温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

野沢温泉 新田の湯

2013年03月15日 | 長野県
 
野沢温泉の「新田の湯」は、白い壁や玄関を覆う破風などこざっぱりした和風のファサードが落ち着きのある雰囲気を醸しだしている2階建ての共同浴場。



温泉と生活が密着してる野沢らしく、湯屋には洗濯湯が併設されています。



館内に掲示されている木板の分析表は昭和47年のもの。



浴室はタイル貼りで実用本位の雰囲気。浴槽は4~5人サイズで、光沢を放つ黒い御影石の縁が室内の色調にアクセントをもたらしています。
洗い場には湯と水のカランが6セット設置されており、お湯のカランは昭和の銭湯によくある押しバネ式ですが、水道の方はごくごく一般的なハンドルを開閉させるタイプが取り付けられていました。



獅子の湯口からドボドボと間断なくアツアツのお湯が投入されており、その獅子には硫酸塩の白い析出がこびりついていました。口から吐き出されたお湯は一旦直下の筒に注がれ、筒内で水道の冷水を混じりあってから浴槽へと流れています。こちらに引かれているお湯は茹釜と下釜の混合泉でして、見た目は無色透明ですが、薄っすらと白く靄がかかっているようにも見えました(多客時だったのでお湯が汚れていたのかもしれません)。お湯を口に含むと石膏味が感じられ、湯口に鼻を近づけたらゴムを軽く燃やしたような匂いとともに所謂硫化水素の匂いが弱いながらも嗅ぎ取れました。

今回の訪問時には上述のように加水されていたため、湯船の湯加減は43℃前後で落ち着いており、おかげで私としては問題なく湯浴みできたのですが、後からやってきたスキー客のおじさんグループは異口同音に「熱い熱い」と嘆いて、問答無用に水道の蛇口を全開にし、ろくすっぽ掛け湯もしないで足を入れようとしていました。人によってお風呂の適温が違うことを改めて実感するとともに、いろんな外来客がやってくるこのお風呂を維持管理する湯仲間の方のご苦労は相当なものだろうと想像に難くありません。


茹釜・下釜混合
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 81.9℃ pH8.9 溶存物質1029.3mg/kg 成分総計1029.4mg/kg
Na+:198.4mg(65.88mval%), Ca++:84.9mg(32.37mval%),
Cl-:80.2mg(16.82mval%), HS-:8.6mg(1.93mval%), SO4--:490.8mg(76.04mval%),
H2SiO3:126.7mg, H2S:0.1mg,
源泉温度が高いため加水

JR飯山線・戸狩野沢温泉駅よりのざわ温泉交通の野沢温泉行路線バスで野沢温泉・新田下車
長野県下高井郡野沢温泉村
野沢温泉観光協会ホームページ
(バスの時刻表も観光協会のHPを参照のこと)

4月~11月→5:00~23:00、12月~3月→6:00~23:00
寸志
貴重品用ロッカーあり(100円リターン式)、他備品類なし

私の好み:★★
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野沢温泉 秋葉の湯

2013年03月14日 | 長野県
 
前回に引き続き野沢温泉の外湯を巡ります。今回は秋葉地区の共同浴場「秋葉の湯」。実にわかりやすいストレートなネーミングですね。地区内の秋葉神社がその地名の由来であることに間違いは無く、秋葉神社といえば全国共通で火除けの神様でありますが、そんな神様の名誉を毀損してはならないという配慮が働いたのか、パッと見は破風の屋根が典型的和風建築を思わせますが、実際のところ、伝統的な湯屋建築が多い野沢の外湯にあっては少数派のコンクリ造(ALCかな)となっており、もしかしたらこれによって難燃性を図っているのかもしれません。ま、秋葉神社と湯屋の建築方法を無理やり関連付けようとする私の愚かな深読みなので、どうかこんな愚考を真に受けませんよう…。


