母親を刺し殺した青年が、髪を切り落として痣を作り容貌を変えて漫画喫茶や公園を転々とし、ホームレスに拾われて生活するが、拾ってくれたホームレスとも暴力沙汰になって飛び出して行き場がなくなり、通りすがりの人に母親殺害を告白するが相手にされず警察に電話をしているうちに通りすがりの高校生に因縁をつけて殴り合うという、どうにも救いようのない小説。
動機も心情も語られず、ただ殺伐とした暴力が繰り返され、人間関係を結べそうでうまく結べない様子が、事実の流れとして綴られています。
主人公は将来への洞察力がなく、対人能力にも欠け、何かを努力するということもしない、身勝手で恩知らずな人物と感じられますが、内面がほとんど描かれていないので正確にはわからない、そういう人物設定になります。
殺伐とした人間関係と理由なき暴力といったところがテーマなんでしょうか。何十年か前なら、それ自体が文学のテーマとして活きたのでしょうけど、今時は、ワイドショーでもつければありきたりになったエピソードを動機も心情も正面から描くことなく羅列されても、だからどうしたの?と思うだけです。
したり顔で動機を解説しないところがいいという評価なのかも知れませんが、こういうのに文学賞が出るって私には理解できませんでした。
天埜裕文 集英社 2009年2月10日発行
第32回すばる文学賞
動機も心情も語られず、ただ殺伐とした暴力が繰り返され、人間関係を結べそうでうまく結べない様子が、事実の流れとして綴られています。
主人公は将来への洞察力がなく、対人能力にも欠け、何かを努力するということもしない、身勝手で恩知らずな人物と感じられますが、内面がほとんど描かれていないので正確にはわからない、そういう人物設定になります。
殺伐とした人間関係と理由なき暴力といったところがテーマなんでしょうか。何十年か前なら、それ自体が文学のテーマとして活きたのでしょうけど、今時は、ワイドショーでもつければありきたりになったエピソードを動機も心情も正面から描くことなく羅列されても、だからどうしたの?と思うだけです。
したり顔で動機を解説しないところがいいという評価なのかも知れませんが、こういうのに文学賞が出るって私には理解できませんでした。
天埜裕文 集英社 2009年2月10日発行
第32回すばる文学賞