温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

弥彦桜井郷温泉 さくらの湯

2016年09月19日 | 新潟県
 
前回記事の姫川温泉から更に列車を乗り継いで日本海を北上し、新潟県下越地方へとやってまいりました。
越後線吉田駅から弥彦線に乗り換えて弥彦駅へと向かうと、線路の先には霊峰弥彦山がそびえていました。


 
弥彦線のどん詰まりである弥彦駅に到着です。越後の一宮である弥彦神社へ参詣するために敷設された鉄道ですから、線路は弥彦山の麓でプッツリと途切れており、駅舎も神社を模したようなどっしりとしたスタイルです。


 
私は弥彦駅で降りたのは神社にお参りするためではなく、地元で人気を博している温泉施設を利用するためです。
駅前のバス停から弥彦村と燕市で共同運行されているコミュニティーバス「やひこ号」に乗りこんで、その目的地へと向かいました。


 
駅からバスに揺られること14分で日帰り温泉入浴施設「桜井郷温泉 さくらの湯」に到着しました。バスは施設の玄関前まで乗り入れてくれるので、とっても便利です。弥彦山の麓に広がる田圃の真ん中に黒塗りのシックな棟がいくつも並んでおり、目的別に別れた各棟が廊下で繋がっているような構造が外からも見て取れます。私はオープンの10分前に到着したのですが、その時点で玄関前には開店を待つお客さんが列をなしていました。それだけ人気の温泉なのですね。



ここでお得な情報をひとつ。
下車時にバスの運転手さんからバス運賃の領収証をもらい、これを施設の受付に提示すると、定価1,000円の入浴料が800円に割引されます。バス「やひこ号」でアクセスする場合は是非とも領収証を入手してくださいね。


 

こちらの施設は、土地を村が提供して上物を民間企業「聚楽」が運営しています。「聚楽」といえば、上野の西郷さんの下にある「レストランじゅらく」のほか、福島県飯坂・群馬県万座および水上・静岡県熱海で温泉ホテルを運営していることで有名であり、長年にわたって蓄積されたノウハウがこの施設においても活かされています。
受付では前払いで入浴料を支払って下足箱のキーを預け、引き換えにバーコード付きのロッカーキーを受け取り、更にその左隣のカウンターでタオル(大小1枚ずつ)と館内着のセットも受け取ります。女性用の館内着にはいくつかの種類(色や柄)あり、好みのものを選ぶことができます。館内着が選べるだなんて、まるで旅館に泊まっているかのようですね。

いくつか棟に分かれている館内はかなり広く、ソファーが並んだラウンジルーム、大座敷の休み処、食事処、マッサージ、岩盤浴など、いろんな設備が用意されています。このほか、入館客なら自由に利用できる足湯もあり、温泉が張られた足湯槽からは温泉由来のタマゴ臭が香っていました。



さて前置きが長くなりましたが、お風呂へと向かいましょう。ここから先は混雑および機器類使用禁止のため、公式サイトに掲載されている画像を拝借しながら、文章でご紹介してまいります。

この浴場が開業した当初の脱衣室は狭くて混雑していたそうですが、利用客の増加に対応して増設を行い、明らかに後付けしたことが一目瞭然な空間が奥へ広がっていました。こまめに清掃されている室内は綺麗で清潔。アメニティーも揃っており、使い勝手もまずまずなのですが、ロッカーの一つ一つの幅が狭く、しかも上下段に分かれているため、場合によっては他のお客さんと干渉してしまうかもしれません。



【画像は公式サイトより転載】
浴室に入った瞬間、室内に充満する温泉由来の芳醇なタマゴ臭が香り、お湯への期待に思わず胸が膨らんでしまいます。
室内は大きく分けると、(男湯の場合は)右手に洗い場、左手に各種浴槽類が配置され、奥の窓際に主浴槽が設けられています。洗い場にはシャワー付きカランが計17基並んでおり、半数近くには袖板が取り付けられて隣のブースとセパレートされていました。各シャワーにはボディーソープ・シャンプー・コンディショナーが用意され、また脱衣室には(髭剃りなど)各種アメニティー類が揃っていますので、本当に手ぶらで来店しても全く問題ありません。
洗い場と反対側に配置されている各種浴槽類は、脱衣室側から上がり湯・サウナ・水風呂(タイル張りで1人サイズの円形浴槽が2つ)・薬湯という順に並んでおり、この日の薬湯はレモングラスのハーブ風呂でした。また洗い場のシャワーが取り付けられている仕切りの反対側には座湯が設けられ、石造りの高い背もたれに温泉のお湯がチョロチョロと這わされていました。

後述する露天風呂に面して左右に長い窓ガラスがあり、その窓に接して内湯の大きな主浴槽が据えられています。窓の左右幅とほぼ同じくらいに長いこの主浴槽は左右に2分割されており、左側が小、右側が大となっていたのですが、双方にお湯の投入口や循環用吸引口があり、見た感じでは大きさ以外に違いはみられず、私が実際に入ってみても双方のお湯にこれといった違いがあるわけでもなく、何を以て分けているのかちょっとわかりませんでした。お湯は槽内吸引のみならず、窓下の溝にも結構な量のお湯が溢れ出ていましたので、この溝への流下が排湯だとしたら、循環と同時にかなり多い量の新鮮源泉が投入されている(そして捨てられている)のではないかと思われます。



