温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

赤倉温泉 湯守の宿 三之亟

2013年03月02日 | 山形県

いつものように仙台で所用を済ませた後、翌日がオフであることを幸いにどこかで雪見風呂をしたくなり、東北本線と陸羽東線を乗り継いで山形県赤倉温泉の「三之亟」にて一泊することにしました。赤倉温泉駅と温泉地とは2キロ近く隔たっており、雪がなければ歩いても行けますが、豪雪シーズンになれば除雪された雪が道路の両側に壁をなして幅員を狭めているので、人が歩くスペースなんてありません。お宿へ事前に連絡をしておけば駅まで送迎してくれますので、普段は意地を張って歩いている私も今回ばかりは送迎車のお世話になりました。


 
いかにも和風旅館らしい趣きのある外観に感嘆しながら玄関に入ると、ラウンジ、お座敷、囲炉裏などなど、目に前にはシックで和風な空間が広がっており、既に到着していたお客さんが寛いでいらっしゃいました。



一歩奥へ踏み込むとそこは昭和50年代風の旅館そのものであり、幾分草臥れた感じは否めません。今回通されたお部屋はご覧のような一般的な畳敷きの和室。既に用意されていたこたつがありがたいです。
館内には無線WANが飛んでいます。とはいえ全体はカバーできていないようで、私のお部屋では辛うじてキャッチ出来る程度でしたが、ロビーでしたら問題なく使えました。


 
旅館の大きな楽しみの一つはお食事ですよね。画像左は夕食。別室にていただきます。山形牛や鮎など最上の土地の味覚がたっぷり。
一方画像右は朝食で、大広間にていただきます。まだ体が目覚めていないような状態でいただく湯豆腐は胃に優しくて美味しかったです。


 
こちらのお宿の最大の楽しみは敷地内に3つある浴場を巡ること。私もその魅力に惹かれて今回予約をしたようなもんです。しかしながら、3つのお風呂は男女にわかれていないため、時間によって男女が使い分けられていたり混浴になったりします。お部屋には時間割のプリントがあるので、それを見ながら各自で判断して利用先を決めましょう。浴室へ向かう途中の廊下にも表示がありますので、それで確認しても大丈夫。
※現行の時間割は上画像のタイムテーブルと異なっている場合があります。ご利用の際にはその都度ご確認ください。


●岩風呂
 
典型的な日本の旅館建築らしく、方向感覚を失うほど複雑怪奇に入り組んだ九十九折れの廊下を案内表示に頼りながら突き進んで、各浴室へと向かいます。まずはこちらのお宿の名物浴室である「岩風呂」へ。
浴室の手前で下りる階段には、松と梅が立つ海岸の岩の上で白い孔雀が佇む様子が描かれた大きな絵が飾られていました。


 
屹立するデカい安山岩の下に浴槽が据えられ、それらをまるごと覆うべく上屋が建てられているため、岩風呂の浴室は全体としてかなり広く天井が高い空間です。
浴室手前側にはシャワー付き混合水栓が3基ほど並んでおり、お湯は源泉が出てきます。水栓上部のタイルで覆われた部分がシャワー用の湯溜まり(タンク)になってるのか、そのタンク部分を覆うスノコが熱くなっていました。また巨岩の表面には緑が生い茂り、岩肌がむき出しになっている部分にはこれまでの客が刻んでいった落書きがたくさん残されていました。とてもやわらかい岩なので、爪先でほじくると簡単に削れてしまうのです。この柔らかさが後述する「湯かき穴」を生み出しているわけですね。


 
浴室には浴槽が3つあるのですが、うち2つはこのように巨岩の下に並んで配置されています。天然の岩を刳り貫いて造ったもので、江戸期からの形状をそのまんま残しているんだとか。歴史を追体験できちゃうすごいお風呂なのであります。そして両浴槽の間にはスノコや井桁で蓋されている源泉枡があり、双方へアツアツでクリアなお湯を注いでいました。手前側(脱衣室側)が「深湯」で大きさは4.8m×3.0m、名前の通り最も深いところが140cmもあるんですね。一方、その隣にある「中湯」は大きさ4.0m×3.2mで最深110cm。「深湯」ほどではありませんが、こちらもなかなかの深さです。また湯口のみならず足元からも湧出しているようでして、この「中湯」の源泉枡寄りはかなり熱い湯加減でした。両方の浴槽とも深いとわかっていながらも、実際に入るとそのことを忘れてつい溺れかけてしまう私のような間抜けな輩もいるとかいないとか…。


