温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

あかざわ足湯(旧・赤沢温泉露天風呂)

2013年03月21日 | 静岡県

各メディアが河津桜の満開を伝えていた2013年3月某日、春の陽気に誘われて、久しぶりに伊東市南端の「赤沢温泉露天風呂」へ行ってみることにしました。伊豆の東海岸には海辺に面している絶景の露天風呂がいくつか点在していますが、その中でもこの露天風呂はワイルドな雰囲気とともに、混浴であり、且つ無料で入浴できることで有名でした(←表現を過去形にしているのが、今回の記事のミソ)。
場所は海岸沿いを走る国道135号のすぐ下にあるのですが、道路からはやや離れている上、植栽や段によって視界は遮られているため、国道を走る車から温泉を見ることはできません。でも弧を描いている海岸線の防波堤や砂浜からは思いっきり丸見えなんですね。なお付近には駐車場があり(夏季は有料)、バス停からも近いので、アクセスしやすいのが嬉しいところです。


 
赤沢温泉街の南端の国道沿いに建っている「民宿砂場」が、この露天風呂を見つける際の目印なのですが、久しぶりに訪れてみたら、車が一台止まっていたものの、館内は暗くて人がいる気配が感じられず、窓のカーテンも閉められており、営業しているのか否か判然としない様子でした。
でも玄関前にむき出しになっているコンクリの枡には、訪問者の有無に関わること無く、ぬるい温泉が絶え間なく流れ込んでいました。



民宿に隣接して「第7号温源泉」の施設があり、上述のお湯や後述する露天のお湯はここから供給されています(露天に関しては他の源泉も混合して使用しています)。



民宿の傍には、妙に立派な公衆トイレ「赤沢の清々庵」もあるのですが、わかりにくい場所にこんなもの建ててどうするんでしょう。ま、トイレは綺麗であることにこしたことはありませんが。



さて、露天へ行きま・・・。んんん? あれれ?



看板には「あかざわ足湯」と書かれているではありませんか。しかもその下にはこんな警告文まで掲示されています(以下抜粋)
禁止
ここは、露天風呂ではありません。管理者がいない為衛生面・安全面について配慮がなされていません。また、水質についても、検査されていませんので入浴できません。万が一入浴してけが・健康をそこなうことがあっても、一切責任を負いません。また、動物の入浴や近辺を裸でいることも風紀上良くないので、一切行わないで下さい。
あちゃ…。ここでは入浴できなくなってしまったようです。東京からアクセスしやすい場所にあるにもかかわらず、開放的でワイルドな混浴の露天風呂ですから、いろんな利用者がここを訪れ、その中には常軌を逸している有象無象もいたと聞きます。以前から不穏な情報を目にしていましたが、良からぬことが重なって、遂にこのような事態となってしまったんですね。その理由には衛生面云々など運営管理上の問題もあるのでしょうけど、あくまで私の憶測ですが、混浴という特殊な事情ゆえの「風紀上…」というところも大きいような気がします。


 
残念ながら入浴は諦めることにしましたが、その様子だけは見ておくことにしました。お風呂は以前の姿のままです。そもそも全身浴するための浴槽ですから、足湯にしては深く、しかも座りにくくて、縁に座ったら服が濡れちゃいそうです。


 
湯船と相模灘が同化しているかのような、まさに絶景の露天風呂。入ろうと思えば入れなくはないですし、実際にまだ入っている方もいるかもしれませんが、一応今回は注意の看板に従い、入浴を遠慮しました。残念です。



時折、浴槽の側面からボコボコと音や泡を立てながらお湯が吐き出されていました。湧出温度が低い温泉をそのまま使用しているため、もし全身浴するとしても、暖かい季節ならば爽快感が楽しめるかと思いますが、冬では寒くて辛いでしょう。特にこの場所は海風が直撃しますから湯上りの寒さは尋常ではないはずです。