【画像は公式サイトより転載】
露天風呂ゾーンも広々としており、周囲を目隠しの塀で囲まれているものの、かなり開放的であり、とても静かでゆったり寛げます。敢えて難を言えば、塀のすぐ外に立っている電柱や電線がちょっと邪魔かもしれませんが、こればかりは公共のものですので致し方ないでしょうね。また露天ゾーンに立っているときには右手に弥彦山を眺めることができるのですが、お風呂に入って視界が低くなってしまうと山が塀で隠れてしまうことも少々残念なところです。

露天風呂ゾーンにも多様な浴槽が設けられています。
内湯の主浴槽とガラス窓を挟んで接するように据えられている浴槽は、1.5m×4.5mの大きな長方形で、暖色系のタイルが張られ、40〜41℃前後の、長湯したくなるような絶妙な湯加減となっていました。あくまで私の主観ですが、内湯露天の全槽の中ではこの浴槽がお湯のコンディションが最も良く、無色透明でクリアに澄んでおり、お湯の鮮度感も良好でした。
その長方形の浴槽の隣には、同じく長方形ながらひと回り小さくさせたような浴槽があり、若干浅い造りながら湯加減はやや強め(熱め)に加温されていました。この浅くて熱い浴槽のお湯は、さらに隣に設けられた深い浴槽へと流れ込み、深い浴槽のお湯は、またまた更に奥に位置する東屋下の浴槽や寝湯(4人分あり)へと流下していました。このようにお湯が隣へ隣へと流れてゆく各浴槽では、お湯が鈍って潮汁のような弱い白濁を呈しており、上流の熱い浴槽以外は長湯仕様の湯加減になっていたものの、お湯の鮮度はあまり感じられませんでした。でも寛ぎやすくぬるめのお風呂であるため、時間を忘れてのんびりと湯浴みしたいお客さんにはウケが良く、中には文庫本を持ち込んで風呂に浸かりながら読書するというヨーロッパのスパみたいな楽しみ方をなさっている方もいらっしゃいました。
露天風呂ゾーンにはこの他、壺湯が3つ並んでいるのですが、完全な循環湯であり、入った途端に強いカルキ臭が鼻を突いてきたので、私はほとんど利用しませんでした。

こちらの施設で使用している温泉は、近所にある「高齢者総合生活支援センター」の浴場で以前から使われている源泉のお湯を、800mほど引湯したものです。数年前までこの「高齢者総合生活支援センター」でも外来入浴を受け付けていましたが、近年は施設対象者以外の利用を謝絶しており、外来者が桜井郷温泉に入りたければ「さくらの湯」以外に選択肢はありません。内湯の大きな主浴槽や露天の大きな長方形浴槽ではお湯が無色透明に澄んでおり、循環装置を稼動しつつ新鮮源泉も投入する放流式を併用した湯使いであることが推測されますが、その他の(温泉を使用している)浴槽では循環メインであるためか、若干の潮汁的な濁りが見られ、お湯がちょっと疲れているような印象を受けました。お湯のコンディションが良い上述の2浴槽からは芳醇なタマゴ臭が漂っており、その芳香は浴室内に充満するほどはっきりと香っています。湯口のお湯を口に含んでみますと、甘塩味と茹で卵の卵黄味が感じられ、ちょっとしたエグミも含まれていました。また湯口においてのみ、僅かながらアブラ臭のような香りも確認できました。
湯中ではツルスベの滑らかな浴感が得られ、しかも全体的にぬるめの湯加減にセッティングされているため、瞑目してのんびりと長湯したくなります。でも、ぬるめとは言え立派な食塩泉ですし、硫黄による血管拡張効果も加わるためか、湯上がりには身体の芯からしっかり温まり、冬だというのにいつまでも汗が引かなくなるほど力強く火照る熱の湯であるというのが、この温泉の真の実力です。
なお温泉分析書には泉質名として「ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉」と表記されていますが、上述のようにイオウ感が強く、分析書のデータによれば総硫黄は2.8mgですので、れっきとした硫黄泉を名乗れるはずです。つまり泉質名の頭に「含硫黄」という語句を加えるべきではないかと思われます。



お風呂から上がった後は館内着に着替えて、食事処でお店オススメの「究極の親子丼」なるものを注文しました。肉厚ジューシーで表面を香ばしく炙ってある鶏肉は「にいがた地鶏」。黄身が濃厚なタマゴは県内の五泉市産。つまり親子ともに新潟産なんですね。ちょっとお高めでしたが、究極を名乗るだけあって、とても美味しかったですよ。なおこうした食事やマッサージなど、入館後に発生した支払いに関しては、ロッカーキーのリストバンドに付帯しているバーコードで、退館時に一括精算します。

完全掛け流しの浴槽が無いのは残念であり、加温した上で循環し、消毒剤も使用しているという湯使いなのですが、同時並行で新鮮源泉を投入してコンディションを保っている浴槽があるため、決してお湯は悪くなく、むしろ湯面から漂うタマゴ臭は、温泉ファンなら誰しもが興奮すること必至です。綺麗で使い勝手が良く、静かでゆったり寛げるため、開店前からお客さんの列ができるほど人気を集めるのも十分頷けます。弥彦周辺では「多宝温泉 だいろの湯」が群を抜いて素晴らしい温泉ですが、次点に位置する良い温泉かと思われます。