 
勢至菩薩が見守る玄関に括り付けられた寸志箱に気持ちを納めて中に入ると、内部で男女別浴室の入口が分かれていました。木板に筆書きされた分析表はてっきり骨董品クラスの古いものかと思いきや、日付を見たら昭和50年のものですから、まだ不惑にもいってません。



野沢の外湯は、脱衣室と浴室が一体化している昔ながらの構造が多いのですが、こちらはそんな伝統様式を採用しておらず、一般的な公衆浴場のようにガラスサッシによって両室をセパレートされていました。
タイル張りの浴室は4人サイズの浴槽がひとつあるだけの至ってシンプルなスタイルで、洗い場に用意されている桶の数が妙に多くて不思議です。水栓関係は水道の蛇口が3つあるだけですから、掛け湯などをする場合は桶で湯船のお湯を汲むことになります。



四角い浴槽に注がれる源泉は大釜から引いているもので、薄っすらと貝汁濁りを帯びているようにも見えますがほぼ無色透明と言って差し支えなく、トロミのあるお湯からはキシキシとした浴感が得られ、湯中では白灰色の綿屑のような湯の華が浮遊していました。また芒硝の知覚がはっきりと現れており、軟式テニスボールのようなゴム的硫黄臭も感じられました。なお、館内表示によれば、お湯の濃度を希釈させないよう、温度調整に際しては単に加水するのではなく、冷たい温泉を水の代わりに用いているんだそうです。そんな面倒な方法を採用してまでお湯のクオリティを維持しようとする湯仲間の皆さんの心意気には敬服するばかりですね。ありがとうございます。

建物の外観といい内部の造りといい、野沢の他の外湯に比べるとやや風情に欠ける実用的な佇まいですが、それゆえに地元の生活感に触れることができ、しかも湯使いにこだわった温泉が提供されているのですから、そんなお風呂を外来者にも開放してくださっている地元の方には感謝の気持ちでいっぱいです。スキーシーズンなどの混雑時にはお湯が鈍ってしまうことがありますので、タイミングを見計らってお湯の状態の良い時に利用したいものですね。


大釜
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 83.2℃ pH8.7 溶存物質1029.7mg/kg 成分総計1029.9mg/kg
Na+:198.2mg(64.23mval%), Ca++:88.5mg(32.94mval%),
Cl-:88.3mg(18.18mval%), HS-:8.8mg(1.97mval%), SO4--:487.3mg(74.08mval%),
H2SiO3:114.4mg, H2S:0.2mg,
熱い温泉に冷たい温泉を水の代わりに使用


JR飯山線・戸狩野沢温泉駅よりのざわ温泉交通の野沢温泉行路線バスで野沢温泉下車、徒歩1分
(野沢温泉バス停ではなく、その次の真湯(終点)で下車すると便利)
長野県下高井郡野沢温泉村
野沢温泉観光協会ホームページ
(バスの時刻表も観光協会のHPを参照のこと)

4月~11月→5:00~23:00、12月~3月→6:00~23:00
寸志
貴重品用ロッカーあり(100円リターン式)、他備品類なし

私の好み:★★


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野沢温泉 真湯

2013年03月13日 | 長野県
拙ブログでは全国の温泉を万遍なく訪れているつもりですが、信州の野沢温泉については、何度も訪問しているにもかかわらず何故か今まで記事にしてこなかったので、今回から数回程、当地の外湯を連続して取り上げてまいります。

 
野沢温泉の外湯の中でもズバ抜けて高く評価したいのがこの「真湯」。ここだけは絶対にはずせません。積雪時に訪れますと、融雪のために湯屋前の道路へ温泉を流しているので、辺りには湯気と一緒に硫黄の香りが立ち込め、路面が硫黄によって薄っすらと白くなっていることもあります。コンパクトながらも伝統的な湯屋建築がただならぬ存在感を放っていますね。「霊泉真湯」と揮毫された誇らしげな文字が踊る扁額を見上げつつ、寸志箱に気持ちを納めて中へ。


