温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

新発田市佐々木 ヘルス天神

2013年03月01日 | 新潟県
※残念ながら閉館してしまいました。

 
JRで日本海側を南下して新潟へと向かっていた冬の某日、下越地方の沿岸部ではおなじみのアブラ臭い温泉に入りたくなり、白新線の佐々木駅で下車して或る場所へと歩いて向かうことにしました。



ベチャベチャした雪に足元を奪われながら、暗い住宅街の路地を進みます。途中でどこかの民家の番犬に吠え立てられた際にはびっくりして滑りそうに…。


 
途中から県道3号(国道7号の旧道)に合流し、ビュンビュン飛ばす大型車に怯えながらひたすら西進。やがて新発田市西部工業団地に入り、さらに道なりにしばらく歩くと今回の目的地が目に入ってきました。


 
「ヘルス天神」という場末のタケノコ剥ぎを連想させる怪しい響きの名称ですが、れっきとした温泉入浴施設であり、以前は「天神の湯」として営業していたそうですが、諸々の事情による休業期間を経て、この名前で2~3年前に営業を再開したんだとか。


 
玄関の券売機で料金を支払って窓口へ券を渡します。後述するように脱衣室内には鍵が掛けられるロッカーが無いのですが、その代わりこの窓口傍には貴重品用ロッカーがありますので、必要でしたらこれを使うことになります。館内では休憩用の広間が利用でき、またその室内で食事ができるよう、上画像のような軽食提供コーナーも設けられていました。浴室入口にはエアロバイクやぶら下がり健康器などが置かれていたのですが、もしやこれを以ってして「ヘルス」と名乗っているのかな。


 
こちらの脱衣室でユニークなのがこのスチールロッカー。鍵が使えず、その代わりに各扉にぶらさがっている札を利用者が自分で裏返して「空」や「使用中」を表示するのです。元々はちゃんと鍵が使えたそうですが、こちらの温泉に含まれる強い塩分のために金属の鍵がすぐに錆びちゃって使い物にならなくなり、苦肉の策としてこのような方法を採用したんだとか。なお室内にはこの他にも一般的な棚が括り付けられていて、そこにおさめられている籠も利用できます。私はロッカーの扉を開閉するのが面倒だったので、籠の方を使いました。


 
湯気で曇った見難い画像でごめんなさい。内湯には大きなガラス窓に面した浴槽がひとつ据えられ、浴室の左右に分かれている洗い場にはシャワー付き混合水栓が計10基配置されています。


 
浴槽左隅にある湯口の周りは温泉成分により真っ赤に染まっていました。見るからに濃そうなお湯ですね。内湯のお湯は加温されており、オーバーフローも見られますが、館内表示によれば循環濾過装置を使用しているとのこと。
浴槽のお湯はモスグリーン色を帯びた暗めの山吹色に強く濁り、底はまったく見えません。浴槽内にはステップが無く、つまりいきなり深くなっちゃう構造なのですが、強い濁りのため槽内が全く見えませんから、入浴の際には手摺りをしっかり握った方が安全ですね。
室内には温泉成分によるアブラ臭やヨード臭などが充満しているのですが、とりわけアンモニア臭は印象的でして、湯口に鼻を近づけると、学校の理科室でアンモニアの試薬瓶を開けたときに鼻孔を刺激したあの感覚が蘇って来ました。



続いて露天風呂へ。周囲はアクリル板で囲われているので景色を楽しめるような造りではありません。このアクリル板について私はてっきり雪囲いなのかと思っていたのですが、調べてみますと冬だろうが夏だろうが常設なんだそうですね。頭上には屋根が覆っているので雨でも雪でも大丈夫。


 
湯口は2ヶ所あり、一ヶ所は左横から突き出ている細いVP管2本、もう一ヶ所は左奥の隅っこから口径50ミリの塩ビ管1本です。前者から出てくるお湯は加温されて41~2℃になっており、湯口上には「この湯は飲めません」と書かれていました。てことは他の湯口のお湯は飲めるのかしら。飲めないってことは循環されているということなのかもしれず、吐出口の時点で既にお湯は強く濁っていました。余談ですが、一般的に配湯する配管は客の目に触れる区間に関しては何らかのものを被覆して化粧させるものですが、こちらの加温湯の配管は裸のまんま剥き出しになっており、入浴料600円の施設にしては妙にプリミティヴなそのスタイルにちょっと意表を突かれました。