ちなみに、往路は路線バスでアクセスしましたが、バスは本数が少ないため、帰りは30分強で弥彦駅まで歩きました。


源泉名:やひこ桜井郷
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 43.5℃ pH8.6 溶存物質1516mg/kg 成分総計1516mg/kg
Na+:446.9mg(76.75mval%), Ca++:111.6mg(21.99mval%),
Cl-:789.8mg(89.98mval%), Br-:3.1mg, I-:0.5mg, SO4--:76.3mg, HCO3-:17.7mg, CO3--:2.5mg, HS-:2.7mg, OH-:0.1mg,
H2SiO3:32.9mg, HBO2:10.8mg, H2S:0.1mg,
(平成23年6月27日)
加水なし
一部加温あり(入浴に適した温度を保つため)
循環あり(衛生管理のため一部循環)
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を使用)

JR弥彦駅もしくは吉田駅から弥彦燕広域循環バス「やひこ号」(平日運行)で15分。あるいはJR弥彦駅より徒歩30分強
新潟県西蒲原郡弥彦村弥彦大字麓1970  地図
0256-94-1126
ホームページ

10:00〜22:00 年に数回休業あり
1,000円(路線バス利用者は割引あり。詳しくは当記事本文をご参照ください)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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姫川温泉 ホテル國富翠泉閣

2016年09月17日 | 新潟県
 
前回記事の「瘡の湯」に引き続き姫川温泉を取り上げます。「瘡の湯」は姫川右岸の長野県側に位置していましたが、今度は橋を渡って姫川左岸の新潟県に属する平岩駅へ戻り、駅を通り越して線路に沿って南下していきます。私が歩いていると、タイミングよく大糸線の列車が南小谷方面へ向かって走り去っていきました。


 
平岩駅から徒歩10分ほどで次なる目的地「ホテル國富翠泉閣」にたどり着きました。姫川温泉の旅館群からかなり離れている実質的な一軒宿ですが、周囲には何もなく、人里離れた山奥には不釣り合いな規模の大きい建物が聳えたっています。


 
建物の手前側には駐車場が広がっているのですが、その路面では大量の温泉が湯気を上げながら流れていました。融雪用なのでしょうか。でも昨冬は暖冬でしたから路面の雪はすっかり消えており、お湯だけが垂れ流されていました。お湯が窪みに溜まってそこそこの深さになっている箇所があったのですが、そこで衝動的に入浴したくなってしまった私は、ちょっと病気なのかもしれません。


 
建物の南側に誂えられた庭園を目にしながら玄関に入ってステップを上がると、そこには天井が高くて開放的なロビーが広がっており、和服姿の仲居さんがすばやく私のもとへやってきて、日帰り入浴の対応をしてくださいました。とても山奥の辺境とは思えないほど、立派な接客です。



フロントで料金を支払いますと、引き換えにタオルを手渡してくれます。仲居さんの案内に従い、雅やかな館内を歩いて浴場棟専用の下足場へと向かい、更に奥へと進みます。


 
浴場へ向かう廊下の足元は畳敷き。処々に小さな休憩スペースが設けられています。和のラグジュアリ感に包まれつつ浴室へ。


 
通路の途中で家族風呂への出入口が分かれており、屋外の離れには家族風呂が並んでいました。なお今回この家族風呂は利用していません。


 
廊下の突き当たりに、紅と紺の暖簾が掛かっていました。訪問時は廊下突き当たり正面の「奴奈川の湯」が女湯、そこから更に奥へ入ったところにある「八千矛の湯」が男湯となっていました。奴奈川姫も八千矛神も「古事記」などに出てくる伝説上の人物もしくは神様ですが、両方とも糸魚川にゆかりがあるんだそうですから、当地の伝説に基づいて命名されたのでしょう。


 
フローリングの脱衣室は大変広々としており、明るく清潔感に満ち溢れています。設置されている棚(枠)の一つ一つは小さいのですが、旅館宿泊客でしたら、浴衣や丹前を収めるには丁度良い大きさでしょうし、旅行者であっても枠を2つ使えば問題ありません。また貴重品用ロッカーが用意されていますので、旅行者でも安心して利用できます。洗面台の数も多く、アメニティーも充実していました。文句のつけようがないほど、使い勝手が良くて快適な脱衣室です。


 
浴室もまた素晴らしい。天井が高くて開放感のある室内中央には後述する楕円形の浴槽が据えられ、その浴槽を照らすかのように、鋭角を為す三角の大きな窓から外光が降り注いでいます。窓の形状といいホールのような空間といい、温泉浴場というよりチャペルにいるかのような感すら受けます。


 
天井の飾りには翡翠の勾玉を象ったレリーフが施され(姫川は翡翠の産地です)、また教会のような窓の向こうには白馬岳に連なる山々が望めました。



浴槽の手前には木枠の上がり湯槽が設置され、ぬるめに調整された温泉のお湯が張られていました。


 
洗い場にも広いスペースが確保されており、壁に沿ってシャワー付きカランが計15基並んでいました。各カランの前には腰掛けと桶が整然とセッティングされており、こまめにお風呂のチェックがなされていることが伝わってきます。


