温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

川内高城温泉 双葉屋

2016年02月11日 | 鹿児島県
 
川内高城温泉に一晩泊まった日には、ぜひ他の湯治宿のお風呂にも入ってみたかったのですが、時間や体力の都合で一箇所だけに絞って訪うことにしました。今回訪れたのは「共同湯」に隣接している「双葉屋」です。通りの向かいには川内高城温泉第1号の湯治宿である「双葉旅館」(旧五助屋)があり、そちらでも入浴が可能らしいのですが(湯銭は今回記事の「双葉屋」にて支払う)、今回は泣く泣くパスすることに。双方とも何とも言えない渋い佇まいであり、この2棟を眺めていると、旅する巨人と称された民俗学者宮本常一の著作に載っている写真を見ているような心境になります。


 
玄関の扉を開けると、上がり框に笊が置かれており、そこへセルフで湯銭を納める仕組みになっていました。この奥にある座敷には、いつもでしたら宿のおばあちゃんが蝋人形みたいに微増だにせずジッと座っていらっしゃるはずなのですが、私の訪問時は座敷にどなたもいらっしゃらなかったので、この笊に100円玉2枚と50円玉1枚を置いて、中へお邪魔させていただきました。いや、誰もいないわけではなく、下足棚の上では白毛のニャンコがおばあちゃんに代わって玄関の様子をしっかり監視していましたから、無銭入浴はできませんよ。


 
ステップを上がって奥へ進むと、突き当たりの右手に男女別の内湯が並んでいました。いかにも昔ながらの湯治宿といった鄙びた風情で、脱衣室もシンプル且つコンパクト。プラ籠の他、ユニットタイプの洗面台が1つと腰掛けが備え付けられているばかりです。棚は見当たらなかったので、衣類や荷物を収めたカゴは床へ適当に置いておくことになります。印象的だったのが室内のゴミ箱。剥がした湿布でゴミ箱に山ができあがっていたのでした。長期にわたって湯治を続ける爺様が、あちこち痛めた体をここのお湯で癒しているのでしょう。


 
浴室も小ぢんまりしており、えらく年季が入っています。壁や天井などシミが目立っていて、潔癖性の人はちょっと眉をひそめてしまうかもしれませんが、女湯との仕切りにはガラスブロックが用いられていたり、全体的に明るい色のタイルが多用されていたりと、建設当時はさぞかしハイカラなお風呂として輝いていたことが想像されます。今でこそ長い年月にわたってしみこんできた疲れが大胆に表面化していますが、それでも室内の2方向にガラス窓があり、上述のように隣との仕切りはガラスブロックですので、日中は照明要らずで十分に明るい室内環境が確保されていました。
室内にはおでんの結び昆布みたいに中央部分のくびれた浴槽が設けられ、無色透明の綺麗なお湯を湛えているほか、壁に沿って洗い場があり、シャワー付きカランが2基取り付けられていました。カランの水栓金具は黒く硫化していたのですが、それもそのはず、カランからはタマゴ臭を漂わせる源泉のお湯が吐出されてきました。


 
窓下に据えられた2つの浴槽は、いずれも槽内は豆タイル貼りで縁は人研ぎ石という、いかにも昭和らしい造りなのですが、ご覧のように左側が小さく右側が大きいという非対称な構造であり、それぞれに湯口があって、それぞれの浴槽縁からお湯がオーバーフローしていました。


 
 
右側の大きな槽は4~5人サイズで、少々熱い湯加減です。壁から顔を出している獅子の湯口よりお湯が吐出され、ハの字型のスロープを伝って浴槽へ注いでいるのですが、この獅子の他、浴槽の底に開いた穴からも熱いお湯が供給されており、これら2箇所からの投入によって熱めの温度設定となっているようでした。獅子の湯口にばかり気をとられ、底の投入口に気づかず底へお尻を下ろしてしまった私は、尻に伝わる不意を突く熱さにビックリして思わず「ヒィッ」と情けない声をあげてしまいました。でもツルツルスベスベの浴感はしっかりと肌に伝わり、あまりの気持ちよさに入浴中は何度も肌をさすってしまいました。
これらの投入口の他、窓の脇で下から立ち上がっている配管があり、バルブで開閉するようになっていたのですが、これって何なのでしょう? 打たせ湯なのかな?


 
一方、左側の小さな槽はせいぜい2人入るのが精一杯。コーナーに湯口があるのですが、投入量は決して多くなく、その影響なのか、若干ぬるめの湯加減でした。湯温調整のため意図的に投入量を絞っているのかもしれません。
この湯口にあるコップで飲泉してみますと、焦げ渋のタマゴ味およびタマゴ臭が感じられましたが、苦味は心なしか控えめであり、総じて「竹屋旅館」よりマイルドだったように記憶しています。川内高城温泉では、共同管理しているお湯を各宿(一部を除く)へ分配しているはずなので、どこで入っても同じお湯であるはずですが、それでもに宿やお風呂によって体感が異なるということは、湯使いによって表情をすぐに変えてしまう繊細なお湯なのかもしれません。

私が風呂から上がって退出しようとすると、お座敷におばあちゃんが戻っていらっしゃったので、挨拶をしてからこの宿を後にしました。昭和の湯治宿風情を実体験できる貴重な存在のお風呂でした。


川内3・19号
単純硫黄温泉 52.1℃ pH9.2 溶存物質264.8mg/kg 成分総計264.9mg/kg
Na+:71.7mg(95.71mval%),
HS-:6.1mg, S2O3--:1.0mg, HCO3-:101.3mg(47.98mval%), CO3--:40.2mg(38.73mval%),
H2SiO3:31.5mg, CO2:0.1mg,
(平成17年6月30日)

※実際に館内で掲示されていた分析書は平成7年のものでした。参考までにこの分析書のデータも掲載させていただきます(いつものように抄出です)。
混合泉(湧出地:湯田町6489及び湯田町6459-8)
単純硫黄温泉 50.0℃ pH9.5 溶存物質281.9mg/kg 成分総計281.9mg/kg
Na+:74.9mg(96.74mval%),
HS-:2.1mg, S2O3--:4.4mg, SO4--:15.1mg, HCO3-:100.1mg(51.09mval%), CO3--:30.3mg(31.46mval%),
H2SiO3:49.7mg,
(平成7年3月6日)


JR川内駅もしくは西方駅より薩摩川内市の北部循環バス(南国交通が運行)「湯田西方循環線」で「梅屋前」下車すぐ
鹿児島県薩摩川内市湯田町6462  地図
0996‐28‐0018

日帰り入浴6:30~21:00
250円
備品類なし

私の好み:★★
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川内高城温泉 川内岩風呂

2016年02月09日 | 鹿児島県
 
川内高城温泉で営業している湯治宿はそれぞれが内湯を有しており、入浴のみの利用も受け付けていますが、どの宿のお風呂もコンパクトであるため、大きな風呂でのびのび寛ぎたいという方にはちょっと不向きかもしれません。そんな当地にあって、随一の大きさを有する日帰り入浴専門の施設が「川内岩風呂」です。前回記事で取り上げた「竹屋旅館」の向かいには「竹屋旅館別館」があり、更にその奥に「川内岩風呂」が位置しているのですが、そんな立地からもわかるように、この施設は「竹屋旅館」で管理運営しています。


 
別館にある専用窓口で湯銭を支払ってから、湯屋へと向かいます。湯屋の屋根からは白い湯気がもうもうと上がっていました。竹屋の本館に先立ち、この岩風呂も2013年にリニューアルされ、本館と同じような色合いの、周囲の環境に馴染むシックな外観に生まれ変わりました。


 
現代的和風の出入口を入ると、下足場には木彫りの仏様が祀られていました。


 
脱衣室は綺麗で広々しており、施錠できる棚も多く用意されていますので、大勢で利用しても大丈夫。腰掛けやシーリングファンなど、入浴後の体を休めるための設備もしっかり用意されていました。