数年前に私が入浴した際のメモを見てみますと、お湯の質は無色透明、僅かに芒硝的な知覚があり、ごく薄く塩味も感じられるが、塩味に関しては泉質由来ではなく海の波しぶきが飛んでいるだけなのかもしれない、とても薄い温泉で浴感には特筆すべき点はないが、底が非常に滑りやすくて、浴槽内で直立できないほどツルツルである(でも不快な沈殿や藻類の浮遊はあまり見られず)、とにかくぬるい(35℃以下)…と記されていました。今でもほとんど同じでしょう。入口の看板に貼られていた分析表によれば、成分総計0.230g/kgですから薄く感じるのは当然ですね。なお湯使いは加水加温循環消毒なしの完全掛け流しで、排湯は海へそのまんま垂れ流されています。また同分析表には温泉利用許可取得年月日として「平成24年12月14日」と記されていました。この露天が正式に浴用から足湯に切り替わってから、まだあまり時間が経っていないようです。
なんだかんだで、閉鎖されずに足湯として生き残れたのは幸いなのかもしれません。


対島7号・8号・9号・11号泉
アルカリ性単純温泉 37.6℃ pH8.9 成分総計0.230g/kg
Na+:53.6mg,
Cl-:26.1mg, SO4--:53.9mg, HCO3-:42.8mg,
H2SiO3:32.6mg,

伊東駅~伊豆高原駅を結ぶ東海バスで「赤沢海岸」バス停で下車し、海岸に沿って南下する(1分)
静岡県伊東市赤沢28-2
伊東市観光協会ホームページ

無料
備品類なし

私の好み:入浴できなかったので評価不可
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夜間瀬温泉 遠見乃湯

2013年03月19日 | 長野県
 
前回に続いて夜間瀬温泉です。今回は露天風呂からの眺望が素晴らしい「遠見乃湯」を取り上げます。直線で構成されているスッキリとしたデザインの、温泉施設とは思えない小洒落た建物ですね。



この日は隣接する「ホテル・セラン」で宿泊したのですが、「遠見乃湯」はこのホテルの付帯施設であるため、宿泊客は無料で温泉を利用することができます。その際には宿泊客であることを受付に明示するため、客室に用意されている浴衣を纏うことが求められます。
もちろん入浴のみでこちらを訪れる方も多く、訪問時にはこの座敷でゆっくり休憩する家族連れのお客さんがたくさんいらっしゃいました。



ウッディーでぬくもりと柔らかな印象に満ちた脱衣室。室内はよく手入れされており綺麗で快適です。



入浴エリアは屋内の洗い場と屋外の露天風呂の2つに分かれており(内湯は無し)、洗い場を通らないと露天へは行けません。このレイアウトによって、脱衣後に掛け湯もせずいきなり露天へドボンと直行するような不届きな輩の発生を抑制できるものと思われます。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が7基設置されており、石鹸とシャンプーが備え付けられていますが、コンディショナーやボディーソープはありません。


 
広い岩風呂の露天浴槽は内部がモルタルで固められており、また頭上の一部には屋根が掛けられています。全体的にゆとりのある造りで、後述するパノラマを邪魔せず、心置きなく開放感を味わえる空間になっていました。なお浴槽の底はとても滑りやすいので、その点は要注意です。


 
湯口はわかりやすい場所に2本あり、1本は岩の上から癖のない適温のお湯が滝のように落とされているもので、もう1本はワインレッドの耐熱塩ビ管から吐出されています。後者については源泉そのままの、直接手で触れないほど熱いお湯が吐出されていました。この他にも槽内には数箇所の隠し湯口があり、それらによって広い湯船に発生しやすい温度ムラを防止していました。一方、排湯に関しては、湯口とは反対側で溢れたお湯が排湯されているほか、底には循環用の吸引口があって強力にお湯を吸い込んでいましたので、こうした状況から推測するに、源泉100%のお湯を常時投入しながら循環濾過を併用しているものと思われます(循環ろ過装置使用については館内表示に明記されています)。

前回取り上げた「日新乃湯」と同じ源泉を用いれているのですが、塩ビの湯口からは「日新乃湯」と同じ知覚が得られたものの、循環濾過されているために、浴槽全体としては「日新乃湯」のような赤茶色の着色などは見られず、無色透明でほぼ無味無臭の特徴に欠けるものと化しており、それどころか、湯船の傍らに立ってるだけでもわかるほど強い塩素臭が鼻を刺激してきました。不特定多数の観光客が利用する温浴施設ですから、塩素消毒はやむを得ない措置でしょう。ただ、嗅覚を研ぎ澄ますと僅かに金気が感じられ、また、かろうじて浴槽の岩と湯面が接するところには赤茶色のラインが形成されているので、こうした点に本来は個性的な特徴を有している源泉の面影が見受けられます。


