蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

少子化対策  (bon)

2023-01-08 | 日々雑感、散策、旅行

 防衛予算を早々と閣議決定し、年が明けると「異次元少子化対策」の具体化を担
当大臣に指示する発言で賑わっています。
 次々と大きなテーマを打ち上げて、それぞれをあまり深く議論させない戦術であ
るかのようにも取れます。 旧統一教会問題の影を薄める効果はあるのでしょう。
ただ、後ろ向きの議論よりは、当然前向きの議論を優先させるべきであるわけです
から、それはそれで是として良いでしょう。

 首相が「異次元・・」を打ち出すと間髪を入れずに、都知事は「チルドレンファ
ースト」で、18歳までのこどもに月5000円給付を打ち出す、より現実的な対抗案を
出しています。

         (ネット画像より)

 異次元の少子化対策とは何か? この6日に小倉担当大臣に指示した内容は、①
児童手当を中心とした経済支援の拡充 ②学童保育や病児保育
を含む幼児教育・保
育サービスの充実  ③キャリアと育児の両立支援に向けた働き方改革や育児休業

どの制度拡充、の3点で、これらはこれまでの路線の延長で、どこが異次元なのか
理解できないでいます。
 しかしこの問題に力強く取り組むことは重要であり、期待したいところではあり
ますが、ここでも 首相は「この問題に挑戦する」といっており、「実施する」と
言い切っていない不安はありますが、まぁ、それでも具体的に担当大臣に指示され
たのです。この4月には、「子ども家庭庁」を創設する話もあります。

 これらは、「少子化対策」ではなくいずれも「子育て支援対策」なんですね。子
育て支援対策が充実されれば、経済的に子供を育て易くなりますからいくらかは子供
を増やす方向にはあるでしょうが、少子化の対策にはなっていないのですね。
「異次元・・」と強い言葉のキャンペーンを打ち出してはいますが、これらは子育て
支援をより充実しようとしているにすぎず、本論の少子化対策には踏み込まれてい
ないということです。

 少子化・子育て支援関連予算のGDP比を見ると、2017年でOECD平均で2.34%、フ
ランス3.60%に対して日本は1.79%とフランスの半分と低く、これらを改善するため
の施策として、今般打ち上げられた「異次元・・」であると思われますが、これまた
財源問題が付きまとうのですね。

 子供を育てやすい環境つくりは大事ではありますが、肝心の「少子化対策」に踏み
込まれていないのはどういうことでしょうか? 現状は、「少子化」というよりは
むしろ「少母化」が本質的な問題で、若い人が結婚しなくなっている、結婚しても
子供をもうけなくなっている傾向にあるというのですね。このことは、先進国では
どこも同じ傾向にあるとされそれぞれに取り組みがなされているそうです。

 今回の「異次元・・」や「チルドレン・・」はいずれも、「少母化」への対策に
はならないのですね。

 主な国の合計特殊出生率の動き  (内閣府HPより)
 


  Yahooニュースの、荒川和久氏の記事に、『結婚したいのに結婚できない若者
「不本意未婚」が4割もいる』との少子化問題の核心ともいえる指摘がありました。

『一括りに未婚というが、その中には結婚しないと決めた「選択的非婚者」と、
本当は結婚したいのにできないという「不本意未婚」がいる。』として、後者に
関しては、個人の力ではどうにもならない環境の影響が大きいと指摘し、これが一
つの少子化対策としてのターゲットであるとしています。

 荒川氏の分析では、20~34歳の適齢期層と35~49歳の中年層に分けて「結婚した
い人口」を見ると、適齢期層では、結婚したい女性が、結婚に前向きな男性がいな
いことにより結婚できない、中年層では「結婚したい女性」が極端に少なくなり男
余り状態となっているという。さらに、結婚希望達成率(結婚したい人口に対する
男女初婚数の比)の1990年から2019年までの5年刻みでその推移が示されて、90年頃
の結婚希望達成率は、男性81%、女性98%でほとんどが達成されていましたが、
年々その率は下がって、2019年では、男性51%、女性56%と6割を切っているのです。
つまり、34歳までの適齢期で結婚したい人の4割が結婚できないで未婚のままとなっ
ているということなんですね。この現象を中年層で見ると、そもそも達成率が20~
30%と低く、あまり変化はないようです。