 
まるで体育館のように広くて天井も高い浴室。リニューアルしたのは外観のみならず、内部も全面的に手が加えられており、屋根には新品の建材が用いられ、それを支持する梁や斜交いなどの鋼材も綺麗に塗装されていました。一方で、浴槽など入浴に関する部分は以前のままの姿を残しているらしく、岩風呂と称しているように男女両浴室を仕切る塀には岩が荒々しく積み重ねられており、その岩の下に古いタイル張りの浴槽が二つ設けられています。この仕切り塀の一番奥には、娘がお婆さんを労わりながら連れ沿う像が立てられているのですが、つまり昔はこのようにして湯治をしていたということなのでしょうか。


 
壁に沿って配置されている洗い場には、シャワー付きカランが4基と、お湯と水がペアになっているカランが2組取り付けられており、前者と後者の間には、水色のタイル張りで半円形の水風呂が据えられていました。


 
上述の全景画像で見えた2つのタイル張り浴槽のほか、浴室に入ってすぐ右手のちょっと下がったところには、上画像のような3~4人サイズの檜風呂があり、浅い造りで40℃くらいのぬるい設定となっていました。寝湯のような感覚でゆっくり浸かるために設けられているのでしょうか。



檜風呂の上には旅館主作と記された自作と思しき民謡の詞が掲示されており、この詞によれば檜風呂の木材は台湾檜なんだとか。歌詞が書かれたこのプレートにも、お婆さん(お母さん)を連れる娘の姿のイラストが描かれていますね。


 
2つの浴槽は歪なヒョウタンみたいな形をしており、くびれた部分に仕切りがあって両浴槽を隔てていますが、この仕切りにはスリーブがあけられており、小さな浴槽から大きな浴槽へお湯が流れて、大きな槽から洗い場へお湯が溢れるような造りになっているのでした。


  
左(上)画像は大きな手前側の浴槽で、10人以上は同時に入れそうな容量があり、湯加減は万人受けする41~2℃に維持されています。一方、右(下)画像は奥の小さな浴槽で、おおよそ4~5人サイズ。後述する湯口から直接お湯が注がれているため、43℃くらいのやや熱い湯加減になっていました。
時間帯や気候、そしてお客さんの利用状況など、諸々の要因によって湯加減は容易く上下してしまうらしく、こちらのお風呂の場合は、開店時間である6時の一時間半前から、その日の天気等を推測しながら湯加減の調整をはじめるんだそうです。しかも、このお風呂は加水できない構造であるため、投入量の多寡はもちろんのこと、窓の開閉、熱交換器の使用など、いろんな手段を用いながら湯加減調整に苦心なさっているんだそうです。


  
岩の上を這ってきた緑色の配管からお湯が二手に分かれて吐出されており、一方はその配管から直接、もう一方は竹の筒を通りながらシャコ貝の貝殻へと落とされていました。前回記事にて、川内高城温泉では一部を除くほとんどの宿及び施設で、2つの源泉を集めて一旦ストックしてから各施設へ分配しているとご紹介しましたが、この施設はご覧のように大きなお風呂を擁しているため、この2源泉から供給されるお湯だけでは賄いきれず、もう一つの源泉を加えた3源泉混合のお湯が使われています。お湯は無色透明でふんわりとしたタマゴ臭が香り、マイルドながらも焦げ渋のタマゴ味が感じられます。イオウ感は若干おとなしいかもしれませんが、ツルスベの滑らかな浴感が大変気持ち良く、大きなお風呂で存分に羽を伸ばすことができました。
私は夜8時頃と朝6時過ぎの計2回利用したのですが、夜は7~8人、朝は2~3人の利用客がおり、人気の高さが窺えました。地元の方から愛され続け、そして地元の方を癒し続ける、素敵なお風呂でした。


川内3・16・19号
単純硫黄温泉 46.9℃ pH9.0 溶存物質325.7mg/kg 成分総計325.9mg/kg
Na+:71.4mg(95.69mval%),
Cl-:10.8mg, HS-:2.1mg, S2O3--:3.7mg, SO4--:22.6mg(13.70mval%), HCO3-:95.2mg(45.48mval%), CO3--:27.0mg(26.24mval%),
H2SiO3:88.4mg, CO2:0.2mg,
(平成21年4月10日)

