温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

蔵王温泉 松金屋アネックス(源泉眺望風呂)

2017年08月30日 | 山形県
 
前回記事に引き続き、今年(2017年)冬に訪れた蔵王温泉のお風呂を巡ります。今回取り上げるのは、温泉街の中心部から県道14号線に入って緩やかな坂をちょっと下ったところにあるホテル「松金屋アネックス」です。日帰り入浴で伺いました。蔵王温泉の多くの旅館やホテルでは日帰り入浴を受け入れていますが、その受付時間は宿によって異なり、宿泊客を優先するため、えてして日中の数時間のみ開放されるケースが一般的です。しかし、こちらのお宿は朝から夜まで長い時間にわたって日帰り入浴を受け入れてくれるので、ホテルの綺麗で大きなお風呂でひとっ風呂浴びたい場合には重宝する大変ありがたい存在です。



アネックスという名前からも想像つくように、このお宿は新館という位置付けのようですが、本館と別館の二本立てということではなく、旧館から新しく生まれ変わった現在の姿をアネックスと称しているようです。1階の勝手口には「松金屋藤左衛門」と書かれた札が下がっているのですが、おそらくアネックスを名乗る以前の屋号なのでしょう。



フロントで日帰り入浴をお願いしますと、スタッフの方は笑顔で快く受け入れてくださいました。
宿によっては日帰り入浴客を邪険に扱うところもあるので、客としては飛び込み営業マンの心情で恐る恐る伺うこともあるのですが、こちらのように快く対応してくださると、次回は泊まってみたいな、あるいは知人に薦めてみようかな、なんて好意的に評価したくなります。口コミ全盛期の昨今、小さな対応こそ大切なんだと再認識させられました。
さて、館内図によれば1階には二つの浴場があり、ひとつは露天風呂付きの「大浴場」、もうひとつは「源泉展望風呂」なんだそうです。


 
フロントを擁する東館から渡り廊下を進んで西館へ進むと、その1階に「湯上りお休み処」と称するホールが広がっており、その先に人工温泉を用いた「大浴場」と露天風呂があります。この人工温泉は蔵王の温泉とは無関係のアルカリ鉱泉の沸かし湯らしく、しかももうひとつの浴室である「源泉眺望風呂」との間を移動する際には着替えないといけないため、今回大浴場および露天風呂の利用はパスすることにしました。もっとも、蔵王のお湯は酸性でかつ硫黄も濃いため、肌が弱い方など体に合わない方もいらっしゃいますから、体への刺激が強い蔵王の天然温泉が苦手な方にとってこの人工温泉はありがたいですね。


 
いま来た通路をちょっと戻って、上画像に写っている行灯を右折すると「源泉眺望風呂」。その名の通り、蔵王の天然温泉が引かれています。私の目当てはこちらのお風呂です。


 
厳冬期の日暮れどきに訪問したため浴室内は薄暗く、しかも湯気で曇っていました。そのため見辛い画像となってしまい申し訳ございません。総木造の浴室は温もりに満ち、またライティングの照度を抑えているため程よい暗さが落ち着きをもたらしていました。寛いでゆっくりと湯浴みするに相応しい空間ですね。床はすのこ状に施工されており、滑り止めと水はけという二つの効果をもたらしていました。
この源泉風呂ですが、今回利用しなかった大浴場の画像と比較しますと、比較的こぢんまりしているこちらのお風呂は二番手、サブ的な位置付けのようです。眺望と名乗っているように、たしかに小高い場所に設けられているのですが、決してパノラマが広がっているわけではないので、正直なところ名前負けしているような気がします。とはいえ、冬期こそ窓は締め切られますが、夏季は窓が開け広げられるそうですから、山の爽やかな風を受けながら開放的な湯浴みを楽しむことができることでしょう。


 
次席的な役割であることは洗い場にも現れており、浴室内で洗い場として使えるのは、片隅に設けられた2基のシャワー付きカランのみで、しかもシャンプー類などのアメニティもありません。つまり、体や髪をしっかり洗う場合には大浴場の利用が向いているわけですね。


 
浴槽に温泉を注いでいる木組みの湯口には、硫黄が分厚くこびりつくことにより、ほんのり黄色を帯びたクリーム色に濃く染まっていました。温泉地内に湧くいろんな源泉を集めてブレンドしたお湯を放流式の湯使いで供給しており、湯口から出てくるお湯はかなり熱いのですが、湯加減調整のためか投入量は絞られていました。


 
浴槽は目測で2m×5m弱のサイズ。室内と同じく浴槽も総木造なので、入った時のぬくもりや肌触りが優しく、あまりの心地よさゆえ、槽内で腰を下ろした時には思わず「ふぅ」と息が漏れてしまいました。湯口の直下には湯の花が沈殿しており、お湯を動かすと沈殿が舞い上がって瞬間的に濁りますが、すぐに再沈殿するので、早々に元の透明度が戻ってきます。
複数の源泉をミックスしているため、蔵王温泉の代表的な特徴がそれぞれバランスよく現れており、まさに当地の王道を往くお湯です。温泉の教科書があれば掲載してほしいほど、各源泉の個性がよく出ています。具体的には、フルーティーな収斂酸味と塩味が得られ、少々の硫化水素が漂い、湯中では強酸性ならではのヌメリを伴うツルスベ浴感が肌に伝わってきます。湯量を絞っているものの、私が入った時には少々熱めの湯加減になっており、長湯することはできませんでした。スキーから帰ってくるお客さんで賑わう時間帯のはずですが、風呂の大きさや使い勝手の良し悪し、露天の有無、といった要因のほか、湯加減の高低も影響しているのか、みなさん天然温泉ではなく、人工温泉の大浴場を利用なさっており、そのおかげでしばらくの間、私はこの源泉風呂を独占することができました。
スタッフの方の対応もよく、雰囲気も設備面も優れているこちらのお宿。次回は是非宿泊で利用させていただきたいと思いながら、お風呂から上がりました。


混合泉(高見屋1号源泉・近江屋1号源泉・海老屋山形屋源泉・川原屋源泉・松金屋源泉)
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉 50.4℃ pH1.7 溶存物質3396mg/kg 蒸発残留物2998mg,
H+:21.0mg, Na+:48.1mg, Mg++:52.8mg, Ca++:79.6mg, Al+++:152.9mg, Mn++:2.6mg, Fe++:18.4mg,
F-:10.1mg, Cl-:455.6mg, I-:2.0mg, HSO4-:933.3mg, SO4--:1326mg,
H2SiO3:210.8mg, HBO2:5.2mg, H2SO4:49.3mg, CO2:251.1mg, H2S:9.5mg,
(2006年6月5日)

山形県山形市蔵王温泉1267-16
023-694-9706
ホームページ

日帰り入浴時間9:00〜21:00
600円

私の好み:★★+0.5
コメント
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