 
上屋自体は比較的新しいのですが、昔ながらの様式に則って建てられているため、館内は脱衣所と浴室が一体となった伝統的共同浴場らしいレイアウト。当地の外湯は地域住民によって組織される湯仲間によって維持管理されていることは有名ですが、いつ訪れても綺麗で心地良い状態が保たれており、湯仲間の皆さんのご尽力には頭がさがるばかりです。
洗い場には水道のカランが3基設置されていますが、お湯は湯船から直接桶で汲むことになります。決して大きな浴室ではなく、しかも常に熱いお湯が注がれているというのに、高い天井と湯気抜きのおかげで厳冬期でも湯気の篭りが少なく快適に利用できるのが嬉しいところです。



野沢の外湯には共通して湯ゆもみ板が備え付けられていますが、もちろん「真湯」でも同様であります。


 
浴槽は槽内が白いタイル貼りで縁は黒い御影石、キャパシティはおおよそ3人といったところでしょうか。中央の湯口からアツアツの源泉が投入されています。この画像を撮影した時は運良く独占できたのですが、尚一層ラッキーなことに先客がしばらくいなかった状態のようで、入浴前のお湯は美しい翡翠色を帯びながら底がはっきり見えるほどに透き通っていました。そのままでは激熱だったので加水しながら湯もみ板で掻き混ぜていると、底に沈殿していた湯の華を舞い上げながら徐々に濁り、底はおろかステップすらも見えないほど混濁していきました。しかしながら濁るといっても、単に透明度が下がるというわけではなく、あたかも老舗高級和菓子店の水菓子を彷彿とさせる透明感を維持した極めて上品な混色であり、薄い翡翠色の勾玉が青磁の壺に変貌したかのような変色なのであります。

その気品溢れる色合いにうっとりする一方、湯船へ体を沈めた時に全身を覆う、黒い羽根状の夥しい湯の華には興奮を隠すことができず、これでもかと言うほどまとわりついてくる湯の華は、湯船から上がってもしっかりと体にこびりついてくるので、日常使いのお湯としては鬱陶しいかもしれませんが、私のような湯の華が大好きな人間は欣喜雀躍してしまうこと必至です。

お湯からはタマゴ臭に噴気孔的硫化水素感をミックスしたような硫黄臭が漂っており、口にするとタマゴ味に苦味やえぐみ、そしてゴムっぽい風味が渾然一体となって感じられました。入浴中はツルスベ浴感と強い温まりが得られますが、湯上りには程よく火照りが抜け、不思議な爽快感に包まれます。
混雑度合いによって濁り方や湯の華の量に多寡がありますが、源泉の大量投入大量排出によって鮮度感は常にキープされているので、いつ利用しても一定以上の満足感が得られ、たとえ他の外湯がスキー客による混雑のために湯鈍りを起こしていたとしても、見た目の美しさは失われてしまうかもしれませんが、比較的安心して湯浴みできるかと思います(あくまでも私の体験に基づく私見ですが)。
野沢の真湯は天下の名湯ですね。


真湯第3他
単純硫黄温泉 61.2℃ pH7.6 溶存物質740.2mg/kg 成分総計755.7mg/kg
Na+:156.5mg(76.51mval%), Ca++:36.4mg(20.45mval%), Fe++:0.6mg(0.2mval%),
Cl-:77.8mg(23.70mval%), HS-:11.2mg(3.68mval%), SO4--:243.1mg(54.76mval%), HCO3-:97.6mg(17.32mval%),
H2SiO3:95.5mg, H2S:3.2mg,
源泉温度が高いため加水
加温循環消毒なし

JR飯山線・戸狩野沢温泉駅よりのざわ温泉交通の野沢温泉行路線バスで終点下車、徒歩1分
(野沢温泉バス停ではなく、その次の真湯(終点)で下車すると便利)
長野県下高井郡野沢温泉村
野沢温泉観光協会ホームページ
(バスの時刻表も観光協会のHPを参照のこと)