 
広々とした浴室の中央に据えられた浴槽は楕円形。湯船のお湯は41℃前後の寛ぎやすい湯温に調整されています。最大寸法で4m×8mというかなり大きなものですが、容量の大きさに十分応える大量の温泉が供給されており、浴槽の縁からは惜しげもなくお湯が溢れ出ています。溢れ出るお湯が流れる床の表面は、温泉成分の付着により、元々の素材の色がわからなくなるほど赤茶色に染まっていました。


 
浴槽の中央部に設けられた大きな焼き物の甕から、温泉がボコッボコッと噴き上がって浴槽へお湯を注いでおり、その噴き上がる音は脱衣室まで響いていました。湯口近くの洗い場側には直径2mの小さな円形浴槽が大きな楕円形浴槽に内包されており、ここだけ42〜3℃の熱い湯加減となっています。熱い浴槽には甕からの他、浴槽底部のグレーチングからも新鮮源泉が供給されており、源泉投入量を多くすることによって温度を高くしているようです。この熱い円形浴槽内部は温泉が真っ先に外気に触れる場所であるためか、楕円浴槽の他の部分よりも赤茶色の染まり方が濃いように見受けられます。
熱いけどフレッシュなお湯に入れる小さな円形浴槽。ぬるめのセッティングにより身体への負荷が少なくゆっくり湯浴みできる種浴槽。どちらも温泉好きのニーズを満たしてくれる極上のお風呂です。


 
周囲の山々を借景にした庭園に設けられている露天風呂は岩風呂で、10人以上は余裕で入れるサイズを有しており、このお風呂で使われている巨岩は姫川で採取されたものなんだとか。この巨岩は庭園風情を醸し出しているばかりでなく、周囲からの目隠しという実用的な機能も果たしており、その両目的のため巨岩や周囲の築山は絶妙な具合に配置されていました。露天風呂としてのスペースも広く、抜群の開放感が得られることは言うまでもありません。
お湯は岩の上から落とされており、湯尻からしっかりと流下していました。内湯同様に掛け流しの湯使いであろうかと思われます。湯加減は41℃前後。広い空と峻厳な山々を望みながらいつまでも浸かっていたくなる、素晴らしいお風呂です。

お湯は外気や温度の影響を受けやすいタイプで、内湯においてはほぼ無色透明ながら僅かに貝汁濁りを呈しており、湯の花はどは見られませんが、一方、露天風呂では外気に触れて温度が下がることにより、やや緑色を帯びつつ貝汁のように白濁していました。一般的な温泉ですと浴槽に注げる湯量は限られているため、大きな浴槽の場合はお湯が鈍って濁りはじめてしまう傾向にありますが、こちらの内湯の場合は投入量が多いためにお湯の鮮度が保たれ、濁るに至ることなく掛け流されてゆくのでしょう(その一方で露天はどうしても濁りやすくなってしまいます)。
お湯を口に含むと、薄い塩味と明瞭な金気味、土類系の味、そして弱いがはっきりした炭酸味が感じられ、弱いながらも金気臭や土気の匂いが嗅ぎとれます。湯中では食塩泉的なツルスベと重炭酸土類泉のような引っかかりが混在しており、よく温まるのに粗熱の抜けが良いので、湯上がりには温浴効果と爽快感が両立する実に快適な状態が続きました。

お湯やお風呂は極上ですし、施設としても綺麗で立派。そして接客も素晴らしい。大切な人に勧めたくなるような、非の打ち所がない大変ブリリアントなお宿でした。次回は是非宿泊で利用してみたいものです。


姫川温泉新1号井
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 53.2℃(貯湯槽流入口で測定) pH6.6 溶存物質1271mg/kg 成分総計1534mg/kg
Na+:251.2mg(66.04mval%), Mg++:20.2mg(9.97mval%), Ca++:56.6mg(17.04mval%), Fe++:0.4mg,
Cl-:330.6mg(56.48mval%), Br-:1.3mg, I-:0.6mg, SO4--:32.4mg, HCO3-:394.2mg(39.10mval%),
H2SiO3:117.4mg, HBO2:27.8mg, CO2:263.2mg,
(平成25年9月30日)
加水あり(源泉温度が高いため井戸水を加水)
加温循環消毒なし

JR大糸線・平岩駅より徒歩10分
新潟県糸魚川市大所885-1  地図
025-557-2000
ホームページ

日帰り入浴時間要問い合わせ(私の訪問時は15:00からでした)
1,000円(ミニタオル付き)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (4)
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姫川温泉 瘡の湯

2016年09月15日 | 長野県
 
前回記事に引き続き、9ヶ月前の今年(2016年)1月に旅した温泉めぐりのネタを取り上げさせていただきます。能登から北陸地方を東に進み、途中の糸魚川でJR大糸線に乗り換えて、平岩駅で下車しました。平岩駅といえば、以前拙ブログでも紹介したことのある姫川温泉の最寄駅です。


 
駅前に立つ看板に従い、姫川を渡って姫川温泉へと向かいます。このあたりは姫川を県境として新潟長野の両県が接しており、平岩駅は新潟県糸魚川市ですが、これから向かう姫川温泉は長野県小谷村に属しています。


