温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

河津 某所の足湯処

2013年03月22日 | 静岡県
今回の記事で取り上げる浴場は、地元専用ながらも期間限定で一般開放されているのですが、その特殊な開放形態ゆえ、あえて浴場名の記載を控えさせていただきます。でも画像にはしっかり名前が写っていますので、どうしても場所を知りたい方は画像でご確認ください。また、本年の一般開放期間は既に終了しておりますので、その点につきましてもご了承ください。


 
 
2013年3月の某日、麗らかな春の陽気に誘われて伊豆の河津桜を観賞してまいりました。毎年桜の時季になると河津町では「河津さくら祭り」が開催されますが、この日はちょうど桜が満開を迎え、天候にも恵まれたため、桜並木の土手道は立錐の余地がないほどの花見客で埋め尽くされていました。土手の菜の花のイエロー、桜のピンク、そして晴れ空のブルーというトリコロールが非常に鮮やかですね。普段は酷い花粉症に悩まされる私も、この景色を目にした途端に憂鬱な心情が晴れて、身も心も軽やかでした。でも拙ブログが花見をテーマにするはずありません。別の目的があるからこそ、足取りがより一層軽くなっていたのかもしれません。人混みから離れて、桜が植わっていない対岸の住宅地へと向かいます。



県道から伸びる路地には「○○立寄り湯 Yatsu free hot spring」と記された標識が立っています。
"free"ですって!? 


 
標識が示していた温泉とは、川岸に位置するこの施設を指しているものと思われます。屋上の貯湯タンクに描かれたイラストは、桜並木の下を歩く花見客からも非常によく目立っており、当地を訪れた方なら必ずや目にしているのではないでしょうか。
この施設は1階が地元住民用の共同浴場で組合員以外使用不可能なのですが、階段を上がって屋上に出ると足湯処が誂えてあり、こちらはだれでも無料で足湯を楽しむことができます。標識の"free"とはこの足湯のことなんでしょうね。川越しに対岸の桜を眺めながら足湯に浸かることができるので、この日は多くの観光客で賑わっていました。


 
「○○温泉立ち寄り湯」と書かれていながら、外来客が立ち寄れるのは階段を上がったところにある足湯だけ。


 
しかしながら、桜まつり期間中の10時~15時限定で、1階の共同浴場も一般客に無料開放されております。つまり春の僅かな期間だけ名実ともに「立ち寄り湯」になるわけです。桜だけじゃなくて温泉も楽しんでもらおうと企画してくださる河津の方のご好意に心から感謝です。
この浴場では組合指定の桶が入浴証の代わりとなっているため、浴室内には桶がありません。このため、一般開放中に外来者が利用する場合は、表に用意されている貸し出し用の桶を手にしてから浴室へ入りましょう。



なお、施設の壁に固定掲示されている案内にも、桜まつり期間中には浴場を開放する旨が記されています。


 
表の人混みが嘘のように、訪問時の浴室には誰もおらず、終始独り占めでこのお風呂を利用させていただきました。男女別の内湯のみで、脱衣室・浴室共に共同浴場らしい実用的な造りですが、綺麗でとてもよく手入れされています。脱衣室ではロッカーが利用できる他、洗面台1台、そして扇風機も設置されています。
男湯の場合、浴室内の右手に洗い場が、左手に浴槽が一つ据えられており、タイル貼りの浴槽は4人サイズです。浴槽上部の壁には左から温泉、温泉、水道と3つの蛇口が並んでいます。ホースに接続されている左側の蛇口はハンドルが抜き取られており、常時チョロチョロと熱い源泉が浴槽へ注がれて湯船の湯加減を維持していますが、一方で、真ん中の温泉用蛇口と右側の水道蛇口は普段は締められており、入浴客が任意で開閉して湯加減を調整します。私はちょっと熱めのお風呂に入りたかったので、この時はお湯の蛇口を開かせていただきました。吐出口の周りには白い析出が付着していますね。



洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基並んでいます。上述の理由により、室内に桶は用意されていません。シャワーのお湯はおそらく源泉使用ではないかと思われます。

湯船のお湯は無色透明で綺麗に澄んでいますが、お湯に差し込んだ光は特殊な屈折でもするのか、ベージュ色の浴槽タイルは、お湯に浸かっている部分だけ青っぽく変色しているように見えました(決してタイル自体が変色しているわけではありません)。また、ほぼ無味無臭で塩味などは殆どありませんが、パラフィンのような匂いや芒硝の味がほんのりと感じられました。
蛇口から出てくるお湯はとても熱く、直接手で触れるのは憚られます。上述の案内表示には温度が高いために加水している旨が記されていましたが、これは浴槽用の水道蛇口を指しているのでしょうから、水道を使わなければ、完全掛け流しの湯使いとなるはずです。実際に私はそのような方法で入浴し、湯船に体を沈めたら、お湯が一気にオーバーフローして浴室内は洪水状態になってしまいました。硫酸塩泉のようなキシキシ感やトロトロ感にサラスベ感が混在し、お湯の鮮度も素晴らしく、丁度良い湯加減も相俟って、出ようにも出られなくなるほど気持ち良いお湯でした。こんなお湯に毎日入れる地元の方が羨ましいなぁ。花見客のほとんどが知らない、まさに穴場の中の穴場。素晴らしいお湯でした。


混合泉(峰1,2,20,28号、谷津6,38,29号)
ナトリウム-塩化物温泉 62.1℃ pH8.0 成分総計1.077g/kg 
Na+:279.4mg,
Cl-:401.7mg, SO4--:134.5mg, HCO3-:60.1mg,
H2SiO3:122.9mg,
加水あり(温度が高いため)、加温循環消毒なし

静岡県賀茂郡河津町谷津

入浴利用時間:さくら祭り期間中のみ 10:00~15:00
足湯利用時間9:00~16:00(さくら祭り期間中9:00~20:00)
※2013年の河津桜まつりは終了しました。次回入浴できるのは来年以降です。
無料
備品類なし

私の好み:★★★


●(おまけ)河津浜露天風呂の現状(2013年3月現在)
 
県道14号と国道135号が交わる谷津交差点前のセブンイレブン傍にあった「河津浜露天風呂」は、入浴姿が思いっきり公衆の面前に晒されてしまうとてもオープンな環境ゆえに、一部のマニアを除いて利用しにくい露天風呂でしたが、先日私が現状を確認したところ、お湯は完全に止まっており、浴槽も朽ち果て、その中にはゴミが投棄されて、とてもここがお風呂だったとは信じられないほど無残な姿となっていました。もう復活はしないでしょうね。

コメント (2)
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