 
普段から、拙ブログでは循環ろ過により特徴が失われてしまった温泉を取り上げていないのですが、それでも今回敢えてこの施設を記事にしたのは、「遠見の湯」という名前が示す素晴らしいパノラマを眺望できるからであります。「サルと何とかは高い所が好き」と言いますが、その何とかの一員である私は見晴らしの良いところがとっても大好きですから、眼下に広がる善光寺平、そして北信五岳や北アルプスを入浴しながらにして眺めることができるこの露天風呂に出会ったときにはとても感動してしまい、絶景に見惚れてあやうくお湯に逆上せるところでした。

眺望の視線を善光寺平から志賀方面へ、つまり右から左に移してゆきますと、その途中に湯田中の温泉街が広がっているのですが、その湯田中へ向かって信州中野方面からクネクネとした一筋の線が伸びており、目を凝らしてその線をじっと見つめていますと、時折線をなぞって箱状の物体が動いているのが確認できます。これはもちろん長野電鉄の電車ですね。お風呂に入りながら、まるで模型のように走る長電の「ゆけむり」や「スノーモンキー」そして「マッコウクジラ」をはっきり目視することができました。


 
宿泊中はホテルの客室にいても退屈だったので、夜も露天に入ったのですが・・・



その夜景が実に素晴らしい。月並みな表現ですが、宝石を散りばめたような数多の煌めきが眼前に広がっていました。画像の左方は湯田中や渋の温泉街、右が信州中野や小布施・長野市街など善光寺平です。この時はあいにく曇り空だったのですが、もし星空であったならば、見渡す限り煌めきに満ちていたのでしょうね。

お湯はいまいちですが(お湯重視の方は「日新乃湯」へ)、露天風呂から望むことができる眺望の見事さは信州屈指ではないでしょうか。特にお湯へのこだわりはないけれども、開放感を満喫したい方には是非おすすめしたいお風呂でした。


単純温泉 51.5℃ pH7.5 溶存物質851.1mg/kg 成分総計874.7mg/kg
Na+:146mg(59.73mval%), Ca++:71.3mg(33.39mval%), Fe++:0.34mg(0.11mval%),
Cl-:266.0mg(69.6mval%), HCO3-:172.4mg(26.2mval%),
H2SiO3:149.3mg, CO2:23.6mg,
衛生管理のため循環ろ過装置を使用

長野県下高井郡山ノ内町夜間瀬6995
0269-33-1111(ホテルセラン)
ホームページ

平日15:00~22:00、土日祝11:00~22:00
600円
ロッカー有料(小100円・大200円)、ドライヤーあり、石鹸とシャンプーあり

私の好み:★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夜間瀬温泉 日新乃湯

2013年03月18日 | 長野県

1年近く前のことですが、湯田中温泉から木島平へ北上する途中にある夜間瀬(よませ)温泉の日帰り入浴専門施設「日新乃湯」を利用したときのことを書き綴らせていただきます。善光寺平を一望する高台に建てられたログハウス風の施設でして、冬になればスキーヤーで賑わいますが、訪問時はスキーシーズンではなかったため、夕方にもかかわらず、かなり空いていました。
建物の前には、まだ建立されて間もないものと思しき「妙法七福神」が並べられており、また付近にはドーム状の仏舎利もあって、辺りには宗教的な匂いが漂っているようでした。



外観同様に館内もぬくもりが感じられるログハウス調です。フロントにて料金を支払い、階段を下りて浴室へと向かいます。なおフロントと同じフロアには休憩スペースが設けられていました。
内湯にはタイル貼りで長方形の浴槽がひとつ据えられ、シャワー付き混合水栓が6基設置されています。洗い場には石鹸こそ備え付けられているものの、シャンプー類はありません。


 
底より立ち上がっている塩ビのパイプからは、浴槽のお湯の鮮度をキープするに十分な量の源泉が注がれており、その槽から惜しげもなくオーバーフローしています。湯船に張られているお湯は無色透明ながらほんのり赤みを帯びており、おそらく湧出時点では完全な無色透明だったものが、大気中へ放出されることによる圧力低下や温度低下などによって濁りが発生しているんだろうと思われます。お湯が溢れてゆく床の流路は赤く色づいており、湯口のまわりは赤黒色に、特に湯口直下は真っ黒に濃く染まっています。また湯面と接する浴槽側面のタイルには、析出の付着によって赤色を帯びた小さな庇が形成されていました。

