伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

堕落のグルメ ヨイショする客、舞い上がるシェフ

2015-03-02 21:28:43 | 趣味の本・暇つぶし本
 副業として自腹で食べて辛口の料理評論をする著者が、飲食店業界の裏側について論じるとともに、飲食店をダメにしている要因としては客側の問題もあると指摘する本。
 批判されたレストラン側からの脅迫や出入り禁止を紹介する第1章は、そういうものかなとは思いますが、私怨感情が強く見え、延々と読まされるとちょっと辟易します。
 偽装問題をめぐる第2章は、食べログでのセミプロさくらライターを多数抱える会社の飲食店への営業の会話が、やはりそういうことはあるだろうなとは思いながらも、ショッキングです。後半の、産地偽装は一般人に見破れるはずがないのだから全ての店に偽装はあるものとしてつきあえというのは、処世術としてはそうでしょうし、味がわかりもしないで産地等の詳しい情報ばかり求めてありがたがる客のせいで飲食店が産地偽装をすることになるという指摘には一理あるとも思いますが、それでも表示する以上は嘘を言ってはいけないと、私は素朴に思います。
 第3章では、「日本広しといえど訴訟問題を語れるグルメライターは友里ただ一人」(36ページ)という著者が、飲食店側のわがままな対応を法的に論じています。しかし、予約拒否や店独自のルールについて憲法第14条(法の下の平等)違反の可能性を指摘する(79ページ、91ページ)のは、国が経営しているレストランであれば別論となるかも知れませんが、憲法第14条の私人間での直接適用を否定している最高裁判例(最高裁1973年12月12日大法廷判決:三菱樹脂事件)の下では無理があると思いますし、レストラン側が予約を拒否したり出入り禁止にするのに「合理的な理由」を求める(79ページ、85ページ)ことも私企業が誰と契約するのかは原則として自由(電気、ガス、水道等の公共企業の場合は別)である以上、法律論としては無理があると思います。もちろん、予約ができているのに当日追い返すことは債務不履行ですから、この場合店側の追い返しは違法ということになりますが。
 客側の問題点については、指摘されるような客の主張があるのならなるほどと思いますし、一見客や下戸が平等取扱いを求めるのは無理があるという指摘はもっともだと思いますが、それを言うなら第3章で憲法第14条など持ち出すなよと思いますし、関西人批判は出身地差別じゃないかとも思ってしまいます。私も大阪生まれですが、大阪生まれだから関西人批判をしてよい(誰よりも説得力がある:154ページ)という考え方には疑問を持ちます。言われている内容は関西人に共通してみられる文化だとも思えませんし、そういう行動が関西特有とも思えませんし。
 第2章、第4章、第5章と第1章の一部で構成すれば、もっと読み味のいい本になったのにと、思いました。


友里征耶 角川SSC新書 2014年3月25日発行
コメント
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