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経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

エネルギー無策 (中)

2019-06-13 06:46:24 | エネルギー
◇ 失敗続きの太陽光発電政策 = 再生可能エネルギーの本命は、太陽光発電。その普及を促進しようと、政府は12年にFIT制度を導入した。これは電力会社に、太陽光で発電した電気を強制的に買い入れさせる制度。ところが、その買い取り価格を1㌔㍗時=42円という破格の高値に設定したことが、大失敗の始まりになった。電力会社は買い取り分を、そのまま電気料金に上乗せする。このため電気料金が高騰、企業や一般家庭の負担が急増した。

驚いた経産省は、どんどん買い取り価格を引き下げ、ことし4月からは14円に。しかし、この間の買い取り総額は3兆6000億円に達している。しかも買い取り契約は20年有効としたので、引き下げた価格は新規参入の分にしか適用されない。現行の14円という価格は、通常の電気料金を下回る。これでは新規の参入者を阻止するに等しい。資源エネルギー庁は、いったい何を考えているのだろうか。

行政がこんなに激しく条件を変更したのでは、産業は育たない。発電パネルなどを製造する関連企業も、一時は世界一の生産量を誇ったが、いまや見る影もないありさまだ。国内市場はほとんど外国製品に席巻されている。こうした状態をもたらしたFITについて、ある専門家は「世界のエネルギー政策史上でも最悪」と酷評しているくらいだ。

風力や地熱などの再生エネルギー発電も、大きくは伸びていない。その結果、現在の電源比率は太陽光が5%程度。再生エネルギー全体でも8%程度にとどまっている。今後それを伸ばすために、白書では「新しい制度の導入が必要だ」と書いているが、その具体的な手段については触れていない。これでは「30年度に再生エネルギーが22-24%に増えること」など、どう考えても不可能だ。

                                (続きは明日)

       ≪12日の日経平均 = 下げ -74.56円≫

       ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ



エネルギー無策 (上)

2019-06-12 08:21:42 | エネルギー
◇ 電源比率目標を作成できず = 政府は先週7日の閣議で、19年度版エネルギー白書を承認した。ことしの白書の主なテーマの1つは、地球温暖化防止のためのCO₂排出削減。日本の取り組みは遅れており、16年の1人当たり排出量は9.0トン。OECD(経済協力開発機構)加盟35か国中で、27番目の成績だった。これは火力発電への依存度が高いことが原因で、白書は「再生可能エネルギーの普及を促進するためには、新しい制度の導入が必要だ」と訴えている。

石油・石炭・LNG(液化天然ガス)を燃料とする火力発電への依存度が高いのは、原子力や再生可能エネルギーによる発電が増加しないためだ。東日本大震災前の10年度と17年度を比べてみると、原子力発電の比率は25.1%⇒3.1%へと急減。再生可能エネルギーは水力を含めて、9.4%⇒16.0%とやや増加。この結果、火力発電の比率は65.4%⇒80.7%に増大してしまった。

このような燃料別の発電比率は、国の経済の根幹にかかわる重大な指標である。たとえば火力発電の比率が高ければ、それだけCO₂の排出は多くなるし、莫大な代金が産油国に支払われることで購買力が流出、景気の上昇を抑えてしまう。だから政府はエネルギー政策の基本として、3年ごとに「電源比率目標」を作成することにしている。

経済産業省が15年に作成した電源比率目標は「30年度に原子力20-22%、再生可能エネルギー22-24%、火力56%」という内容だった。だが現状から判断して、原子力や再生エネルギーがこの目標を達成するのは全くムリ。しかし政府は新しい電源比率目標を、4年たったいまも作れない。どうやって原子力や再生エネルギーを伸ばしたらいいのか、考え付かないからである。白書でも問題提起はしたが、チエはない。無策である。

                             (続きは明日)

       ≪11日の日経平均 = 上げ +69.86円≫

       ≪12日の日経平均は? 予想 = 下げ≫  

カネ余りのなかの 株安

2019-06-11 08:22:06 | 株価
◇ 緩やかな下げが特徴に = 株価は5月以降、下げ基調に入っている。たとえばダウ平均は5週連続で下落したあと、先週はパウエル発言のおかげで反発した。続落した割には下げ幅が小さく、この間の下落幅は560ドルにとどまっている。日経平均も連休明けから下げ模様だが、ここまでの下げ幅は1400円に達しなかった。このように今回の株安は、ゆっくりしたテンポなのが大きな特徴となっている。