湯使いは完全放流式で加水加温循環消毒なし。ちょっと熱めの湯加減で、入浴中に肌をさすったときに得られた浴感はキシキシといったところ。キリっとした鮮度感が素晴らしく、多少のぼせても長湯したくなるような、非常に気持ちの良いお湯でした。
お湯を口にしてみますと、鉄気と焦げたような黒ゴム感、遅れてタマゴ的な味や匂いが感じられます。とても単純温泉とは思えないような、いろんな要素を擁している個性的な知覚ですね。



見晴らしの良い場所に建てられているにもかかわらず、露天風呂は塀に囲まれているため、残念ながら景色は望めません。岩風呂風のレイアウトですが浴槽自体はコンクリ造で、底がとても滑りやすく、平衡感覚が先天的にヘッポコな私は何度かコケそうになってしまいました。
こちらも完全放流式の湯使いで、その供給口は2つあり、ひとつは隅にある岩の湯口。そして…


 
もう一つはこの湯枡でして、一旦源泉をここに落としてから竹筒で浴槽へと流し込んでいます。枡の縁には手桶が置かれているので、本来は上がり湯なのかもしれません。
外気の影響か源泉投入量の問題か、露天のお湯は内湯よりも若干湯温が低く、味も匂いもややパワーダウン(特に焦げたゴム感は喪失していました)、鮮度感もやや衰えているようでした。お湯のコンディションは内湯の方が明らかに良好なのですが、ちょっとした違いで感触に違いが表れてしまうのですから、かなり繊細なお湯なんでしょうね。でも、露天エリアでは高原の爽快な空気で火照った体をクールダウンできますし、内湯の熱いお湯が苦手な方でも、露天でしたらどなたでも入れるでしょうから、それだけでも露天の存在価値は十分にあるでしょう。
夜間瀬温泉には日帰り入浴ができる施設がいくつかありますが、お湯の質を重視するなら、ここが一番ですね。


単純温泉 51.5℃ pH7.5 溶存物質851.1mg/kg 成分総計874.7mg/kg
Na+:146mg(59.73mval%), Ca++:71.3mg(33.39mval%), Fe++:0.34mg(0.11mval%),
Cl-:266.0mg(69.6mval%), HCO3-:172.4mg(26.2mval%),
H2SiO3:149.3mg, CO2:23.6mg,

長野県下高井郡山ノ内町坂原7024
0269-33-8222

11:00~22:00 月曜定休(祝日の場合は翌日)
500円
ロッカー(100円有料)あり、ドライヤーなし

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

みやま温泉 わくわくの湯

2013年03月17日 | 長野県

信州中野から志賀高原へ向かうオリンピック道路の道端にたくさんはためいている幟に誘われて、「民宿みやま」が運営している日帰り入浴施設「みやま温泉わくわくの湯」で入浴してまいりました。沓野・渋インター目の前というわかりやすいロケーションに加えて、比較的キャパの大きな駐車場も完備されているため、車でアクセスするにはとても都合がよく、今回も地図やカーナビも使わずに到着できました。


 
この施設における面白いポイントのひとつが、入口に設けられた回転ゲートでしょうね。画像左(上)が入口、画像右(下)が出口の様子でして、500円玉を機械に投入してゲートを回転させて中へと入るわけです。なおゲート前には両替機が設置されていますし、窓口にはスタッフさんも常駐しているので、500円玉を持っていない人でも大丈夫です。この手のゲートは有料の公園や遊園地などでは目にする機会の多いのですが、なぜか温泉施設ではあまり導入されていませんね。同じ信州ですと、白馬の「倉下の湯」でも回転ゲートを採用していますが、「わくわくの湯」では90度角で4方向に伸びたD字型のゲートを垂直軸で回転させるのに対し、「倉下の湯」は回転軸が斜め下を向いている3本のアームを回すタイプですから、両者の回転ゲートは似て非なる機種なんですね。ま、そんな些細な事はどうでもよいのですが。



館内のお座敷では食事も可能。スタッフの方はとても朗らかに対応してくださりました。



広くて明るい脱衣室。洗面台は2台設置されており、ドライヤーも用意されています。扇風機もあるので、湯上りのクールダウンもばっちり。あえて掲載しませんが、ロッカーには透明プラ板の扉が用いられているので、納めた中身が丸見えだったりします。


