紅蓮(ぐれん)のポケット

子どもの本の作家・三輪裕子のふつうの毎日
2015年夏。三宅島で農業を始め、東京と行ったり、来たりの生活になる

7・何が書きたいか

2004-11-17 06:36:28 | 2・仕事の周辺
滞在も半分が過ぎた頃、急に疑問に思い始めた。私は一体パパさんの何にひかれているのかと。おもしろくて波乱に富んだ過去だろうか。
すぐに、違うと思った。パパさんの過去ではなくて、今の生き方にひかれているのだと気がついた。
パパさんは毎日、休む間もなく庭仕事をしたり、畑仕事をしたり、とれた食べ物を大事にして保存食を作ったりしていた。庭にあるゆうがおの実はうすくむいて干し、干瓢も手作りしていた。それを煮て一緒にのり巻きを作った。
パパさんは、一粒の麦を大事にするというか、生活自体に、哲学があるような人だった。

私はそれに気づくと、テープを片づけることにした。そして、話しを聞くかわりに、一緒に畑仕事を手伝ったり、果物をもいだり、買い物にいったり、パパさんと同じように生活してみた。
ふつうの暮らしをすることで、物語の方向が見えてきた。初めて書けそうだと思った。

カナダにいった4年後に「パパさんの庭」は刊行され、ラッキーなことに、その年の野間児童文芸賞を受賞。それによって、ずっと本を書いていける見込みができた。(カナダ取材旅行の話しはこれでおしまい。)

(写真は6年後。息子と娘も一緒にパパさんの家を訪れた時の)
★カナダ取材旅行