一方後者の湯口から落とされるお湯は非加温と想像される30℃台前半のかなりぬるいもので、投入量はかなり多く、前者の湯口のお湯と異なり、少なくとも吐出される時点では無色透明でした。試しにこのぬるいお湯を口に含んでみますと、強烈に塩辛く、ニガリの味や鉄錆味もしっかり感じられます。露天における濁りや色合いは内湯よりも緑色の程度が濃く暗いように思われましたが、何しろ利用したのが夜ですからここでの明言は避けておきます。ただ、内湯と比べて沈殿は明らかに多く、特に後者の湯口付近では明るいオレンジ色の沈殿が大量に溜まっており、お湯を動かすと暗い状況でもはっきりわかるほどのボリュームが舞い上がりました。湯面からは明瞭なヨード臭を含むアブラ臭が漂っており、アブラ臭好きの私は湯口に顔を近づけ鼻をくんくん鳴らせながらまるでジャンキーのように夢中になって匂いを嗅ぎ続けてしまいました。そういえば分析表には臭いに関して「植物性臭」と記載されていましたが、とっても抽象的表現であるこの植物性臭ってどういう意味なのでしょうか。バラの香りも白檀の芳香も、木酢液の刺激臭もドリアンの悪臭も危ないハーブも、みんな植物性臭には変わらないわけですけどね。なお内湯で嗅ぎ取れたアンモニア系の臭いは露天では確認できませんでした。
なおこちらで用いられているお湯はなんとお隣の聖籠町藤巻にある泉源から1.8kmも引いているんだそうです。



お湯の濃さの影響か、お風呂のまわりは全体的に赤みを帯びたベージュに染まっており、浴槽縁の一部は緑色に変色していました。また屋根を支える柱のカバーなどお風呂周りの金属は悉く錆びて腐食していました。内湯側の浴槽縁からはかなりの量のお湯が排出されており、全体的な状況から察するに循環濾過を併用しながら生の源泉も同時に投入して掛け流しに準じた湯使いになっているのではないかと思われます。
この日の露天風呂は30℃台中盤から後半の温度であったためかなりぬるく感じ、調子に乗って長湯してしまったのですが、上述のような濃さを有する強食塩泉ですから尋常ならざる凶暴な性格であり、私のように長湯すると体力が奪われてヘロヘロになってしまう上、その塩分濃度ゆえに湯船から上がって肌が乾き始めるとお湯に浸かっていた部分がかなり痒くなってしまいました。もし乾燥肌の方でしたら顕著でしょうし、お湯に入る時点でピリピリしちゃうかも。湯上りはいつまでも汗が引かないほどヌクヌク感が持続しましたが、同時にしばらくフラフラとしながら駅までトボトボと歩いて戻ったのでした。温泉界のアウトレイジと言うべきこちらのお湯は、ドMで変態な人にはもってこいですね。


天神の湯
(湧出地:北蒲原郡聖籠町藤寄2926-2)
ナトリウム-塩化物強塩泉 42.5℃ 310L/min(動力揚湯) 溶存物質30251.2mg/kg(※) 成分総計30521.5mg/kg(※)
Na+:10220mg(90.67mval%), Mg++:192mg(3.22mval%), Ca++:274mg(2.78mval%),
Cl-:17240mg(94.98mval%), Br-:126mg(0.31mval%), I-:67mg(0.1mval%), HCO3-:1436mg(4.6mval%),
H2SiO3:52.7mg, HBO2:18.5mg, CO2:270.3mg,
(※)館内掲示の分析表には(ガス性のものを除く)溶存物質および成分総計の数値が掲載されていなかったので、表内で確認できる数値を単純計算しました。
循環ろ過装置あり

JR白新線・佐々木駅より徒歩15~20分、もしくは古町(新潟市街中心部)~新発田の新潟交通路線バスで太田川橋バス停下車徒歩2分
新潟県新発田市佐々木2442-10  地図
0254-27-1400

※残念ながら閉館してしまいました。
10:00~21:00
600円
貴重品用ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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