 
姫川温泉に関して、拙ブログではこれまで「朝日荘」「白馬荘」を取り上げたことがありますが、今回訪れたのは「朝日荘」の左側に隣接している日帰り温泉入浴施設「瘡の湯」です。疱瘡の「瘡」とかいて「くさ」と読むんですね。コンクリ打ちっ放しの建物の外壁には「源泉かけ流し温泉」と書かれており、お湯の質には自信があるようです。この施設については2013年9月25日に拙ブログでも「(小ネタ)長野県姫川温泉で新たな温泉浴場が建設中?」というタイトルで開業前の様子を取り上げたことがありますが、その後2014年に開業し、温泉ファンのレポートも続々とネット上に上がっていたので、その尻馬に乗る形で私も遅ればせながら初訪問させていただくことにしました。


 
窮屈で足の置き場に困る下足場を抜けると、いきなり広間が川に面して広がっており、そこにいたおばちゃんに直接湯銭を支払いました。広場ではお風呂から上がったばかりの近所のお婆ちゃんがお茶を飲んで、店番のおばちゃんと談話中。早くも地元の方にとっての憩いの場として機能しているようでした。
そんな広間の奥から廊下へ抜けると、右手に紺と紅の暖簾がかかっていました。


 
脱衣室には無料で施錠できるスチールロッカーが設置されていました。タイプの異なるものが並んでいるところから推測するに、おそらくセカンドハンズの物を置いたのではないでしょうか(在庫の関係で異タイプのものにせざるを得なかったのかも)。洗面台にはドライヤーも用意されていました。


 
お風呂は内湯のみで露天風呂はありません。浴室は川に面してガラス張りになっており、川の対岸には大糸線の線路が左右に走っていて、目の前に架かるガーダ橋で川を渡っています。見た感じでは特に窓ガラスに遮光フィルムなど貼っていないようですから、川の対岸を走る大糸線の乗客からこちらの姿は丸見えではないかと思われるのですが、そもそも列車の本数がわずかなので、もしそのような場面に遭遇したとしても、寧ろ大当たりでラッキーなことだと考えたほうが良いかもしれませんね。
窓ガラス以外の室内に関しては、足元がガリガリ君ソーダ味のような色合いをしたタイル張りで、側壁はコンクリ打ちっ放しです。外観内装ともに、コンクリ打ちっ放しがこの建物のコンセプトなのでしょう。


 
男湯の場合は脱衣室から窓ガラスへ向かって左側に洗い場が配置されており、カランが4基並んでいて、うち2基がシャワー付きです。カランのコックを開けると、温泉のお湯が吐出されました。


 
出入口のそばには上がり湯用の小さな槽があり、体に掛けやすいよう、水と源泉のお湯を混ぜてぬるめの湯加減にしていました。後述するようにこちらの温泉はカルシウムのこびりつきが多く、この上がり湯枡においても、温泉の吐出口やお湯が溢れる槽の側面に、温泉由来のカルシウムが付着していました。


 

浴槽は(目測で)1.8m×3.5mの四角形。浴槽には無色透明のお湯が張られており、槽内のタイルも綺麗な状態が保たれていますが、お湯と空気が触れやすい浴槽縁などは、まるでサンゴ礁を思わせるようなトゲトゲとしたカルシウムのスケールによってベージュ色(ところによっては橙色)に覆われており、元の色がすっかりわからなくなっていました。この浴場の開業は2014年ですから、わずか2年でここまでスケールがこびりついてしまうのですね。浴場の管理には相当ご苦労なさっているものとお察しします。湯船を満たしたお湯は縁の上からふんだんにオーバーフローしているのですが、溢れ出しのお湯が徒に洗い場の方へ流れないよう、つまり床タイルにスケールが付着しないよう、浴槽の下に角材を設置し、これでお湯の流れ出しを食い止めていました。


 
浴槽へお湯を供給する湯口にはバルブが取り付けられており、これによって湯量を自由に調整することが可能です。なお加水も自由な加減が可能ですが、もし出したら後でちゃんと止めておきましょう。私が訪問した時には、温泉がドバドバと大量に注がれており、水は完全に止められている無加水状態でしたが、それでも42℃前後の入りやすい湯加減となっていましたので、源泉100%のお湯を思う存分楽しませていただきました。お湯の見た目は無色透明で濁りや湯の花は見られません。お湯を口に含むと、薄い塩味と土類系(カルシウム系)の味、そして弱いながらもはっきりとした炭酸味が感じられました。また湯口においては土類系の匂いや弱い金気臭も嗅ぎとれました。浴感に関しては、はじめのうちはツルスベなのですが、やがてギシギシと引っかかる感触が勝ってくる面白いフィーリングが得られました。

姫川温泉といえば、「朝日荘」も「白馬荘」も目の前で湯の滝をなしている源泉からお湯を受けており、白い湯の花が漂うような硫黄感たっぷりのお湯が特徴的ですが、こちらのお風呂ではそうした姫川温泉の源泉ではなく、遠く離れた蒲原温泉跡や湯原温泉といった温泉が点在するエリアに湧く源泉からお湯を引いており、それゆえ、姫川温泉と名乗っているものの、その実態はどちらかといえば湯原温泉「猫鼻の湯」などに近いタイプのお湯となっています。姫と名乗っているのに暴れ川である姫川では、長年にわたって砂防工事が行われていますが、この源泉はその工事の過程で掘られたものと思われ、土砂災害の心配がない場所までお湯を引いた上で、このような浴場を建設したのでしょうね。姫というじゃじゃ馬を馴らすプロセスで生まれた副産物と言えるのかもしれません。

