INAXの「日本タイル博物誌」の中にも載っていた寺田家住宅が窯垣の小径資料館として開放されてるということで訪れた。
そもそもこの旅のきっかけの一つに先日陶芸でマジョリカタイルを作ってみたこともあって、タイルの生産地を訪れて、生産地ならではのタイルややきもの使いがみられる建物を見てみたいという目的もあった。
この資料館では本業焼の窯元であった寺田邸(明治時代後期築)をそのまま生かして改修されていて、浴室や便所に当時のままの姿で貼り付けられた本業タイルを見ることができ、又本業タイルの歴史などをボランティアガイドさんに説明を受けながら見学することができた。
(本業というのは瀬戸で磁器の生産が始まり、産業として有力になってきた時にそれまでの瀬戸にあった陶器の仕事のことを「本業」新しく入ってきた磁器の仕事を「新製」と呼び分けたことからついたもの)
幕末から明治にかけて、和洋折衷建築や洋風建築の導入が盛んになるにつれて欧米タイルを模して作られた本業敷瓦=本業タイルがこの地で量産されるようになった。
本業タイルは日本の量産タイルの第一号といわれるもの。
鎌倉時代に初めて上薬が掛けられて焼かれた本業タイルの前身、「敷瓦」
銅板転写に使われた模様が刻み込まれた銅板。
これを紙に写して、その紙に写ったものを更に粘土に写し込む。
銅板転写で作られた本業タイル。
同一柄で量産されたわが国の近代タイルの第一号。
これが窯垣にもリサイクルされた窯道具といわれるもので、窯の中で使われる時はこういう状態で使われていた。
タナイタとツク(タナイタを支えてるもの)、エンゴロ(中に陶器を入れて焼いた筒状のもの)
他にもやきもの作りのための昔ながらの道具など興味深い展示も。
銅板転写した本業タイルが貼られた便所。
スリッパも陶器、便器には染付けで蛸唐草や花の模様がびっしり描かれていてなんだかゴージャスな雰囲気・・
脱衣場と浴室には腰壁や床には明治後期の本業タイルが一枚も剥離することなく、張り付いていて圧巻。
銅板転写で作られた本業タイル。
花びらにはぼかしが入って、当時の技術の高さが伺われる。
床に貼られていたこのタイルは二色刷りということで倍手間がかかったそう。
コバルトがうっすらにじんだものも混じっていて、検査ではねられた自家用だったのでは?と言われてる。
瀬戸では産地ならではのタイル使いをされてる建物など見られるところは他にはないか?お聞きすると、一級品はよそへ売られていってしまうので意外と産地にはよいものは残っていないそうで、あっても二級品。お風呂などで今でも使われてる家もあるが一般ではなかなか見るのは難しいとのこと。
案内してくださったガイドさんはなんと91歳!の方だった。
とてもそんなお歳には見えず、しっかりとガイドされていたのでびっくり!
帰り際には大阪からわざわざ来てくれたのでお土産をあげよう、と鯉の図柄が描かれた年代物の?お茶碗をくださった。
感激~