株価を下落させた原因は、世界経済の先行き不安が高まったこと。その主たる原因は、米中貿易戦争の激化にある。だが貿易戦争は、いずれ終結する可能性がなくはない。また関税の引き上げ競争は一気に経済を破壊するわけではなく、時間をかけて徐々に悪影響を及ぼす。さらに景気がはっきりと下降に転じれば、どの国の政府も政策的に対応するに違いない。

市場はこう考えるから、売り一色にはならない。たとえば先週のダウ平均をみても、週末に発表された雇用統計が予想外に悪化したのに、株価は上昇した。雇用者の増加数が極端に落ち込んでも、これで景気が急降下するとは考えられない。むしろFRBは利下げしやすくなった、と市場は判断したからである。

カネ余りのなかの株安は、このように動きが鈍い。この先も、こうした状況は続くだろう。しかし株価が急落する危険性もないではない。それは景気がすこしづつ下降して行くなかで、金融不安が発生した場合である。経営が苦しくなった金融機関は、しだいに信用度の低い物件への投資を増やす。その投資物件が破たんするとき、第二のリーマン・ショックが起こりうる。その確率はアメリカでも日本でも、確実に上昇しつつある。

       ≪10日の日経平均 = 上げ +249.71円≫

       ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2019-06-10 07:24:28 | 株価
◇ 雇用の悪化が株価を上げた = ダウ平均は先週1169ドルの大幅高。7週間ぶりの上昇が、昨年11月下旬以来の上げ幅となった。終り値は2万6000ドルに接近している。パウエルFRB議長が週初、利下げの可能性を示唆したことが最大の材料になった。また週末には5月の雇用者増加数が7万5000人に激減したというニュースが流れたが、これも金融緩和を早めることにつながるとの見方から、株価を押し上げた。

日経平均は先週284円の値上がり。こちらも大型連休明け以来5週間ぶりの上昇だが、ダウに比べると上げ幅はきわめて小さかった。これはアメリカの利下げで、円高になるかもしれないという心配。中国経済不振の影響が、アメリカよりも大きく出ていること。さらに日本経済自体の先行きに、不透明感が強まっていることの反映だろう。

ニューヨーク市場の場合、雇用状況の悪化は本来ならば株価にとっては悪材料のはず。ところが市場に利下げ期待が蔓延していると、こういう現象がしばしば起きる。だが景気の先行きに対する心配も強まるから、この現象は長続きしない。今週は景気見通しに関する議論が、市場の内外で活発化するのではあるまいか。

今週は10日に、1-3月期のGDP改定値と5月の景気ウオッチャー調査。12日に、5月の企業物価と4月の機械受注。13日に、4-6月期の法人企業景気予測調査と4月の第3次産業活動指数。アメリカでは11日に、5月の生産者物価。12日に、5月の消費者物価。14日に、5月の工業生産、小売り売上高と6月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が10日に、5月の貿易統計。12日に、5月の消費者物価と生産者物価。14日に、5月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

       ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

レアアース戦争か !? (下)

2019-06-08 07:03:38 | 中国
◇ 海底資源はどこへ行った = いまやAIやハイテク製品の生産には欠かせないレアアース。最大の産出国である中国が輸出規制に乗り出せば、最も大きな被害を受けるのは日本かもしれない。そこで思い出されるのは、日本の海底資源だ。古い新聞をめくってみると、たとえば11年1月の日経紙面には「海底資源 採掘へ着々」という記事。また13年3月には朝日が「目覚めよ 資源の海」と題する特集を載せている。

レアアースについては昨年春、東大・早大などの研究チームが南鳥島の沖で行ったレアアース泥の分布調査の結果を発表。推定埋蔵量は1600万トンで「世界需要の数百年分に当たる」と、各紙が大々的に報道した。しかも効率よく回収する技術も確立したというから、とにかく素晴らしい。

だが、その後に実用化されたというニュースは一向に見当たらない。レアアースだけではない。経産省は13年3月「愛知県沖で海底のハイドレートからメタン・ガスの採取に成功。18年度に商業化を目指す」と発表したが、これまた続報はなし。ほかにもコバルトやマンガンなどの希少金属についても、発見の段階にとどまっている。

発見しても実用化に至らないのは、なぜだろう。おそらくは採掘コストが高く、商業ベースに乗らないからだろう。しかし、こういうときこそ政府が支援すべきではないか。日本は戦後“傾斜生産方式”をとって、経済を復興させた。安倍内閣は票集めのための財政支出ばかりでなく、日本の将来を見据えた方策にもカネを投じるべきである。なにしろ大学無償化と同じくらいの支出で、レアアース産業を立ち上げることができるのだから。

       ≪7日の日経平均 = 上げ +110.67円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】  

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