湯屋があるなんて、まさに奇跡。筑豊の炭住の長屋みたいですね。ちなみに無人。玄関を入ったところにある番台跡のような場所にある料金箱へ100円を投入。


奥に細長いシンプルな浴室。室内の広告看板がいい雰囲気を醸しだしてます。
浴槽は2~3人サイズの湯口側と4人サイズの下湯に2分割されていますが、常連さんは決して湯口側に入らず、下湯を利用していました。みんなで使うお湯を汚しちゃいけないというマナーが徹底されているんですね。ガキんちょをこういうところに連れてきて、マナー教育させたいもんだ。

お湯は微かに白濁しながらも僅かに黄色を帯びた透明でトロトロとした質感がありました。温泉成分の付着で洗い場は赤茶色に染まっています。塩ビのパイプの湯口から加温されたお湯が掛け流されています。加温されているものの、湯加減は若干ぬるめ。金気のような味と匂いを有し、特に金気は正苦味泉的な独特のものです。

たとえ湯屋はボロくても常連さんからの愛され方は尋常ではないようで、訪問時はひっきりなしにお客さんが入ってきて、常に混雑していました。地元の人しかわからない、地元の良さがここにある。地域密着という言葉がとっても似合う共同浴場だと思います。


内牧温泉(田町温泉組合第2号源泉)
ナトリウム・マグネシウム-硫酸塩泉 34.5℃ pH7.5 32L/min(動力揚湯) 溶存物質1.18g/kg 成分総計1.19g/kg

熊本県阿蘇市内牧172  地図
0967-32-1164
駐車場あり

16:00~21:00
100円
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (6)
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阿蘇内牧温泉 新穂湯

2011年06月03日 | 熊本県
 
たくさんある阿蘇内牧温泉の共同浴場のひとつです。2軒ほど隣にはやはり共同浴場の「雲海薬師温泉」があるので、どちらに入ろうか迷ったのですが、今回はアットホームな雰囲気が漂っていそうな「新穂湯」を選択しました。
画像では庭木に阻まれて湯屋がよく見えませんが、「新穂湯」と彫られた石が置かれていなければ、普通の民家と勘違いしてしまいそうな外観。本当にここで良いのかあたりをウロウロしていると…

 
湯屋の左隣に建つ母屋から小学生の坊やが「お風呂はここですよ」と言いながら出てきました。その声を聞いて安心した私の顔を見るやいなや、坊やは「200円です」とすかさず口にし、まさか子どもが対応するとは思わずにキョトンとしていたら、続けてそつなく「あそこがお風呂の入り口です」と離れの湯屋を指さしました。よほど接客に慣れていると思われますが、小さいうちから客の先手が打てる能力を持っているのですから、将来どんな大人になるんでしょうか。
後ほど母屋を改めて見てみると、玄関に「番台はこちらです」と書かれた紙や料金表が貼ってありました。そして表札には「新穂」の2文字が。浴場名はこちらのオーナーさんの苗字だったんですね。


湯屋は無人ですが、近年新築(改築?)されたらしく、館内はどこも綺麗で清潔、特に脱衣所では建材の匂いが漂っていました。
お風呂は男女別の内湯がひとつずつ。石板貼りの扇形の浴槽があるのみです。無色透明で芒硝の匂いと味を有し、トロミのあるお湯です。湯温は42℃くらいでしょうか。しっかり掛け流されています。


浴室内には画像のような上がり湯(掛け湯)専用槽があるのですが、どうやらここのお湯はどうやら浴槽のお湯と異なる源泉を使っているのです。見た目はごく薄い褐色透明、モールのような匂い+アンモニア的匂い+弱い金気臭と金気のような味を帯びており、浴槽のお湯とは明らかに違う特徴です。つまりこの施設では2つの源泉を持っているわけですね。さすが阿蘇内牧、源泉数が豊富なだけあります。2つの源泉の内、片方を掛け湯限定にしているのは、例えば湧出量が限られているなど、浴用とするには支障があるからでしょうか。

民家の軒先に建てられた離れの小さな湯屋ですが、綺麗でシンプルでお湯も良く、ほのぼのしていてなかなか面白い共同浴場でした。こうしたお風呂が街角にごく自然に存在しているんですから、内牧って素敵な場所ですね。



内牧温泉(新穂湯)
ナトリウム・マグネシウム-硫酸塩泉 44.0℃ pH7.6 67L/min(動力揚湯) 溶存物質1560mg/kg 成分総計1570mg/kg

熊本県阿蘇市内牧46-1  地図
0967-32-1131

7:00~22:00 無休
200円
備品類なし(新穂さん宅でタオル・石鹸の販売あり)

私の好み:★★★

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阿蘇内牧温泉 大阿蘇

2011年06月03日 | 熊本県
 
阿蘇温泉郷の中でもズバ抜けて源泉数が多い阿蘇内牧温泉には共同浴場が11軒もあり、共同湯巡りが好きな人間にとっては垂涎の地であります。今回取り上げる「大阿蘇」の本業は旅館なのですが、その浴場は銭湯として地元の人から愛用されており、だれでも気軽に利用できるので、私も行ってみることにしました。民家のような瓦屋根の上に「天然温泉」と書かれた看板がよく目立つ湯屋は、明らかに小規模共同浴場そのものであり、とても旅館のお風呂だとは思えぬ佇まいです。


この施設は基本的に無人のようで、男女が別れている入口のドアを開けると、そこには料金入れがありました。これだけなら別に珍しくありませんが、料金を実際に投入すると、投入口からチリンと鈴の音が鳴るんです。ちょっとした細工ですが、これで無銭入浴を防いでいるわけですね。それにしても100円という料金設定は驚きです。
ちなみに脱衣所には熊本県の温泉には必ず備え付けられている扇風機がありません。


お風呂は浴槽が一つあるだけの極めてシンプルな造り。自家源泉のお湯はほぼ透明ながら微かに薄い灰青色を帯びているように見えます。口にすると甘み+微金気+微苦味が、そして微金気臭+微硫黄臭が感じられます。トロミのあるお湯で、40℃くらいで長湯できる湯加減。弱めですが気泡の付着も見られます。苦味の正体は硫酸マグネシウムでしょうか。100円の共同浴場であまりお目にかかれない正苦味泉に入れるとは嬉しい限りです。

浴室内には体を洗うためのカランが無いのですが、利用客は常連さんが多いために使い勝手は手馴れており、皆さんは必ず湯口付近で脱衣所を向いて洗髪をしていました。そのスタイルがこちらの流儀のようです。


浴槽の上には温泉の効能が箇条書きされているのですが、浴用の適応症より飲用の適応症の方が多い点が興味深いところ(浴用は8つで飲用は16こ)。常連さんもしきたりかのように皆さん必ず飲んでいました。

シンプルなお風呂ですが、掛け流しで芒硝泉と正苦味泉それぞれの特徴がよく出ている良いお湯でした。えてして良質なお湯に入れる施設ほど安い料金だったりしますが、ここはその典型ですね。おすすめです。


阿蘇温泉(大阿蘇旅館)
ナトリウム・マグネシウム-硫酸塩泉 44.5℃ pH6.87 98.5L/min(掘削自噴・149m) 溶存物質1782.6mg/kg 成分総計1807.1mg/kg

熊本県阿蘇市内牧135  地図
0967-32-0157

7:30~22:00
100円
備品類なし

私の好み:★★★

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