JR川内駅もしくは西方駅より薩摩川内市の北部循環バス(南国交通が運行)「湯田西方循環線」で「竹屋前」下車、徒歩1分
鹿児島県薩摩川内市湯田町6489  地図
0996-28-0865

6:00~21:00
350円
ドライヤー(有料20円/3分)・ロッカーあり、他備品類なし(お風呂道具販売あり)

私の好み:★★+0.5
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川内高城温泉 竹屋旅館

2016年02月07日 | 鹿児島県
 
西郷さんゆかりの薩摩川内市・川内高城(せんだいたき)温泉は、湯治宿が主体となって構成されている今時どき珍しい温泉地であり、山間の細い道に沿って鄙びた宿が軒を連ねる光景を目にすると、まるで昭和30年代へタイムスリップしたかのような錯覚に陥ります。当地を訪れた私は、湯治宿のひとつである「竹屋旅館」で一泊お世話になることにしました。昔のままの姿を残す宿が多い当地にあって、この「竹屋旅館」は2014年に外装や1階館内などを中心にリニューアル工事を実施しており、表通りから見る建物の姿は、湯治宿という言葉を聞いて思い浮かべる鄙びた風情とは一線を画す、現代和風の落ち着いた佇まいです。


 
この温泉街はとにかくニャンコが多く。私が宿の玄関を訪おうとした際も、玄関前のステップで昼寝をしていた人懐っこい三毛猫が、こちらへ近づき体をすり寄せてきました。温泉街にはニャンコが似合いますね。


 
 
リニューアルされた1階内部は、湯治宿とは思えない現代的な内装でまとめられており、館内を案内してくださったご主人に思わず「意外にも綺麗でビックリしちゃいました」と思わず口にしてしまいました。床は板敷きではなくフローリング。キッチンにはカウンターもあり、焼酎などの瓶も並べられています。また元々客室だった部分の一部は食堂に改造され、お昼には食堂としての営業もはじめたそうです。


 
今回通された客室は2階の4畳半。全面リニューアルされた1階とは異なり、客室が並ぶ2階は最低限の改修にとどめたようですが、それでも室内にはエアコンやテレビ、そして流し台が設けられており、予め電話でお願いしておけば炊飯器もお部屋に用意してくださいます(上画像で流し台の左側に写っていますね)。私が訪れた日はまだ肌寒かったのですが、コタツがセッティングされていましたので、エアコンを運転させることなく一晩を過ごすことができました。素泊まりのみの湯治宿ですからお食事は自分で手配することになりますが、1泊3500円でこの設備の客室に泊まれ、しかも掛け流しの温泉に入れるのですから、下手にビジネスホテルに泊まるよりもはるかにリーズナブルですね。こちらのお宿では、実際にビジネス利用も多いんだとか。


 
客室の扉や共用の洗面台と並んで洗濯機が姿を覗かせている2階の廊下は、昔ながらの湯治宿そのもの。この廊下には自炊用の台所も並んでおり、冷蔵庫や新しい電子レンジも使えます。



僭越ながら自作の夕食をご紹介。できるだけ地元産の食材にこだわってみました。お刺身は阿久根のアジと長島の養殖ブリ、スーパーの惣菜コーナーで買ってきた鹿児島産キビナゴとアオサの天婦羅、そして筑前煮です。お米だけは地元産ではなく自宅から持参した宮城県産「ひとめぼれ」なのですが、これを3合炊いて、この晩のみならず翌日の朝食、そしておにぎりにしてお昼にもいただきました。
なお温泉地内には食材を調達できるような店が無いため、事前に川内市内のスーパーマーケット等で買い込んでおく必要があります。また当地には食事をできるようなお店もありませんので、もし自炊ではなく外食したい場合(あるいはコンビニ弁当で済ませたい場合)は、車で川内市内まで出かける必要があります(車で片道約20分)。


●浴室
 
川内高城温泉の各湯治宿には内風呂が設けられています。今回の宿泊では夕食後と朝の起床直後の計2回、宿の内風呂で湯浴みさせていただきました。なお、こちらのお宿の場合は夜通し利用できるわけではなく、入浴時間は6:00~20:30となっており、20:30からは清掃のためお湯が抜かれてしまいます。1階の廊下を折れて、ステップを下って男女別の内湯へ。


