温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯野上温泉 民宿いなりや

2017年08月22日 | 福島県
 
今年(2017年)冬の某日に私は湯野上温泉で一晩過ごしたのですが、その時お世話になったのは「民宿いなりや」です。宿泊に際しては数日前に電話で予約をしたところ、「寒いから暖かくして来てくださいね」「ご飯は食べきれないほど出ますからお腹を空かして来てください」等々、優しく親切に説明してくださいました。宿の予約もネット利用が当たり前になっている昨今ですが、そんな時代だからこそ電話応対が好印象なお宿だと安心できます。ネットの口コミに頼る前に、まずは自分で直接問い合わせ、自分の勘に従った方が余程確実ではないでしょうか。こちらのお宿はそんな考えを持つ電話越しの私を安心させてくれました。



お宿の駐車場の傍には湯野上温泉で使われている源泉のひとつがポツンと立っていました。このように温泉街には源泉が点在しており、各源泉で湧いたお湯を集中管理して、各旅館へ配湯しています。このため宿の目の前で湧出しているからといって、そのお湯がすぐに宿のお風呂へ供給されるわけではありません。一旦、他の源泉とミックスされ、貯湯槽を経てから各旅館へと送られるわけです。



「民宿いなりや」は「ぬくもりのいろり宿」と名乗っているように、玄関のそばには上画像のような囲炉裏が設けられていました。私は今回利用しませんでしたが、ここで語らいのひと時を過ごすこともできるみたいです。


●部屋・食事
 
会津訛りでフランクに応対してくれる女将さんはまるでお母さんのようです。そんな女将さんが案内してくれた客室は約6畳の和室。テレビや空調などひと通りの設備は備わっているので、快適に過ごせました。そして窓からは大川が眺められ、対岸には会津鉄道の列車が左右に走っていました。


 
廊下はフローリング。お部屋に洗面台やトイレがないので、水回り関係は共用の設備を利用します。


 
こちらのお宿に泊まった方の口コミを見ますと、多くのが食事のボリュームについてコメントなさっており、どなたもその多さに驚いているのです。そして電話予約した際も宿のお母さんは「食べきれないほど出ます」とおっしゃっていました。果たしてどれだけの量なのか、期待を抱きつつも覚悟も決めながら、18:30に1階の大広間へ向かうと、私の卓には、上の画像に写っている数々、そして豚の陶板焼きが並べられていました。無芸大食の私は、この程度でしたらへっちゃら。すぐにでも完食できるのですが・・・



あらかじめ調えられたもの以外にも、できたてのアツアツな料理が説明とともに次々と提供されるので、徐々にお腹が満たされ・・・


 
終盤には山盛りの天ぷらと手打ちそばがドドンと出されたのです。画像では伝わりにくいのですが、その圧倒的なボリュームに面食い、実物と相対峙すると「これ、完食できるのか」と思わず苦笑いしてしまいました。天ぷらもお蕎麦も美味しいのですが、あまりの多さに悶絶してしまい、申し訳無いのですが天ぷらを半分近く残してしまいました。しかもこの天ぷらとそばが最後ではなく、さらにデザートとしてアイスのシュークリームまで出てくるのです。聞きしに勝る圧巻のボリュームに私は完敗。恐れ入りました。コストパフォーマンスなんていう表現がバカバカしくなるほど、ものすごい量でした。民宿ですからまさに家庭の味、おふくろの味といったラインナップです。大食漢の方は是非ともこちらのお宿の食事を完食していただきたいものです。


●お風呂

さて、話題を拙ブログの主旨である温泉のお風呂へ移しましょう。1階の廊下に沿って紺と紅の暖簾が掛かっていますので、私は紺の暖簾をくぐります。なお時間による暖簾替えはなく、男女は固定されているようです。また宿泊中の入浴時間に制限はなく、夜間通して入浴できます。


 
シンプルな脱衣室を抜けて浴室へ。内湯はいかにも民宿らしい実用的かつコンパクトな造りで、洗い場にはシャワー付きカランが2基並び、正面奥に2〜3人サイズの浴槽が据えられています。


 

内湯の浴槽は、縁が御影石で浴槽内はタイル張りですが、限られた空間を有効活用するためか、手前側の縁が斜めにカットすることによって、浴槽の容量を少しでも大きくしようと努めているようでした(あくまで私の主観ですが)。また湯口は石積みになっており、これによって非日常の温泉風情が醸し出されていました。お湯はこの石積みから直接吐出されているわけではなく、その裏手にある水栓から注がれているのですが、4つ並んでいる水栓の中でも温泉が出る水栓は白い析出で覆われているので、その水栓から熱いお湯が出てくるのか一目瞭然でした。なおお湯の投入量は適温になるようあらかじめ調整されているので、客が勝手に加減することはできません。


 
内湯からドアを開けると、すぐ露天風呂に出られます。木のぬくもりと石の落ち着きを兼ね備えた露天風呂は、全体を屋根で覆っているため、降雪期であっても冷たい思いをせずに雪見風呂を楽しめました。そして私が利用した客室同様、大川に面しているため、木立越しに川の流れや周囲の景色を眺められ、なかなか開放的です。


 
露天の浴槽は石風呂でおおよそ4人サイズ。湯口から注がれるお湯は直に触れられないほど熱々でしたから、おそらく配湯された温泉をそのままの状態で注いでいるのでしょう。そして湯量の増減によって湯加減を調整しているのでしょう。実際に私が入った時には、実に素晴らしい湯加減でした。内湯・露天ともに放流式の湯使いです。
こちらのお宿に引かれているお湯は湯野上温泉の混合泉(湯野上温泉舘本混合槽)。無色透明でほぼ無味無臭ながら、少々の石膏感が得られ、湯中ではスルスベとキシキシが拮抗して肌に伝わるのですが、湯加減の妙もあるため総じて優しくマイルドなフィーリングに包まれ、湯上がりもよく温まるのに肌はサラサラで、温浴効果と爽快感が同居する実に理想的な湯浴みを楽しむことができました。


 
翌朝も露天に入って雪見風呂を楽しみ、そのあとに朝食をいただきました。朝食は夕食のような脅威的ボリュームではなく、日本旅館らしい胃に優しい献立です。しっかり食べてその日の英気を養いました。



部屋に戻って窓から外を眺めていると、対岸に会津鉄道の列車が会津若松方面へ向かって走り去っていきました。ここはトレインビューも楽しめちゃうんですね。圧倒的なボリュームのお食事、そして掛け流しのお風呂、露天風呂まで堪能でき、しかもお値段は民宿らしいとってもリーズナブルな設定。お母さんの温かな対応も嬉しい、素敵なお宿でした。


湯野上温泉舘本混合槽(1・2・3・5・6・7・8号源泉混合)
単純温泉 51.9℃ pH8.2 267L/min(動力揚湯) 溶存物質408.8mg/kg 成分総計408.8mg/kg
Na+:96.5mg(84.09mval%), Ca++:14.3mg(14.33mval%),
Cl-:70.1mg(40.31mval%), SO4--:97.2mg(41.23mval%), HCO3-:51.4mg(17.16mval%),
H2SiO3:63.1mg,
(平成20年7月7日)

福島県南会津郡下郷町湯野上字沼袋乙853
0241-68-2328
ホームページ

日帰り入浴の時間不明
500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする