14歳(この巻で15歳になりますが)の普通の少女ペギー・スーがテレパシー能力を持つ青い犬とともに冒険を続けるファンタジーシリーズの10巻。
9巻で、第1巻で登場した「妖精」アゼナが実の母と明かされたペギー・スーが、この10巻で突然「故郷」のアンカルタ星に青い犬とともにアゼナに連れられて戻ることになり、ペギー・スーは、実はアンヌ=ソフィー・デ・テールノワールという名前でアンカルタ王国の王女だとされ、宮廷に閉じ込められます。
この星では、王族や貴族は「幸福の石」の力で多幸感に浸って無気力に生き、庶民は貴族らの身勝手なふるまいに虐待され続けています。
王国を襲う巨大な鬼の存在を知り、宮廷を抜け出して冒険を続けるペギー・スーと、ペギー・スーを助けようとして罠にはまった庶民の少年コラン、その友人アントナン、そして森を支配する妖精と狼男、宮廷を捨てて森に住むペギーの姉らが絡み、ペギー・スーらは誤解され罪人とされながらも王国の危機を救うというお話です。ペギー・スーを救うために勇敢に戦うコランとしたたかに戦うアントナンに好感が持てます。
10巻は、アンカルタ王国の危機が救われますが、お尋ね者となったペギー・スーの冒険はまだ続くという形で11巻に続いています。
10巻は、ペギー・スーと青い犬だけが地球を離れてアンカルタ星に行くという設定で、9巻までの人間関係をすべてご破算にしています。1巻でアゼナはペギー・スーに「宇宙を守ろうとする人たちがあなたを選び、使命を与えた」「子供を一人選ばなきゃいけなくて、たまたまあなたが選ばれたの」(1巻30~31頁)と言っていましたが、9巻では「きみの父親は人間だった。きみが赤ん坊のときに、〈見えざる者〉たちに殺されたのだ。〈見えざる者〉たちはきみをも殺そうとした。だから、アゼナは宇宙の果てにある地球という惑星にきみを隠した。」(9巻163頁)とされます。ここですでに若干説明が変わっていますが、ここまではまぁいいでしょう。それが、9巻の次に出た10巻(原書の発売時期で1年9ヵ月開いてはいますが)では、そのはじめで「あなたのお父様は、亡くなったって聞かされていたかと思うけれど、本当は生きています」(10巻5頁)とあっさり方向転換されて、ペギー・スーの父親の国王「ウィリアム3世」が生きて登場します。なぜ殺されずに生き延びられたかとか、あるいはなぜ殺されたことにしておいたのかとかいう説明は一切ありません。10巻は、9巻までの展開・設定を何から何までご破算にして、ペギー・スーと青い犬というキャラのみを残して作り直している感じです。これまでとのつじつまを合わせることを作者自身が放棄しているように見えます。全体として荒唐無稽なお話ではありますが、そういうところはもっとまじめに作って欲しいなと思います。
原題:Le loup et la fee
セルジュ・ブリュソロ 訳:金子ゆき子
角川書店 2009年2月28日発行 (原書は2008年)
9巻は2008年5月1日の記事で紹介しています
9巻で、第1巻で登場した「妖精」アゼナが実の母と明かされたペギー・スーが、この10巻で突然「故郷」のアンカルタ星に青い犬とともにアゼナに連れられて戻ることになり、ペギー・スーは、実はアンヌ=ソフィー・デ・テールノワールという名前でアンカルタ王国の王女だとされ、宮廷に閉じ込められます。
この星では、王族や貴族は「幸福の石」の力で多幸感に浸って無気力に生き、庶民は貴族らの身勝手なふるまいに虐待され続けています。
王国を襲う巨大な鬼の存在を知り、宮廷を抜け出して冒険を続けるペギー・スーと、ペギー・スーを助けようとして罠にはまった庶民の少年コラン、その友人アントナン、そして森を支配する妖精と狼男、宮廷を捨てて森に住むペギーの姉らが絡み、ペギー・スーらは誤解され罪人とされながらも王国の危機を救うというお話です。ペギー・スーを救うために勇敢に戦うコランとしたたかに戦うアントナンに好感が持てます。
10巻は、アンカルタ王国の危機が救われますが、お尋ね者となったペギー・スーの冒険はまだ続くという形で11巻に続いています。
10巻は、ペギー・スーと青い犬だけが地球を離れてアンカルタ星に行くという設定で、9巻までの人間関係をすべてご破算にしています。1巻でアゼナはペギー・スーに「宇宙を守ろうとする人たちがあなたを選び、使命を与えた」「子供を一人選ばなきゃいけなくて、たまたまあなたが選ばれたの」(1巻30~31頁)と言っていましたが、9巻では「きみの父親は人間だった。きみが赤ん坊のときに、〈見えざる者〉たちに殺されたのだ。〈見えざる者〉たちはきみをも殺そうとした。だから、アゼナは宇宙の果てにある地球という惑星にきみを隠した。」(9巻163頁)とされます。ここですでに若干説明が変わっていますが、ここまではまぁいいでしょう。それが、9巻の次に出た10巻(原書の発売時期で1年9ヵ月開いてはいますが)では、そのはじめで「あなたのお父様は、亡くなったって聞かされていたかと思うけれど、本当は生きています」(10巻5頁)とあっさり方向転換されて、ペギー・スーの父親の国王「ウィリアム3世」が生きて登場します。なぜ殺されずに生き延びられたかとか、あるいはなぜ殺されたことにしておいたのかとかいう説明は一切ありません。10巻は、9巻までの展開・設定を何から何までご破算にして、ペギー・スーと青い犬というキャラのみを残して作り直している感じです。これまでとのつじつまを合わせることを作者自身が放棄しているように見えます。全体として荒唐無稽なお話ではありますが、そういうところはもっとまじめに作って欲しいなと思います。
原題:Le loup et la fee
セルジュ・ブリュソロ 訳:金子ゆき子
角川書店 2009年2月28日発行 (原書は2008年)
9巻は2008年5月1日の記事で紹介しています