経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

「緊急事態宣言」の 副作用?

2021-07-13 07:28:42 | なし
◇ 実態より深刻に受け取られる = 長いこと東京に住んでいるアメリカ人のジャーナリストが、こんな話をしてくれた。ついに緊急事態宣言の発令中に実施されるオリンピック。たしかに日本のいまの状態は大変だが、多くの外国人は「問題をより深刻に受け取っている」というのだ。アメリカやヨーロッパの株価が上がっても、日本株は上がらない。その一因にもなっているのではないか、とも指摘した。

緊急事態宣言を英訳すると、Declaration of the State of Emergency となる。外国人からみると、これは非常に強い言葉だ。クーデターなどのときには、よく Martial Law (戒厳令」)が出されるが、State of Emergency は、これに次ぐ緊迫性がある。だから外国人は、この言葉と戦争や内乱、あるいは大規模なテロを結び付けやすい。ちなみに「まん延防止等重点措置」は Priority Measures such as Prevention Spread 。略すと Preventive Measure だから、Emergency との格差はきわめて大きい。

欧米では Lookdown がよく使われる。封鎖や閉鎖という意味で、もともとはカギをかけること。ご承知のように都市封鎖と訳され、行動規制はかなり厳しい。日本の緊急事態の方がよほど緩やかだが、Emergency という語感からは Lockdown よりずっと物々しく受け取れる。戒厳令に近い規制を実施しても、日本のコロナは収まらないと考えている人も多い。

実際には、日本の規制の方がずっとソフトで、人々の権利にも配慮している。それなのに「緊急事態宣言」という言葉が、それを阻害する。その結果、日本はかなり損をしているのではないか――彼はこう指摘した。気が付いてみれば、確かにそうなのかもしれない。きょうは英語の勉強になってしまったが、みなさんにも考えて頂きたい問題だ。

        ≪12日の日経平均 = 上げ +628.60円≫

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 

今週のポイント

2021-07-12 07:52:40 | 株価
◇ 置き去りにされた日本株 = ダウ平均は先週84ドルの値上がり。終り値は3万4870ドルで、前週に続き史上最高値を更新した。高値圏で売り物も多く、新型コロナの再拡大など悪材料も出たが、それでもジワジワと上昇して行く。その一方で日経平均は続落、先週は843円の値下がりとなった。急落する場面はなかったが、こちらはジワジワと下げた。東京都に4度目の緊急事態宣言が発令されたことが、心理的に大きく響いている。

日本株の退潮は、4-6月期の数字にも表れている。日経新聞によると、G20(主要20か国)のうち16か国の株価が4-6月期には上昇した。米英独の株価も3-5%値上がりしている。そうしたなかで、日本株は1%の下落だった。そこへ今回の緊急事態宣言で、さらに“一人負け”の形が鮮明になったわけである。

緊急事態宣言のなかのオリンピック。この異常な状態が、世界の耳目を集めることにもなってしまった。緊急事態が予想より早く解除されればともかく、そうでなければ異常な状態はオリンピックが終わるまで続くだろう。日本株にとって唯一の助けは、出遅れ感によってマネーが流入することだけ。長い夏休みになるかもしれない。

今週は12日に、5月の機械受注と6月の企業物価。15日に、5月の第3次産業活動指数。アメリカでは13日に、6月の消費者物価。14日に、6月の生産者物価。15日に、6月の工業生産。16日に、6月の小売り売上高、7月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が13日に、6月の貿易統計。15日に、4-6月期のGDP速報、6月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

        ≪12日の日経平均は? = 上げ≫

死者が語る コロナ肺炎の危険度 (69)

2021-07-10 07:40:46 | なし
◇ イギリスは賭け、日本は負け = 世界の感染者数は累計1億8508万人、この1週間で287万人増加した。死亡者数は400万1791人で5万4692人の増加。感染者の増加は前週よりやや拡大、死亡者はやや縮小した。死亡者数はこの3か月で100万人増え、400万人を突破している。しかし感染者に対して死亡者の増加が多少とも縮小しているのは、ワクチンの効果が出始めているからだろう。

死亡者数を国別にみると、アメリカが60万6228人でいぜん断トツ。ただ1週間の増加数は1509人にまで縮小した。続いてブラジルが52万人台、インドが40万人台、メキシコが23万人台。さらにロシアが13万人台、イギリスとイタリアが12万人台、フランスが11万人台、ドイツが9万人台、イランが8万人台となっている。このほかで目立ったのはインドネシアで、この1週間では4765人が死亡した。

