昨日、日曜日(7日)の読売新聞サイエンスページに、ALMA(アルマ)望遠鏡のことが
取り上げられていました。 昨年暮れの“macの会”での講演でもこのアルマ望遠鏡が
出て来て、素晴らしい銀河などの映像を見せていただいていたので興味は倍増でした。
国立天文台、ALMA望遠鏡のネットページから、内容をかいつまんでまとめてみました。
アルマ望遠鏡は、正式名称は、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(Atacama Large
Millimeter/ submillimeter Array)といい、南米チリ共和国北部、標高5000メートルの
アタカマ砂漠に建設された電波干渉計です。
日米欧が個別に進めていた建設計画を統合して、2002年から建設を開始して2013年に
完成し、日本を含む東アジア、北米、欧州南天天文台の加盟国と建設地のチリを合わせた
22の国と地域が協力して運用しているそうです。
(以下の写真は、国立天文台ALMA望遠鏡HPから転写しました。)
アタカマ砂漠山頂設備
山頂設備のアップ
アルマ望遠鏡は小さな電波望遠鏡を広い場所にたくさん並べ、それらを連動させて
1つの巨大な望遠鏡として機能させる「干渉計」と呼ばれる仕組みを使っていて、口径
12メートルのパラボラアンテナ54台と口径7メートルのパラボラアンテナ12台の、合計
66台を結合させることで、1つの巨大な電波望遠鏡を作っているのです。
パラボラアンテナ(約100トンあるそうです。)
(移動車に乗っているところ)
望遠鏡は、口径が大きくなるほど解像度が良くなるので、アルマの場合は、小さな
個別のアンテナ(66個)を広い範囲に分散設置して、最大アンテナ間を16.2kmにして、
最大口径16.2kmにまで広げて、微弱な電波をキャッチするとともに詳細な観測を可能に
しているのだそうです。 東京から大阪にある1円玉を認識できるほどの解像度がある
とありました。
山頂設備であるアンテナ群と山麓設備として、スパコンによる合成処理、観測室で
構成されているのです。 そして、これらの大規模設備の運営には、観測を含めて総勢
250人ものスタッフがいるのだそうです。 アンテナのメンテ等の技術部門で、150人の
担当者がいるそうですが、この部門長は日本の国立天文台の教授だそうです。
日本は、計画全体のおよそ4分の1の貢献をしており、信号を処理するためのスパコン
も、日本が開発したものだそうです。
アルマ望遠鏡のHPに、これまで5年近くの主な研究成果として、以下の項目がかかげ
られていました。
- アルマ望遠鏡、132億光年先の銀河に酸素と塵を発見 ― 最遠方記録を更新し、
銀河誕生時代に迫る(アルマ望遠鏡) - アルマ望遠鏡、「視力2000」を達成!— 史上最高解像度で惑星誕生の現場の撮影
に成功(アルマ望遠鏡) - 地球に似た軌道を持つ惑星の誕生現場を若い星のまわりで初めて観測(アルマ
望遠鏡) - 太陽に似た若い星のまわりに、アミノ酸の材料を発見(アルマ望遠鏡)
- 巨大氷惑星の形成現場を捉えた〜アルマ望遠鏡で見つけた海王星サイズの惑星
形成の証拠〜 - アルマ望遠鏡、遠方銀河と小惑星を超高解像度で撮影
これらがどれほどの価値を持つ成果なのかを評価する知識が残念ながらありませんが、
宇宙に存在するガスや塵などは、光を発していないので光学望遠鏡では観測することが
出来ないので、これらの存在を電波望遠鏡によって観測が可能となった、新しい発見で
あるのです。 恒星や惑星の材料となる極めて低温のガスや塵から出ているミリ波や
サブミリ波を観測することで、惑星系の成り立ちなどの宇宙の進化を解明しようとして
いるということが分かります。
フォーマルハウト(1等星)と まわりのガスの輪
(フォーマルハウトは、冬場の南の空にきれいに輝いています。)
ミリ波やサブミリ波は、大気中の水蒸気によって吸収されてしまうために、大気が
薄く乾燥している高山地帯が適地で、そしてなるべく低緯度にある方が地平線に隠れる
天体が少ないため、多くの種類の天体を観測できるなど点から、標高5000mのアタカマ
砂漠が選定されているのですね。
(ネット画像より)
かって、国立天文台助教授であった故磯部琇三氏(高校後輩)が、「天文観測と
いうのは、もはやコンピューターの競争です」 といっていたのを思い出し、なるほど
電波望遠鏡という干渉計は、コンピュータ処理によりなされているのですね。
そしてまた、この電波の “サブミリ波”というのは、波長が0.1㎜~1㎜、 つまり
1ミリ以下の電磁波で、これまで、発信も受信も容易には行かない電波帯域でした。
私の大学時代の研究テーマに選んで、どのようにして扱うことが出来るか原理や方法論
を勉強したことを懐かしく思い出したのでした。
あれから60年近く過ぎた今、サブミリ波は、電波天文学のほか近距離無線通信、非破
壊検査、医用画像処理などに使われているのです。
以上、生煮えのキライは否めませんが、まぁ、手段はコンピュータの無機質な競争の
世界かもしれませんが、その抱く思いは大きなロマンに満ちているのですね。