4月~11月→5:00~23:00、12月~3月→6:00~23:00
寸志
貴重品用ロッカーあり(100円リターン式)、他備品類なし

私の好み:★★★

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霊泉寺温泉 遊楽

2013年03月12日 | 長野県
 
信州の霊泉寺温泉へ公共交通機関でアクセスするには、上田駅から千曲バスの鹿教湯線に乗って宮沢バス停で下車します。ちなみに画像のバスは上田駅行。


 
バス停近くの広場には上画像のような小屋と2つの道標が立っており、大きな方の道標には「欲深霊泉脈 截流向左邊」(霊泉の脈を探ねんと欲すれば、流れを截(き)りて左辺に向かうべし)という、いかにも禅寺らしい臍の曲がった文言が彫られているのですが、標識のくせに難解な表現はいかがなものかという判断が働いたのか(というか移転の都合なんでしょうけど)、手前に置かれている小さな道標の内容は「右かけゆ道 左霊泉寺道」(霊は異体字)という万人が理解できるものでした。


 
バス停から温泉街へは約2キロですから、荷物が重くなければ歩けなくもない距離ですが、宿泊利用の場合にはお宿の方がバス停まで車で迎えにきてくれますので、普段は徒歩派の私も今回は送迎をお願いしました。広場の小屋には有線電話が置かれており、各旅館の番号が貼りだされています。尤も、今回宿泊した「遊楽」さんではこの電話が使えないため、自分の携帯電話で連絡することになるのですが、バス乗車前に宿へ連絡しておいたので、私がバス停へ降りた時には、既に宿のご主人が待っていてくださいました。



ご主人が運転する車はいまどき珍しいMTの軽乗用車で、結構年季が入っているらしく、ギアが入りにくそうでした。宮沢バス停から5分ほどで「遊楽」へ到着。前回の記事で紹介した禅寺「霊泉寺」の斜前に位置しており、温泉街の入口にあたるポジションです。玄関を開けると朗らかに笑顔を振りまく奥様が出迎えてくださいました。
こちらの宿は一旦廃業した旅館を、お仕事をリタイヤしたご主人が買い取って新たに営業を再開させたんだとか。従いまして、こちらは本格的な旅館ではなく、老夫婦がリタイア後ののんびりとした時間を活かして営業している民宿なのであります。今回は「じゃらん」で提示されていた料金が3連休にもかかわらず1泊2食付で6,700円(入湯税別途)というリーズナブルな設定であり、また拙ブログでリンクしております「しーさん」さんのサイト「温泉を通じて」にて紹介されていた内容が魅力的でしたので、1泊させていただくことにしました。


 
ご主人に案内されて客室へ向かう途中に通過した2階の喫煙スペースには、昔懐かしい室内アンテナを載せたブラウン管テレビが置かれていました。これって使えるのかしら…。平成生まれの方だったら、室内アンテナなんて知らないでしょうね。


 
今回のお部屋はこちら。お年を召したご夫婦2人で全てを切り盛りしている宿ゆえ、お食事の最中に布団を敷いて…なんてことはできませんから、予め布団を敷いておくようです。そのおかげで到着してすぐにゴロンと横になれますね。ちなみに夜になると布団の中へ湯たんぽを入れてくれました。
窓からは川の流れと霊泉寺の境内がそれぞれチラっと窺える程度に望め、その窓際には底冷えする冬の信州に欠かせないこたつが置かれています。客室のテレビも喫煙スペースに負けず劣らずの骨董品でして、デジアナ変換によって現在でもしっかり映ります。この手のテレビが我が家にあったのは、かれこれ30年前だったなぁ…。まだ家電量販店なんて存在しておらず、地元の電気屋さんから購入していましたっけ。

