温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

熱塩温泉 下の湯共同浴場

2017年08月26日 | 福島県
 
前回に引き続き福島県会津の温泉を巡ります。会津北部の熱塩温泉は数軒の旅館と1軒の共同浴場「下の湯」があるだけの小さな温泉地ですが、開湯縁起を600年も遡れるほど長い歴史を有する会津屈指の名泉です。さて私はこれまで当地の共同浴場に2度ほど入ったことがあったので、是非とも旅館のお風呂に入ってみたく、日中に日帰り入浴目的で訪れたのですが、日頃の行いが悪いのか、今年の冬に訪問した時には、目星を付けていた旅館は全て日帰り入浴がお休みで、入ることができませんでした。そこで、まだ拙ブログの記事にしていない共同浴場を、久しぶりに再訪することにしました。



共同浴場は無人施設であるため、湯銭は左隣に並んでいる「叶屋」という萬屋さんで支払います。熱塩温泉には同じ名前のお宿もありますが(現在休業中)、聞いた話によれば、どうやら熱塩で温泉宿を営む家はどこも叶屋さんの分家らしく、源泉があるお寺から温泉営業の許可を得ているのが叶屋さんだけなんだとか(真偽の程は定かではありませんのであしからず)。


 
数年前まで会津の温泉共同浴場には混浴など昔ながらのスタイルを残したままの施設が見られましたが、ここ数年でリニューアルが一気に進み、昔日の面影が消えつつあります。そんな中で、熱塩温泉の「下の湯」は或る意味で昔ながらのスタイルを現代に継承している珍しい浴場です。と言いますのも、浴室自体は男女別なのですが、その手前にある更衣室が男女で同じ空間を使うのです。一般的に混浴のお風呂であっても更衣室は男女別である場合が多いのですが、この共同浴場はその逆なんですね。とはいえ、さすがに今のご時世でそれは宜しくないと判断されたのか、現在では保健所の指導によりカーテンが設置され、女性客が利用する場合はカーテンで仕切られるようになっています。とはいえ、浴場を入るといきなり更衣室となり、しかも男性は仕切りがない状態で着替えますので、男性は見られることを、女性は見てしまうことを覚悟しなければなりません。



上述のように浴室は男女別に分かれていますが、双方を仕切る塀の高さが低いため、脱衣室から浴場へ入る際に気をつけないと、お隣のお風呂の様子が目に入ってしまうかもしれません。私の訪問時、女湯には誰もいませんでしたが、念のためにお隣が見えない位置から記録させていただきました。うなぎの寝床のように細長いお風呂はタイル張り。洗い場は狭く、カランなどはありません。このため湯船から桶でお湯を汲んで掛け湯をすることになるのですが、後述するようにお湯の塩分濃度が高いため、石鹸はちっとも泡立ちませんので、その点はご留意を。


 
このお風呂では60℃近い温泉がそのまま供給されているので、湯口のお湯を全部注いでしまうと、熱すぎて湯船に入れなくなってしまいます。そこで、湯口には木の栓が差し込まれており、この差し込み具合によって投入量を調整しています。また、上述のように浴室内にはカランがないため、湯船のお湯でかけ湯せざるを得ず、これによって湯船の湯嵩が減った場合は、栓を抜いて全量投入しつつ水道で加水も並行して行うことにより、嵩を回復させます。
なお湯使いは完全放流式です。

長方形の浴槽は、3〜4人は入れそうな大きさがあり、湯船のお湯はやや黄土色と緑色を帯びた淡い濁りを呈しています。熱塩という名前の通り、温泉は熱くてしょっぱいんですね。また少々の金気味と若干の苦汁味が確認できます。湯口周りが赤いのは金気の影響なのでしょう。また、湯中ではギシギシと引っかかる浴感が強く感じられます。私が入った時には適温が維持されていましたが、しょっぱいお湯は獰猛ですから、気づけば心臓が激しく心拍し、ボディーブローを食らったかのような感覚に見舞われました。このため長湯ができず、湯船に出たり入ったりを繰り返しましたが、風呂上がりはパワフルに火照り、雪が降っているというのにコートが不要になるほど、体の中からポカポカと温まりました。

福島県会津地方や山形県内陸部には、海から遠く離れた山間部であるにもかかわらず、海水のようにしょっぱい温泉が点在していますが、いずれも当地が太古の時代に海底であったことを示すものです。海底の火山活動に伴い緑色凝灰岩(グリーンタフ)が生まれ、やがて海底が陸地化してゆくと、地中に閉じ込められた塩分が、熱せられた地下水に溶けて温泉となって湧出します。グリーンタフに伴う温泉は、熱塩のようにしょっぱいものばかりでなく、群馬県北毛や秋田県大館周辺のような無色透明の硫酸塩泉だったり、日本海側一帯に点在するアブラ臭の温泉だったりと、場所によってその現れ方が異なりますが、いずれも個性的でかつ名湯の誉れが高い温泉ばかりですから、グリーンタフは東日本の温泉巡りに多様性をもたらしてくれる立役者なのであります。


ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 64.3℃ pH6.4 138L/min(動力揚湯) 溶存物質11406mg/kg 成分総計11419mg/kg 
Na+:2917mg(66.24mval%), Mg++:14.7mg, Ca++:1104mg(28.76mval%), Sr++:28.0mg, Fe++:2.5mg,
Cl-:6422mg(94.51mval%), Br-:23.0mg, I-:1.4mg, SO4--:375.3mg, HCO3-:137.3mg,
H2SiO3:80.8mg, HBO2:53.1mg, CO2:12.9mg,
(平成20年1月9日)

福島県喜多方市熱塩加納町熱塩熱塩甲811  地図

外来者入浴時間9:00〜16:00(16:00以降は組合員限定)
200円(叶屋商店で支払う)
備品類無し

私の好み:★★
コメント (2)
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