伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

私はこうしてストーカーに殺されずにすんだ

2015-03-14 00:25:22 | ノンフィクション
 タレントの著者が、「ファン」や援助者を自認するストーカーに追い回された経験をベースに、ストーカーに殺されないための心構えを説く本。
 著者自身の経験と、桶川・逗子・三鷹のストーカー殺人事件のルポ、心理学者らの分析本を組み合わせた叙述ですが、当然、著者自身の経験部分が読みどころです。家族、警察、弁護士、周囲の男たちが真剣に受け取らずストーカー男を赦し放してしまう、助けてくれないということへの恨みが声高に語られ、警察が何と言おうが殺されないためには一般的な「ルール」など無視して大声で悲鳴を上げ続けてようやくストーカー男にドスをきかせてすごんでくれる警察官にたどり着いて助かったとか、カーチェイスになり追い越して反転逆走してストーカー男の車に正面からぶつけたなどの自己の成功経験についての強烈な自負心が、読んでいて鼻につきますが、それがこの本の売りとなっています。
 殺されないということ、その一点に究極の価値を見いだせば、殺人を完全に防止すること、防止できる社会などあり得ませんから、制度や社会に頼らず、本人が危険と感じれば、がむしゃらに逃げるか死ぬ気で戦えという方針にならざるを得ないでしょう。その限度で、強い危険を感じ守られていないと感じる人には共感度の高い本だと言えるでしょう。
 しかし、この本で書かれている著者の対応が、その対応ゆえに「殺されなかった」のか、対応しなくても殺されなかったのか、またたまたまそういう結果となったのかは、部外者には判断しかねますし、著者の対応がうまく行ったのは著者が著名タレントだからではないのか、一般人が同じことをやった場合に警察が対応してくれるのか、逆に許されるのかは、わかりません。
 72ページで、「被害届→告訴→起訴→逮捕状→逮捕、という流れだ」と書かれていますが、こういうことはまずありえません。被害届は被害の事実を申告するもの、告訴は被害の事実を申告して犯人の処罰を求めるものですが、いわゆる親告罪を除いて、告訴が必須というわけではありません。被害届や告訴状を出さないと警察が動いてくれないという場合でも、被害届と告訴状を両方出す必要もないですし、ふつうはどちらかでしょう。そして、起訴した後に逮捕状が出て逮捕などということはまずないです。逮捕するなら先に逮捕してその後に起訴です。在宅で起訴する(逮捕せずに起訴する)事件なら身柄確保の必要性がないと判断したからそうするわけで、起訴後に逮捕するなどということはふつうありません。


遥洋子 筑摩書房 2015年2月10日発行
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