 
脱衣室は塗装されたモルタルの壁に棚が括り付けられているだけという、至ってシンプルな造りです。


 
浴室内は随所に建物の古さが滲み出ていますが、清掃が行き届いていており、1泊で諭吉先生が飛んでゆくレベルの立派な旅館並みに清潔感が漲っていました。とても湯治宿だとは思えません。ご主人に伺ったところ、業者に委託して毎晩掃除してもらっているんだそうです。浴槽をはじめとして足元やお湯がかかりやすい低い部位はタイル張りですが、壁上部などはモルタル塗りです。古いお風呂だからかシャワーなどの設備は無く、水道の蛇口が1つあるばかりですから、掛け湯などは桶で湯船のお湯を直接汲むことになります。


 
綺麗なコバルトブルーの豆タイルで覆われた浴槽は、槽内の仕切りで2分割されており、湯口がある奥側は2人サイズ、そこからお湯を受けている脱衣室側は3人となっていました。仕切りの上部に小さな切り欠けがあるほか、下部には2つのスリーブもあり、これらによって湯口側の小さな槽から脱衣室側の大きな槽へお湯が流れる仕組みになっています。湯口がある小さな方は若干熱いのですが、その熱さのおかげで心身がシャキッとしますし、一方の大きな方は適度な湯加減ですから、どなたでもじっくりと寛ぐことができるかと思います。


 
お湯は無色透明で清らかに澄んでおり、見つめているだけで心まで浄化されそうです。夕食後に入浴した際には、湯面に気泡の塊が浮いており、湯尻へとゆっくり流れてゆきました。お湯は文句なしの完全かけ流し。浴槽縁の赤い御影石の上から常時オーバーフローしていますが、私が湯船に入ると、浴室全体がまるで洪水を起こしたかのように、豪快にザバーッと溢れ出てゆきました。お湯が勢いよく大量に溢れ出る瞬間って、えも言われぬ贅沢感を楽しめますよね。


 
湯口の根元にはバルブがついており、これで投入量を適宜調整することが可能です。湯口にステンレスの柄杓が置かれていましたので、これでテイスティングしてみますと、ちょっぴりビターなタマゴ味が感じられ、湯面からはタマゴ臭がふんわりと香ってきました。そしてアルカリ性泉ならではのツルツルスベスベとした滑らかな浴感も存分に楽しむことができました。

かつて川内高城温泉では各宿で源泉を所有していましたが、新たな源泉を見つけようとボーリングをしたところ、各宿が所有している源泉の吐出圧力等が低下してしまったため、現在では温泉地内に2箇所ある源泉からお湯を集め、神社の上にある貯湯槽にストックしてから、各宿へ配湯しているんだそうです。このため、一部の例外を除き、どの宿(施設)でお風呂に入っても同じお湯になります。しかしながら、投入量や湯使いなどによって、若干質感が異なるのが温泉の面白いところであり、次回記事以降で当温泉地の他施設に関しても触れさせていただきますが、あくまで私個人の感想として、他施設よりも若干ながら、こちらのお風呂の方がタマゴ感が明瞭だったように思います。
毎日浴槽を清掃しているためお風呂は綺麗ですし、その清潔な浴槽へ惜しげも無くお湯がかけ流されているため、お湯の鮮度感も抜群。ちょっと熱めですが、澄み切った極上のお湯に浸かることで、この上なく爽快な湯浴みを堪能させていただきました。

ちなみにご主人は元鹿児島県職員だったそうで、地元の観光振興に大変ご熱心。一泊というわずかな時間でしたが、地元の観光などに関するいろんなお話を伺え、かつアットホームで心温まるご配慮もくださり、実に有意義で楽しい時間を過ごすことができました。湯治宿というと、鄙びすぎて不便でちょっと縁遠いかな、と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、そんな方にもおすすめできるお宿かと思います。