ちなみにお食事は夕食朝食ともに玄関ホールでいただきます。信州の味覚を活かしながらも家庭的な献立となっていて、たとえばこの日の夕食は…鮎の塩焼き、コイの洗い、ダイコンの煮付け、鶏の甘辛炒め、信州そば(椀そば)、十穀米、ゼリー等などです(画像は撮っていません)。
3連休の初日とあってか、この日は全ての部屋が埋まるほどの賑わいでしたが、むしろご夫婦にはその盛況が負担になっていたようで、調理と配膳だけで精一杯のご様子でした。



さて腹を満たしたところで風呂へと参りましょう。
浴室は大小の2つがあるのですが、まずは大きな方から。浴場入口前のラウンジ周りはリフォームされているらしく、家庭的ながらシックで落ち着いた雰囲気が漂っています。また室内の一角には冷たい麦茶が用意されており、湯上りの火照った体にその麦茶を流し込むと、とっても爽快でした。こうしたアットホームな気配りは嬉しいですね。


 
元々旅館だけあって、脱衣室はそれなりの広さが確保されていました。棚には替えのタオルが積まれており、宿泊中に複数回入浴する場合はとても便利です。なお大小両浴室とも普段は貸切利用ができるらしく、使用していない時は浴室(脱衣室)扉を開けておくことによって使用中でないことを示すのがこちらの宿のローカルルールとなっています。尤もこの日は宿泊客が多かったために貸切とはせず、2つあるお風呂を男女で使い分けていました(23時~6時は入浴不可)。

浴室も宿の規模を考えるとなかなか広い造りで、室内の左右両側にはシャワーがひとつずつ配置されており、窓の下に据えられた角の取れた浴槽は4~5人が足を伸ばして入れそうな大きさがあります。浴槽に面した窓をあけると、すぐ目の前には川が流れていました。浴槽は全面タイル貼りで、以前の旅館時代から長年使われ続けているものかと思われますが、縁の黒タイルの上に青いペンキを塗ったり、底のタイルにも塗装を施したりと、色彩面でできるだけ明るくしようと頑張っているフシが見受けられます(でもその塗装が所々剥げちゃっているので、却って見窄らしい印象を与えているようにも感じられます)。


 
竜か鰐かは判然としませんが、とにかく大型の爬虫類と思しき石の湯口から加温された源泉がドボドボと注がれています。放流式の湯使いで、源泉の投入量は比較的多く、宿泊中に3度ほど入浴しましたが、湯船のお湯は常に鮮度良好でした。ただ湯口から吐出される量や温度は常に一定というわけではなく、量・温度ともに上下を繰り返していました。湯船の状況に応じて自動調整されているのかしら。

なお排湯に関しては長野県で顕著に見られる独特の方式、すなわち浴槽湯面より若干低い位置の洗い場床に穴があけられ、その穴と直結した浴槽内の吸入口からお湯が流れて排湯されてゆく仕組みによって、浴槽縁の上面を乗り越えることなくお湯が洗い場へと流れ出ています。
お湯は無色澄明で、共同浴場で感じられた硫黄感こそ無かったものの、石膏感ははっきりと有しており、弱い引っ掛かりとトロミのある浴感が優しく全身を包んでくれ、入浴中は夢心地そのものでした。

それにしてもこの湯口、どこかで見たことあるなぁ…。



あ、そうか。大鰐か!
参考までに、私が思いついた青森県大鰐温泉の湯魂石薬師堂にある飲泉所の鰐を載せておきますね。ちょっと似てますでしょ。



こちらは小浴室。こぢんまりとした民宿サイズのお風呂です。大きなお風呂と同様に、脱衣室のラックには替えのタイルが用意されていました。よく手入れが行き届いており清潔です。ご夫婦2人でお風呂を含めた全てのメンテナンスをされているんですから、さそがしご苦労のこととお察しします。


