伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

恋人

2008-07-12 00:02:13 | 小説
 勤めたばかりの会社を辞め母親が病に倒れても故郷に帰らず語学学校に通いながらものになる見込みもなく小説を書き続ける主人公が、語学学校で出会った離婚したての年上の編集者女性と語り合うようになり、相手が別れを伝える際に言った30年後のクリスマスに女性の故郷の函館で会いましょうという言葉を支えに様々な仕事をしながら小説を書き続け、小説家になり、約束の日に函館にやって来るというストーリーの小説。
 仕事を辞めて小説を書くというのになぜ語学学校に通うのか、建設現場で働きながら片手間に小説を書くのならなぜ故郷で書かないのか、相手の女性との別れも主人公が女性の体の傷にひるんだ/無神経に見つめ続けたためなのになぜ自分が捨てられたような被害者的な感情を引きずり続けているのか・・・。自伝なのかどうかよくわかりませんが、どうも作家が小説家志望者の話を書くのを読むと、自己憐憫と自己陶酔と自己卑下と自虐的露悪的なしかし言い訳めいた物語に感じ、楽しめません。
 恋愛ものとしても美しいラブストーリーではありません。構成はそれなりに引き込む力がありますが、恋愛ものとしてみても作家ものとしてみても、70年代っぽい重苦しめの少しじめっとした感じ/でも本当の70年代作品ほど重くない作品で、いまどきの70年代ノスタルジーというところでしょうか。


佐藤洋二郎 講談社 2008年3月26日発行
コメント
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