川内3・19号
単純硫黄温泉 52.1℃ pH9.2 溶存物質264.8mg/kg 成分総計264.9mg/kg
Na+:71.7mg(95.71mval%),
HS-:6.1mg, S2O3--:1.0mg, HCO3-:101.3mg(47.98mval%), CO3--:40.2mg(38.73mval%),
H2SiO3:31.5mg, CO2:0.1mg,
(平成17年6月30日)

JR川内駅もしくは西方駅より薩摩川内市の北部循環バス(南国交通が運行)「湯田西方循環線」で「竹屋前」下車すぐ
鹿児島県薩摩川内市湯田町6483  地図
0996‐28‐0015

日帰り入浴6:00~21:00
300円
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (7)
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湯之元温泉 家族湯 ゆぅ~ゆぅ~

2016年02月06日 | 鹿児島県
 
東男の私が九州を温泉巡りしていて当地を羨ましく思うのが、家族風呂の多さです。私のホームグラウンドである関東や東北では、家族風呂(貸切風呂)の数が少なく、料金設定も高止まりしているのですが、鹿児島・大分・熊本を中心にして九州にはワンコインで利用できる廉価な貸切風呂があちこちに点在しており、誰にも邪魔されずに温泉を楽しみたい時にはもってこいです。今回はそんなリーズナブルな貸切風呂を利用できる湯之元温泉の「家族湯 ゆぅ~ゆぅ~」に立ち寄りました。
路傍に立つ看板に導かれながら、駐車場にレンタカーを停め、受付へと向かいます。


 
その名称からもわかるように、こちらは貸切風呂だけで営業している施設であり、本館に並ぶ12の個室のほか、別館には2室の大風呂、そして川沿いの離れには2つの露天風呂があり、すべて貸切で利用します。私は一人で伺いましたので、本館の個室を利用することにしました。上画像の窓口で申し込みますと、たまたま空室があったので、待ち時間無しで利用することができました。


 
今回宛てがわれた個室は「15号室」。受付で鍵を受け取り、指定された個室へと向かいます。


 
ドアノブに「入浴中」を札をぶら下げて入室します。4畳半ほどの広さがありそうな室内には、タイル床の上にスノコが敷かれており、4つ枠の棚がくくりつけられ、ドライヤーも備え付けられていました。また室内にはエアコンのダクトが伸びており、湯上がりにこのダクトから吹き出す冷風で体をクールダウンすると、実に爽快でした。


 
浴室は一般家庭のお風呂をひと回り大きくさせたような広さがあって、基本的な構造は一般家庭のお風呂とほぼ同様ですが、室内には温泉由来の焦げたようなタマゴ臭が充満しており、浴室のドアを開けた時点でお湯への期待が膨らみます。全面タイル張りの浴室にはシャワー付き混合水栓がひとつ、そしてお湯と水の蛇口のペアが1セット設けられ、窓の下にはタイル張りの浴槽が一つ据えられています。広さや備品の数から考えて、このお風呂は1~2人(プラス小さな子供)が適当なキャパかと思われます。


 
カランから出てくるお湯は源泉100%の温泉であり、温泉には硫黄が含まれるため、水栓金具は硫化により黒く変色していました。カランのお湯の温度を測ってみますと、56℃という高温です。さすがにこのままの高温でお湯を浴びる人はいないでしょうから、カランを使う際には必ず水で薄めることになります。カランのお湯からは後述するようなお湯の特徴がしっかりと伝わってきました。


 
浴槽は2人が入れるサイズで、1人でしたら悠々と足を伸ばして湯浴みできちゃいます。貸切風呂には、利用の都度お湯を張り替えるところと、常時お湯を張りっぱなしのところがありますが、こちらの施設は後者であり、利用時に湯船の湯加減がいまひとつでしたら、自分でお湯や水を加えて、好みの湯加減にして構いません。私が利用したこのお風呂はちょっとぬるかったので、お湯のコックを開いて源泉のお湯を吐出させたところ・・・


