温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯野上温泉 舘乃湯

2017年08月20日 | 福島県
 

前回記事の弥五島温泉から国道121号線を北上して、湯野上温泉へとやってまいりました。この日私は当地で一晩を過ごしたのですが、宿泊先へ向かう前に、温泉地内の別のお宿で立ち寄り入浴を楽しむことにしました。今回訪れたのは「舘乃湯」です。湯野上温泉は大川の左右両岸に温泉宿が点在していますが、「舘乃湯」は右岸に位置しており、駅や国道がある左岸側から徒歩で向かう場合は、江川橋という吊り橋を渡って坂道を上がったところです。まるで民家のような佇まいですが、お宿のコンセプトは「田舎モダン」。懐かしいけど小洒落ているということなのでしょうね。


 
玄関で日帰り入浴をお願いし、湯銭を支払って右へ伸びる通路を進むと、小さな太鼓橋を渡った先に2つの暖簾が掛かっていました。浴室は時間帯によって貸切風呂になるらしく、その時間割が通路の壁に掲示されています。日中は男女別で固定されているようですから、宿泊することにより、普段大浴場となっているお風呂を貸し切りで利用できるのでしょう。日帰り入浴できる時間帯は、手前側の浴室が女湯、奥側が男湯として固定されているようですので、私は奥側のお風呂の暖簾をくぐりました。


 
コンパクトな脱衣室を抜けて浴室へ。
2つある浴室のうち、日中は女湯として使われている浴室はそこそこ広いそうなのですが、男湯の方はこぢんまりしており、汗を流して体を温めるという実用本位な目的に徹しているような造りです。窓側にはシャワー付きカランが3基並んでおり、その反対側には浴槽が据えられています。

 
 

内湯の浴槽は3〜4人サイズ。浴槽に注がれる温泉は、石組みの中に一旦落とされた上、槽内の穴より供給されています。そして窓の下にある穴から排出されているのですが、それだけでは排湯が追いつかないのか、私が湯船に入ると洗い場が洪水状態になるほど、勢い良くお湯が溢れ出ていきました。浴槽は部位によって材質や色が異なっているのですが、赤い御影石の縁、白い側壁、そして黒い底面というトリコロールによって、お湯の清らかさが映えていました。とても綺麗なお湯です。
なお、浴槽上の壁には洋風の牧歌的な風景画がはめ込まれているのですが、これは「田舎モダン」というコンセプトを表すひとつなのでしょうか。


 
露天風呂は完全に和の趣き。番傘のお化けのような丸い屋根が隣の露天風呂との間に立てられており、浴槽をはじめとして全体的に青み掛かった岩や石材で築かれています。


 
中華風の童子像が立つ側から露天風呂へお湯が流れ込んでいるのですが、これって内湯からの流れ込みなのかな。この湯口のほか、露天風呂の中程にホースが伸びており、そこから熱いお湯が供給されて、湯加減の均一化が図られていました。ホースのお湯は間違いなく新鮮源泉でしょう。


 
露天風呂の浴槽は5〜6人サイズ。お湯は湯尻からしっかりとオーバーフローしています。外気の影響を受けるために内湯よりも若干ぬるめの湯加減でしたが、むしろ長湯するにはちょうど良く、実際に私はのんびりと雪見風呂を楽しませていただきました。
こちらに引かれているお湯は、当地の別旅館でも使われている湯野上温泉舘本混合槽のお湯であり、つまり共同で集中管理しているお湯の供給を受けています。見た目は無色透明で大変綺麗に澄みきっており、ほぼ無味無臭ながら弱い石膏感が得られます。湯中ではツルスベとキシキシが五分五分で拮抗しているものの、湯上がりには肌がさらっとしてスベスベになり、それでいて体の芯からよく温まる、とても素晴らしいお湯です。