 
浴室内には扇型の岩風呂がひとつ。そしてシャワーもひとつ。貸切利用には丁度良いサイズですね。小さいお風呂ながらも湯船の排湯は大きなお風呂と同じく貫通穴から流れ出されていました。もちろんこっちも(加温の上で)掛け流しですよ。

旅館や民宿というより、田舎のおじいちゃんの家に泊まるような、ノスタルジー且つアットホームな施設でした。ご夫婦ともにお喋り好きのようでして、機会があればゆっくりお話したかったのですが、残念ながら今回はお二人とも忙しくてそんな余裕は無く、チェックイン時とアウト時にちょこちょこっと会話を交わしただけでした。日帰り利用に関しては予約も可能なんだそうですから、次回利用時には繁忙期を避けてのんびりお邪魔したく存じます。


単純温泉 36.0℃ pH8.3 掘削動力揚湯 溶存物質901.9mg/kg 成分総計906.3mg/kg
Na+:62.8mg(20.92mval%), Ca++:205.3mg(78.45mval%),
SO4--:545.8mg(89.23mval%),
H2SiO3:26.8mg,
(平成17年5月24日)

上田駅より千曲バスの鹿教湯線で「宮沢」バス停下車、徒歩18分(約1.6km)
長野県上田市丸子町平井2540-15
0268-41-7170
ホームページ

日帰り入浴時間不明(10:00~19:00?)
500円(予約利用時は800円)
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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霊泉寺温泉共同浴場

2013年03月10日 | 長野県
 
まるで時空の狭間に落ちてしまってその場から這い上がれずに周囲の時流から取り残されたかの如く、温泉街全体が寂しく鄙びきっている信州の霊泉寺温泉。当地を思い出してその風景を描いてみよと命じられても、その絵はつげ義春の作品のように陰鬱なモノトーンの世界となってしまうでしょう。そんな温泉街に佇む地味な趣きの公民館のような共同浴場が今回の主役であります。建物の前に立っている赤い寸胴型のポストが良い味出してますね。ここを訪れるのは5年ぶりか…。


 
潰れた理容店のようなくすんだ色合いの入口ドアを開けると、(男湯の場合は)すぐ左手に番台があり、カウンターに置かれた料金箱に100円玉2枚を投入します。番台の小窓を覗いて挨拶したら、中ではおばあちゃんがコタツに入ってテレビを視ていました。


 
脱衣室は棚があるばかりでこぢんまりとした造りですが、その一方で浴室は意外と広く、横長のガラス窓に面して長方形の大きな浴槽がひとつ据えられています。洗い場には湯と水のカランが4組設置されており、カランから出てくるお湯はおそらく源泉使用かと思われます。



一般的に浴室で時計を設ける場合は室内の壁に金具などで引っ掛ける場合が多いかと思いますが、こちらでは窓の外のコンクリ土台の上に置かれていました。


 
青いタイルが敷き詰められた浴槽には無色透明のお湯が張られ、そのタイルの色のためにお湯がより一層クリアに輝いているように見えました。浴槽最奥に括り付けられた玄武岩質の溶岩みたいな岩から塩ビ管が突き出ており、そこからトポトポと音を立ててお湯が注がれています。湯口のお湯をグビグビ飲む爺様もいらっしゃったので、私も手に受けて飲んでみますと、ふんわりとした石膏の味が感じられたとともにその匂いが鼻へ抜けてゆき、更には弱タマゴ感と弱砂消しゴム感を足して2で割ったような硫黄感も仄かに得られました。なお湯使いは放流式であり、館内表示によれば「塩素滅菌」を実施しているそうですが、塩素っぽさは全く感じられなかったので、おそらく毎日の換水清掃時に塩素系薬剤を用いて消毒しているということかと思われます。

