盛んに報道されていますから、すでにご存じのことと思いますが、いま一度整理して
みたくて記事アップした次第です。
国際度量衡総会で、この11月16日に、質量の単位など4つの単位の定義改定案が承認され、
来年5月の「世界計量記念日」に正式に発効されるというのです。
キログラムは、これまで白金・イリジウム合金製の「キログラム原器」という分銅で
定義されていましたが、130年ぶりに見直されることになり、国際単位系(SI)で定める
7つの基本単位はすべて人工物でなく普遍的な物理量で定義されることになります。
国際キログラム原器は、厳重に保管されていますが、表面吸着などの影響によりその
質量は、年に1µg程度増加していると見られているようですが、1990年ころに42年ぶりに
国際キログラム原器の洗浄が行われた時、他のキログラム原器(レプリカ)に比べてその
質量は約50µg減少したとあります。
この量は、1kgの5×10−8倍というごくわずかの変動で、我々の日常には全くその影響は
ありませんが、質量の基準が変化するというのは、そもそもその計量が成り立たなくなる
わけで、今日のマイクロテクノロジー時代においては許容できない事態でしょう。
国際キログラム原器
(ウイキペディアより)
そもそも、計測精度が高くなることによって、新しい理論、技術の進展に結びついて
いることを思えば、一大事なのでしょう。 時間の精度が高められたことで、GPSなどの
新しい技術が生まれたように、今後の科学の発展にも期待されることでしょう。
質量は、その昔1795年には、「1キログラムは、摂氏4度の蒸留水1リットルの質量」と
定義され、4年後には、白金製の原器が作製され、さらに1879年に現在の合金製の原器が
制作され、10年後の1889年の第1回国際度量衡総会でキログラムの定義に使用されること
となったというのです。
1890年に国際度量衡局(パリ近郊)から日本に配布されたキログラム原器
(計量標準総合センターHPより)
しかし、前述のように精度が不安定であるため、2013年に普遍的な物理量として、プラ
ンク定数によるキログラム定義が提案され、それが、今回採択されて、『プランク定数』
によって定義されることになったのですね。
プランク定数は、量子力学の世界で扱われる“光子のもつエネルギーと振動数の比例
関係をあらわす比例定数”のことですが、難しくて俄かに説明できませんが、今回、純粋
シリコン原子の数から求めたプランク定数と、電気の力で求めたそれとが一致したことか
ら、このプランク定数に基づいて質量を定義したということなんです。
これにより、プランク定数は、国際的に「キログラムはプランク定数の値を正確に
6.626 070 15×10-34 ジュール・秒(Js)と定めることによって設定される」となった
のです。
ウイキペディアには、次のような下りがありました。
『プランク定数に基づく定義では、静止エネルギーと質量の関係式 E=mc² を用いて、
ある振動数 ν の光子のエネルギー (E = hν) と等しい静止エネルギーを持つ物体の
質量を1キログラムと定義する。 すなわち、キログラムは周波数が
{(299 792 458)2/6.626 069 57}× 1034 ヘルツの光子のエネルギーに等価な質量で
ある。』と。
定義の改定は1983年のメートル(m)以来で、キログラムのほかに定義が見直される
単位は、電流のアンペア(A)と温度のケルビン(K)、物質量のモル(mol)が
あります。 アンペアは、1秒間に指定数の電荷が通過する電流を1アンペアとし、ケル
ビンは、ボルツマン定数を用い、モルは、要素粒子の数で定義するなどとそれぞれ改定
されるのだそうです。
メートル法については、当ブログ2017.9.12「メートル法」に記事アップしていました。