湯野上温泉舘本混合槽(1・2・3・5・6・7・8号源泉混合)
単純温泉 51.9℃ pH8.2 267L/min(動力揚湯) 溶存物質408.8mg/kg 成分総計408.8mg/kg
Na+:96.5mg(84.09mval%), Ca++:14.3mg(14.33mval%),
Cl-:70.1mg(40.31mval%), SO4--:97.2mg(41.23mval%), HCO3-:51.4mg(17.16mval%),
H2SiO3:63.1mg,
(平成20年7月7日)

会津鉄道・湯野上温泉駅より徒歩15〜6分(1.2km)
福島県南会津郡下郷町大字湯野上字舘本乙1302  地図
0241-68-2648
ホームページ

日帰り入浴時間不明
500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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弥五島温泉 郷の湯

2017年08月18日 | 福島県
 
会津を南北に縦断する国道121号線を車で走っていると、下郷付近の沿道で必ず目に入ってくるのが「弥五島温泉 郷の湯」です。国道沿いという便利な立地なので私は今まで何度か利用しており、ネット上でも多くの温泉ファンの方がご紹介なさっているので、てっきり拙ブログでも紹介済みかと思い込んでいたのですが、よく調べてみたらまだ取り上げていなかったので、今更ながら記事にさせていただきます。


 
玄関を入って右手に設置されている券売機で湯銭を支払い、反対側(左手)の窓側へ券を差し出して館内へ上がります。上がった先にはフローリングの休み処が設けられており、座布団がたくさん積まれていますので、私もお風呂上がりにドリンクを飲みながらここで一息入れさせてもらいました。ソフトクリームも売っているみたいですよ。なお脱衣室内にロッカーはありませんので、貴重品はこの休み処にある無料ロッカーに預けましょう。


 
冬季に訪れた際のレポートなので、曇って見づらい画像で申し訳ございません。
赤茶色系の床タイル、そしてベージュや白い壁とのコントラストが明瞭なこの浴室では、(男湯の場合)右手に浴槽、左手に洗い場が配置されており、洗い場にはシャワー付きカランが6基並んでいます。


 
内湯の浴槽は(目測で)2.5m×5m弱。縁はワインレッドの御影石、ステップは緑色凝灰岩、槽内はタイル、といったように部位によって建材が使い分けられています。湯口からはお湯が絶え間なく注がれ、御影石の縁から惜しげも無く溢れ出ていました。また湯加減は熱からずぬるからずの丁度良い温度でした。


 
露天風呂は目隠しの塀で囲まれていますが、周囲の山が目に入ってくる広さが確保されており、浴槽自体はいわゆる岩風呂であり、また日本庭園風の設えにもなっているので、非日常の温泉風情を感じることができるかと思います。そんな能書きを垂れるまでもなく、わずか330円で露天風呂にも入れるのですから、ありがたいことこの上ありません。この日私は雪見風呂を楽しませてもらいました。


 
露天では専用の湯口のほか、内湯からの流れ込みも合流しており、庭に向かってお湯がしっかりオーバーフローしていました。なお外気の影響なのか内湯よりも若干ぬるめの湯加減になっていました。

こちらのお湯は単純泉で無色透明ですが、浴槽の材質の影響なのか、内湯ではやや黄色を帯びているように見えました。また露天風呂では薄い膜のような浮遊も見られました。お湯を口に含むと弱い金気感のほか、薄い出汁味、そして微かな鉱物油感が得られ、湯中ではツルスベの優しい浴感が肌に伝わりました。分析書の湧出温度から推測するに、加温した上で放流式の湯使いを実践しているものと思います。適温ですがとてもよく温まり、湯上りはいつまでもポカポカし続けました。付近には魅力的な温泉地が点在しているため、ネット上ではどうしても相対的な評価が伸び悩んでしまうのかもしれませんが、単純泉だからといって侮るなかれ、なかなかの実力派。それでいてリーズナブル。しかも国道沿い且つ駅のそばという便利な立地。いろんな面で使い勝手の良い温泉浴場です。


和田3号
単純温泉 39.2℃ pH8.1 157L/min(動力揚湯) 溶存物質0.2490g/kg 成分総計0.2710g/kg
Na+:44.1mg(79.34mval%), Ca++:9.0mg(18.60mval%),
Cl-:5.2mg, SO4--:11.5mg, HCO3-:121.7mg(82.92mval%),
H2SiO3:55.4mg, CO2:22.0mg,
(平成25年6月7日)