 
お風呂は露天オンリーで内湯はなし。池のように広い岩風呂の真ん中には一本柱の東屋が立ち、周囲には庭木が植えられ石灯籠も置かれ、ゆるい感じですが和風庭園をコンセプトにしたような設計です。なお塀によって周りを囲っているため、景色はあまり楽しめません。


 
露天へ出る手前に洗い場が設けられているのですが、カランは3つしかありません。しかしながら、露天風呂脇に建つ離れ小屋の中にも洗い場があるので、もし脱衣所に隣接した洗い場が全て使用中でしたら、一旦露天へ出て、この離れを使えばOK。



女湯との仕切り塀からは2本の打たせ湯が落とされているのですが、傍に貼られている注意書きには熱いので使わないでほしいという旨が記されていました。恐る恐るお湯に指先を触れてみたら、本当に熱かった…。



こちらは湯船の湯口。コーヒーのネルドリップみたいな布で湯の華を濾しとっているのですが、それでも湯中では綿埃のような湯の華がたくさん浮遊していました。打たせ湯同様に湯口から吐出されているお湯は篦棒に熱く、館内表示によれば湧出温度は91℃なんだそうですが、ほぼそれに近い状態のお湯が投入されているのかもしれません。なお、湯口付近にてオーバーフローがあり、反対側の浴槽縁でも塩ビ管によって排湯されており、槽内循環しているような様子は確認できなかったので、断言はできませんがおそらく放流式の湯使いかと思われます。また浴槽の広さに対して源泉投入量が少ないのですが、これは投入量を絞ることによって温度調整を図っているものと想像されます(湯量の他、加水によっても温度調整しています)。

お湯はほぼ無色透明ですが、湯面下の槽内は硫黄の付着のためか白っぽく染まっており、その影響を受けているのか、お湯自体が若干白く霞み掛かっているようにも見えます。また湯面と接する浴槽の石には、やはり硫黄の付着のため黄色いラインが形成されています。硫黄を含むお湯らしく、ゴムを齧ったような味と砂消しゴムのような匂いが感じられますが、味・匂いともに印象に残るようなインパクトは無く、白っぽい槽内や黄色い硫黄の析出を見ると硫黄感がはっきりしていそうな温泉を想像してしまいますが、その見た目とは裏腹に硫黄っぽさがあまり強くなかったのは意外でした。
硫黄感に加えて石膏っぽい知覚も含まれているようでして、硫酸塩の影響なのか、お湯に浸かるとキシキシと引っかかる感触が肌に伝わりますが、お湯から上がるとその肌にスベスベ感がもたらされ、お湯が持つ不思議なパワーを実感することができました。

便利な立地ですし、硫黄感を有するお湯の露天風呂に入れるので、観光のついでにひとッ風呂浴びるには都合が良い日帰り温泉だと思います。


含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉(硫化水素型) 91.0℃
(他の委細なデータは確認し忘れてしまいました…)

長野電鉄・湯田中駅より長電バスの熊の湯硯川線・奥志賀高原線・上林線のいずれかで「沓野美明」下車、徒歩2分
長野県下高井郡山ノ内町平穏821  地図
0269-33-2260
ホームページ

10:00~21:30(入館は20:30まで) 第1・3水曜定休
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★


●おまけ
 
「わくわくの湯」に隣接する「民宿みやま」の真裏には、地元住民専用の共同浴場「新弥生の湯」があります。もちろん部外者である私は利用できませんでしたので、外観を見学するのみにとどめておきました。洗濯湯が併設されているところは、当地の日常生活と温泉がいかに密着しているかを表しているようです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

野沢温泉 十王堂の湯

2013年03月16日 | 長野県

伝統的な湯屋建築が多い野沢温泉の外湯にあって、「十王堂の湯」はまるで機械室か変電所を思わせるような、温泉風情の欠ける無機質で装飾性の無い外観をしていますが、その見た目とは裏腹に、そこで入れるお湯のクオリティは温泉ファンの間でも定評があります。


 
目の前には入母屋で銅葺き屋根の閻魔堂が建っています。閻魔などを対象にする十王信仰が「十王堂の湯」の名前の由来になったことは言わずもがなですが、扁額に揮毫された「勧善懲悪」の文字、そして堂内に鎮座する十王像の面々を目にしますと、子供の頃に見た血と炎で真っ赤に染まる地獄絵図が思い出され、畏怖のあまりに否応なく背筋がピンとしてしまいます。閻魔様、私の毎日は愚行や頓狂の繰り返しですが、認識に過ちがなければ人様を貶めるような蛮行は働いておりませんので、どうか没後のお裁きでは穏便にお取り計らい願いますよう…なんてね。