 
アツアツのお湯が供給され、コックを全開させたら、コック下にある湯溜まりの水面がコンモリ盛り上がるほど、大量に吐出され、あっという間に湯船の温度が上昇。それだけに留まらず、浴槽からはお湯がドバドバ溢れ出て、洗い場がすっかり洪水状態になってしまいました。それだけこちらの源泉は湯量が豊富なのですね。

お湯は無色透明で湯中では白い湯の花がチラホラ舞っています。お湯を口に含むと苦味の強いタマゴ味が感じられ、特に苦味は口腔内の粘膜にしぶとく残って、喉がいがらっぽくなりました。またマイルドながらもはっきりと、焦げた臭いを伴うイオウ臭が湯面から漂っていました。アルカリ性泉らしいツルスベ感が肌に伝わり、その滑らかな浴感は湯浴み客を虜にさせること必至。私も浴感が気に入ってついつい長湯をしてしまい、前後不覚になるほど火照ってふらふらになってしまったのですが、脱衣室にあるダクト式エアコンの冷風のお陰で、湯上がりには見事に気力が蘇りました。
新鮮なお湯を贅沢に継ぎ足すことができ、しかも誰にも邪魔されず、自由気ままに湯浴みできるこの貸切風呂は、平日でしたらなんと一人500円、つまりワンコインで利用できるのですから、この上なくありがたい施設です。湯量が豊富で且つ温泉と人々の生活が密着しているご当地だからこそ成り立つ営業形態なのでしょう。気に入りました。


 
 
今回は利用していませんが、受付から通りを挟んだ反対側の川沿いにあるのが、この2室の露天風呂。赤い鳥居が目印ですね。内部は見学できませんでしたが、受付には内部の写真が掲示されており、これによればなかなか広い空間が確保されているみたいです。ちなみに、この露天エリアに建つコンクリの躯体は、おそらく源泉井や貯湯設備なのでしょうね。


湯之元国道以北19号泉
単純硫黄温泉 67.6℃ pH8.6 溶存物質663.0mg/kg 成分総計664.0mg/kg
Na+:176.5mg(91.76mval%),
F-:10.1mg, Cl-:122.2mg(39.38mval%), HS-:14.7mg, S2O3--:4.8mg, SO4--:55.8mg(13.24mval%), HCO3-:143.4mg(26.83mval%), CO3--:22.2mg(8.45mval%),
H2SiO3:95.4mg, H2S:0.4mg,
(平成19年2月19日)

JR鹿児島本線・湯之元駅より徒歩9分(約800m)
鹿児島県日置市東市来町湯田3460-18  地図
099-274-0526

10:00~23:00 月曜定休
本館個室900円/1時間(平日のみ1名500円、土日祝1人800円)
大風呂(5名まで)1400円/60分・2000円/90分
露天風呂(5名まで)1800円/60分・2500円/90分
人数に応じた料金設定あり。詳しくは施設へお問い合わせください。
ドライヤーあり、各種入浴グッズ販売あり

私の好み:★★+0.5
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湯之元温泉 田之湯温泉

2016年02月04日 | 鹿児島県
 
意外にも拙ブログでは初登場となる鹿児島県日置市の湯之元温泉。戦国時代に島津家の家臣が湯治したという記録が残っており、江戸時代の寛永年間になると温泉街が形成されていった歴史ある温泉街ですが、華やかな歓楽的温泉街が広がっているわけではなく、市街地に蝟集する民家や商店などと軒を連ねるような感じで、各旅館や入浴施設が点在しています。その中でも今回は温泉銭湯「田之湯温泉」を訪れました。



浴場が面する路地の舗装には温泉マークが描かれていました。当地と温泉は切っても切り離せない関係なのですね。


  
入口は男女別に分かれており、各出入口を入ってすぐのところに番台がある、昔ながらの銭湯スタイルです。男湯入り口の左側には「日本朝風呂党本部」の札が掲示されており、脱衣室内を見上げると「日本朝風呂党立党宣言」と題する趣意文が掛けられていました。この党派は他で見かけたことがないのですが、何かしら全国的な活動なさっているのかな? このような宣言をなさっているお風呂だけあり、朝は6時からオープンしています。