会津鉄道・弥五島駅より徒歩約3〜4分(約300m)
福島県南会津郡下郷町大字弥五島字和田563  地図
0241-67-4710
ホームページ

10:00〜21:00 第1・3水曜定休
330円
ロッカー・ドライヤーあり、石鹸類販売あり

私の好み:★★★
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日光湯元温泉 森のホテル

2017年08月16日 | 栃木県
 
引き続き日光湯元温泉のお風呂を巡ります。拙ブログでは鄙びや渋さが特徴的な施設を取り上げることが多い傾向にありますが、今回訪問するのは北欧風の瀟洒なリゾートホテル「森のホテル」です。



午後3時から8時までの間は日帰り入浴が可能になりますので、そのタイミングを狙って伺いました。


 
 
木のぬくもりとオフホワイト系ファブリックの優しさを活かし、非日常的なラグジュアリ感と山小屋的な親近感を兼ね備えた空間が生み出されています。優雅な気分に浸れるのですが、かといって高級すぎるわけではなく、老若男女誰しもが無理せずに寛げる程よい品の良さと居心地の良さが程よくミックスされていました。
フロントで日帰り入浴をお願いしますと、料金と引き換えにフェイスタオルとレンタルのバスタオルを手渡してくださいました。


 
ホールを進んで途中を右手に折れると、浴場へ向かう廊下になります。大浴場へ向かう途中に貸切風呂へつながる通路が分かれているのですが、今回貸切風呂は利用しておりません。



男女両浴場の出入口付近には休憩処があり、湯上がりに腰をかけてひと息入れることができます。北欧テイストな館内にあって、お風呂まわりは和風の装い。この休憩場には小さな火鉢、そしてその上に鉄瓶が置かれていました。また水やお茶のみならずお漬物まで用意されていました。


 
大浴場は「おだしろ」と「こんせい」の2室があり、男女入れ替え制なのでしょうか、私が訪れた時には「おだしろ」に男湯の暖簾がかかっていました。それぞれの名前は小田代ヶ原と金精峠に由来しているのでしょうね。
脱衣室はとても綺麗で清潔感に満ち溢れており、洗面台に備え付けられているアメニティー類も充実していました。


 
大きなガラス窓に面している浴室。天井は一見すると低いのですが、中央部に三角に尖った明かり採りが設けられているため、窓から差し込む陽光と相まって、室内とは思えない明るい環境で湯浴みをすることはできました。湯船上の窓ガラスは後述する露天風呂や庭に面して緩やかな曲線を描いており、内湯の浴槽もその曲線に合わせて作られているため、湯船はヨットの帆のような形状をしています。


 
湯船の端には七福神の像が祀られていました。おそらく以前はこの像の台座からお湯が注がれていたものと推測されますが、私の訪問時にはその脇に突き出ている配管から温泉が投入されていました。湯船のお湯は淡い黄色を帯びた白濁で、透明度は30〜40cmほど。底には湯の花がたくさん沈殿しており、お湯を動かすとそれらが舞い上がって瞬間的に透明度がゼロ状態になりました。


 
湯口から注がれたお湯は、湯船を満たした後、ガラス窓の下に刻まれている溝へ流下していました。湯使いは加水ありの放流式。熱い時には、まず湯口のそばに置かれている湯もみ板でかき混ぜ、それでもダメなら加水をしても構わないようです(もちろん適温になったら水は止めましょう)。



洗い場は室内の2〜3エリアに分かれて配置されており、計11基のシャワーが取り付けられています。またサウナもあり、私がお風呂に入っている時には、温泉の湯船よりサウナ利用により多くの時間を割いているお客さんの姿も見られました。