 
話を浴場の方へ戻しましょう。建物の1階には、野沢温泉おなじみの洗濯湯が。


 
洗濯湯のみならず、上画像のように温泉卵をつくるための槽があったり、組合員専用のお湯汲み場があったりと、入浴だけではなく生活のいろんなシーンで温泉と密着している、野沢のバラエティに富んだ温泉文化が、この一棟には凝縮されているのでした。


 
浴室は男女で階層が分かれており、男湯は階段を上がった2階。
中が見えない入口ドアを開ける時は、先客がどんな方か、混雑してるのか、外来者は断られてしまうのではないか、などこれまでの経験に基づいていろんな事態を想像してしまうため、どうしても緊張を強いられますね(これって小心者の私だけ?。



浴室は脱衣所と一体化している、いかにも共同浴場的なレイアウトですが、野沢の他の共同浴場と較べて、はるかに広い室内空間が確保されており、また天井も高くて大きな湯気抜きも設けられているため、冬でも湯気がこもりにくくて快適です。ただ、脱衣スペースと洗い場や浴槽が近接しており、脱衣スペースと洗い場の床を隔てる段も低いために、洗い場で乱暴に掛け湯する人がいる場合などは、どうしても脱衣スペースにまで飛沫が届いてしまう傾向にあるようです。
なお洗い場には湯と水が出るカランのペアが4組並んでいました。



野沢の外湯に標準装備されている湯もみ板。その背景には湯仲間一覧の一部が写っていますね。



お湯の清らかさを際立たせている明るい水色の槽内タイルと、引き締まった印象を与える黒い石材の縁が、明瞭なコントラストを生み出している浴槽。湯仲間の皆さんのご尽力により綺麗な状態が保たれていました。6~7人は同時に入れそうな容量です。


 
木組みの湯口から吐き出された激熱のお湯は、一旦直下のパイプに落とされてから浴槽へと流れてゆきます。その投入量は多く、浴槽の四隅からふんだんにオーバーフローしており、槽内のお湯は非常に新鮮な状態でした。なお源泉を注ぎっぱなしでは湯船が熱くなりすぎてしまうため、お湯を浴槽外へ逃すためのVU管が立てかけられていましたが、私の訪問時には使われていませんでした。

お湯は無色澄明で、真湯ほどではありませんが黒い羽根状の湯の華がたくさん浮遊しており、湯口直下の浴槽底は若干黒ずんでいます。湯口に置かれたコップで飲んでみますと、喉にこびりつくような苦味が少々と熱を通し過ぎたような茹で卵の味、芒硝味、そして微かな塩味が感じられました。また臭覚面では、茹でタマゴの卵黄臭(これまた茹で過ぎたような感あり)に焦げたようなゴム臭を嗅ぎ取ることができました。お湯の中に体を沈めてみると、肌にしっとりと馴染むような感覚と、それほど明瞭ではないもののスベスベとした浴感が得られ、お湯の鮮度も相俟ってとても気持ちよく湯浴みでき、体が茹で上がって出ようと思っても、お湯の気持ち良さから離れたくないという心情が後ろ髪を引っ張って、湯船から上がることを躊躇ってしまうほどでした。
お湯は清らかで硫黄感もはっきり出ており、お風呂自体も広くて綺麗。温泉ファンの皆さんが高評価するのも頷ける一湯ですね。


十王堂の湯(受湯槽)
単純硫黄温泉 72.7℃ pH8.6 溶存物質900mg/kg 成分総計902mg/kg
Na+:181.5mg(69.09mval%), Ca++:64.7mg(28.28mval%),
Cl-:76.5mg(18.64mval%), HS-:14.2mg(3.71mval%), SO4--:380.3mg(68.33mval%),
H2SiO3:113.0mg, H2S:0.4mg,
(平成19年6月29日)

JR飯山線・戸狩野沢温泉駅よりのざわ温泉交通の野沢温泉行路線バスで野沢温泉バス停下車
長野県下高井郡野沢温泉村
野沢温泉観光協会ホームページ
(バスの時刻表も観光協会のHPを参照のこと)

4月~11月→5:00~23:00、12月~3月→6:00~23:00
寸志
貴重品用ロッカーあり(100円リターン式)、他備品類なし

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする