遺伝子操作によって創り出された雌雄同体の新人類「ラウンド」をめぐり、木星の実験宇宙ステーション「ジュピターⅠ」の中の特区内でのみ生育を許可して実験を続ける政府側とラウンドの存在を許さないとしてテロ攻撃を企てる過激派組織「生命の器」が攻防戦を展開するというストーリーのSFアクション小説。
テロリスト稼業を引退して研究者になっていたが「人質」をとられやむなく「生命の器」に雇われてジュピターⅠに潜入するカリナと、警備隊の隊長城崎を軸にストーリーが展開していきます。冷酷非情に殺戮を続けるカリナの姿には、主人公の1人ではありますが共感することは難しい。それでもカリナの持つ数少ない人間的な想い出「夏のドーム」(267~269頁)の少年が警備隊長城崎である(22~24頁)ことは、この種のドラマのお約束とも言えますが、皮肉な運命です。その点は2人には自覚されませんし、強調もされていませんから読み流してたら気づかないかもしれませんけど。
作者あとがきではラウンドをめぐる議論とドラマを通してジェンダーとセクシャリティを描くことに主眼があるように書かれています(305頁)。メインテーマがそこにあることは明らかですが、私は実はそこよりも研究者(フォン・シャイオー=カリナvsクライン)の研究対象への偏愛と性(さが)の方により重いテーマを見てしまいました。クラインのラウンドに寄せる思いと度々示されるラウンドを守るためなら・・・という決意。そして具体的に書くとあんまりネタバレですから書きませんけど、殺人機械のように冷酷に殺戮を続けるカリナとエウロパの微生物やさらにはラウンドに対する態度の落差。ありそうな感じもしますが、しかしそれはあんまりだと・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_shock1.gif)
上田早夕里 角川春樹事務所 2004年11月8日発行
テロリスト稼業を引退して研究者になっていたが「人質」をとられやむなく「生命の器」に雇われてジュピターⅠに潜入するカリナと、警備隊の隊長城崎を軸にストーリーが展開していきます。冷酷非情に殺戮を続けるカリナの姿には、主人公の1人ではありますが共感することは難しい。それでもカリナの持つ数少ない人間的な想い出「夏のドーム」(267~269頁)の少年が警備隊長城崎である(22~24頁)ことは、この種のドラマのお約束とも言えますが、皮肉な運命です。その点は2人には自覚されませんし、強調もされていませんから読み流してたら気づかないかもしれませんけど。
作者あとがきではラウンドをめぐる議論とドラマを通してジェンダーとセクシャリティを描くことに主眼があるように書かれています(305頁)。メインテーマがそこにあることは明らかですが、私は実はそこよりも研究者(フォン・シャイオー=カリナvsクライン)の研究対象への偏愛と性(さが)の方により重いテーマを見てしまいました。クラインのラウンドに寄せる思いと度々示されるラウンドを守るためなら・・・という決意。そして具体的に書くとあんまりネタバレですから書きませんけど、殺人機械のように冷酷に殺戮を続けるカリナとエウロパの微生物やさらにはラウンドに対する態度の落差。ありそうな感じもしますが、しかしそれはあんまりだと・・・
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上田早夕里 角川春樹事務所 2004年11月8日発行