 
北欧テイストのこのホテルですが、露天風呂は日本庭園風の趣きで、お風呂はゴツゴツとした男性的な岩風呂です。敷地の四方は塀や建物で囲われていますが、庭自体が広いので圧迫感は無く、周囲の山々を借景にした実に雰囲気の良い庭園です。私は雪見風呂を存分に満喫させてもらいましたが、この庭園は四季折々に装いを変えてくれるのでしょうから、季節によって楽しめる景色も異なるのかと思います。
内湯と同じ源泉を引いているはずですが、こちらのお湯は透明度が高く、しかもイエローではなくエメラルドグリーンでした。純白の雪と翠色のお湯とのコントラストが実に美しく、モノトーンの雪景色の中に現れたその色彩美に、しばらく見とれてしまいました。


 
露天では祠のような湯口から直に触れないほど熱い温泉が注がれており、湯口の下で常に温泉の流れを受けている岩は、温泉成分の付着によりアイボリー色に濃く厚く染まっていました。投入量が多いのでフレッシュな状態のお湯を楽しむことができました。


 
外気の影響を受けて温度が下がり気味にもかかわらず、透明度を保ち、かつグリーンの状態を保っているのですから、素晴らしいですね。湯中では白や薄黄色の溶き卵みたいな湯の花が浮遊しており、それによってぼんやり白濁しているようにも見えますが、基本的にはグリーン且つ透明のお湯と表現してよいでしょう。こちらも放流式の湯使いなのですが、内湯から露天風呂へ向かうアプローチに排湯が流れているため、おかげで冬でも足元が温かく、ストレスなく湯浴みをすることができました。

こちらのお宿に引かれているお湯は7号泉の単独使用。見た目に関しては上述の通りで、お湯からは硫化水素臭がしっかりと漂い、お湯を口に含むと、タマゴ味と若干の塩味、そして口腔粘膜を刺激する苦みやエグ味が感じられました。湯中に浸かるとツルツルとキシキシという相反する浴感が拮抗して肌に伝わりますが、総じて肌に染み入るようなしっとり感と滑らかさが心地よく、いつまでも湯中で過ごしていたくなります。また内湯は丁度良い湯加減に調整されている一方、露天風呂は長湯仕様のややぬるめの湯加減でしたから、周囲の山々を眺めながら時間を忘れて寛ぐには最高の環境でした。

大切な人に紹介したくなるとても素敵なお宿でした。私は今回お風呂しか利用していませんが、是非とも次回は宿泊利用してみたいものです。


奥日光開発(株)7号源泉
含硫黄-カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉(硫化水素型) 70.6℃ pH6.5 溶存物質1.085g.kg 成分総計1.276g/kg
Na+:139.5mg, Ca++:129.5mg,
Cl-:50.0mg, HS-:15.4mg, S2O3--:0.6mg, SO4--:316.9mg, HCO3-:293.3mg,
H2SiO3:103.3mg, HBO2:15.1mg, CO2:140.9mg, H2S:50.0mg,
(平成27年9月24日)
加水あり(源泉温度が高いため)

栃木県日光市湯元2551
0288-62-2338
ホームページ

日帰り入浴15:00〜20:00
1100円(レンタルタオル付き)
貴重品類フロント預かり、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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日光湯元温泉 万蔵旅館

2017年08月14日 | 栃木県
 
日光湯元のバスターミナル前には、ペンション風の旅館がいくつか建ち並んでいますが、今回記事ではその中でも最も温泉寺にも近い位置にある「万蔵旅館」で日帰り入浴した際の様子を取り上げます。かつてこちらは「山びこ荘」という旅館でしたが、数年前に廃業してしまい、その建物を居抜きのような形で現在のオーナーさんが入手。2016年4月に現在の名称でオープンしたんだそうです。



玄関こそアットホームなペンション風ですが、館内ホール(食堂)は天井が高く、内装も改修されてとっても綺麗。カーペットの上に配置された天然木のテーブルやチェアーなどが、山の宿らしいぬくもりを感じさせてくれます。また大きな窓から陽光が降り注ぐので、明るいのみならず、室内にいながら周囲の山の景色と一体化したるかのような感覚も得られることでしょう。
玄関にいらっしゃった男性の方に日帰り入浴をお願いしますと、快く受け入れてくださいました。