私がお風呂から上がると、上述の広間で店番のおばちゃんがお茶とゆで卵をサービスしてくださいました。実に家庭的でのんびりとした時間が流れる浴場でした。内湯しかなく、しかも開業からまだ2年しか経っていないのに早くも雑然としているので、わざわざここを目的地にするほどではないかもしれませんが、お湯はふんだんにかけ流されていますし、田舎のおばあちゃんの家にお邪魔したような長閑な雰囲気が好印象ですので、付近を通りかかった際にひとっ風呂浴びるには丁度良いかもしれません。


松本砂防 瘡の湯代替(湧出地:新潟県糸魚川市大所字牧山989-575)
ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 54.8℃ pH6.5 湧出量測定不能(動力揚湯) 溶存物質1788mg/kg 成分総計1998mg/kg
Na+:349.5mg(62.25mval%), Mg++:35.7mg(12.03mval%), Ca++:103.9mg(21.23mval%),
Cl-:376.1mg(45.29mval%), Br-:2.7mg, I-:0.5mg, SO4--:101.5mg(9.02mval%), HCO3-:647.2mg(45.28mval%),
H2SiO3:106.4mg, HBO2:29.3mg, CO2:209.4mg,
(平成21年10月22日)

JR大糸線・平岩駅より徒歩5分
長野県北安曇郡小谷村北小谷9922-3  地図
025-557-2120

10:00〜18:30
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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和倉温泉 総湯

2016年09月14日 | 石川県・福井県

前回記事では和倉温泉の「奥田屋」での宿泊を取り上げましたが、せっかく和倉温泉を訪れたのですから、当地のランドマークである公衆浴場「総湯」にも立ち寄ってみることにしました。以前の総湯は洋風でどことなくメルヘンチックな雰囲気すら漂う建物でしたが、2011年にリニューアルオープンし、和の趣きたっぷりで重厚感のある建物に生まれ変わりました。北陸、殊に旧加賀藩領では温泉地における庶民向けの代表的公衆浴場を「総湯」と称しますが、このドッシリとした構えは「総湯」の名前に相応しい圧倒的な存在感を放っており、見るだけでも訪れる価値がありそうです。


 
湯屋の前は広場になっており、その一角には足湯や飲泉場が設けられていました。いずれも無料で利用できます。試しに飲泉場のお湯を口にしてみたのですが、まず非常に熱いことに驚き、そしてとっても塩辛く、且つ苦汁の味も強いことに仰天しそうになりました。伝説によれば、和倉温泉は今から1200年前に白鷺がお湯で傷を癒しているところを漁師夫婦が見つけたことが開湯の端緒となっているそうですが、こんな熱くてしょっぱいお湯を傷口に触れさせたら、沁みて痛くて飛び上がっちゃうんじゃないでしょうか。


 
足湯や飲泉場の他、アツアツのお湯を活かして温泉たまごをつくる槽もありました。備え付けのカゴにタマゴを入れ、15分でできあがるんだとか。


 
前回記事でも触れましたが、この時の私は夜に当地へ到着し、日の出頃に出発してしまったので、残念ながら明るい時間帯の当地を見ておりません。上2枚の画像は「総湯」正面を、夜間および日の出頃に撮ったものです。時間帯は違えども、それぞれ違った趣きがあって良いものですね。特に屋内の照明の灯りが漏れる夜間の格子戸はとっても綺麗です。


 
立派な暖簾と大きな提灯が掲げられた、威風堂々とした構えの玄関。
ここを通る時には、ちょっとした殿様気分が味わえました。


 
玄関ホールは観光情報を発信したり、当温泉の歴史を説明するコーナーがあるほか、温泉街の施設のジオラマが展示されていました。いかにも現代和風といった開放感と和の落ち着きを両立させたつくりです。


 
受付前の券売機で料金を支払い、受付カウンターに券を差し出します。通路の先で男女が分かれており、男湯は右側でした。


 
今回記事では公式サイトより画像を拝借させていただきました。いずれも女湯の画像ですが、男湯もほぼ同様の構造で、女湯とシンメトリになっているようです。
浴室内は、とても440円で利用できる公衆浴場とは思えないほど広くて開放感があり、そして多彩な浴槽が設けられています。天井が高くて換気状態も良いために湯気篭りがなく、綺麗で快適な入浴環境が維持されています。室内側壁の下半分は石材のようなタイルが貼られ、上半分は白木の羽目板を採用。そして柱はコンクリ打ちっ放し。総じて素材感を活かしており、伝統的な和の趣きと現代的なデザインおよび機能性を両立させたつくりです。洗い場にはシャワー付きカランが計20基設置されており、公衆浴場にもかかわらずボディーソープやリンスインシャンプーが備え付けられています。

浴槽類は、主浴槽・副浴槽・泡風呂・サウナ・水風呂・そして上がり湯というラインナップで、主浴槽・副浴槽・泡風呂の3つに関しては温泉が使われています。主浴槽は(目測で)6m×4.5mという大変大きなもので、万人受けする41〜2℃にセッティングされています。それに隣接している副浴槽は3m×4.5mで、やや熱い43℃という湯加減となっていました。両浴槽とも浴槽内はタイル張りで枠組み(縁)は御影石。両者を隔てる仕切りに湯口が設けられていて、双方へ温泉を落としているのですが、そればかりでなく、この湯口は飲泉場を兼ねていて、湯口のお湯を飲むことができました。主副両浴槽とも循環装置が使用されているようですが、循環だけでなく、新鮮源泉も投入しているのですね。
もうひとつの温泉槽である泡風呂槽は洗い場に近い位置に設けられており、扇のような形状で、やや深い作りになっていおり、41℃前後の湯加減に調整されていました。41℃前後と聞くと、ぬるめで長湯できそうに思えますが、ところがどっこい、こちらで長湯するのは容易いことではありません。その理由は後ほど。


