今から40年近く前の会社でのことです。
画像や音声で情報を入手する「ビデオテックス」という名前のサービスを開発していた
頃の話で、大量の情報を蓄積している中央設備に、電話回線を通して接続して、欲しい情報
を手元のテレビ画面に取り出す、今のインターネットに似たサービスです。
インターネットが日本に上陸する15~6年前のことなんですが、インターネットは、情報
を蓄積しているところが至る所にあり、相互に「蜘蛛の巣」状にネットワークされ、手元の
端末から欲しい情報を検索すれば、情報が蓄積されている設備を意識することなくサービス
を享受できますが、当時はまだこのような発想はなく、情報が蓄積されている中央設備
(センター)を意識して、そのセンターに接続して情報を取得するという形式でした。
それまでの電話のようなサービスを E-E(エンド・ツー・エンド)、新しく開発している
ような情報サービスを C-E(センター・ツー・エンド)のサービスと定義していました。
で、このビデオテックスの情報を蓄積している中央設備のことを「ビデオテックスセン
ター」と呼んでいました。
センター(当時のセンターとは関係ありません。)
(ネット画像より)
前置きがずいぶん長くなりましたが、この「センター」が今日の主題なんです。
新たに開発したサービスを世界に発表するに当たり、英文記事を作成していた当時の職場
仲間の体験談が何かに書かれていたのを想い出し、それに尾ひれを付けて記事アップしま
した。 当時英文記事を社外発表する時、担当部署に米人(ネイティブ)の校閲を受ける
習慣がありました。 職場仲間の Kさんは、図や写真入りの英文原稿をネイティブに見せた
ところ、『ビデオテックスとはどんな布地か?』『ビデオテックスセンターとは何か?』
との質問。 ビデオテックスは、テキスタイルではなく、テキストの意味で、ビデオ(画像)
とテキスト(文字)とを扱うサービスの名称であり、ビデオテックスセンターとは、その
画像・文字情報を蓄積している中央設備のあるところという意味だと答えたのです。
開発担当の一人、Kさんにしてみれば、日常使い慣れた当然の言葉が質問され、一瞬唖然
としたそうです。
ビデオテックスという言葉は、当時既に世界で使用されていた言葉だったので、これは
このままOKとなりましたが、ビデオテックスセンターの方は、“センター”の意味が、
外国人には伝わりにくいということで、「ビデオテックスオフィス、名付けてビデオテック
スセンター」と注釈をつけることで落着したというのでした。
確かに、言われてみれば頷くところがあります。 “センター”を辞書(岩波大英和辞典
1970)で見ますと8つくらいの意味が書かれています。 円・球の中心、活動の中心、中心
部、中心人物、野球のセンターなどほとんどが中心という意味です。ただ、メディカルセン
ター(医療施設センター、中央病院)のように使用する例はありました。
ビデオテックスセンター、すなわち“ビデオテックスの中心”といわれても、確かにピン
とこないですね。意味するところは“ビデオテックスオフィス”なんですね。 設備のある
施設なんですね。
しかし、我々の身近には、この「センター」が、必ずしも中心、中央の意味でなく、設備
やそれらの集まっているところという意味でたくさん使われていることに気が付きました。
バスセンター(新宿にできたのはバスタ=バスターミナル)、ゲームセンター、コールセ
ンター、ホームセンター、ブックセンター、バッティングセンター・・ 十分理解できま
すが、改めて考えてみれば、確かに外国の人には理解しずらいでしょうね。ホームやブック
の中心と言われても・・。 センター試験などもありますね。
(共にネット画像より)
我が家に配送してくれる生協は、埼玉県三好にあるところから「三好センター」とよばれ
ていたり、渋谷には「センター街」があります。名称だから、これで良いわけですが、その
昔、センター街は渋谷の中心部だったのでしょうね。
こちらは本当のセンター?