 適齢期層にあって、結婚したい人が4割も結婚できないでいる現状を何とかしない
といけないということが一つあるようです。昔は、周りに見合いを進める人がいたり、
職場でもそのようなおせっかい?人がいたり、そのような話題も多かったのですね。
最近では、そのような話題をあまり聞かなくなったようです。 さらには、30歳を
過ぎた男性が、年収300万円を超えるかどうかの人達には、結婚意欲が湧いてこない
のかもしれませんね。

これらが「少母化」の原因の一つかもしれません。

 

 お正月に届いた会報に偶然「少子化する世界と日本の対策」(村上 芽氏、日本
総合研究所創発センターシニアスぺシアリスト)と題する記事が掲載されていました。
 かなり専門的な見地から、出生率の主な国(フランス、イギリス、ドイツ、スエ
―デン等)ごとの比較、そしてどの国も合計特殊出生率の低下にあるが、日本はや
はりその中でも低い水準にあることや、特に出生数においては、1976年から直近まで
を比較すると、190万人から81万人に激減しているのです。(最近の報道では80万人
を切ったとあります。)比率でいえば、これは43%まで減少したわけですが、ドイツ
は102%、イギリスは98%、スエ―デン110%と増えている国さえあるというのです。

 また、「コーホート合計特殊出生率」(女性が何歳の時に何人の子供を産んだの
かを示す)を引用され、1940年から1990年まで10年ごとのグラフで、フランスと日本
を比較していますが、これによれば、女性の年齢24歳まで、29歳まで、34歳まで、
39歳までに区分してみると、フランスの場合は、24歳、29歳までは時代と共に減少
して行くが、34,39歳までの率が少し増えていて、トータルそれほどの減少には至っ
ていない。これに対して、日本のそれは、24、29歳までの率がかなり急激に減少し、
34、39歳までの増加がほとんど見られないのです。
 つまり、20代で産まなくなり、30代でも取り返していないということなんですね。
「女性の高学歴化や仕事を持ち続けることが一般化し、晩婚化・晩産化が進んでい
るのは先進国に共通の事象だが、『30代に2人』産み育てやすいかどうかで差がつ
いている」と述べられています。

フランスの出生年コーホート別累積出生率  (noteネット画像より)

 (1940年頃から、30歳までの層が減少しているが、35,40歳の層が頑張っている。

 

 子育て費用の社会的な負担などの差もあるけれども、筆者は、これとは別の視点で、
フランス(スエ―デンなども)と違った特徴があると指摘しています。
 これらの国では、広く国民に対して人口変化や家族などについて啓発する行為が
見られるというのです。家族に関する議論もオープンに行われてきており、『連帯
民事契約』と訳される教会や裁判所が介在する結婚とは別のものがあるのです。
当初は同性カップル向けであったようですが、これが結婚よりも、この制度を選ぶ
異性カップルが増えてきているというのです。2017年時点で、新生児の58.6%の両
親が結婚していない、つまりこの制度によるのです。

 国の事情や考え方によりますが、伝統的な法律婚のみを増やすことに注力すれば
よいものかどうか? 法律婚を含めた制度を「ゆるめる」ことがあっても良いので
はないだろうか、と締めくくられています。

                

 長くなりましたが、何が言いたいかといえば、子育て支援策も大いに結構ですが、
少子化対策というからには、もう少し本質的な部分に切り込んだ対策の議論が欲し
いということなんですね。

 

 

Andre Claveau - Viens valser avec papa パパと踊ろうよ - アンドレ・クラヴォー

 

 

 

コメント
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