 
下駄箱の上にはツツジの盆栽が置かれており、綺麗に花を咲かせていました。館内は昔ながらの面影を色濃く残す昭和の銭湯そのものであり、そんな佇まいに惹かれて取材にやってくるのか、室内にはたくさんの色紙が並べられていました。


 
浴室に入ると焦げたような匂いを伴うタマゴ臭がふんわり香ってきました。浴室の中央に浴槽が据えられ、その周囲を取り囲むように洗い場が配置されています。洗い場にはお湯と水がペアになっている押しバネ式のカランが計10組並んでおり、お湯のカランからは源泉のお湯が出てきます。各水栓金具は硫化のため黒く変色していました。
女湯との仕切り塀の上には、紫色のアクリル板が立てられており、どことなく昭和の水商売のようなムードを漂わせています。


 
浴槽は3m×3m四方で、角がRになっており、その見た目からは優しい印象を受けますが、縁の表面は洗い出しが粗くなってしまったのか、砂利がむき出しにチクチクし、部分によってはトゲトゲになって、痛くて腰をかけることが躊躇われました。この浴槽は相当長い年月にわたって使い込まれているのでしょうね。
この縁からはお湯が静々と溢れ出ており、人が浴槽に入るとしっかりオーバーフローしました。底面には四角形の格子が埋め込まれていましたから、おそらくこの格子の下に排湯管が接続されているものと思われます。湯使いはかけ流しかと思われます。


 
この槽の内部は均等に2分割されており、淡いエメラルドグリーンを帯びたお湯が張られています。お湯は元々無色透明なのかもしれませんが、浴槽内にはウグイス色のタイルが用いられており、このタイルの影響でお湯も色を帯びているようにみえるのかもしれません。このお湯の中には黒や白の湯の花がたくさん浮遊しており、ぱっと見た感じで黒と白の湯の花の比率は10:1といったところでした。なお黒い湯の花は上述した洗い場に設けられているお湯のカランからも出てきました。

湯口側の槽は44~5℃という熱い設定ですが、お湯はとても新鮮ですので、一度入ると心身がシャキッとして実に爽快。この気持ち良さの虜になり、私は妙な中毒性を覚えました。湯口に置かれているコップでお湯を飲んでみますと、タマゴ味と焦げ渋味を伴う苦味が感じられ、特に苦味に関してはワンテンポ遅れて口腔に広がり、その後しぶとく口に残りました。また室内にこもるほどのタマゴ臭は飲泉時にもしっかり嗅ぎとれ、焦げたような感じを有するタマゴ臭が、明瞭な存在感を残しながら喉から鼻へ抜けてゆきました。イオウ感の強さはなかなかのものがあります。


 
一方、脱衣室側の浴槽は、湯口側の槽からお湯を受けており、42~3℃という誰でも入れる湯加減に抑えられていました。湯中で肌をさするとツルツルスベスベの滑らかな浴感が強く得られ、あまりに気持ち良いので、体が火照ってしまうのを覚悟の上で、限界まで浸かり続けてしまいました。

この素晴らしいお湯に、PETボトルのお茶よりも安い150円で入れるのですから、いつでも利用できる地元の方が羨ましくてなりません。長年にわたって人々を癒し続けてきた湯之元温泉の実力と魅力を実感させてくれる、素晴らしい銭湯でした。


単純硫黄温泉 57.8℃ pH8.5 溶存物質555.2mg/kg 成分総計556.8mg/kg
Na+:143.8mg(90.06mval%), Ca++:6.4mg(4.61mval%),
F-:9.2mg, Cl-:36.8mg(15.73mval%), HS-:19.2mg, S2O3--:3.3mg, SO4--:50.5mg(15.89mval%), HCO3-:170.9mg(42.36mval%), CO3--:18.0mg(9.08mval%),
H2SiO3:72.5mg, H2S:0.7mg,
(平成17年6月20日)

JR鹿児島本線・湯之元駅より徒歩9分(約700m)
鹿児島県日置市東市来町湯田3077  地図
099-274-2219

6:00~22:00 第2火曜定休
150円
ドライヤー(有料20円)あり、他備品類なし

私の好み:★★+0.5

コメント (2)
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