驚くべき行動に出たのはイギリス。ジョンソン首相は5日「ロンドンを含む全土で、すべての規制を解除する」と発表した。イギリスのワクチン接種率は2回目を終えた人が全人口の64%に達して、重症者・死亡者が激減したためだという。この1週間でみると、感染者は19万人も増えたが、死亡者は161人にとどまった。イギリスの新聞は「ジョンソン首相の大きな賭け」と論評している。

日本の感染者は累計81万3822人、この1週間で1万2275人増えた。死亡者は1万9920人で112人の増加。感染者は前週より1719人増えたが、死亡者は91人減少した。ただ東京都で感染者の増加傾向が著しく、政府は東京都に4度目の緊急事態宣言を発令した。オリンピック中も緊急事態になるわけで、政府の「オリンピックをコロナに勝った証し」とする目論見は破れたと言える。日本は「負けた」ことを自覚すべきだろう。

       ≪9日の日経平均 = 下げ -177.61円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】    

100ドル説も浮上した 原油価格 (下)

2021-07-09 08:01:38 | エネルギー
◇ 日本にとっては大きなマイナス = 原油価格の高騰は、産油国の収入を増やす。だが消費国には、いろいろな面から悪影響が及ぶ。たとえば、いまのアメリカ。景気の急回復で物価が上昇し、FRBが金融緩和の縮小時期を早めるのではないかと心配されている。政府やFRBは「物価の上昇は一時的」と説明しているが、原油の高騰でガソリンの値上がりが続けば、インフレの兆候が強まることは間違いない。つまり原油はアメリカの金融政策を転換させるかもしれない、大きな要因になってきた。

日本は原油やLNG(液化天然ガス)のすべてを輸入に頼っているため、特に大きな打撃を受ける。すでにガソリンの店頭価格は、1リットル=156円30銭にまで上昇した。昨年6月に比べると30円の値上がりである。そして2-3か月後には、電力やガスの料金に跳ね返る。企業のコストが上がり、消費者のエネルギー負担も確実に増大する。

貿易統計をみると、5月の原粗油の輸入量は961万㌔㍑で前年5月より1.5%増加した。しかし輸入額は4300億円で170%も増加している。その増加額2700億円は、いずれ企業や消費者が負担することになるわけだ。もし負担増がなければ、企業や消費者はその分を他の消費に回していたはず。その分だけ国内の需要が減り、景気を押し下げることになる。

原油の国際価格80-100ドルが長く続けば、日本の負担額も長期にわたって持続する。ワクチンの接種でなんとかコロナ禍を抜け出しても、日本経済は新たな困難に直面する。いまのところ原油価格が急落するような材料は見当たらないから、国際価格は80ドルを超えて100ドルに迫る可能性も小さくはない。エネルギー計画の作成さえ出来ない政府の失態が、より明白になりそうだ。

        ≪8日の日経平均 = 下げ -248.92円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

100ドル説も浮上した 原油価格 (上)

2021-07-08 08:16:51 | エネルギー
◇ 需要>供給 の状態が定着 = 原油の国際価格が、じわじわと上がってきた。ニューヨーク商品取引所のWTI(テキサス産軽質油)の先物相場は、いま1バレル=75ドル前後の水準に。ことしの安値だった4月に比べると、約5割も値上がりしている。この間、特別な事件があったわけでもない。きわめてゆっくりと、着実に値を上げてきた。このことは4月以降、世界の原油に対する需要が常に供給を上回っていることを示している。

供給が抑制された原因は、いろいろある。まずOPEC(石油輸出国機構)とロシアなどが、減産協定を結んだこと。イランに対する制裁の主柱として、先進国がイラン産原油の禁輸を実施したこと。それに大きいのは、アメリカのシェール生産が伸び悩んでいること。シェールはバイデン政権が国有地での生産を禁止、また世界的な脱炭素ムードが影響して、現在でもピークだった19年末に比べて45%も減少したままだ。

一方、需要の方はコロナの収束を見越した景気の回復により、世界的に増大中。IEA(国際エネルギー機関)の推計によると、ことし1-3月には日量9310万バレルだった世界の需要は、10-12月には9960万バレルに増大する見通し。この結果、ことしの春以降は需要が供給を上回る状態がずっと続いている。つまり在庫は減り続けているわけだ。

こうした状態をみて、投機資金も参入してきた。価格が上昇すれば、投資資金は売りに転じる。このため相場が反落する場面もありそうだが、基本的な需要>供給の構図は変わりそうにない。そして国際相場が近く80ドルに達することは確実。さらに100ドルにまで上昇する可能性も出てきた――専門家の間では、こんな予想も広がり始めた。

                          (続きは明日)

       ≪7日の日経平均 = 下げ -276.26円≫

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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