伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

傷口から人生。メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった

2015-03-26 21:13:26 | エッセイ
 教育ママの抑圧に反抗して自傷行為やタンポン売り、不登校を重ねつつ、しかし大学に入り留学・TOEIC950点等の金看板を手に就活をリードし第一志望企業の最終面接に臨むが、その門前でパニック障害を起こして就活を捨ててカミーノ・デ・サンティアゴの巡礼に旅立ち、帰国後紆余曲折を経てライターになるという、著者の経歴をなぞった自伝的小説ないしエッセイ。
 前半の3分の2は、カミーノ・デ・サンティアゴの巡礼の道行きに、過去のあれこれを織り込んで、小説ふうの体裁を取っています。しかし、巡礼が終わると、その後は、帰国後現在までの部分も、大学入学前の部分もごちゃ混ぜに、ばらけたエピソードが並び、著者自身がブログで紹介しているように「エッセイ集」の体裁になります。最初から読んでいくと、巡礼が終わったところで、調子が狂う印象を持ちます。そうであれば、最初から、エピソードを巡礼の流れの中に配するのではなく、ばらした形で置くか、最後まで巡礼の過程に挟み込むか、時系列的にそれが厳しければ、最近のエピソードの中では逆に巡礼の時の回想を入れるなどして、読み物のスタイルとしての一貫性を保って欲しかったと思います。
 母親に反抗して注射針で血抜きをしてその血や吐瀉物をバケツに入れて母親の机に置く娘、母親にそれを見せたくなくて母親が帰る前にそれを捨てる祖母(しかし娘には何も言わない)。東大の模試でB判定を受けた娘に対し「あんたに教育費いくらかかってると思うの」と詰る母親、その母親に対して泣きながら「小遣いもらうたんびにお母さんに怒られるのがいやで、タンポン売ってんだけど、知らないおっさんに。気づいてるよね?」という娘、それを聞くや向かい合っていたのを90度向きを変えて黙ってリモコンを付けてテレビを見始める母。「事実は小説よりも奇なり」でしょうか、凄まじい母娘関係と、強烈な母親への恨みが印象的です。
 そういった心の闇から、さまざまな試行錯誤を経て立ち直る過程については、何がよかったとか決め手になったという整理がされずに、どこか雑然と描写されています。人生はそういうものだよという気がしますし、その意味では、読み味は悪いけど、後半のエピソードのバラバラな配列は理にかなっているのかも。


小野美由紀 幻冬舎文庫 2015年2月10日発行
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