 
明るいホールの奥にある階段を下った通路の先に、男女別の浴室があります。まだ汚れのない真っ白い壁紙は、内装工事をしたばかりであることを物語っていました。


 
食堂ホールは綺麗にリニューアルされていましたが、イニシャルコスト削減のためか、脱衣室は目立つところだけ手直しして、他は以前のまま使っているように見受けられました。また壁紙の貼り方が荒かったり、古いコンクリがむき出しだったり、床が若干傾いていたりと、改修工事も詰めが甘いような感を受けます。
なお館内表示によれば、お風呂の温泉は掛け流しですが、熱い時は加水して良いそうです。浴室へのドアには保健所が発行した温泉浴用許可済証のシールが貼られていましたが、そこに記されていた日付は平成28年1月1日。まだ保健所からの許可をもらったばかりなのですね。


 
浴室は内湯のみ。湯気とイオウ臭に満ちた浴室内の奥にひとつの浴槽が設けられ、(男湯の場合は)右手に洗い場が配置されていました。妙にデッドスペースが多いこの浴室は、全体的に年季が入っており、特に新しさを感じるものはなかったので、以前の旅館時代の設備をそのまま流用しているのでしょう。特に洗い場にはシャワー付きカランが4基並んでいるのですが、いずれも新品ではなく、一部のカランでは金具が劣化しているのか、お湯がシューシューと音を立てながら漏れていました(私の訪問時のことですので、今は直っているかもしれません)。また2方向には窓が設けられていますが、周囲を他の宿によって囲まれているため、窓は全て曇りガラスになっており、それゆえ入浴しながら景色を眺めることはちょっと厳しいかもしれません。なお側壁にはたくさんのルーバーが取り付けられているのですが、これは硫化水素ガス対策かと思われます。


 
床から立ち上がる形で設置されている浴槽は1.5m×3mほどのタイル張りでおおよそ5〜6人サイズ。壁には「ぬる湯」と彫られた石が埋め込まれているのですが、特に温度差によって仕切られているわけではなく、ひとつの浴槽があるばかりですから、この「ぬる湯」表記は旧施設時代の名残なのでしょう。この表記やカラン、そして全体的に年季が入った浴室など、随所に旧旅館時代の形跡が残っているため、お風呂に入っても新しい宿を実感できる要素があまりないのですが(せっかくオープンまで漕ぎ着けたのに、肝心のお風呂を評価できずに申し訳ございません)、このお風呂で素晴らしいのはお湯が濁っていないことです。日光湯元のお湯ですから、他のお宿と同じく湿原に湧く源泉の混合泉を引いているばずなのですが(お宿のスタッフの方も他の宿と同じお湯だとおっしゃっていました)、他の宿では白濁してしまうのに、こちらの浴槽では美しいターコイズグリーンを呈しながら底面まではっきり見通せるほどの透明度が保たれているのです。白濁は外気との接触や温度低下などによって発生しますので、濁りが強いほどお湯が劣化していると言い換えることもできます。逆に言えば、濁っていないということはそれだけこのお湯の鮮度が良いわけです。もちろん、お湯のコンディションやその時々の気温や気候など様々な要因によって色合いや濁り方は変化し、このお風呂でも白濁が現れることがあるようですが、でもこれだけ濃いグリーンで且つ透明度が高いお湯に入れるお風呂は、当地ではなかなか巡り会えないかと思います(当地でグリーンの透明なお湯に入れるお風呂といえば、他には「民宿若葉荘」が挙げられます)。お湯の色が非常に美しく、また浴槽が角を面取りしたような形状をしているため、お風呂そのものがまるで巨大な宝石のように見えました。