 
露天風呂の画像も公式サイトより転載させていただきます。夜間の画像は女湯、画像内の文字が青文字の画像は男湯です。画像で比較する限り、浴槽のつくり自体には大差ないようですが、女湯には屋根がかかっている一方、男湯は屋根がなく、開放感では男湯の方が勝っているかもしれませんね。庭園風の設えになっている露天風呂の足元は洗い出し仕上げになっているのですが、入浴客の動線になる部分だけ石材が敷かれています。浴槽は3m四方の正方形で、縁には御影石が用いられ、浴槽内は緑色凝灰岩が敷かれています。とても500円未満で利用できる公衆浴場とは思えない、一流旅館並みにお金がかかっている立派なお風呂です。石組みの湯口からお湯が投入されていますが、しっかりと循環されており、人が湯船に入った時だけ幾許かのお湯が浴槽外へ溢れ出ていました。

さて温泉に関してですが、各浴槽に引かれているお湯は集中管理されている混合泉で、内湯に設けられている飲泉場のお湯を実際に飲んでみますと、苦汁味を伴う塩辛さが大変印象的。特に飲泉場では臭素臭やアブラ臭がふんわりと嗅ぎ取れました。また温泉を用いている浴槽で入浴すると普通のお風呂では体感できないような強い浮力が得られ、塩分の濃さを実感することができました。濃度の濃い食塩のお湯ですから、湯中でこそツルスベ浴感が得られるものの、湯上がりには引っかかりやベタツキが残り、強力に火照ります。上述のように長湯できそうな浴槽もあるのですが、凶暴に火照るお湯ですからボディーブローのように体力を消耗するので長湯は禁物。体力を奪われてヘロヘロになってしまいます。実際に、各浴槽では縁に腰掛けてぐったりと休んでいる方がかなりいらっしゃいました。ですから、お風呂から上がる時には真湯で体についた温泉を洗い流した方が良いかもしれませんね。湯上がり後はしばらくホコホコと温まりが持続し、冬ですら汗が引きませんでした。前回記事で取り上げた「奥田屋」のような掛け流しのお湯と比べると幾分パワーダウンしている点は否めませんが、でも循環のお湯だからといって侮るなかれ、なかなか本格的なパワーが得られるお湯です。お風呂としても規模が大きく、立派なデザインであるにもかかわらず、低めの料金設定となっており、それでいて使い勝手も良好。能登の観光拠点として燦然たる存在感を有する素晴らしいお風呂です。


混合泉(第5号・第8号・第10号・第13号の混合。弁天崎源泉貯湯槽流出口にて採水)
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 82.4℃ pH7.8 湧出量測定不能(動力揚湯) 溶存物質19.32g/kg 成分総計19.34g/kg
Na+:4116mg(52.28mval%), NH4+:0.5mg, Mg++:7.8mg, Ca++:3138mg(45.74mval%), Sr++:46.4mg,
Cl-:11480mg(98.56mval%), Br-:40.8mg, I-:0.2mg, SO4--:182.1mg,
H2SiO3:92.0mg, HBO2:42.1mg, CO2:21.3mg, 
(2014年9月10日)
循環ろ過装置を使用・消毒あり(衛生管理のため)

七尾駅や和倉温泉駅より路線バスで和倉温泉バスターミナルへ。バスターミナルより徒歩1分
石川県七尾市和倉町ワ5-1  地図
0767-62-2221
ホームページ

7:00~22:00 毎月25日定休
440円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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和倉温泉 奥田屋

2016年09月12日 | 石川県・福井県
 
石川県の和倉温泉といえば「加賀屋」が象徴するように巨大且つ豪華絢爛な旅館をイメージしますが、それとは対極にある小さい家庭的なお宿も多く存在しています。半年前の今年(2016年)冬の某日に能登方面へ出かけた際、そんな小さなお宿の一つである「奥田屋」で一泊しました。なおこの時は旅程の関係で日没後に和倉温泉へ到着し、日の出の頃に出発してしまったので、残念ながら明るい時間の画像がありません。ごめんなさい。
和倉温泉のバスターミナル南側には、かつて三業地だったような裏路地風情の強い木造家屋密集地があり、こちらのお宿もそんな一角に立地しています。渋く鄙びた外観は、庶民的な街並みに溶け込んでおり、袖看板が無ければ民家と見紛うかもしれません。


 
赤い絨毯が敷かれた玄関の奥には、ソファーが置かれたロビーが用意されており、全体的に昭和から時が止まっているかのような、どこか懐かしい雰囲気が感じられます。


 
今回通された客室は6畳の和室。テレビやエアコンの他、金庫やポットなどひと通りの備品類が用意されており、古いながらも清掃が行き届いていたので、問題なく一晩を過ごすことができました。なお洗面台やトイレは共用のものを使います。今回は素泊まりでの利用でしたので、お食事の紹介はできません。あしからず。