入浴中の肌を擦ると石膏泉らしい弱い引っ掛かりがあり、また浴槽中でお湯を掻いてみるとトロミが伝わってきました。更には長湯していると肌にうっすらとした気泡の付着も見られました。分析表を見るとギリギリのところで石膏泉になれずに単純温泉へ分類されていますが、実質的には石膏泉(含芒硝酸石膏泉)と見做しても差し支えないかと思われます。以前は加温されていたはずですが、噂によれば数年前に同じ源泉を使用していた施設が減ったことに伴い共同浴場への供給量が増加して温度も上がったらしく、もしかしたら現在は加温していないのかもしれません。源泉のままで加水せずとも実に良い湯加減が維持されていました。



上画像のように、浴槽の脇の床には穴をパテで埋めた跡があるのですが、これは長野県の温泉施設でよく見られる独特の排湯方式、すなわち浴槽湯面より若干低い位置の洗い場床に穴があけられ、その穴と直結した浴槽内の吸入口からお湯が流れて排湯されてゆく設備が採用されていた跡であろうと思われます(浴槽内にもやはり埋められた穴がありました)。現在では浴槽縁の上をお湯が乗り越えてゆくごくごく普通のオーバーフローによって排湯されていましたが、どうして長野県ではこの手の方法を採用する温泉施設が多かったのでしょうか(何らかの理由で県から指導があったのかもしれませんね)。

鄙びた佇まいとシンプルな設備の共同浴場ですが、お湯の良さが評判を呼ぶのか、特に夕方になると車に乗って近所から次々に入浴客がやってきて混雑することが多く、混雑時間帯に利用するとお湯が濁っていることがあるので、なるべくでしたらそうしたタイミングを避けて利用することをおすすめします。ここは外観や設備が草臥れていたってお湯が良ければ人は集まってくるという好事例ですね。





霊泉寺温泉町有泉
アルカリ性単純温泉 43.8℃ pH8.9 掘削動力揚湯 溶存物質996.3mg/kg 成分総計996.3mg/kg
Na+:80.6mg(24.66mval%), Ca++:213.8mg(74.96mval%),
SO4--:620.8mg(90.70mval%),
H2SiO3:28.2mg,
(平成14年12月27日)

上田駅より千曲バスの鹿教湯線で「宮沢」バス停下車、徒歩20分(約1.8km)
長野県上田市平井2530
霊泉寺温泉ホームページ

7:00~21:00 月曜定休
200円
備品類なし

私の好み:★★★


●散策
黄昏の温泉地、霊泉寺。湯上りにその集落を彷徨して、懐かしの昭和へタイムスリップしてみました。

 
曹洞宗の古刹、金剛山霊泉寺。安和元(968)年の開山と伝えられ、最盛期には19もの伽藍を擁していたんだそうですが、明治前期に一部の門を残して烏有に帰してしまい、同44年に現在の本堂が再建されたんだとか。その焼け残った門が画像左(上)の不明(あかずの)門であり、保護のために屋根で覆われています。


 
不明門の下には巨大な根っこが印象的な切り株が残っているのですが、これは2008年7月に倒壊してしまった樹齢700年の大ケヤキのもの。境内の隅には火の見櫓が屹立しています。



私のHDDを探してみたら、大ケヤキが倒壊する4ヶ月前の2008年3月に自分で撮影した画像を発見しました(上画像)。火の見櫓をはるかに上回る巨木だったんですね。


 
雪道の路傍に立つ電信柱にはとってもレトロな広告看板が。とても2013年の風景であるとは思えません。


 
霊泉寺集落唯一のお店は既に店じまいしており、その前に立ち並んでいる自販機も使われていませんでした。


 
霊泉寺温泉診療所。建物は静まり返っており、扉も固く閉ざされています。まるで廃墟のような雰囲気でしたが、現在では診察していないのでしょうか。



診療所付近で見つけた旧式の道路標識「警笛鳴らせ」。標識マニアのサイトによれば、このタイプは昭和38年あたりから姿を消していったそうですが、ということはある意味でこの霊泉寺という土地は昭和38年から時が止まったままなのかもしれません。
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