 
湯口からは熱いお湯が注がれ、翠色の湯中では黒い湯の華が舞っていました。宿のスタッフの方曰く、手元に分析書が無いとのことなので、お湯に関して詳しく調べることはできませんが、お隣のお宿で使われているのは奥日光開発3・4・7号の混合泉ですから、おそらくそれと同じものが引かれていると推測されます。お湯からは鼻の粘膜をツンと刺激する強いイオウ臭が感じられ、お湯を口に含むとイオウ由来のタマゴ味のほか、しっかりとした苦みやエグ味が口腔の粘膜にこびりついてきます。お湯は完全掛け流しで、浴槽縁の切り欠けから溢れ出ており、その流路はイオウのこびりつきで盛り上がっていました。
その一方で、湯船の底面には硫化鉄を含む沈殿が溜まっており、湯船から出た後に自分の足裏を確認したら、案の定、硫化鉄によって薄っすらと黒く染まっていたのですが、全体的に古さが目立つこのお風呂で大量の沈殿を目にしてしまうと、温泉の事情を知らないお客さんの中には「清掃不足では」と誤解してしまう方もいらっしゃるでしょう。またお湯が溢れ出す流路付近でも湯泥のようなものが溜まっていたので、これも同様の誤解を招きかねません。お湯は大変素晴らしいのに、マンパワーなどいろんな面での不足が露呈しているのが実に残念なところです。
でもまだオープンしてから間もなく、コストを削減して努力している箇所も垣間見えますので、今後のブラッシュアップには大いに期待したいところです。また平均的な宿泊単価が比較的高い日光湯元にあって、こちらのお宿は低予算で泊まれる貴重な存在でもありますから、私個人としても是非頑張っていただきたいと思います。


温泉分析書見当たらず

日光駅(東武・JR)から東武バス日光の湯元温泉行で終点下車すぐ
栃木県日光市湯元2553
0288-26-3333
ホームページ

日帰り入浴時間不明
600円
ロッカー見当たらず、シャンプー類あり、ドライヤーはフロント貸出

私の好み:★★

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日光湯元温泉 湯元板屋

2017年08月12日 | 栃木県
残暑お見舞い申し上げます。
今回記事から3回連続で、今年(2017年)2月に日帰りで訪れた栃木県奥日光の日光湯元温泉を取り上げます。記事中の画像に写っている雪景色をご覧いただくことで、みなさまに一服の涼が伝われば幸いです。


 
冬の日光。東照宮周辺は関東平野と同じく雪のない景色でしたが、いろは坂を登って中禅寺湖を過ぎて戦場ヶ原に近づくと、景色は完全な銀世界と化して国道は積雪路面となり、さらに先の湯の湖周辺では道全体が分厚い雪に覆われていました。


 
さて今回の日光湯元温泉で訪ねたのは「湯元板屋」です。特に日帰り入浴に関する案内はないのですが、フロントで日帰り入浴をお願いしますと、快く受け入れてくださり、料金と引き換えにフェイスタオルを手渡してくれました。


 
浴場は3階にありますので、エレベータで上がります。


 
3階のエレベーターホールを出て、目の前にある短い連絡通路を進むと、その先に畳敷の小上がりが設けられ、男女の暖簾が掛かっていました。


 
小上がりは休憩室になっており、お茶や冷水のサービスの他、足をマッサージする機器類が用意されていました。こぢんまりしていながらも和の趣きたっぷりですから、お風呂上がりに落ち着いてひと息入れられるかと思います。また夫婦やカップルなどで入浴する場合は、どちらか早く出てしまった方がもう一方を待つ際に、このような休憩室があると便利ですね。


 
清潔感たっぷりで使い勝手の良い脱衣室を抜け内湯へ。
厳冬期に訪れたので浴室内は湯気が充満して視界不良でしたが、湯気と共にイオウの香りも充満しているので、ドアを開けて踏み込んだ瞬間に温泉への期待が膨らみました。内湯には後述する浴槽がひとつ設けられており、壁に沿ってL字形に洗い場が配置されています。洗い場のシャワーは計8基です。