 
さてお風呂へと参りましょう。浴室は1階にあり、女湯は玄関の左側、男湯はロビーの右奥といったように、男女の浴室はロビーを挟む形で離れて配置されていました。
脱衣室の張り紙によれば、こちらのお宿は明治時代に湯治宿として創業した老舗宿なんだそうです。脱衣室は、右手に洗面台が2つ、左手に棚が設置されており、湯気で天井がふやけてしまうのか、青い板で応急的に補修されていました。


 
総タイル貼りの浴室は実用本位なつくりで、左手に浴槽、右手に洗い場が配置され、洗い場にはシャワー付きカランが4基並んでいます。地味で温泉風情に欠けるのですが、室内には鼻腔をツーンと刺激する臭素臭やアブラ臭、磯の香のような匂いが充満しており、戸を開けた瞬間に香ってきたそれらの匂いに、思わず心が躍ってしまいました。経験則から申し上げると、地味ながらもお湯の主張が強いお風呂って、いわゆるアタリである場合が多いんですよね。お湯への期待に胸が膨らみます。


 
タイル張りの浴槽は五角形を逆さにしたような形状をしており、最大寸法で幅1.5m、奥行3m強ほど。底面に泡風呂装置が埋め込まれており、脱衣室にあるスイッチを押すと、ブクブクと騒々しく稼働し、余計にお湯の匂いが室内へ充満しました。湯面近くの壁タイルに手書きで「湯の花」と書かれていたのですが、これって何を意味するのかな?(元々は「お湯の中に浮いているのは湯の花です」という旨の注意書きだったのかな?)


 
多孔質の岩をくり抜いた穴に塩ビ管が突っ込まれ、それをカバーする竹筒の穴から、直に触れないほど熱いお湯がチョロチョロと注がれていました。この湯口は部分的にベージュ色に染まっており、また竹筒の周りは温泉成分(主に塩分か)の白い結晶で覆われていて、お湯の濃さをビジュアル的に感じることができます。
和倉温泉では各施設とも集中管理しているお湯を引いているため、基本的にはどこで入っても同じお湯なのですが、当然ながら湯使いによって客に伝わる質感が異なり、こちらのお風呂のお湯は、正直申し上げて次回記事で取り上げる予定の公衆浴場「総湯」よりもはるかに濃く新鮮で主張の強いお湯となっていました。具体的には、見た目は無色透明。上述のようにツンと鼻の粘膜を刺激するような匂いがはっきりと漂い、口に含むと非常に塩辛く、また苦汁の味も強く感じられました。あまりに濃い味であるため、水で口を濯がないと塩辛さや苦汁の味がしばらく口の中に残ってしまいます。湯中では濃い土類泉のようなギシギシとした引っかかりがあり、湯上がりにはパワフルに火照ります。私が入浴した日は冬でしたが、風呂上がりは暖房要らずで、むしろ全身が火照って汗が止まらず、冷蔵庫に入れておいた缶ビールをついつい一気飲みしちゃいました。かなり火照ってベタつく熱の湯ですので、暑い夏季は風呂から上がる前に軽く真湯か水などで温泉のお湯を濯ぎ流した方が良いかもしれません。

脱衣室の張り紙に「湯ぶねに温泉をためる時から一切加水せずに湯量による温度調整を行っております」と書かれているように、こちらでは加水なしでの湯加減を調整しており、投入量がチョロチョロと少なめであるのは、おそらくそのためかと思われます。それゆえ濃いお湯を堪能することができるわけです。不特定多数の人が利用する公衆浴場と違い、宿のお風呂は利用者が限られていますから、投入量を絞っても湯鈍りが発生しにくいのですね。浴槽のお湯は縁よりしっかり溢れ出ており、槽内での投入や吸引も見られなかったので、完全掛け流しの湯使いかと思われます。
かなり凶暴なお湯ですので、迂闊に長湯すると湯あたりしそうになりますが、でもお湯が良いため、不思議とやみつきになって、宿泊中は何度も入ってしまいました。やっぱり名湯の掛け流しは凄いですね。小さなお宿の小さなお風呂だからこそ掛け流しにできるのでしょう。このお風呂に入れて良かったとつくづく思いました。


混合泉(第5号・第8号・第10号・第13号の混合。弁天崎源泉貯湯槽流出口にて採水)
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 82.4℃ pH7.8 湧出量測定不能(動力揚湯) 溶存物質19.32g/kg 成分総計19.34g/kg
Na+:4116mg(52.28mval%), NH4+:0.5mg, Mg++:7.8mg, Ca++:3138mg(45.74mval%), Sr++:46.4mg,
Cl-:11480mg(98.56mval%), Br-:40.8mg, I-:0.2mg, SO4--:182.1mg,
H2SiO3:92.0mg, HBO2:42.1mg, CO2:21.3mg, 
(2014年9月10日)
(館内掲示の分析書は平成22年(2010年)分析のものでしたが、他施設で同じ混合泉の2014年版がありましたので、ここでは2014年版のデータを抄出しました)

七尾駅や和倉温泉駅よりバスで和倉温泉バスターミナルへ。バスターミナルより徒歩1〜2分
石川県七尾市和倉町ヨ部5-1  地図
0767-62-2062

日帰り入浴に関しては不明
シャンプー類あり、他備品類見当たらず

私の好み:★★★
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