伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

さえずる舌

2009-03-29 21:59:16 | 小説
 産業カウンセラーとして事務所を経営している38歳女性友部真幌が、雇い入れた元カリスマ店員島岡芽衣の策略でスタッフの疑心暗鬼や取引先の誤解などを受けて事務所経営の危機に陥るという、企業経営者サイドの心理ミステリー。
 島岡芽衣が美貌に恵まれ人心掌握に長けた魅力あふれる人物でありながら、虚言癖があり底意地が悪く、他人を陥れることを快感とする人物をして描かれ、人を見抜くことの難しさ、人を雇用することの怖さを感じさせます。そう言ってしまうと事業はできないとも思いますが。
 その危機をカウンセラーのアドヴァイスで対処するという流れですから、カウンセラーの宣伝ぽい感じもしますが、結局その対処方法では乗り切れなかったり、真幌自身、自分の身内のことになるといつも客に言っていることが実行できてないことに気がつくシーンが多々ある(事件の当事者ってそういうものです。経験上)というあたりが、少し深みを持たせているというところでしょう。
 最後になってようやく、島岡芽衣は本当にエイリアンやモンスターなのかという問いかけが出てきます。こちらをもう少し追求した方がよかったかも知れません。


明野照葉 光文社文庫 2009年3月20日発行
コメント
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