 
内湯の浴槽は(目測で)3m×2mの四角形で、槽内にはタイルが用いられていますが、その縁は木材で囲われており、しかも表面はイオウの付着によって白く染まっていました。また湯船のお湯はレモンイエローを帯びた白濁を呈しており、湯面には粉状の湯の華が塊になって浮かんでいました。このようにイオウがビジュアル的に現れてくれないと、日光湯元へ来た実感が湧きません。
湯口から吐出されるお湯は直に触れられないほど熱々なのですが、その直下の枡に一旦落としてから浴槽へ供給するような作りになっているため、その過程で湯温が落ち着き、湯船では丁度良い湯加減に調整されていました。


 
さて、露天風呂で雪見風呂を楽しみましょう。左側には本棟(客室)からの視線を遮るための目隠しの塀が立ちはだかり、右手は山の斜面が高くそびえているため、両方に挟まれたこの露天風呂はあまり開放感がなく、ほとんど裏庭のようなロケーションなのですが、でも山の斜面に奥行きがあるので、湯船に入る方向を工夫すれば周囲の景色を眺めながら湯浴みすることができました。東屋に護られたL字形の石風呂には、やや緑掛かった白濁湯が張られています。


 
斜面には雪崩防止用の柵が立てられているのですが、私が湯浴みをしていると、サルのファミリーがその柵の上を伝って目の前までやってきて、お風呂に浸かってのんびりしている私を一瞥した後、フェンスから飛びおりて山の上へと雪の斜面を駆け上がっていきました。


 
木組みの湯口からは熱いお湯が絶え間なく注がれ、吐出口の真下は硫黄の付着によって黄色く染まっていました。私の訪問時は内湯よりもこの露天の方がお湯の投入量が多かったのですが(もちろん露天は冷めやすいためです)、それでもややぬるめの湯加減でした。でもおかげで長湯を楽しむことができました。浴槽の縁には小さなすのこが置かれていたのですが、これは枕代わりに使うとよいのかな?


 
湯口付近の縁には傾斜が設けられており、湯船に入りながら仰向けの姿勢でもたれかかれるようになっていました。でも私が訪れた時には雪が浴槽の上まで迫っていたため頭の置き場所がなく、残念ながらもたれかかることができませんでした。非積雪時にまた再訪してみたいものです。

こちらのお風呂に引かれているお湯は、内湯・露天ともに奥日光開発(株)3・4・7号と森林管理署源泉の混合泉。基本的には日光湯元温泉らしい硫黄がよく現れている白濁湯なのですが、単なる白濁ではなく若干のエメラルドグリーンが含まれており、殊に露天風呂では翠色と灰白色がよく出ていました。また湯中では白くて細かな湯の華が無数に舞っていました。お湯からは硫化水素臭が強く漂っていましたが、卵黄味や苦みやエグ味といったこの手の温泉ではお馴染みの諸々の味覚的特徴はいささか弱かったような気がします。湯船に浸かるとツルスベの滑らかな浴感とキシキシと引っかかる浴感が拮抗して肌に伝わり、湯上がりにはしっかりと体の芯まで温まるとともに、さっぱり感もあり、一浴で温感と爽快感の両方を味わうことができました。
白濁の硫黄泉に浸かりながら雪見風呂を楽しめる日光湯元ならではの素敵なお風呂でした。今回は日帰りでしたが、次回は是非宿泊してみたいものです。


奥日光開発(株)3・4・7号、森林管理署源泉、混合泉
含硫黄-カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉(硫化水素型) 74.1℃ pH6.5 溶存物質1.284g/kg 成分総計1.440g/kg
Na+:126.1mg, Ca++:191.5mg, Mg++:4.2mg,
Cl-:77.8mg, HS-:10.9mg, SO4--:496.2mg, HCO3-:236.4mg,
H2SiO3:96.0mg, HBO2:18.4mg, CO2:119.8mg, H2S:37.2mg,
(平成20年5月26日)
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし

日光駅(東武・JR)から東武バスの湯元温泉行で終点下車、徒歩3~4分程度
栃木県日光市湯元2530
0288-62-2131
ホームページ

日帰り入浴12:30〜15:00(念のため事前の問い合わせをおすすめします)
1000円(フェイスタオル付き)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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