 
画像左(上)は源泉枡を上から覗きこんで写したもの。時間帯によってはここで温泉タマゴを作っているそうです。画像右(下)は枡の周りの様子。硫酸塩のトゲトゲした白い析出がビッシリこびりついていますね。お湯は無色透明、石膏の味と匂いを明瞭に有し、芒硝的な知覚も感じられました。秋田県大館周辺・岩手県湯田・上州水上あたりのお湯が好きな方だったら堪らないでしょうね。硫酸塩泉らしいキシキシとピリピリ浴感があり、またお湯自体にはトロミがあって、実に気持ち良いフィーリングです。源泉温度が高いために加水されていますが、循環などは一切行われていない放流式の湯使いで、各浴槽からは惜しげも無くお湯が溢れ出ていました。



「深湯」を深くさせているのがこの「湯かき穴」。室内に聳える岩も、そして浴槽のベースになっている岩も、上述のように爪先で簡単に削れちゃうほど柔らかい性質であるため、長年お湯が落とされることによって自然に浴槽の底がえぐれてしまい、このような穴ができちゃったんだとか。旅館の歴史とともに徐々に削られていった穴の表面には、美しいマーブル模様が浮かび上がっていました。



「中湯」の奥には「昔之湯」と彫られた洞門のようなものがありましたが、以前はお湯と何らかの関係があったのかもしれませんが、現在はどうやら単なるモニュメントのようでした…。


 
浴室右奥から「深湯」「中湯」を見下ろす高い位置に設けられているのが、ストレートで直裁的なネーミングの「高湯」(画像左(上))。お湯が上方から滝のように落とされているので、実質的には打たせ湯みたいなものです。なお画像右(下)は源泉洞と名付けられているもので、文字通りこの穴で他地点で湧出する源泉をこちらの岩風呂へ引いていたんだそうです。



●ひょうたん風呂

上述の「岩風呂」や後述の「露天風呂」が館内の廊下を進んだ先に位置しているのに反し、「ひょうたん風呂」は帳場からかなり近い場所にあって、最も迷わずに済むお風呂と言えるかもしれません。
一応貸切風呂として案内されていますが(要予約で40分間。日帰り利用では貸切不可)、私の訪問時には男女別の時間割が設定されており、貸切で使われていないときには時間割に従って自由に利用することができました。


 
貸切風呂としての側面を持つお風呂らしく、家族経営の小規模旅館を思わせるような、全体的にこぢんまりとした造りです。洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基設置され、秘湯を守る会オリジナルのくまざさシャンプーが用意されていました。
浴室には朱色に縁取りされた名前の通りのひょうたん型浴槽がひとつ据えられており、隅っこの湯口から間断なく無色透明のお湯が投入されています。「岩風呂」のお湯は1号泉でしたが、こちらで使われているのは2号泉でして、基本的には1号泉と同じような知覚ですが、2号泉の方が若干マイルドで癖が少なく、湯口や浴槽に付着してる析出も少ないようでした。浴槽のサイズに対して投入量が多いのか、あっぱれなオーバーフロー量があり、実際に入ってみても鮮度感は他のお風呂と比べて優れているように感じられました。


●露天風呂

最後に露天風呂へ。浴室手前の大広間には左右に屏風が立てられ、アンティークな椅子が真ん中に置かれていました。


 
小国川に沿った気持ち良いロケーション。対岸には民家や他旅館が建ち並んでいるので、目隠しのために簾が掛かっていました。竹の樋からお湯が落とされる岩風呂は6~7人サイズ。使用源泉は「ひょうたん風呂」と同じく2号泉で、当然ながら(加水はあるものの)掛け流しの湯使いです。
お風呂の片隅には混合水栓が2基(うち1基はシャワー付)設置されており、その周囲をよく見ますと、古いピンク色のタイルが貼られた壁の跡が残っていました。ここには元々岩風呂とは別の内湯でもあったのでしょうか。
夜間や早朝に入ると露天エリアの床が凍結していたため、足裏が冷たいやら滑るやらでとっても辛かったのですが、川のせせらぎを耳にしながら雪見風呂を楽しんでると、いつの間にやらそんな辛さは忘れ去り、湯気とお湯で体をホコホコさせながら、みちのくの温泉らしい風情と景色を堪能することができました。


(岩風呂)
三之亟1号源泉
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 62.3℃ pH8.1 蒸発残留物1111mg/kg 溶存物質1115mg/kg
Na+:160.1mg, Ca++:158.1mg,
Cl-:49.5mg, SO4--:653.3mg,
H2SiO3:61.8mg,
源泉温度が高いため加水

(ひょうたん風呂・露天風呂)
三之亟2号源泉
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 53.5℃ pH7.9 蒸発残留物1068mg/kg 溶存物質1007mg/kg
Na+:145.2mg, Ca++:153.9mg,
Cl-:49.9mg, SO4--:558.8mg,
H2SiO3:51.3mg,
源泉温度が高いため加水

山形県最上郡最上町大字富沢884
0233-45-2301
ホームページ

日帰り入浴10:00~16:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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